はしだて (列車)

西日本旅客鉄道・WILLER TRAINSが運行している特別急行列車

はしだては、西日本旅客鉄道(JR西日本)・WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)が、京都駅福知山駅 - 宮津駅天橋立駅久美浜駅間を山陰本線嵯峨野線)・宮福線宮津線(宮豊線)経由で運行する特別急行列車である。一部の列車は快速列車として豊岡駅まで直通する。

はしだて
KTR8000形気動車による「はしだて」
KTR8000形気動車による「はしだて」
概要
日本の旗 日本
種類 特別急行列車
現況 運行中
地域 京都府兵庫県
前身 急行「丹後」
特急「あさしお」「タンゴディスカバリー
運行開始 1996年3月16日
運営者 西日本旅客鉄道(JR西日本)
WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)
運営者 北近畿タンゴ鉄道[注 1]
路線
起点 京都駅福知山駅
終点 宮津駅天橋立駅久美浜駅
営業距離 166.2 km(京都 - 久美浜間)
運行間隔 5往復
列車番号 5080MまたはD+号数
使用路線 JR西日本:山陰本線嵯峨野線
京都丹後鉄道:宮福線宮津線(宮豊線)
車内サービス
クラス グリーン車(電車のみ)・普通車
座席 全車指定席
技術
車両 287系電車(JR西日本福知山電車区
KTR8000形気動車(京都丹後鉄道西舞鶴運転区
軌間 1,067 mm
電化 直流1,500V(京都 - 天橋立間)[注 2]
非電化(天橋立 - 久美浜間)
最高速度 120 km/h(気動車)
130 km/h(電車)
線路所有者 西日本旅客鉄道(京都 - 福知山間)
北近畿タンゴ鉄道(福知山 - 久美浜間)
備考
下り1本・上り2本は久美浜駅 - 豊岡駅間に快速列車として直通
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北近畿ビッグXネットワークを形成する列車の一つである。イメージカラーは赤色)で、走行路線の一つである京都丹後鉄道宮福線沿線に聳え立つ大江山鬼伝説に登場する「赤鬼」にちなんでいる。

概要 編集

京都駅および亀岡駅などの京都府中部の各停車駅と京都府北部の各地域(中丹丹後)を結んでおり、福知山市宮津市などとの連絡を成している。

現在の特急「はしだて」は1996年3月16日に山陰本線園部駅 - 福知山駅間および福知山駅 - 宮津駅 - 天橋立駅間が電化されたことにより気動車列車であった特急「あさしお」と急行丹後」を統合して電車特急化され、183系電車を使用して運転を開始した。基本的に京都駅 - 天橋立駅間で運転されていたが、2011年3月12日のダイヤ改正で「タンゴディスカバリー」の一部が編入され、豊岡方面へも乗り入れるようになった。

列車名の由来 編集

「はしだて」の名称は日本三景の一つで宮津市に所在する砂州天橋立」が由来となっている。この名称は1965年より1968年まで大阪駅 - 天橋立駅間を福知山線・山陰本線・宮津線経由で運行する準急列車に使用されたのが初出とされる。この列車は1966年に急行となり、1968年に急行「丹波(現在のきのさき)」に吸収されている。この列車の運転系統を踏襲している列車として比較的近いものに特急「文殊」「タンゴディスカバリー」が相当する(こうのとり (列車)の項目も参照)。

その後「はしだて」の名は1982年から1992年まで福井駅 - 天橋立駅間を小浜線・宮津線経由で運行する急行に使用されていた(わかさ (列車)を参照)。

運行概況 編集

2022年3月12日現在[1]、京都駅 - 宮津駅間で下り1本(9号)、京都駅 - 天橋立駅間で下り3本・上り2本(1・3・4・6・7号)、京都駅 - 久美浜駅間で下り1本・上り2本(2・5・8号)、福知山駅 - 天橋立駅間で上り1本(10号)の計5往復が運行されている。なお10号は、金・土・日曜日を中心とした指定日には臨時扱いで京都駅まで延長運転する[2]

久美浜駅発着の列車は、久美浜駅 - 豊岡駅間に快速列車として直通運転を行う。また9号は宮津駅到着後、西舞鶴駅まで普通列車として直通する[3]

天橋立駅を始発・終着とする列車は宮津駅および天橋立駅における豊岡駅発着の普通列車との接続を考慮したダイヤが組まれている。また、全列車が途中の福知山駅で大阪方面・城崎温泉方面の特急「こうのとり」と接続しており、乗り継ぎの便宜が図られている。

2022年3月現在、天橋立駅始発の最終の福知山行き(指定日は京都行き)の1本(10号)を除く計9本は、京都駅 - 綾部駅間は東舞鶴駅発着の特急「まいづる」と連結して運転されている。

京都駅 - 福知山駅間で交通系ICカード「ICOCA」が利用できる。

列車番号は「5080+号数」に天橋立駅発着列車はMを、宮津駅・豊岡駅発着列車はDを付ける。久美浜駅 - 豊岡駅間の快速区間は「1680+号数」Dである。

停車駅 編集

京都駅 - 二条駅 - 亀岡駅 - 園部駅 - 綾部駅 - 福知山駅 - 大江駅 - 宮津駅 - 天橋立駅 - 与謝野駅 - 京丹後大宮駅 - 峰山駅 - 網野駅 - 夕日ヶ浦木津温泉駅 - 久美浜駅

  • 宮福線と宮津線にまたがって運転するため、宮津駅でスイッチバックして列車の進行方向が変わる(9号を除く)。
  • 2023年令和5年)10月23日 - 12月10日の土休日には、嵯峨野線混雑緩和の一環として、3・4・6号が嵯峨嵐山駅に臨時停車した[4]2024年(令和6年)3月23日 - 4月7日の土休日にも、2023年秋と同じ列車で臨時停車を実施する[5]
  • 久美浜駅 - 豊岡駅間に直通する列車は、この区間は途中無停車である。
  • 2015年頃までは、海水浴シーズン等に、小天橋駅に豊岡駅発着の1往復が臨時停車していた。

使用車両・編成 編集

天橋立駅発着の3往復にはJR西日本福知山電車区所属の287系電車が、宮津駅・久美浜駅発着の2往復には京都丹後鉄道のKTR8000形気動車が使用されている。

それぞれの車両の編成は以下の通り。2022年3月のダイヤ改正以降は全車指定席となっている。

2022年3月12日現在の編成図
はしだて
← 宮津
天橋立・久美浜/京都 →
287系
1 2 3 4
G
287系
1 2 3 4 5 6 7
G
基本編成 付属編成
KTR8000形
1 2
KTR8000形
1 2 3 4
  • 全車禁煙
  • 繁忙期は7両に増結される場合がある。
  • 287系は2号車、KTR8000形は1号車に車椅子対応座席がある。
  • 編成および座席種別は変更されることがある。
  • 京都駅 - 綾部駅間は5 - 7号車(KTR8000形は5・6号車)が「まいづる」と連結することがある
  • 287系が7両に増結される時は、京都丹後鉄道線内では4両編成で運転する。
  • 宮津駅 - 天橋立駅・久美浜駅間は逆向き
  • KTR8000形が直通する久美浜駅 - 豊岡駅間は快速列車で全車自由席
凡例
G=グリーン車指定席
指=普通車指定席
287系電車
2011年3月より使用。
2021年3月のダイヤ改正より、天橋立駅を発着とする全列車(3往復)に充当されている。通常は4両編成だが、天橋立発京都行きの最終便のみ、「まいづる」との連結を行わないため繁忙期にはモノクラス3両編成を増結した7両編成での運転となる。
なお、その場合でも宮福線・宮津線内の停車駅はホームの長さが4両分しかないため、7両編成で運転される場合、増結した5号車から7号車は京都駅 - 福知山駅間での運転となり、福知山駅で増解結が行われる。
運用開始から2016年3月25日までは「まいづる」を併結する1往復のみの充当であったが、翌日2016年3月26日のダイヤ改正から単独運転の列車にも充当されるようになり、以後2018年3月16日まで電車で運行される全ての列車に充当されていた。その後1往復に289系も加わったが、2021年3月13日からは再び287系のみが「はしだて」で運用されている。
KTR8000形気動車
宮津駅・久美浜駅発着の2往復に充当されている。この車両で運用される列車は、運転開始当初より全列車が京都 - 綾部間で「まいづる」を併結する。通常は2両編成だが、土日祝日や繁忙期を中心に2両編成を増結した4両編成で運転されることがある。

過去の使用車両 編集

183系(2004年 - 2011年)・381系の編成図
はしだて
← 宮津
天橋立/京都 →
183系B編成
1 2 3 4
G
183系A編成+C編成
1 2 3 4 5 6 7
G
A編成 C編成
381系
1 2 3 4
G
  • 全車禁煙
  • 183系B編成および381系は6両編成で運転する場合があった。
凡例
G=グリーン車座席指定席
指=普通車座席指定席
自=普通車自由席
183系電車
2013年3月までは、福知山電車区に所属する183系電車も使用されていた。2003年以降の編成は以下の通りに分類され、2011年からはB編成のみが引き続き使用された。
G編成→B編成
1986年に「北近畿」が運転を開始した際に投入された485系から交流設備を撤去して直流化改造し[6]、183系に編入したものである。当初は普通車のみの編成でグリーン車は連結されていなかったが、直後に先頭車を半室グリーン車(クロハ481形)に改造しており、国鉄分割民営化までに全編成の改造を完了している。なお、通常は4両編成だが、繁忙期は6両に増結されて運転された。
BB編成
特急「雷鳥」に使用されていた485系を183系化した編成。2009年12月1日から2010年3月12日まで使用された。「雷鳥」当時から塗装は変更されておらず、JR西日本の183系では唯一純粋な国鉄色を纏っていた[7]
T編成→A編成・C編成
1996年に「きのさき」「はしだて」「文殊」「たんば」が設定されたことに伴い、追加投入された485系の直流化改造車両。A編成は使用開始当初から全室グリーン車(クロ183形)を連結していた。塗装はJR西日本オリジナルのものが施されていた。287系および381系の投入により運用を終了した[8]
381系電車
特急「くろしお」への287系投入により余剰となった車両を国鉄特急色に塗装変更し転用したもの。天橋立駅発着列車のうち、単独運転の列車に充当された。なお、通常は4両編成だが、繁忙期は6両に増結される場合があった。
289系の投入に伴い、2015年10月30日をもって運用から離脱した。
289系電車
2015年10月31日より使用。特急「しらさぎ」で運用されていた683系電車を、直流専用化のうえ改番して投入された。
2018年3月のダイヤ改正より1往復に充当。通常は4両編成だが、繁忙期にはモノクラス3両編成を増結した7両編成での運転となる。なお、7両編成で運転される場合、増結した5号車から7号車は福知山止まりとなる。
運用開始当初はそれまで充当されていた381系のダイヤをそのまま引き継ぐ形で、天橋立駅発着列車のうち単独運転の2往復に充当されていた。その後2016年3月26日のダイヤ改正で運用から離脱したが、2018年3月17日のダイヤ改正で運用が1往復復活した。その後2021年3月13日のダイヤ改正で再び運用が無くなった。

担当車掌区 編集

沿革 編集

 
左:特急「はしだて」(京都駅 2005年9月)
  • 1996年平成8年)3月16日西日本旅客鉄道(JR西日本)山陰本線の園部駅 - 綾部駅間、北近畿タンゴ鉄道(KTR)の宮福線全線および宮津線の宮津駅 - 天橋立駅間が電化開業し、京都駅 - 天橋立駅間で183系電車による特急「はしだて」が4往復運転開始。
    • 急行「丹後」廃止により、特急「タンゴエクスプローラー」以外の舞鶴線内における代替列車(途中3駅は通過)は、快速「舞鶴リレー号」か、綾部駅 - 西舞鶴駅間を快速として運転する特急「タンゴディスカバリー」(西舞鶴駅で東舞鶴駅までの区間列車と接続)に代替され、それらによって京都 - 舞鶴間の速達輸送を舞鶴線電化までまかなった。
  • 2003年(平成15年)10月1日:「はしだて」のうち下り2本が「まいづる」との連結運転になる。
  • 2007年(平成19年)3月18日:全車禁煙になる[9]
  • 2011年(平成23年)
    • 3月12日:ダイヤ改正により次のように変更[10]
      1. 「タンゴディスカバリー」の一部が編入され、京都駅 - 宮津駅間下り1本、京都駅 - 天橋立駅間3往復、京都駅 - 豊岡駅間下り1本・上り2本、計5往復になる。
      2. 宮津駅・豊岡駅発着列車は「タンゴディスカバリー」時代と同様にKTR8000形で運転。
      3. 天橋立駅発着列車の1往復に287系を投入。
    • 4月2日 - 4月7日東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の影響で車両保守部品が不足したことにより、183系で運転されていた「はしだて」の全列車が4両編成で運転[11][12]
  • 2013年(平成25年)3月16日:ダイヤ改正で、183系が381系に置き換えられ、すべて退役[13]
  • 2015年(平成27年)
  • 2016年(平成28年)
    • 3月26日:ダイヤ改正で289系が当列車の運用から撤退。
  • 2018年(平成30年)
    • 3月17日:ダイヤ改正で289系の運用が復活。
  • 2021年(令和3年)
    • 3月13日:ダイヤ改正で289系の運用が消滅。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、3・7号ならびに4・10号の運転を取りやめる(ただし同年12月1日~2022年(令和4年)1月5日(10号以外は2022年1月31日まで)については運転)。
  • 2022年(令和4年)
    • 3月12日:ダイヤ改正で全車指定席化。新たに10号が週末中心(金曜・土曜・日曜・祝日)として運転する列車となる。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、4号、金曜・土曜・日曜・祝日を中心とする10号の運転を当面の間は取りやめる(天橋立駅-福知山駅間は毎日運転)。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 但し、車両および路線の保有は引き続き行っている。
  2. ^ 但し、一部列車では気動車を使用。

出典 編集

  1. ^ 交通新聞社『JR時刻表』2022年4月号
  2. ^ 宮福線(上り)時刻表 - WILLER TRAINS
  3. ^ 福知山駅時刻表 - WILLER TRAINS
  4. ^ 嵯峨野線 混雑緩和に向けた対応について” (PDF). 西日本旅客鉄道 (2023年9月21日). 2024年3月13日閲覧。
  5. ^ 嵯峨野線 春の混雑緩和に向けた対応について” (PDF). 西日本旅客鉄道 (2024年2月22日). 2024年3月13日閲覧。
  6. ^ 撤去された交流用機器は415系800番台への改造に使われている。
  7. ^ もと“雷鳥”用485系が“北近畿”用183系に - 『鉄道ファン』交友社 railf.jp鉄道ニュース2009年12月15日
  8. ^ 特急“こうのとり”が運転を開始 - 『鉄道ファン交友社 railf.jp鉄道ニュース 2011年3月17日
  9. ^ 平成19年春ダイヤ改正(詳細別紙) (PDF) (2007年3月20日時点のアーカイブ) - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2006年12月22日
  10. ^ 平成23年春ダイヤ改正について (PDF) (2011年1月24日時点のアーカイブ) - 西日本旅客鉄道福知山支社プレスリリース 2010年12月17日
  11. ^ 東北地方太平洋沖地震に伴う車両保守部品の不足による運転計画の見直しについて (PDF) - 西日本旅客鉄道福知山支社プレスリリース 2011年3月25日
  12. ^ 車両保守部品の不足に伴う列車運転計画の見直しについて(2011年4月10日時点のアーカイブ) - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2011年4月6日
  13. ^ 国鉄特急カラーの「183系」来春引退(2013年1月1日時点のアーカイブ) - 読売新聞 2012年12月18日
  14. ^ 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づく鉄道事業再構築実施計画の認定について〔北近畿タンゴ鉄道:宮福線及び宮津線、近畿日本鉄道:内部(うつべ)線及び八王子線〕』(プレスリリース)国土交通省、2015年3月10日https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo05_hh_000062.html2015年4月1日閲覧 
  15. ^ 「くろしお」「こうのとり」「きのさき」「はしだて」へ289系(683系)車両を投入します - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2015年4月28日
  16. ^ 塗装変更された289系が本線で試運転 - 『鉄道ファン』交友社 railf.jp鉄道ニュース 2015年5月28日
  17. ^ 289系車両が10月31日(土曜日)から運転を開始します! - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2015年8月21日

関連項目 編集

外部リンク 編集