ふるさと創生事業

ふるさと創生事業(ふるさとそうせいじぎょう)とは、1988年昭和63年)から1989年平成元年)にかけての日本で、各市区町村に対し地域振興のために1億を交付した政策である。正式名称は自ら考え自ら行う地域づくり事業(みずからかんがえみずからおこなうちいきづくりじぎょう)。1億円を交付したので、ふるさと創生一億円事業とも言われる。

概説編集

昭和から平成にかけてのバブル経済の中で行われた政策事業で、当時の内閣総理大臣竹下登が発案した公共事業である。事業内容は地方交付税から交付団体の市町村一律に交付、その使い道について、日本国政府は関与しないとした。

地方公共団体が自ら主導する地域づくりということで、創意工夫し地域の振興を図る動きが各地で試みられた。このうち「ふるさとづくり特別対策事業」は1978年(昭和53年)度当初から企画されていたものであるが、自治大臣梶山静六が積極的な立場であり、「ふるさと」の名にちなんだ政策にできないかと、注文をつけていたと自治省財政局地方債課の野平匡邦は述べている。

なお、実際は地方交付税の形で支給されたため、地方交付税の不交付団体には支給されなかった。不交付団体は自由に使える財源が既にあるので、新たに交付する必要はない、ということである[1]。また、地方交付税は地方交付税法第3条により、その使い道について条件をつけるのは禁止されているのに「ふるさと創生」のために交付するのは問題なのではという指摘がある[2][3]。このため使い道は自由としていた。

各自治体の使途編集

1億円を受け取った各自治体は、地域の活性化などを目的に観光整備などへ積極的に投資し、経済の活性化を促進した。また、無計画に箱物行政モニュメントの建設・製作に費やしたりと、無駄遣いの典型として揶揄されることも多かった。一方で使い道に困った自治体の中には、基金補助金として活用することを選択するところも多かった。

1990年(平成2年)10月に自治省が行った最終報告では、1自治体当たり平均3.3件の事業を手掛け、このうち人材育成などの「ソフト事業」が建物建設などの「ハード事業」の約2倍余りに上ったという分析が出された[4]。しかしその後、政府(旧・自治省、現・総務省)自らによる、この事業に関する検証(経済効果測定を含む)はなされていない。

担当者の意見編集

これらのことに関して、自治省財政局地方債課の野平は、地域社会計画センターでのヒアリングの際に、仮にを飲んでしまっても、経理の問題にすぎず、悪いことではない、という考えを述べている。そして、地方交付税の使途として単位費用の観点から特定性が無いという観点の下「『何でも使ってください。その代わりいい事業をやったところは評価されるでしょうし、ろくなことをやらなかったところは笑われるでしょうね』という以外には、自治省としては言いようが無い」と自治省の立場からのコメントを寄せて「ただせっかくみんなに1億配っているから『大いに議論して楽しんでください』とお願いしているだけです」と、続けて締めくくっている[5]

初代地方創生大臣を務めた石破茂は、著書『日本列島創生論』の中で、竹下登に無駄遣いではないかと尋ねたところ「石破、それは違うんだわね。これによってその地域の知恵と力がわかるんだわね」と明かされ、実施の理由に関する秘話を紹介している[6]

主な使途編集

北海道編集

 
大理石製で自動演奏ピアノを有するトイレ(伊達市)

東北地方編集

青森県
 
日本一の自由の女神像(旧・百石町、現・おいらせ町)
 
木造駅の巨大な土偶モニュメント(旧木造町・現つがる市)
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
 
UFOの里・福島市飯野UFOふれあい館(旧・飯野町、現・福島市)

関東地方編集

茨城県
 
竜神大吊橋(旧・水府村、現・常陸太田市)
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都

中部地方編集

富山県
 
砺波チューリップ公園の五連揚水水車(砺波市)
石川県
福井県
山梨県
長野県
岐阜県
静岡県
 
気賀関所(旧・細江町、現・浜松市北区)
愛知県
三重県

近畿地方編集

滋賀県
京都府
兵庫県
  • 津名郡津名町(現・淡路市) - 1億円を担保として、三菱マテリアルから金塊をレンタル。当時の相場の1億円分、62.696キログラムを「触れる金塊」として静の里公園内に展示した。2010年(平成22年)5月15日、金相場の高騰に伴い、金塊を三菱マテリアルに返却、淡路市に1億円が返還された。

中国地方編集

鳥取県
島根県
 
購入した雪舟筆『益田兼堯像』(益田市)

四国地方編集

 
大三島の鶴姫公園に立つ鶴姫(左)と越智安成(右)の像[55]
香川県
愛媛県
高知県

九州地方編集

福岡県
 
田主丸駅(旧・田主丸町、現・久留米市)
筑後地方では、教育基金や人材育成の補助金に用いた自治体が多かった[4]
佐賀県
長崎県
  • 西彼杵郡長与町 - 中尾城公園(吉無田郷)のスパイラルスライダーと関連施設の整備資金の一部[56]
大分県
大分県
各市町村で一村一品運動に使用する例が相次いだ。
  • 県内の各市町村 - 県内どこからでも市内電話料金で地場パソコン通信コアラに接続できる通信網「豊の国ネットワーク」を整備[62]
  • 竹田市 - 温泉を掘削したところ、水が湧き出したため「水の駅おづる」として整備[63]
  • 日田郡中津江村(現・日田市) - 純金の雌雄の鯛を製作。雄は2006年(平成18年)に盗難にあったが、雌は2012年(平成24年)に雌雄の購入額を上回る売価で売却[64]
宮崎県
 
たちばな天文台(旧・高崎町、現・都城市)
鹿児島県

沖縄県編集

関連書籍編集

脚注編集

  1. ^ 大蔵大臣村山達雄「不交付団体にはもちろん行かぬわけですが、これはもう不交付団体ですから状況がいいに決まっているわけですね。それでも、やはり自分たちの税収の中で自由に使える金が幾らでもあるわけですから、単独、本来の税収は何にもひもがついていないわけでございますから」(1989年(平成元年)2月15日 衆議院大蔵委員会
  2. ^ 橋本恭之「地方交付税の諸問題」『都市問題』第89巻1号、1998年
  3. ^ 1989年(平成元年)2月15日 衆議院大蔵委員会
  4. ^ a b c d e f g ふるさと創生1億円どう活用? 筑後は基金創設主流 海外研修や文化継承も”. 西日本新聞筑後版 (2019年3月23日). 2019年11月5日閲覧。
  5. ^ 野平匡邦(述)「『ふるさと創生』事業の考え方と具体策について」、地域社会計画センター、1989.3、p.9
  6. ^ “1億円の“バラマキ”が「村営キャバレー」、「謎のモニュメント」に?! “ふるさと創生”を教訓に石破茂氏はこう考える”. デイリー新潮 (新潮社). (2017年4月21日). https://www.dailyshincho.jp/article/2017/04210610/?all=1 2017年10月9日閲覧。 
  7. ^ a b c d e f g h バブル期の狂乱投資、意外にもその後儲かっていた!(2016年10月17日)
  8. ^ a b 『ふるさと銀河線10年のあゆみ』ふるさと銀河線10周年記念事業実行委員会、1999年、P.28
  9. ^ 黄金時代の終焉。( 黒石市の金のこけし売却決定 )
  10. ^ 宮沢賢治学会・会報32号 Archived 2006年5月14日, at the Wayback Machine.
  11. ^ INC., SANKEI DIGITAL (2015年5月22日). “残っていた4千万円 大槌町、竹下政権時のふるさと創生金を復興費用に活用” (日本語). 産経ニュース. https://www.sankei.com/life/news/150522/lif1505220023-n1.html 2018年12月4日閲覧。 
  12. ^ 地方自治政策研究会、1989、『全国地域づくり最新データ』、第一法規
  13. ^ a b 「ホットアイあきた(通巻370号)」1993年5月1日pp.22、秋田県広報協会
  14. ^ 「ホットアイあきた(通巻344号)」1991年3月1日pp.27、秋田県広報協会
  15. ^ 東奥日報 2000年7月8日
  16. ^ 第80回「突風平野 風車よ闘え! 執念がエネルギーを生んだ」2002年2月19日放送
  17. ^ 福島市"福島市古関裕而記念音楽祭" Archived 2016年11月5日, at the Wayback Machine.(2016年11月6日閲覧)
  18. ^ 福島市飯野町の不思議な施設「UFOふれあい館」のラーメンがやたら美味しい
  19. ^ 東京新聞
  20. ^ a b c d e “極上の税金リゾート第2弾 茨城県編”. 報道ステーション (テレビ朝日). (2005年2月16日). http://www.tv-asahi.co.jp/hst/contents/sp_2006/special/050216.html 2015年10月31日閲覧。 
  21. ^ 日版図書館サービス"2007.07.12 - 図書館探訪[リンク切れ]"(2012年7月7日閲覧)
  22. ^ 邑楽町役場企画課『町制施行40周年記念「邑楽町40年のあゆみ」』、2008年5月、10-13ページ
  23. ^ “天声人語”. 朝日新聞 朝刊13版 (朝日新聞社): p. 1. (2017年7月17日) 
  24. ^ 平成の森公園 Archived 2015年10月23日, at the Wayback Machine. - 川島町、2015年11月3日閲覧。
  25. ^ 鶴岡大治"きみさらずタワーとふるさと創生と基準財政需要額"2008年1月15日(2011年9月25日閲覧)
  26. ^ 齋藤弥四郎 『童謡「月の沙漠」と御宿町』 本の泉社、2012年8月17日、154頁。ISBN 978-4-7807-0669-7 
  27. ^ 【大人の遠足】千葉県芝山町 芝山古墳群と埴輪 未発掘地も…新たな発見に期待”. 産経ニュース (2019年7月12日). 2020年6月27日閲覧。
  28. ^ a b c d e f 富山)ふるさと創生1億円の今 自治体により明暗”. 朝日新聞. 2018年9月18日閲覧。
  29. ^ a b c d e f g h i 県公報とやま 1992年5月号(2019年8月7日閲覧)
  30. ^ 『広域営農団地農道整備事業新川地区 新川広域農道事業誌』(1996年3月、富山市発行)132ページより。
  31. ^ 『北日本新聞』2019年7月30日付18面「てくてく風土記 富山市大沢野地域」より。
  32. ^ 丹生郡町村合併協議会—4町村のプロフィール(越前町ホームページ) Archived 2007年12月14日, at the Wayback Machine.
  33. ^ 手づくり郷土賞 - 大門碑林公園”. 国土交通省. 2018年12月4日閲覧。
  34. ^ 由井雅彦「24時間図書館―長野県川上村文化センター図書館の試み―」『LISN』第86号、キハラ株式会社マーケティング部、1996年3月、 11-12頁。
  35. ^ 藤原忠彦『平均年収2500万円の農村―いかに寒村が豊かに生まれ変わったか―』ソリック〈ソリックブックス〉、2009年1月14日、107頁。ISBN 978-4-904528006
  36. ^ 丸山信『長野県の図書館』三一書房〈県別図書館案内シリーズ〉、1998年3月31日、256頁。ISBN 4-380-98223-8
  37. ^ 兼山小学校沿革史
  38. ^ みわ, 明「姫街道」『県別全国古街道事典‐東日本編』平文社、2003年、179-180頁。ISBN 4490106300
  39. ^ 広報がまごおり平成2年12月1日号5頁 大型画面の看板で私たちのまちをPR”. 蒲郡市 (1990年12月1日). 2019年5月5日閲覧。
  40. ^ 広報がまごおり平成2年12月15日号5頁 平成2年をふり返って”. 蒲郡市 (1990年12月15日). 2019年5月5日閲覧。
  41. ^ “平成初めに植えたモミジ、平成最後の今見頃 豊田に街道:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. (2018年11月18日). https://www.asahi.com/articles/ASLC75X2KLC7OBJB00D.html 2018年12月4日閲覧。 
  42. ^ 津市政策財務部広報室"津市 - 広報室-つのゆうめいにびっくり Archived 2011年8月8日, at the Wayback Machine."(2011年12月12日閲覧)
  43. ^ 長岡敏彦"えっ ホント!? Archived 2016年3月4日, at the Wayback Machine."(2011年12月12日閲覧)
  44. ^ 川口保"現在の御城番屋敷"(2011年12月12日閲覧)
  45. ^ 尾鷲市役所"尾鷲市の歩み|尾鷲市役所[リンク切れ]"(2011年4月7日閲覧)
  46. ^ 鳥羽市史編さん室『鳥羽市史 下巻』平成三年三月二十五日、鳥羽市役所、1,347pp.(472ページより)
  47. ^ 協議会・検討会”. 木曽川下流河川事務所 (2011年3月31日). 2011年12月7日閲覧。[リンク切れ]
  48. ^ 松阪市環境部環境課環境推進係"第7回松阪市環境基本計画策定委員会 - 松阪市[リンク切れ]"平成18年4月27日(2011年12月12日閲覧)
  49. ^ 志摩町史編纂委員会『志摩町史 改訂版』志摩町、平成16年9月1日、1,164pp.(656ページより)
  50. ^ 三重県生活・文化部文化振興室"三重県内の博物館・資料館/種まき権兵衛の里[リンク切れ]"(2011年12月12日閲覧)
  51. ^ 地域内発型産業の確立による地域経済の自立促進(総務省)[リンク切れ]
  52. ^ 「ふるさと創生」プラネタリム廃館 京都・木津川京都新聞。2017年11月25日。
  53. ^ ふるさと創生、夢の1億円の行方【3】新名所誕生神戸新聞。2018-01-04。
  54. ^ 朝日新聞2004年6月9日
  55. ^ 鶴姫公園 いよ観ネット - 愛媛県観光物産協会、2021年5月4日閲覧。
  56. ^ a b 「どうするの、これ」 2.8億円の滑り台、町の重荷に”. 朝日新聞 (2019年5月27日). 2019年5月28日閲覧。
  57. ^ 新田舎人フォーラム
  58. ^ 日本経済新聞 (1990年3月14日). “町のシンボル作りブーム、モニュメント注文殺到、高岡銅器業界フル稼働”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社): p. 8 
  59. ^ (もっと知りたい!)1億円「金塊」運命いかに 盗難、「身売り」…救世主も”. 朝日新聞社 (2007年9月17日). 2013年9月20日閲覧。
  60. ^ 過疎地での福祉のまちづくり−星野村レポート Archived 2007年10月15日, at the Wayback Machine.
  61. ^ a b 《検証》ふるさと創生「1億円」 - 1億円の主な活用法 - 佐賀新聞、2006年3月25日、2015年11月3日閲覧。
  62. ^ 情報先進県「大分」とニューCOARA 10 ふるさと創生資金で作ったネットワーク Archived 2004年8月15日, at the Wayback Machine.
  63. ^ 大分エリアレポート 名水を訪ねて 九州旅ネット
  64. ^ 大分・日田市:盗難逃れた純金鯛の雌、高値で売却[リンク切れ] 毎日新聞、2012年11月27日
  65. ^ “「ふるさと創生事業」交付金(1億円)使途に関するテレビ放送について | 【公式】2018 吹上浜 砂の祭典 in 南さつま” (日本語). 【公式】2018 吹上浜 砂の祭典 in 南さつま. http://www.sand-minamisatsuma.jp/topics/news/20140918-001322.html 2018年4月15日閲覧。 

外部リンク編集