おなっとうは、長野県佐久市佐久地域)の郷土料理ご飯(糀)を混ぜて発酵させて作る料理で、甘納豆ともいう(豆を使った甘納豆とは別)[1][2]

黒豆入りおなっとう(再現)
長野県佐久市の位置

概要 編集

ご飯と米麹から作られる、くどろっとした食べ物である[3]。炊いたご飯を軽く冷まし、米麹を混ぜて一晩保温すると甘味が出る。これに煮豆を入れるなどすれば完成である。菓子としてお茶請けにしたり、に付けたりして食べる。を加えて温めると、甘酒にもなる。年末から春先にかけての料理である[1]

佐久では、古くからを使った「なっとう」(本項のおなっとう)、を使った「なっとう」(糸を引く納豆)の両方が作られてきた。ともに「なっとう」であったが、五穀の序列でより上位に来る米を使った「なっとう」の方に「お」を付けて、区別するようにしたという[3]

かつては各家庭味噌作りが行われており、その際に余った麹を使い[3]こたつの中で一晩保温して作っていた[1]。今日では炊飯・保温機能をもつ炊飯器で簡単に作ることができるが、味噌作りをする家庭自体が減ったことから、おなっとうを作ったり、食べたりする機会も減ってしまった[3]

調理法 編集

材料はうるち米1、米麹100g(5人分)。調理方法の一例を下記に示す[4]

  1. 炊飯器で炊いたご飯をほぐし、30程度まで冷ます。
  2. ほぐした米麹を30℃程度のぬるま湯(100mL)に30間浸す。
  3. 1と2とを混ぜ、炊飯器で5時間程度保温し、軟らかくなったら取り出す。

その後、軟らかく煮た黒豆ササゲを加える[1]。このほか、甘納豆を加えたり[4]団子イチゴなどのフルーツを加えたりといったアレンジがなされる[2]。出来上がったら、冷蔵庫にて保管する[5]

この料理のポイントは、麹を加える際のご飯を温度にある。熱過ぎると甘味が出ず、逆に冷まし過ぎると酸味が出てしまう[1]。60℃のに麹を加え、保温時間を2時間とする例もあり、そのあたりは季節によって適度に調節する。30分に1回の頻度でかき混ぜながら、発酵の様子を伺うとよい。うるち米ではなく、もち米を使うと甘味が強まる[5]

脚注 編集

  1. ^ a b c d e 『佐久市志 民俗編 上』463ページ。
  2. ^ a b 農業大学校研修部 (2014年5月20日). “平成24年度 研修日記”. 長野県農業大学校. 2017年11月12日閲覧。
  3. ^ a b c d 斉藤美穂 (2017年1月9日). “信州うわさの調査隊 佐久ではお茶うけにナットウが出るらしい!?”. 信越放送. 2017年11月12日閲覧。
  4. ^ a b 『母から子へ孫へ伝える佐久の味』4ページ。
  5. ^ a b 「おなっとう」の作り方”. こまがた直売所. 2017年11月12日閲覧。

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集

  • 佐久市農村生活マイスターの会のレシピ本「親から子へ 孫へ伝える佐久の味」
  • 中澤弥子, 「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」『日本調理科学会誌』 2016年 49巻 1号 p.93-97, 日本調理科学会, doi:10.11402/cookeryscience.49.93, NAID 130005133218