アイリスオーヤマ

日本の宮城県仙台市にある生活用品・家電メーカー

アイリスオーヤマ株式会社: IRIS OHYAMA Inc.)は、宮城県仙台市青葉区に本社をおく、生活用品の企画、製造、販売会社である。2000年代からは家電事業に力を入れ、2012年からは他の大手家電メーカーで早期退職した技術者を大量に採用し同事業を加速させた。

アイリスオーヤマ株式会社
IRIS OHYAMA Inc.
アイリスオーヤマ本社
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本の旗 日本
980-8510
宮城県仙台市青葉区五橋二丁目12番1号
設立 1971年(昭和46年)4月14日
大山ブロー工業株式会社)(創業:1958年昭和33年)4月)
業種 その他製品
法人番号 3370001006799 ウィキデータを編集
事業内容 生活用品の企画、製造、販売
代表者 大山健太郎代表取締役会長
大山晃弘(代表取締役社長)
資本金 1億円
売上高 グループ合計:8,100億円
単体:2,494億円
(2021年12月期)[1]
経常利益 グループ合計:515億円
単体:284億円
(2021年12月期)[1]
従業員数 5,379人
(2022年1月現在)[2]
決算期 12月末
会計監査人 有限責任監査法人トーマツ[3]
主要株主 オーヤマ 61.7%
大山健太郎 27.9%
主要子会社 #関連会社参照
関係する人物 大山森佑(創業者)
外部リンク www.irisohyama.co.jp ウィキデータを編集
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会社概要 編集

大阪府布施市(現:東大阪市)で大山森佑が創業したプラスチック加工の町工場である大山ブロー工業所を[4][5]1964年に森佑の急逝に伴い息子の大山健太郎[注 1]が19歳で引き継ぐ。1971年法人化して大山ブロー工業株式会社へ改組。その後1972年に宮城県南部に新設した仙台工場(現:大河原工場)を主力工場とし、発祥の地である東大阪の工場を閉鎖[6]1989年に本拠地を政令指定都市移行間もない仙台市へ移転し、1991年に現社名へ改称する。

家庭用プラスチック業界における国内最大手で利益率は極めて高いが、現在でも大企業(大規模法人)ではなく中小企業(中小企業者)である[注 2]。家庭用プラスチック製クリア収納ケースの販売数量が爆発的に伸び会社が大きく成長し、現在は家電製品を主にLED照明や収納、インテリア用品、園芸用品、ペット用品、日用品、資材、食品などを取り扱う。ホームセンターなどに様々な製品を納入するほか、ネット通販企業にも商品を納入する[7]。毎年1000点の新商品やモデルチェンジ品を生み出す[5]日本国内14社、中国9社、アメリカ1社、ヨーロッパ2社、韓国1社、ベトナム1社、台湾1社、タイ1社のグループ企業がある。

2012年、家電部門を拡大して東芝シャープパナソニックなど一般に大手家電メーカーと呼ばれる企業で早期退職した優秀な技術者を大量に採用。自社の持つアイデアと彼らの持つノウハウをミックスしようと考えた。例えば、シャープでエアコンのエキスパートだった元社員はスマホを使って誰でも簡単に遠隔操作できるエアコンを開発、ヒットさせた。他製品でも同性能なら大手他社の半値程度で売り出し、シェアを拡大させた。毎週「新商品開発会議」が催され、その場で様々なアイデアが出されるが、アイデアと同等に重要な判断基準は価格であり、客が値ごろと感じる価格にできるかが、製品化の絶対条件となっている[8]

仙台市に本拠を構えるプロスポーツチームと結び付きが強く、2004年よりベガルタ仙台のメインユニフォームスポンサーとしてユニフォーム胸部分[注 3]に、2008年からは東北楽天ゴールデンイーグルスのメインスポンサーとしてユニフォーム左胸部分に、それぞれ企業ロゴを刺繍させている。また、仙台フィルハーモニー管弦楽団も支援している。

2012年8月に旧仙台三和ビルディングを全面リニューアルしたアイリス青葉ビルが開業し、5階から8階のオフィスフロアにグループ会社オーヤマの事務所、地下1階にアイリス製品を展示するアンテナショップが2017年2月よりオープンしている。

新商品開発 編集

アイリスオーヤマは、新商品(発売から3年以内の商品)の割合を全商品の売り上げの5割以上とすることを目標に掲げている[9]。2021年12月時点では新商品の割合は6割以上であり、目標を達成している[10]

年間1000点以上の新商品を毎年開発、発売していることになるが、企画から新商品発売までの速さは他社の2倍の速さになるとアイリスオーヤマの常務取締役研究開発本部長は語っている[11]。社長を始め、経営陣、各部署の関係者約50人を前に新商品企画のプレゼンテーションを行う「新商品開発会議」が週に1回開催され、企画の可否が決定される[11]。また、「伴走方式」と呼ばれる商品開発、知的財産、応用研究、品質管理、生産技術といった通常なら順に行われる各部署の作業が同時並行で行われることも、新商品発売までの期間を短くすることに貢献している[11]

2013年、家電事業強化に伴い関西を拠点にしている大手電機メーカー元技術者の雇用目的で心斎橋に大阪R&Dセンターを設立する[12]

2018年11月、大阪R&Dセンターに続き、関東を拠点にしている大手電機メーカー元技術者の雇用を目的として港区浜松町に東京アンテナオフィスを設立する[13]

2021年8月、事業拡大に伴う商品数の増加に対応するため、大田区南蒲田に東京R&Dセンターを設立する[14]

照明器具も扱っているが、元社名が「オーヤマ照明」と名乗っていた「オーデリック」とは資本関係はない。

沿革 編集

  • 1958年4月 - 大山森佑が大阪府布施市(現:東大阪市)で大山ブロー工業所を創業する。
  • 1964年7月 - 大山健太郎が代表者に就任する。
  • 1966年 - オリジナル商品の第一号である養殖用ブイを発売する。
  • 1970年 - 育苗箱を発売する。
  • 1971年4月14日 - 大阪府東大阪市長栄寺一丁目28番地に大山ブロー工業株式会社を資本金300万円で設立する。
  • 1981年1月 - ガーデニング用品を発売する。
  • 1986年4月 - 株式会社オーヤマ設立
  • 1987年1月 - ペット用品を発売する。
  • 1988年1月 - 収納用品やオーダーカーテンを発売する。
  • 1989年
    • 2月 - 日用品を発売する。
    • 10月 - 事務用品を発売する。
    • 12月16日 - 本社を大阪府東大阪市長栄寺17番24号から仙台市青葉区五橋一丁目1番17号に移転する。
  • 1991年9月 - 商号をアイリスオーヤマ株式会社に変更する。
  • 1992年3月 - 角田I.T.Pが完成する。
  • 1993年3月 - 本社新社屋が完成する。
  • 2001年9月 - 経営破綻した老舗家具メーカーであるチトセ株式会社が営業譲渡され、後に「アイリスチトセ株式会社」とする[15]
  • 2005年9月 - シャープと共同開発したペットと暮らす家庭向け空気清浄機を発売[注 4]する。
  • 2006年3月 - 新日鐵(現・日本製鉄)グループであるニッテツ・ファイン・プロダクツ株式会社(本社:岩手県釜石市)のカイロ及び脱酸素剤事業営業権を譲受し、アイリス・ファインプロダクツ株式会社として使い捨てカイロ事業を開始する[注 5]
  • 2007年
    • 1月 - マスク事業を開始する。
    • 10月 - シンヨー化成株式会社を子会社にする。
  • 2008年
    • 2月 - ソーコー株式会社の全事業[注 6]営業権を譲受し、4月にアイリスソーコー株式会社として事業を開始する
    • 12月 - グループ会社の株式会社オーヤマが、宮城県でホームセンターダイシン」を運営する株式会社ダイシンを完全子会社化[16]し、後に宮城野区へ本社を移して2009年7月にアイリスプラザが吸収合併して同社ダイシンカンパニーとしている。
  • 2009年8月 - LED電球「ECOLUX(エコルクス)」を発売し、LED照明事業を開始する。
  • 2010年
    • 5月 - 家具製造メーカーホウトクに対するTOBが成立したと発表して翌月に完全子会社化する。
    • 11月 - LED電球「ECOLUX」に業界初のプラスチックボディタイプを追加発売する。
  • 2011年10月 - 当社鳥栖工場に隣接するパナソニック ファクトリーソリューションズ鳥栖事業所跡を取得し、LED照明と家電製品の自社初国内生産拠点の鳥栖第二工場として2012年1月に稼働する。
  • 2012年
    • 8月 - 仙台三和ビルディングを改装して「アイリス青葉ビル」を開業する。
    • 11月 -
      • LEDシーリングライト 高効率タイプの発売を機にLED照明のブランド名を「ECOHiLUX(エコハイルクス)」に変更する。
      • 業界初の据置型の2口IHクッキングヒーターを発売する。
  • 2013年
    • 4月 - 株式会社舞台ファームと共同出資で、精米事業会社アグリイノベーション株式会社を設立する。
    • 5月 - 大阪R&Dセンター開設
    • 11月 - アイリスフーズ株式会社設立
  • 2014年4月
    • 関連会社アイリスプラザが、ホームセンター「ユニディ」を運営する株式会社ユニリビングの株式を三井不動産から取得して子会社[17]とする。
    • 株式会社ユニリビング グループ会社化
  • 2016年
    • 2月8日 - 充電式スティッククリーナーIC-S7L、KIC-S7Lシリーズの電池カートリッジの無償交換を発表。理由は「発火の恐れがあるため」とし[18]、現在3件の発火を確認したという[19]
    • 3月31日 - 電子部品大手であるロームの照明事業を買収する契約を締結[20]
    • 5月 - IRIS USA, INC.アリゾナ工場 竣工
  • 2017年
  • 2018年
    • 7月 - 大山晃弘が代表取締役社長に就任
    • 11月 - 東京アンテナオフィス稼働
    • 11月 - IRIS OHYAMA VIETNAM CO.,LTD. 設立

工場・支店・営業所 編集

関連会社 編集

  • 株式会社オーヤマ(本社:仙台市青葉区) - 親会社。貿易業
  • アイリスチトセ株式会社(本社:仙台市青葉区) - 事務用機器等の製造・販売
  • アイリス・ファインプロダクツ株式会社(本社:仙台市青葉区) - 使い捨てカイロ脱酸素剤の製造・販売
  • アイリスシンヨー株式会社(本社:仙台市青葉区) - プラスティック板の製造
  • アイリスソーコー株式会社(本社:仙台市青葉区) - ゴルフ練習用品の製造・販売
  • 株式会社ホウトク(本社:愛知県小牧市) - 家具の製造
  • アイリスフーズ(本社:仙台市青葉区) - 食品部門を分社して2013年設立
  • 株式会社アイリスプラザ(本社:仙台市青葉区) - 通信販売サイト「アイリスプラザ」の運営
    • ダイシンカンパニー(本部:仙台市宮城野区) - ホームセンター「ダイシン」を運営。2009年7月に株式会社ダイシンを吸収合併し、社内カンパニーを新設。
    • ユニディカンパニー(本部:千葉県松戸市)- ホームセンター「ユニディ」を運営。

スポンサー番組 編集

スポンサーは、原則として全国ネット番組のみであり、宮城県ローカル番組のレギュラー提供番組は無い。大阪発祥の企業であるため、大阪製作の番組のスポンサーになることが多い。かつては「JCBクラシック仙台」(6月第1週の日曜日放送)の最終日の番組提供も行っていたが、仙台放送フジテレビ系列全国ネットであり、ローカル番組の提供は今のところ無い(2006年は6月4日16時5分 - 17時40分まで放送)。 2006年8月は、自社製シュレッダーによる幼児の指切断事故[24]のため提供クレジットを自粛し、お詫び及び交換を促すCMに差し替えられていたが、同年9月より通常のTVCM放映を再開している。

現在 編集

過去 編集

CM出演者 編集

現在 編集

  • 吉沢亮 - CMプランナー・要 正直(かなめ しょうじき)役、低温製法米のおいしいごはん、家電シリーズ
  • 生見愛瑠 - 美フィットマスク
  • 天野はな - 同じく吉沢と共演。家電シリーズ
  • 吉川友 - 音声操作シーリングライト「魔法のことば」篇[25]
  • 堀田真由 - 美容家電「MiCOLA」

過去 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 大山健太郎は在日韓国人3世にあたり、在日であることを昔からオープンにしている。2003年に日本国籍を取得している。本人曰く、表面的には在日であることを理由に差別を受けたことはないという。 前掲梅沢(2013)より
  2. ^ 製造企業の場合、資本金額3億円以下、または社員数300人以下の企業が中小企業と定義される(中小企業基本法第二条)。
  3. ^ 前年までは背中部分
  4. ^ 2006年10月にペットと暮らす家庭向け加湿空気清浄機を発売。
  5. ^ 2007年10月に脱酸素剤事業営業権も同社が事業譲受する。
  6. ^ 人工芝の製造販売、ゴルフ練習場の設計施工など土木工事業、プラスチック家庭用品製造販売等。

出典 編集

  1. ^ a b アイリスグループ 2021年度決算速報
  2. ^ 会社概要
  3. ^ 業務及び財産の状況に関する説明書類
  4. ^ 『失敗するから人生だ。』 P123
  5. ^ a b “ダイヤモンド・オンライン 今月の主筆 第1回 アイリスオーヤマ社長 大山健太郎 毎年1000点の新商品は「生活者の困った」から生まれる”. ダイヤモンドオンライン. (2016年4月4日). http://diamond.jp/articles/-/88894 2016年5月8日閲覧。 
  6. ^ “ダイヤモンド・オンライン 今月の主筆 第2回 アイリスオーヤマ社長 大山健太郎 どんな時代でも利益を出し続ける経営の仕組み”. ダイヤモンドオンライン. (2016年4月11日). http://diamond.jp/articles/-/89353?page=2 2016年5月8日閲覧。 
  7. ^ “アイリスオーヤマ、米国工場6カ所に倍増 アマゾン向け拡大”. 日本経済新聞. (2015年9月15日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ14IC5_U5A910C1TI1000/ 2016年5月8日閲覧。 
  8. ^ MAG2NEWSリストラ技術者を大量採用し大成功。アイリスオーヤマ変貌の秘密”. 2018年12月28日閲覧。
  9. ^ 庄司容子 (2017年5月25日). “アイリスオーヤマ、家電で「なるほど」の源泉”. 日経BP. 2017年8月23日閲覧。
  10. ^ IRIS GROUP PROFILE 2021|アイリスオーヤマ
  11. ^ a b c 村上万純 (2015年4月23日). “角田工場探訪記:「アイリスオーヤマ」が年間1000点もの新商品を生み出せる理由 (1/2)”. ITmedia. 2017年8月23日閲覧。
  12. ^ 立ち上がれ家電戦士。大阪R&Dセンターの設立|アイリス物語 第三十話|アイリスオーヤマ
  13. ^ フレキシブルオフィスで生産性と創造性を高めた「TOKYO ANTENNA OFFICE」|アイリスオーヤマ
  14. ^ 研究開発の人材採用を強化 「アイリスオーヤマ東京R&Dセンター」2024年までに120名の採用を決定|ニュース|企業情報|アイリスオーヤマ
  15. ^ “ダイヤモンド・オンライン 今月の主筆 第3回 アイリスオーヤマ社長 大山健太郎 「働く社員にとって良い会社」とは「社員を正しく評価する会社」だ”. ダイヤモンドオンライン. (2016年4月18日). http://diamond.jp/articles/-/89749?page=3 2016年5月8日閲覧。 
  16. ^ アイリスがダイシン買収 経営再建へ子会社化”. 河北新報社 (2008年12月2日). 2008年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月5日閲覧。
  17. ^ アイリスオーヤマ/三井不動産からホームセンターのユニディを買収”. 流通ニュース (2014年4月2日). 2014年5月5日閲覧。
  18. ^ “アイリスオーヤマ製『充電式スティッククリーナーIC-S7L、KIC-S7L』電池カートリッジ交換のお知らせ”. アイリスオーヤマ. (2016年2月8日). http://www.irisohyama.co.jp/safetyinfo/stickcleaner.html 2016年2月8日閲覧。 
  19. ^ “充電式掃除機の電池発火の恐れ アイリスオーヤマが2万7千個交換”. 産経ニュース. (2016年2月8日). http://www.sankei.com/economy/news/160208/ecn1602080013-n1.html 2016年2月8日閲覧。 
  20. ^ “アイリスオーヤマ、M&AでLED売上高400億円へ 16年度”. 日本経済新聞. (2016年4月1日). http://www.nikkei.com/article/DGXLZO99115450R30C16A3L01000/ 2016年5月8日閲覧。 
  21. ^ “<アイリス>中国3カ所目新工場 来夏稼動”. 河北新報. (2016年6月2日). オリジナルの2016年6月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160602120908/http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201606/20160602_12008.html 2016年6月9日閲覧。 
  22. ^ “なぜいま韓国へ進出? “売上好調”「アイリスオーヤマ」の戦略を現地取材”. Fuji News Network. (2019年6月7日). https://www.fnn.jp/articles/-/3998 2019年6月7日閲覧。 
  23. ^ 東北の製造業、工場復旧急ぐ 日本製紙、IHI、トヨタ東日本… アイリスは出荷再開”. 河北新報 (2022年3月21日). 2022年3月26日閲覧。
  24. ^ シュレッダーによる指切断事故相次ぐ ウィキニュース・2006年8月24日
  25. ^ アイリスオーヤマ テレビCM出演中!”. universal-music.co.jp. 2021年3月1日閲覧。

関連項目 編集

参考文献 編集

  • 梅沢正邦『失敗するから人生だ。』東洋経済新報社、2013年。ISBN 4492557342 

外部リンク 編集