くぎ(Der Nagel, KHM 184)は、『グリム童話』に収録されている作品である。

あらすじ 編集

ある商人が市へ行き、ビジネスに成功し、大金を馬に載せ、日の暮れぬうちに帰宅しようとした。その道中、休憩した町を発とうとすると、乗っていた馬の蹄鉄の釘が取れてしまっていることを指摘される。だが、商人は数マイルくらいなら大丈夫だろうと思い、そのまま放置して旅を続けた。だが馬は足を引きずり、その後すぐによろけだし、最終的には足を骨折してしまった。商人はその馬を放置し、歩いて家まで着いたが、すでに夜になっていた。 急がば回れ。

日本との関わり 編集

「くぎ」はグリム童話のなかで、日本で最初に導入された作品である[1]。1859年に慶應義塾で使われた英語の教科書『Sargent's Standard Third Reader』の一篇として英語訳版が紹介され、同書は1873年に松山棟案によって邦訳された。また、同年に深間内基によって修身の教科書として邦訳された。グリムの原典と『Sargent's Standard Third Reader』版を比較すると、道程を説明する「時間」が「マイル」に変更されるなど、わずかな改変がなされている。

脚注 編集

  1. ^ 野口芳子 大野寿子(編)「明治期におけるグリム童話の翻訳と受容」『グリムへの扉』勉誠出版 2015 ISBN 9784585290933 pp.211-217.