うたのおばさん』は、1949年8月1日から1964年4月4日までNHKラジオ第1放送で放送されていた幼児向け歌番組である。平日の8時45分から9時まで放送されていた。

概要 編集

終戦直後の時代に、「歌」は最も重要な娯楽の一つだったが、いわゆる流行歌には、子どもの歌唱にふさわしくないものも多く、健全な子どものための音楽文化育成のために、番組が制作された[1]

安西愛子松田トシがピアノ伴奏で歌唱し、歌遊びや歌唱指導もあった[2]この番組ができた当時、安西・松田の2人はまだ30代前半で、「おばさん」呼ばわりされるには抵抗があったようだが、「長寿番組にしたいし、そうすればおばさんのほうが親しみやすい」というNHK担当者の説得で納得したという。[要出典]

まど・みちお作詞、團伊玖磨作曲の『ぞうさん[3]など、この番組のために作られた歌もある。他に、サトウハチロー小林純一中田喜直團伊玖磨芥川也寸志佐藤義美らが番組に協力した[4][5]

当時は、幼稚園保育園に通う子どもはまだ少なく、団塊の世代とその前後の、多くの人たちが当番組を聞いていた。戦後の童謡の黄金期を作った[6]。月1 - 2回の外出録音を実施し、幼児と密接になるようにつとめていた[7]

一方、1953年にNHKのテレビにて本放送が開始される。そのような中で、当番組のテレビ版を作ろうという話があり、1961年に当番組の編成にたいそうを加えた『うたのえほん』が開始された[8]やはり1960年代になると、テレビが普及してラジオの聴取者が激減したため、[要出典]15年続いた番組も1964年に終了した。

当番組で誕生した歌 編集

おかあさん[9]
作詞:田中ナナ、作曲:中田喜直
お星さま
作詞:都築益世、作曲:團伊玖磨
1948年5月に放送、発表[10]
こおろぎ[9]
作詞:関根栄一、作曲:芥川也寸志
サッちゃん
作詞:阪田寛夫、作曲:大中恩
1959年に開催されたNHKラジオ「うたのおばさん」放送開始10周年記念の祝賀音楽会にて発表された[11]
ぞうさん
作詞:まど・みちお、作曲:團伊玖磨
詩は1948年春頃に、曲は1953年に作られた[3]
みつばちぶんぶん[5]
作詞:小林純一、作曲:細谷一郎
めだかの学校[5]
作詞:茶木滋、作曲:中田喜直

数曲が日本の歌百選に選定された。

スタッフ 編集

  • プロデューサー - 後藤田純生[9]

脚注 編集

  1. ^ 「教育放送史への証言(16)幼児番組の変遷(3)終戦後の番組再開から「うたのおばさん」まで / 武井照子」『放送教育』第50巻第6号、日本放送教育協会、1995年9月1日、70 - 73頁、NDLJP:2340871/36 
  2. ^ 松田トシ 寄贈資料展”. 過去の企画展示情報. NHK放送博物館. 2015年5月20日閲覧。
  3. ^ a b 『ピアノ伴奏 子どもの歌名曲選』ドレミ楽譜出版社、2012年2月20日、110頁。ISBN 9784285132748 
  4. ^ 長田暁二 (2013年2月4日). “日本の子供の歌発達史 〜「わらべうた」からSP盤の終焉まで〜”. 歴史的音楽. 国立国会図書館. 2015年5月20日閲覧。
  5. ^ a b c 畑中圭一『日本の童謡』平凡社、2007年6月4日、289頁。ISBN 978-4-582-21970-8 
  6. ^ ぞうさん」作詞 まど・みちおさん死去”. NHK「かぶん」ブログ. 日本放送協会 (2014年2月28日). 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月20日閲覧。
  7. ^ 日本放送協会 編『NHK年鑑1958日本放送出版協会、1957年11月1日、84頁。NDLJP:2474354/122https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2474354 
  8. ^ おかあさんといっしょ 座談会”. NHKアーカイブス. 日本放送協会. 2015年5月20日閲覧。
  9. ^ a b c こわせたまみ『日本児童文学』 38巻、9号、教育出版センター新社、1992年、33頁。 
  10. ^ 『ピアノ伴奏 子どもの歌名曲選』ドレミ楽譜出版社、2012年2月20日、59頁。ISBN 9784285132748 
  11. ^ 『ピアノ伴奏 子どもの歌名曲選』ドレミ楽譜出版社、2012年2月20日、28頁。ISBN 9784285132748 

関連項目 編集

  • みんなのうた - 本番組が未就学児のための番組だったのに対し、それ以上の年齢の子どもたちを対象に開始した。
  • おかあさんといっしょ - 本番組の編成に体操を加えた、本番組のテレビ版であり実質上の後継番組。