アカモク学名Sargassum horneri (Turner) C.Agardh[1])は、褐藻綱ヒバマタ目ホンダワラ科に属する海藻である[1]北海道(東部を除く)から日本全土の漸深帯(浅海)に分布し、朝鮮半島、中国及びベトナム北部にまで分布する[2]。1年生で、秋から冬に生長し、4-7mの長さに達する[2][3][4]。雌雄異株である(まれに雌雄同株の個体がある)[2]

アカモク
分類
ドメ
イン
: 真核生物 Eukaryota
階級なし : ディアフォレティケス Diaphoretickes
階級なし : SARスーパーグループ Sar
階級なし : ストラメノパイル Stramenopiles
: 不等毛植物門 Heterokontophyta
: 褐藻綱 Phaeophyceae
: ヒバマタ目 Fucales
: ホンダワラ科 Sargassaceae
: ホンダワラ属 Sargassum
: アカモク S. horneri
学名
Sargassum horneri (Turner) C.Agardh[1]
和名
アカモク

秋田県では「ギバサ」、山形県では「銀葉藻(ギンバソウ)」、新潟県では「長藻(ナガモ)」と呼び食用にする[4][5][* 1]

目次

特徴編集

付着器は仮盤状で、この付着器から分枝しない茎が1本生じ、数mの長さになる[2]。この茎には縦の溝が数本あり、また短い刺を生じる[2]。枝は茎につく葉の葉腋から生じ、茎と同様に葉をつける[8]。茎の古い部分では葉が脱落するため、直接茎から枝が生じているように見える[8]

葉は膜状で線形から披針形で、その縁は鋸歯縁ないし中肋に達する切れ込みで羽状になるものもある[8]。葉は長さ7cm、幅1.5cmになる[2]。この葉の形態には地域差があって、関東地方から静岡県などでは葉の切れ込みが浅く鋸葉縁となり、日本海から瀬戸内海に分布する個体群では葉の切れ込みが深く中肋に達し羽状となるという差がある[8]。葉の中肋ははっきりしており、葉柄はやや扁圧して基部が托葉状に広がる[2]。基部に近い葉では葉柄や中肋に刺をつけることもある[2]

気胞は円柱状で通常の葉に似た冠葉をつけ、短い柄を持つ[8]

雌雄異株がふつうであるが、まれに雌雄同株の個体も見られる[2]

生殖器床の付き方は枝の末端部に単独または総状につき、その形状は円柱状で先端が細くなっている[2]。雌の生殖器床は太く、長さ2-3cm、直径3mmになるが、雄の生殖器床は細長く、長さ 4-7cm、直径 2mmである[2]。まれに見られる雌雄同株の場合には、シダモク (Sargassum filicinum Harvey) と同様に基部がくさび形であることで違いがあり、この部分に雄の生殖器巣があり、上部の大部分には雌の生殖器巣がある雌雄同株となっている[8]

アカモクは1年生で、ふつう秋から冬にかけて生長し、本州中部では冬から春に成熟し、日本北部では7月頃に成熟期を迎える[8]。また、瀬戸内海などでは春に成熟する個体群と秋に成熟する個体群がある[8]。生命力が強いことから、漁場での網や漁船のスクリューならびに養殖施設などに絡みつくことがあるため、漁師の間では『邪魔モク』と揶揄され厄介者扱いされている[5]

北海道東部を除く日本全国のほか、朝鮮半島から中国、ベトナム北部にまでの漸深帯に分布する[8]

類似種にシダモクがあるが、気胞の形状が異なっていて、アカモクは円柱状であるのに対し、シダモクは球形から楕円体であることから、区別することができる[8]。けれども、気胞を形成する前の若い個体ではこの 2種はほとんど区別がつかない[8]

利用編集

アカモクは食用となり、これを目的とした収穫時期は、生殖器床をつける時期である[* 2]

若い海藻本体を湯通しして食用とするほか、生殖器床も粘り気を持ち美味とされる[12]。新潟県では若い生殖器床をつけたものを「ながも」と呼び、粘り気が出るように刻み、醤油で味付けして、ご飯にのせ食べる[12]

下ごしらえは、まずアカモクをよく水洗いし、真ん中にある固く長い茎を上部から下に向かって指でしごくようにすると、節から葉を含む小さな茎がとれるので、これを食用にする[13]。このしごきとった可食部を再度水洗いし、たっぷりの熱湯で数秒から数十秒ゆがいて、これをざるにあけ、水道水をかけ流して冷やす[13]。この段階で多量のねばねばが出る[13]。これを料理の材料とするが、ここまでの下処理をおこなった市販品も販売されている[14]

郷土食として東北地方岩手県秋田県山形県)や新潟県京都府で好まれてきた。三陸地方では、東日本大震災による津波被害からの漁村復興にも一役買っている。モズクメカブ同様、ポリフェノールフコイダンフコキサンチン、各種のミネラル食物繊維を豊富に含み、健康に良い機能性の高い食品として注目を集め、産地以外でもスーパーマーケットで販売されたり、定食店や居酒屋で出されるようになったりしている。これにより、三重県のようにかつては食用にする習慣があまりなく「漁船スクリューに絡む厄介者」扱いされて「邪魔モク」と呼ばれることもあった[15]地域でも、商品価値を持つ海藻へと評価が変わった例も見られる[16]

愛知県にある中部国際空港ではアカモクを使った商品が販売されている。空港島の護岸に生えていたアカモクを未利用資源としてとらえ、有効利用のため中部国際空港会社側から地元の漁師に商品化を持ち掛けた。以前から食用として用いていた岩手県の漁師からのアドバイスも得て、試行錯誤の末に作られたものである[3]

食用以外の利用方法として、宮城県塩竈市にある末社お釜神社では、神事である藻塩焼きで塩を採る際に使う海藻として用いられている[4]

擬人化編集

宮城県塩竈市で、アカモクの知名度向上と販売促進の為に『渚の妖精ぎばさちゃん』(赤杢ぎばさ)と云う擬人化キャラが誕生している。震災復興イベントには広告・パッケージに無償利用可能な他、基本的に既存公式イラスト・キャラクタのアカモク販促用の用途の場合は無償利用が可能。その他、ガイドラインに従えば基本的には商用利用も可能。

脚注編集

注釈編集

  1. ^ 山陰地方では、アカモクと似たホンダワラを神馬草と称する[6]。アカモクを「じんばそう」とする用例もある[7]
  2. ^ 秋田県では5月中下旬に収穫され[9]、愛知県では3月から4月[3]、京都府丹後地方では春[10]、福岡県では2006年の調査では2月中であった[11]

出典編集

  1. ^ a b c 吉田忠生・吉永一男 (2010) 日本産海藻目録(2010年改訂版), 藻類 Jpn.J.Phycol. (Sorui) 58:69-122, 2010
  2. ^ a b c d e f g h i j k 吉田忠生 『新日本海藻誌:日本産海藻類総覧』 内田老鶴圃、1998年、初版、ISBN 4753640493、pp.386-387.
  3. ^ a b c セントレア周辺に生える未利用資源を商品化。 シャキシャキでネバネバな食感が新しい常滑のアカモク。 (html)”. 特定非営利活動法人ドゥチュウブ (2012年8月2日). 2014年5月18日閲覧。
  4. ^ a b c 宮城県・アカモクを活用した連携による商品開発 (PDF)”. 一般社団法人食品需給研究センター. 2013年5月6日閲覧。
  5. ^ a b ねばねばヘルシー食材、食べてキレイに! (html)”. 復興デパートメント(Yahoo! JAPAN). 2014年5月18日閲覧。
  6. ^ ギバサとジバサ(下)成熟までに2年間も”. 秋田魁新報 (2000年3月24日). 2013年5月6日閲覧。
  7. ^ 横浜康継. “海中漫歩第二話「海藻の花」3/3”. 海苔増殖振興会. 2013年5月10日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k 吉田忠生 「8 ヒバマタ目類」『有用海藻誌』 大野正夫 編、内田老鶴圃、2004年、初版、ISBN 4-7536-4048-5、pp.125-127.
  9. ^ ギバサとジバサ(上)かつては野菜の代用品”. 秋田魁新報 (2000年3月17日). 2013年5月10日閲覧。
  10. ^ 丹後の海の生き物アカモク”. 京都府農林水産部水産事務所. 2013年5月10日閲覧。
  11. ^ 篠原直哉、後川龍男、深川敦平、秋元恒基、上田京子、木村太郎、黒田理恵子、赤尾哲之「福岡県大島産アカモクSargassum horneriの成熟と湯通し加工品の品質との関係」、『日本水産学会誌』第75巻第1号、公益社団法人日本水産学会、2009年2月15日、 70-76頁、 NAID 110007055512
  12. ^ a b 大野正夫 「15 地方特産の食用海藻」『有用海藻誌』 大野正夫 編、内田老鶴圃、2004年、初版、ISBN 4-7536-4048-5、p.287
  13. ^ a b c アカモクの下処理方法”. 京都府農林水産部水産事務所. 2013年5月10日閲覧。
  14. ^ アカモクと加工品の紹介”. 京都府農林水産部水産事務所. 2013年5月10日閲覧。
  15. ^ 海藻アカモク人気急上昇/最強の粘り気、鉄分・亜鉛たっぷり/生活習慣病予防で注目 冷凍品や健康食品に『日経MJ』2017年8月7日フード面
  16. ^ “嫌われアカモク、復興後押し…「健康効果」注目」”. 『読売新聞』朝刊. (2017年6月5日). http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000305/20151029-OYT1T50055.html 

参考文献編集

  • 大野正夫 「15 地方特産の食用海藻」『有用海藻誌』 大野正夫 編、内田老鶴圃、2004年、初版、283-296頁。ISBN 4-7536-4048-5
  • 吉田忠生 「8 ヒバマタ目類」『有用海藻誌』 大野正夫 編、内田老鶴圃、2004年、初版、111-132頁。ISBN 4-7536-4048-5

外部リンク編集