メインメニューを開く

アイ・アム・ザ・ウォルラス」(I Am the Walrus)は、1967年11月にビートルズが発表した16枚目のオリジナル・シングルハロー・グッドバイ」のB面曲である。

アイ・アム・ザ・ウォルラス
ビートルズ楽曲
リリース イギリスの旗 1967年12月8日(EP)
アメリカ合衆国の旗 1967年11月27日(LP)
日本の旗 1968年3月10日(EP)
録音 アビー・ロード・スタジオ
1966年11月24日1966年12月21日
ジャンル サイケデリック・ロック
時間 4分36秒
レーベル パーロフォン(イギリス)
キャピトル・レコード(アメリカ)
オデオン(日本)
作詞者 レノン=マッカートニー
作曲者 レノン=マッカートニー
プロデュース ジョージ・マーティン

ビートルズシングル盤 U.K.U.S. 年表
愛こそはすべて
b/w
ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン
(1967年)
ハロー・グッドバイ
b/w
アイ・アム・ザ・ウォルラス
(1967年)
レディ・マドンナ
b/w
ジ・インナー・ライト
(1968年)
ビートルズシングル盤 日本 年表
愛こそはすべて
b/w
ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン
(1967年)
ハロー・グッドバイ
b/w
アイ・アム・ザ・ウォルラス
(1968年)
レディ・マドンナ
b/w
ジ・インナー・ライト
(1968年)
マジカル・ミステリー・ツアー 収録曲
A面
  1. マジカル・ミステリー・ツアー
  2. ユア・マザー・シュッド・ノウ
B面
  1. アイ・アム・ザ・ウォルラス
C面
  1. フール・オン・ザ・ヒル
  2. フライング
D面
  1. ブルー・ジェイ・ウェイ
マジカル・ミステリー・ツアー 収録曲
A面
  1. マジカル・ミステリー・ツアー
  2. フール・オン・ザ・ヒル
  3. フライング
  4. ブルー・ジェイ・ウェイ
  5. ユア・マザー・シュッド・ノウ
  6. アイ・アム・ザ・ウォルラス
B面
  1. ハロー・グッドバイ
  2. ストロベリー・フィールズ・フォーエバー
  3. ペニー・レイン
  4. ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン
  5. 愛こそはすべて

解説編集

レノン=マッカートニーの作品。実質的にはレノンの作った楽曲である。リード・ヴォーカルはジョン・レノン。ビートルズの曲の中でも特にサイケデリック色の強いナンバー。発表当時、音楽関係者に大きな影響を与えた楽曲でもある。なお、EP『マジカル・ミステリー・ツアー』のブックレットには"No you're NOT!" Said Little Nicolaというサブタイトルがつけられている[注釈 1]

同年12月に公開されたテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』に演奏シーンが収められ、同名サウンド・トラックEP盤(英国)、LPアルバム(米国)に収録。現在ではアメリカ盤に倣った編集アルバムCDに収録されている。映画ではビートルズのメンバーがサイケデリックな格好をしたり、セイウチの着ぐるみを着て演奏するシーンで使われている。

サイレン風のイントロはジョンのエレクトリックピアノジョージ・マーティン編曲のオーケストレーションコーラスBBCのラジオ放送音声などのSE(効果音)が加えられ、サイケデリックなアレンジが施されている。

ナンセンスな言葉遊びとも思える難解な歌詞も特徴である。タイトルのウォルラス(セイウチ)はルイス・キャロル作の物語『鏡の国のアリス』の「セイウチと大工」からとられたものである[1]。楽曲制作時、ジョンはセイウチが善人と勘違いしており、後にセイウチの方が悪人だと知り[2]、後のインタビューで「「セイウチ」じゃなくて「大工」になるべきだった。'I Am The Carpenter'(俺は大工)でもそんなに違和感はないだろう?」と語っている[3][4]

歌詞の"Goo Goo Goo Joob"(または"Goo Goo g' Joob")は"Good Job"とセイウチの鳴き声をかけたものと言われている。グロテスクな"Yellow matter custard..."からのくだりは、

Yellow matter custard, green slop pie,
All mixed together with a dead dog's eye,
Slap it on a butty, ten foot thick,
Then wash it all down with a cup of cold sick.[5]

という、過去に作った歌詞からの引用であるとジョンの友人であるピート・ショットンは語っている。また、歌詞には、本作と同じく1967年に発表された「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」について言及されている。なお、「You've been a naughty girl, you've let your knickers down(まったくきみはいけない娘だね。すぐにニッカーズを下ろしちゃって。)」というフレーズが問題視され、BBCでは放送禁止となった[6][7]

後半部分のリズムについては宮城県民謡「斎太郎節」との共通点が指摘されている。ちなみにジョンはビートルズ日本公演で来日した際に東京ヒルトンホテルの10階のスイートルームに運び込まれたステレオセットで日本の民謡のアルバムを熱心に聞いており、その中でも“スゴくリズムがおもしろい”と言ってたのが「斎太郎節」だった[8]

アルバム『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』の収録曲「グラス・オニオン」には"The walrus was Paul"との一節があり、これは詞の内容を勝手に解釈するファンへの皮肉とも言われる[9][注釈 2]。またビートルズ解散直後の1970年のジョンのソロ曲「ゴッド(God)」では"I was the Walrus But now I'm John"と歌われ、ウォルラスにビートルズ時代の自分をなぞらえている。

後年ポールは、自伝『メニー・イヤーズ・フロム・ナウ』の中で、この曲をジョンの最高傑作の一つと称賛している。

レコーディング編集

この曲のレコーディングは、1967年8月27日のマネージャーであるブライアン・エプスタイン逝去後初のレコーディング作業となった。

1967年9月5日EMI第2スタジオでレコーディングが開始され、ジョンがエレクトリックピアノジョージ・ハリスンギターリンゴ・スタードラムスという編成で16テイク録音された。この日に録音された第16テイクが、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』に収録されている。翌日、第16テイクをリダクションし、ポール・マッカートニーによるベース、リンゴのドラム、ジョンのリード・ボーカルがオーバー・ダビングされた。

9月27日にEMI第1スタジオにて、ヴァイオリンチェロホルンクラリネットをはじめとしたオーケストラの演奏が加えられた。アレンジはジョージ・マーティンが担当。なお、ポールはオーケストレーションについて多少アイデアを提出したとされている。翌日には、マイク・サムスを中心とした16人の合唱団がレコーディングに参加し、"Ho-ho-ho, hee-hee-hee, ha-ha-ha", "oompah, oompah, stick it up your jumper!", "everybody's got one"というコーラスが録音された[10]

「リア王」のラジオ音源編集

曲の中間ほどから聞こえる朗読は、シェイクスピア著の「リア王」(第4幕、シーン6)の219行目から222行目と249行目から262行目の部分である[11]1967年9月29日[12]にジョンがAMラジオのダイヤルを回し、この日の午後7時30から午後11時にかけて[13]BBCラジオ3で放送された「リア王」を朗読する声を加えた[14]

219行目から222行目より、曲に使用された節が以下の部分になる[11]

Gloucester: (2:35) Now, good sir, wh— (ここでジョンは一度別のチャンネルにダイヤルを回している)[11]
Edgar: (2:38) — poor man, made tame by fortune — (2:44) good pity —

曲のエンディング部分で、249行目から262行目が引用された[11][15]

Oswald: (3:52) Slave, thou hast slain me. Villain, take my purse.
If ever thou wilt thrive, (4:02) bury my body,
And give the (4:05) letters which thou find'st about me
To (4:08) Edmund, Earl of Gloucester; (4:10) seek him out
Upon the British party. O, (4:14) untimely Death!
Edgar: (4:23) I know thee well: a (4:25) serviceable villain;
As duteous to the (4:27) vices of thy mistress
As badness would desire.
Gloucester: What, is he dead?
Edgar: (4:31) Sit you down father, rest you.

なお、ラジオ放送は、マーク・ディグナム英語版(グロスター伯)、フィリップ・ガード英語版(エドガー)、ジョン・ブライニング(オズワルド)によって朗読された[12]

ステレオ・ヴァージョン編集

「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のリアル・ステレオ・ヴァージョンは1967年12月にリリースされた2枚組EP『マジカル・ミステリー・ツアー』ステレオ盤に収録された。CDでは1987年8月にリリースされたアルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』に収録された。

ただし、これらのステレオ・ヴァージョンは後述の通り後半部分は疑似ステレオであり、90年代まで完全なステレオ・ミックスは制作されなかった。

ミキシング編集

モノラル・ミックスと2種類のステレオ・ミックスが作られ、ミキシングによる差異がある。顕著な差異はイントロのリフがステレオは6回、モノラルは4回繰り返される[注釈 3]。1:20秒付近の"I'm crying"と歌われる個所で、モノラルではドラム、タンバリンがカットされ、英国(CD)ステレオではカットされていない。米国・西ドイツ等のステレオ版はオーヴァーダビングされたスネアドラムのみ残る。また1分35秒付近の"I'm crying"と"yellow matter custard"の間が1小節長いヴァージョンも存在する(米国モノラル・シングル)。後、米キャピトルにより英国ステレオ・ミックスと米国モノラル・ヴァージョンが組み合わさった新しいミックスが作られ、アメリカ編集盤『レアリティーズ vol.2』に収録された。

なお、モノラルのミキシングを行った際にその場で流れていたBBCのラジオ音声をマルチトラック・テープではなく、モノラル・マスターにオーバー・ダビングしたために、ステレオ・ミックスの"Sitting in an English garden"という歌詞から先の部分はモノラル・ミックスを疑似ステレオ化されている[16][注釈 4]。ただし4分04秒あたりから定位が左に寄り、4分13秒あたりから右に移る。こうした点から単純な疑似ステレオとは言い難い。

映画『マジカル・ミステリー・ツアー』のビデオ・ソフト化では後半パートがモノラル化されている。

ビートルズのマッシュアップ作品として2006年11月に発売された『LOVE』では、後半部分も完全なステレオとしてリミックスされている[注釈 5]

参加ミュージシャン編集

カヴァー編集

収録シングル/アルバム編集

脚注編集

注釈編集

[ヘルプ]
  1. ^ ただし正式なタイトルにはこのサブタイトルはつかない
  2. ^ 1987年にジョージが発表した「FAB」のミュージック・ビデオには、これをネタにしたと思われるベースを弾く左利きのウォルラス(セイウチ)が登場する
  3. ^ 米国盤に収録のステレオ・バージョンはこの部分が4回に編集されている
  4. ^ ジョン・レノンは「実のところ、ステレオだとすごくよかったんだぜ。でも、ちゃんと聴く人はいないからな。いろいろ盛り込みすぎて、ついていけなかったものな。ゴチャゴチャしすぎてたな。ひとつのトラックにはBBCラジオの生放送から聞こえてきた台詞を-シェイクスピアか何かだったな-どんどんぶちこんでいったんだよ」と話している[17]
  5. ^ それ以前に『ビートルズ・アンソロジー』のDVD版で初めて完全リアル・ステレオ・ヴァージョンが収録されたことがある。

出典編集

[ヘルプ]
  1. ^ MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd rev. edn). Chicago, IL: Chicago Review Press. p. 268. ISBN 978-1-55652-733-3. 
  2. ^ Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. p. 185. ISBN 0-312-25464-4. 
  3. ^ 『PLAYBOYインタビュー ジョン・レノン』、1981年 集英社
  4. ^ Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. p. 184. ISBN 0-312-25464-4. 
  5. ^ Davies, Hunter (2002年). “My Friend John”. 2019年5月6日閲覧。
  6. ^ The Beatles: 20 things you did not know about the Fab Four.
  7. ^ "I Am The Walrus" song by The Beatles. The in-depth story behind the songs of the Beatles. Recording History. Songwriting Histo.
  8. ^ ビートルズと日本 TOKYO 5 DAYS トークイベント・レポートシンコーミュージック・エンタテイメント
  9. ^ Aldridge, Alan, ed (1990). The Beatles Illustrated Lyrics. Boston: Houghton Mifflin / Seymour Lawrence. p. 145. ISBN 0-395-59426-X. 
  10. ^ Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books. p. 68. ISBN 0-517-57066-1. 
  11. ^ a b c d Robert Fontenot, "I Am the Walrus", on Oldies Music page from about.com. 2019年5月6日閲覧
  12. ^ a b Dave Rybaczewski, "I Am The Walrus", on Beatles Music History. 2019年5月6日閲覧
  13. ^ Network 3 Programme Listings for Friday, 29 September, 1967”. BBC Genome Project. British Broadcasting Corporation. 2019年5月6日閲覧。
  14. ^ Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books. p. 128. ISBN 0-517-57066-1. 
  15. ^ Walter Everett. The Beatles as Musicians. Revolver Through the Anthology. Oxford University Press. NY. 1999. 0-19-509553-7. 0-19-512941-5. pp. 134–35.
  16. ^ Here, There and Everywhere: My Life Recording the Music of the Beatles. https://books.google.com/books?id=WOk8TP8o018C&pg=PT272&dq=%22i+am+the+walrus%22%2B+mono&hl=en&ei=pqosTcvzLMPtnQfDzYmGDQ&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=3&ved=0CC8Q6AEwAg#v=onepage&q=%22i%20am%20the%20walrus%22%2B%20mono&f=false 2019年5月6日閲覧。. 
  17. ^ 『PLAYBOYインタビュー ジョン・レノン』、1981年 集英社(95頁)
  18. ^ a b Discussions Magazine Music Blog: An EXCLUSIVE interview with THE MOODY BLUES' Ray Thomas!”. Discussionsmagazine.com (2015年1月15日). 2018年11月1日閲覧。

関連項目編集