『朧月夜』(おぼろづきよ)は、叙情歌童謡唱歌文部省唱歌。作詞高野辰之、作曲岡野貞一。 


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    な の は な ば た け __ に い り ひ う す れ
    み わ た す や ま の __ は か す み ふ か し
    は る か ぜ そ よ ふ __ く そ __ ら を み れ ば
    ゆ う づ き か か り __ て に ほ ひ あ わ し
  }
}

歌詞 編集

  1. 菜の花畠に、入日薄れ、
    見わたす山の、霞ふかし。
    春風そよふく、空を見れば、
    夕月かかりて、にほひ淡し。
  2. 里わの火影ほかげも、森の色も、
    田中の小路をたどる人も、
    かわづのなくねも、かねの音も、
    さながら霞める 朧月夜。

楽曲解説 編集

1914年大正3年)『尋常小学唱歌 第六学年用』に初出(ニ長調で記譜)。検定教科書が用いられるようになった1948年昭和23年)から小学校6年生の音楽教科書において採用され、平成以降も取り上げられている[1]

詩は1番2番とも脚韻を踏み、各行4+4+3+3音で構成されている。特に2番の「も」音の繰り返しが音楽的である。初めの2行に視覚的描写を置き、第3行で体性感覚聴覚に言及し、最後の1行で締める起承転結の一種ともなっている。曲はこれに弱起で始まる3拍子のリズムをあてはめている。

作詞の高野辰之長野県豊田村(現在の中野市)に生まれ、隣の飯山市で小学校の教師をしていた時期があった。飯山市や中野市などを含む長野県の北信地方一帯は江戸時代から換金作物の菜種栽培が盛んで、春には一面の菜の花畑が広がっており、その光景を高野が朧月夜のモチーフにしたと想定される。一方、菜の花畑の植物は、セイヨウアブラナや在来のアブラナではなく同じアブラナ科アブラナ属野沢菜であるという説もある。

 
おぼろ月夜の館 斑山文庫(長野県野沢温泉村)

高野は「斑山」(はんざん)をとして用い[2]、晩年は長野県の野沢温泉で過ごした[3]1990年には野沢温泉村に記念館「おぼろ月夜の館 斑山文庫」が創立している[4]

ポップスの歌手では、1986年には矢野顕子がビデオ『BROOCH』で、1998年には槇原敬之カバー・アルバム『Listen To The Music』で、2004年には元の詩にさらに詩を加える形で、中島美嘉マライア・キャリーが録音を発表した。

1989年(平成元年)に「『日本のうた・ふるさとのうた』全国実行委員会」がNHKを通じて全国アンケートにより実施した「あなたが選ぶ日本のうた・ふるさとのうた」で、本曲が第4位を獲得した[5]

2006年(平成18年)に文化庁日本PTA全国協議会が「日本の歌百選」に選定[6]

神奈川県二宮町吾妻山の早咲きの菜の花に因んで、2016年(平成28年)1月9日から、町内にある東日本旅客鉄道(JR東日本)東海道線二宮駅発車メロディとして使用されている。編曲は塩塚博が手掛けた[7]

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ 「大人のための教科書の歌」 70頁。
  2. ^ コトバンク 高野辰之とは(日本大百科全書 ニッポニカの解説)”. 2018年6月4日閲覧。
  3. ^ 高野辰之記念ルーム”. おぼろ月夜の館 斑山文庫. 2018年6月4日閲覧。
  4. ^ コトバンク おぼろ月夜の館 斑山文庫とは(日本の美術館・博物館INDEXの解説)”. 2018年6月4日閲覧。
  5. ^ 「『赤とんぼ』ベスト1に 後世に残す日本のうた」『読売新聞』1989年10月12日付朝刊、30頁。
  6. ^ 日本の歌百選” (PDF). 文化庁. 2024年3月24日閲覧。
  7. ^ 二宮駅の駅メロ「朧(おぼろ)月夜」1/9スタート♪”. ☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆. 塩塚博. 2019年12月21日閲覧。

参考文献 編集

外部リンク 編集