暴力脱獄』(ぼうりょくだつごく、原題:Cool Hand Luke)は、1967年製作のアメリカ映画ポール・ニューマン主演、スチュアート・ローゼンバーグ監督作品。フロリダ刑務所を舞台に、社会のシステムに組み込まれることを拒否する囚人ルーク・ジャクソンの物語。

暴力脱獄
Cool Hand Luke
監督 スチュアート・ローゼンバーグ
脚本 ドン・ピアース英語版
フランク・ピアソン
原作 ドン・ピアース
製作 ゴードン・キャロル英語版
出演者 ポール・ニューマン
ジョージ・ケネディ
J・D・キャノン英語版
音楽 ラロ・シフリン
撮影 コンラッド・L・ホール
編集 サム・オスティーン
配給 アメリカ合衆国の旗 ワーナー・ブラザース=セヴン・アーツ
公開 アメリカ合衆国の旗 1967年11月1日
日本の旗 1968年8月24日
上映時間 126分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
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概要 編集

1965年に発表されたドン・ピアース英語版の同名の小説(原題:Cool Hand Luke)が原作である。映画化にあたり、ピアースは本作品の脚本も担当した。ピアースは過去にフロリダ刑務所に収監された経験があり、その時の体験が作品のモチーフになったとされる。物語の舞台はフロリダだが、映画の大部分はカリフォルニアで撮影されたという[1]

主人公ルーカス・ジャクソンの反体制の姿勢が視聴者の共感を呼び、映画は興行的にも批評的にも成功を収めた。本作品で刑務所の顔役であるドラグラインを演じたジョージ・ケネディは、1967年度のアカデミー助演男優賞を受賞した。主演男優のポール・ニューマンの演技も高く評価されている。2003年アメリカン・フィルム・インスティチュートが選んだアメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100では、ルーク・ジャクソンがヒーロー部門第30位にランクインした。

映画中の登場人物(刑務所長)の台詞であり、本作品の公開時のキャッチコピーにもなった「意思の疎通が欠けてたようだ」(原文:What we've got here is failure to communicate)はアメリカでは非常に有名な文句である。本作品の公開後様々なメディアでこの台詞が引用されている。2005年にはアメリカン・フィルム・インスティチュートによって名台詞ベスト100中第11位に選出された。

2005年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。

ストーリー 編集

戦場で勇敢に戦い多くの勲章を得、一時は軍曹にまで昇進しながら一兵卒として除隊された男ルーク・ジャクソン。彼はある晩酔ってパーキングメーターを損壊した罪で、フロリダの刑務所に2年の刑で収監される。

刑務所でルークを待っていたのは、過酷な労働や体罰で囚人たちを支配しようとする愚かな所長とその部下の看守たちだった。ルークはそこでも権力に屈せず、あくまで反体制の姿勢を貫こうとする。やがてルークは刑務所の顔役ドラグラインを初めとする囚人たちの尊敬を集め、彼らの偶像的存在になっていく。だが、それは同時に刑務所にとってルークが看過できない存在になったのと同じ意味だった。

ルークの母親の死を口実に、彼を懲罰房に閉じ込める所長。しかしそれはルークにとって逆効果だった。ルークは懲罰房から解放されて即座に最初の脱獄を試みるが、すぐに発見され刑務所に連れ戻されてしまう。

捕獲された後、以前を上回る警戒の中再び脱獄したルークだが、それも失敗。彼は苛烈な懲罰に耐え切れず、権力に対して服従してしまう。しかしそれは看守たちを油断させるための見せかけで、三度目の脱獄にはドラグラインも加わった。

そしてルークは逃避行の最中に、夜の教会で神に語りかける。

キャスト 編集

役名 俳優 日本語吹替
NETテレビ
ルーカス・ジャクソン ポール・ニューマン 川合伸旺
ドラグライン ジョージ・ケネディ 富田耕生
刑務所所長 ストローザー・マーティン 大塚周夫
アーレッタ ジョー・ヴァン・フリート 河村久子
カー クリフトン・ジェームズ 島宇志夫
ソサエティ・レッド J・D・キャノン英語版   原田一夫
トランプ ハリー・ディーン・スタントン 納谷六朗
ラウドマウス・スティーブ ロバート・ドリヴァス英語版
ポール ルーク・アスキュー
ババルガッツ デニス・ホッパー
不明
その他
井上真樹夫
加茂喜久
西山連
中田浩二
青野武
仲村秀生
北村弘一
水島晋
村松康雄
藤本譲
千田光男
嶋俊介
笹岡繁蔵
筈見純
井口成人
加藤修
緑川稔
たてかべ和也
野本礼三
油谷佐和子
国坂伸
演出 高桑慎一郎
翻訳 鈴木導
効果
調整
制作 日米通信社
解説 増田貴光
初回放送 1973年9月8日15日
土曜映画劇場

※特別版DVD・Blu-ray収録[2]

音楽 編集

評価 編集

本作は300万ドルの制作費に対して1600万ドルを超える大ヒットとなり、各批評家からも高い評価を受けている。 ロジャー・イーバートなど多くの映画評論家によって作中のキリスト教的な暗喩が指摘されてきた。具体的にはルークの名前とその囚人番号が新約聖書中のルカによる福音書の章節に対応していること、ルークが50個の茹で卵を食べきった後にテーブルの上に十字架に架けられたキリストのように横たわるシーン、夜の教会でルークが神を「親父」と呼び、神が彼を見捨てたかどうか問い掛けるシーンなどである[3]

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ Florida Department of Corrections、“Florida Corrections: Centuries of Progress 1966-1969”。(参照:2009年4月11日)
  2. ^ 再放送短縮版(正味約93分)を収録。
  3. ^ Roger Ebert、“Great Movies - Cool Hand Luke”、2008年7月10日。(参照:2008年11月22日)

外部リンク 編集