アカガシ
アカガシ(赤樫[5]、学名:Quercus acuta)はブナ科コナラ属の常緑広葉樹。別名、オオガシ(大樫)、オオバガシ(大葉樫)、アツバアカガシ[1]、オオアカガシ[1]、キクアカガシ[1]、ヒメアカガシ[1]。かたくて赤褐色の材は和名の由来となり、車両や船舶、三味線の棹、木刀にも使われる。
アカガシ | ||||||||||||||||||||||||
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![]() アカガシ
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Quercus acuta Thunb.[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
アカガシ |
名称 編集
分布・生育環境 編集
本州の宮城県・新潟県以西、四国、九州、朝鮮半島南部、中華人民共和国、台湾に分布する[6][7]。山地に自生する[6]。森林や山地、暖帯上部に多い。植栽として、神社や庭に植えられている[6]。
特徴 編集
常緑広葉樹の高木[6]。高さ20メートル (m) ほどで、森林内では大木になる。樹皮は、若木はでは灰色であるが、老木では不規則に剥がれて、橙色が混じったまだら模様となる[5]。若い枝は、紫褐色をしている[5]。
葉は互生で、やや波打ち[6]、長楕円形で基部は広いくさび形で先端が尖り、コナラ属では唯一鋸歯がないのが特徴で[5]、時に波状縁となる。葉表は深緑色、裏面はやや薄い色となる[7]。カシ類の中では、一番大きくて扁平で厚みがある葉が特徴[7]。新葉が開いたときは褐色の毛がある[6]。
花期は4 - 6月頃で、雌雄同株[6][5]。雄花序は垂れ下がった形で黄褐色の雄花を多数つける。雌花序は葉腋に直立し5・6個の雌花をつける。
果期は翌年の10月ごろ[7]。果実は堅果、いわゆる「どんぐり」で、殻斗に褐色の毛があり、翌年の秋に熟すと食べられる[6]。
冬芽は楕円形で細かい毛があり、葉の付け根につき、重なり合う多数の芽鱗に包まれる[5]。
種内変異 編集
- アツバアカガシ( ヒロハアカガシ) Quercus acuta var. acutiformis
- オオアカガシ Quercus acuta var. megaphylla
- キクアカガシ Quercus acuta var. yanagidai
- シロスジアカガシ Quercus acuta f. albivena
- ヤナギアカガシ Quercus acuta f. lanceolata
- アカスジアカガシ Quercus acuta f.rosivena
用途 編集
材は堅くて、器具、車輛、船舶、機械、枕木、木刀などに使われ、特に木刀は有名である[6][7]。赤くて重みがあることから、三味線の棹にも使われてきた[7]。鉄器ができる前の時代には、農具の鍬の刃にも使われた[7]。1978年、大阪府藤井寺市の古市古墳群の一つである三ツ塚古墳から発掘されたアカガシを使った修羅は、全長8.8メートル、重さ3.2トンもある巨大なもので話題となった[7]。
天然記念物 編集
国指定
都道府県指定
- 兵庫県 : 池王神社のアカガシ - 兵庫県宍粟市一宮町深河谷 池王神社境内
- 東京都 : 大鳥神社のオオアカガシ - 東京都目黒区下目黒3丁目大鳥神社境内(既に枯死)[8][9]
- 東京都 : 桜小学校のオオアカガシ - 東京都世田谷区世田谷2丁目区立桜小学校内
- 宮城県 : 鹿島天足別神社のアカガシ - 宮城県富谷市大亀字和田鹿島天足別神社境内
- 山梨県 : 上於曽のアカガシ - 山梨県甲州市塩山上於曽
- 富山県 : 上滝不動尊境内の大アカガシ - 富山県富山市上滝字滝ノ沢上滝不動尊境内
- 滋賀県 : 黒田のアカガシ - 滋賀県長浜市木之本町黒田字大沢2381
- 兵庫県 : 常隆寺のスダジイ・アカガシ群落 - 兵庫県淡路市久野々154常隆寺境内
- 福島県 : 大聖寺のアカガシ樹群 - 福島県双葉郡浪江町大字北幾世橋字北原6大聖寺境内
- 富山県 : 寺家公園アカガシ群生林 - 富山県富山市寺家
- 大阪府 : 天王のアカガシ - 大阪府豊能郡能勢町天王
- 栃木県 : 湯泉神社 アカガシの森 - 栃木県大田原市黒羽町大豆田 湯泉神社境内
市町村指定
- 松山市 : アカガシ1本 - 愛媛県松山市川の郷町
- 石川町 : 塩釜神社のアカガシ樹叢 - 福島県石川郡石川町 塩釜神社境内
- 町田市 : 清水寺アカガシ群落 - 東京都町田市相原町701 清水寺境内
- ときがわ町 : 椚平の姥樫 - 埼玉県比企郡ときがわ町椚平(姥とあるがアカガシである)
- 大田原市 : 滝岡温泉神社のアカガシ - 栃木県大田原市滝岡210-3 滝岡温泉神社境内
- 設楽町 : 豊邦のアカガシ - 愛知県北設楽郡設楽町豊邦字豊詰
- さいたま市 : 南中丸のアカガシ - 埼玉県さいたま市見沼区大字南中丸
- 府中市 : 諸毛艮神社のアカガシ - 広島県府中市諸毛町2292 諸毛艮神社境内
- 廿日市市 : 極楽寺のアカガシ - 広島県廿日市市原2180 極楽寺境内
- 静岡市 : 杢左衛門の大赤樫 - 静岡県静岡市葵区水見色
脚注 編集
- ^ a b c d e 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus acuta Thunb.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月12日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus acuta Thunb. var. yanagitae Makino”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月12日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus acuta Thunb. var. megaphylla (Hayashi)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月12日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cyclobalanopsis acuta (Thunb.) Oerst.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月12日閲覧。
- ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 145.
- ^ a b c d e f g h i j 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 100.
- ^ a b c d e f g h 田中潔 2011, p. 43.
- ^ 東京都指定有形文化財の指定等について 東京都教育委員会ウェブサイト、2012年10月26日閲覧。
- ^ 教育庁報第585号 今月の主な内容 平成24年3月5日発行 (PDF) 東京都教育委員会ウェブサイト、2012年10月26日閲覧。
参考文献 編集
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、145頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 田中潔『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、43頁。ISBN 978-4-07-278497-6。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、100頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 米倉浩司、梶田忠「「BG Plants 和名−学名インデックス(YList)」