はけ
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はけは、「まま」、「はば」、「のげ」等と共に、崖地形、丘陵、山地の片岸を指す日本の地形名、日本の古語、現在の方言であり、その地形を持つ日本の地名の読みである[1]。国分寺崖線や立川崖線など武蔵野台地の崖線を解説する際によく聞かれるほか、地名や道路名などに見ることができ、北海道・東北地方、関東地方にみられる[1]が特に武蔵野地域に多い[2]。地名・町丁名としては、「羽毛」「岾」「坫」「𡋽」「額」「端気」「端下」等を当てる。
概要編集
大岡昇平が1950年(昭和25年)に発表した小説『武蔵野夫人』は、国分寺崖線周辺を舞台とした恋愛小説であり、主人公は「はけの家」に住み、小説の書き出しは「はけ」に関する解説から始まる。「土地の人はなぜそこが『はけ』と呼ばれるかを知らない」[1]。
ハケによって雨水や地下水が隔てられるため、水の多いハケ下では稲作が、水の少ないハケ上では畑作が多く営まれるなど、ハケは生活に大きな影響を与えてきた。ハケ上各所には集落が出来、それらを結ぶ道は「ハケ道」などと呼ばれる。
「はけ」の語は縄文時代に起源をもつ古い言葉であるという[3]説がある。 また、アイヌ語のパケ(端を意味する)を語源とする柳田国男説がある。
なお、「まま」や「のげ」、「岨」あるいは「稜」の字を当てる「はば」や「そわ」「そば」という音韻をもつ地名も、「崖」の字を当てる「ほき」も、崖や絶壁等の険阻な地形を表している[4]。
ハケ道編集
古来、崖線に沿ってハケ上・ハケ下に生活道路が作られることが多かった。一般に「ハケ道」などと呼ばれるが、以下のように固有の名をもったものもある。
- 多摩川のハケ道
- はけの道(東京都小金井市) - この「はけ」は国分寺崖線のことで、崖線下を縫って伸びる道。小金井市により整備が進められてきており、はけの森美術館などがある。
- ハケタ道(東京都府中市、調布市)- 府中市押立町では立川崖線(府中崖線)の崖上に沿う道をハケタ道と呼んでいる[5]。同清水が丘の崖面上には瀧神社があり、その湧水は武蔵国 総社 例祭に古くから使用されてきた(画像参照)[1]。また、調布市にも同様の名称を持つ道がある。立川崖線や府中用水に沿って整備されており、下記の羽毛下通りに続いている。
- 羽毛下通り(はけしたどおり、東京都調布市) - 立川崖線の最東部に位置し、崖下に沿って伸びる道。宅地化が進んでおり崖として残っている箇所は少ないが、場所によっては高さ2~3m程度の擁壁を見ることができる。
- ハケの道 - 我孫子市の湧水が出る場所に位置している。
地名・町丁名編集
以下に「はけ」という語素を含む地名の例を挙げる。実際には必ずしも全ての場所で崖らしい崖が見られるとはかぎらない。
- 埼玉県
- 「岾」「坫」「𡋽」はいずれも稀少地名漢字などと通称されるもので、他で見ることはまずない。
- 群馬県
- 秋田県
- その他の県
脚注編集
- ^ a b c はけ、日本国語大辞典、Yahoo!辞書、2012年9月24日閲覧。
- ^ 山口、139ページ。
- ^ 新読書社『縄文語の発掘』
- ^ デジタル大辞泉『岨』 - コトバンク、2012年9月24日閲覧。
- ^ 府中市立郷土館紀要別冊 府中市内旧名調査報告書「道・坂・塚・川・堰・橋の名前」
- ^ a b c d e f g h 埼玉県 (稀少地名漢字リスト - 検証重視のサイトで、現地レポートや考証資料が充実している。)
- ^ 川額、日本郵便、2012年9月24日閲覧。
- ^ 端気町、日本郵便、2012年9月24日閲覧。
- ^ 川端下、日本郵便、2012年9月24日閲覧。
- ^ 白羽毛、日本郵便、2012年9月24日閲覧。