アキュラ
概要編集
アメリカにおけるホンダの歴史は、1959年、ロサンゼルスに販売会社・アメリカンホンダモーター(American Honda Motor)が設立されたことに始まる。小型バイク、スーパーカブを始めとする二輪車の販売で成功したホンダは、1973年の第一次石油危機に際して、低燃費の小型車・シビックによりアメリカ自動車市場への進出に成功した。1982年にはオハイオ州メアリーズビルの自社工場において、乗用車・アコードの生産を開始したが、これは、日本の自動車会社として初めてのアメリカ現地生産であった[2]。
大衆車の販売で成功したホンダは、より上級の自動車市場への進出を計画、1985年には、アメリカ現地での研究所として、ホンダR&Dアメリカ社の技術開発センターが、オハイオ州に完成した。翌1986年にアキュラが開業、全米60店舗のディーラーを通して、スポーティーカー(現在でいうスポーツコンパクト)のインテグラと、フラッグシップのレジェンドの販売が開始された[3]。これは、日本の自動車会社による高級車ブランド設立の第一例であり、トヨタ自動車のレクサスや、日産自動車のインフィニティ(いずれも1989年に開業)に先立つものであった。
開業初年には、早くも自動車ブランド別の顧客満足度調査において第1位を獲得し、アメリカでの高評価が定着した。アキュラブランドの販売は、カナダでも1986年から開始された。同地においては独立したディーラー網の展開はなく、ホンダブランドの下での併売となっている。
1991年に香港、2004年11月30日にメキシコ、2006年9月27日に中華人民共和国(マカオなどを除く)、2014年にロシア市場へも進出し、ブラジルにも進出する計画が発表されるなど、レクサスやインフィニティに比べて遅れていた世界展開が進んでいる[4]。
一方で、あえてアキュラブランドを導入しない地域もある。日本もそのひとつである(経緯は後述)。 韓国ではホンダコリア社長鄭祐泳がアキュラよりもホンダブランドの知名度が高いことを理由として挙げている[5]。
歴史編集
- 1986年 - アメリカ合衆国で開業。カナダでもアキュラ「レジェンド」と「インテグラ」の販売が開始される[6]。
- 1990年 - アメリカにおけるCSI(顧客満足度調査)で、自動車ブランドとして5年連続の第1位を獲得[7]。
- 2002年7月 - アメリカにおけるアキュラ車の累計販売台数が200万台に達する[8]。
- 2004年 - メキシコでの販売を開始。
- 2005年7月 - 中国での販売計画を発表。開業予定は2006年春とした[9]。
- 2005年12月 - 北米向けNSXの生産を終了[10]。
- 2006年9月 - 中国での販売を開始[11]。
- 2007年5月 - アキュラデザインスタジオが、カリフォルニア州に完成[12]。
- 2008年9月 - ロシアでの販売計画を発表。開業は2011年を目処とするとした[4]。2014年に販売開始したが2016年に撤退。
- 2012年10月 - ブラジルでの販売計画を発表[13]。2015年投入。
販売車種の特徴編集
スポーティーさを特徴とする高級セダン・SUVを展開している。NSXの一時発売終了以降は全車種が前輪駆動車やそれをベースにした四輪駆動車となっていたが、2016年に新NSX(後輪駆動+モーターアシストによる四輪駆動)が発売されたことでその法則は崩れた。直列4気筒エンジン搭載のモデルが存在する一方で、最大でもV型6気筒エンジンに留まるなどの特徴は、従来アメリカで認識されてきた「高級車ブランド」像とは異なるものである。また、レクサスやインフィニティなどが、日本製による品質とイメージの維持を図っているのに対して、アキュラでは、現地開発・現地生産による現地化に注力しているのも特徴である。
評価と実績編集
2006年のアメリカ合衆国における販売台数は20万1,223台であり、そのうち約13万台が北米現地生産車であった[14]。2009年、アキュラは全車種が自動車ブランドとして史上初めて、二つの代表的な自動車安全調査機構、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によるクラッシュ・テストでの5つ星と、米国道路安全保険協会(IIHS)による「トップセーフティピック」評価を獲得した[15]。
名称とロゴマーク編集
ブランド名は、「Accuracy(正確さ)」を連想させる造語である。ホンダのエンブレムの「Hマーク」をちょうど逆にした「A」に起縁する、また、アルファベット順に並べた場合に、他のどのブランドよりも先頭にくることが考慮されたとも言われる。エンブレムはカリパス(ノギス)を象ったものに手を加えて「Aマーク」と見えるようにしたものである。
モデル名は当初、「アキュラ・レジェンド」、「アキュラ・ビガー」など、同型車がホンダブランドで発売される際と同一の名称が使用されていたが、その後は全モデルがアルファベット2文字か3文字の名称に変更・統一されている。
現行車種編集
現行販売車種編集
外観 | 車種名 | 初登場年 | 現行型 | 備考 | 生産工場 | ||||
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発表 発売 |
マイナー モデルチェンジ | ||||||||
セダン | |||||||||
RLX |
RLX | 2013年 | 2013年 | 2017年 | 米国とカナダで販売されるアキュラブランドのフラッグシップセダン。 日本市場ではホンダ レジェンドとして販売されている。 日本市場と共通のV6 3.5L Sport Hybrid SH-AWDに加え、 V6 3.5Lに10速ATを組み合わせた2WDモデルが選択できる。 |
本田技研工業 埼玉製作所 狭山完成車工場 (埼玉県) | |||
TLX |
TLX | 2014年 | 2014年 | 2017年 | 海外市場専用モデル。 アキュラブランドの中核を担うスポーティセダン。 ラインアップは直4 2.4L+8速DCTとV6 3.5L+9速ATの2タイプ。 V6エンジン搭載車にはSH-AWDも用意される。 米国・カナダ・メキシコで販売。 |
Honda of America Mfg., Inc. (米国 オハイオ州) メアリズビル工場 | |||
TLX-L |
TLX-L | 2014年 | 2017年 | 2017年 | 中国市場専用モデル。 TLXの全長・ホイールベースを延長したストレッチバージョン。 直4 2.4Lエンジンと8速DCTを組み合わせた仕様が用意される。 |
広汽本田汽車有限公司 (中国 広東省) 増城工場第二工場 | |||
ILX | 2012年 | 2012年 | 2018年10月 | 海外市場専用モデル。 9代目シビックをベースとしたアキュラブランドのエントリーモデル。 パワートレインは直4 2.4Lエンジンと8速DCTの組み合わせのみ。 米国・カナダ・メキシコで販売されている。 2019年モデルはアキュラ・ブランドに共通する「ダイヤモンド・ペン タゴン・グリル」を採用する等のフェイスリフトを実施。 |
Honda of America Mfg., Inc. (米国 オハイオ州) メアリズビル工場 | ||||
SUV | |||||||||
MDX |
MDX | 2001年 | 2013年 (3代目) |
2016年 | 海外市場専用モデル。 アキュラが誇る最上級SUV。 北米市場ではV6 3.5Lエンジンに加え、V6 3.0L Sport Hybrid SH-AWD をラインアップ。また、中国向けにはハイブリッド仕様のみを設定。 米国・カナダ・メキシコ・中国で販売されている。 |
Honda Manufacturing of Alabama LLC (米国 アラバマ州) リンカーン工場 | |||
RDX |
RDX | 2006年 | 2018年 (3代目) |
海外市場専用モデル。 CR-Vと基本コンポーネンツを共用するミドルサイズのSUV。 パワートレインは直4 2.0Lターボエンジン+10速ATの組み合わせ。 米国・カナダ・メキシコ・中国で販売。 |
Honda of America Mfg., Inc. (米国 オハイオ州) イーストリバティ工場 | ||||
CDX |
CDX | 2016年 | 2016年 | 中国市場専用モデル。 RDXより一回り小さい、アキュラ最小のSUV。 基本コンポーネンツはヴェゼル(HR-V)と共通。エクステリアデザイン はヴェゼルに似るがボディパネルの大半は専用となる。 パワートレインは直4 1.5Lターボ+8速DCTに加え、2018年より 直4 2.0Lハイブリッドを追加した。 |
広汽本田汽車有限公司 (中国 広東省) 増城工場第二工場 | ||||
スポーツ | |||||||||
NSX |
NSX | 2006年 | 2016年 (2代目) |
アキュラの頂点に位置するミッドシップスーパースポーツ。 米国・カナダ・メキシコ・中国で販売。 日本・欧州市場等、アキュラブランドを展開しない地域では 「ホンダNSX」として販売されている。 |
Honda of America Mfg., Inc. (米国 オハイオ州) パフォーマンス・ マニュファクチュアリング・ センター |
日本での販売計画編集
アキュラ・ブランドは日本への導入も計画されていたが、世界金融危機の影響による自動車市場の環境変化により撤回された。
過去の販売車種編集
- ビガー(ホンダ・ビガー)(1995年TLへ移行)
- レジェンド(ホンダ・レジェンド)(1996年RLへ移行)
- SLX(ホンダ・ホライゾン)(1999年廃止)
- インテグラ(ホンダ・インテグラ)(2002年RSXへ移行)
- CL(2003年廃止)
- EL(ホンダ・ドマーニ/ホンダ・シビックフェリオ)(カナダ専売、2005年CSXへ移行)
- RSX(ホンダ・インテグラ)(2007年廃止)
- CSX(ホンダ・シビック)(カナダ専売、2012年ILXへ移行)
- RL(ホンダ・レジェンド)(2012年RLXへ移行)
- ZDX(北米・中国専用モデル。2013年廃止)
- TL(ホンダ・インスパイア)(2014年TLXへ移行)
- TSX(ホンダ・アコード)(2014年TLXへ移行)
モータースポーツ編集
フォーミュラカーがメインのホンダブランドと異なり、アキュラのモータースポーツはスポーツカーレースが主戦場である。
NSXのエンジンを搭載した「アキュラ・スパイスSE90CL」が1991年より2年間IMSAシリーズのキャメル GTP Light クラスに参戦。ドライバーズ、マニュファクチャラーズの両タイトルを2年連続で獲得した。しかしGTPやグループCで総合優勝を争うことはなく、その後もしばらく積極的なモータースポーツ活動は見られなかった。
2007年よりアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)のP2クラスにおいて、エンジン(V8 3,400cc NA)や車両(COURAGE LC75ベースのAcura ARX-01a)の開発及び供給を開始。オペレーションは、ホンダブランドでインディ・レーシング・リーグ(IRL)へのエンジン供給を行ってきたホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)が担当した。
2009年からは、P1クラスにステップアップ[21]。2010年度のル・マン24時間レースのLMP2クラスにはアキュラ・ARX-01がエントリーし、クラス優勝を果たした[22][23]。
2017年からはIMSAのGTDクラスにマイケル・シャンク・レーシング(MSR)のNSX GT3が参戦し、2勝を挙げている。また2018年からはオレカと共同開発したDPi規定のプロトタイプカーで、ペンスキーのオペレーションによりPクラスに参戦している。
脚注編集
- ^ “2005年 年末記者会見 福井社長スピーチ骨子” (プレスリリース), 本田技研工業, (2005年12月20日)
- ^ “Honda Celebrates Four Decades of Accord”. Honda of America Mfg., Inc.. (2016年6月30日)
- ^ “Acura 25th Anniversary Timeline” (プレスリリース), Honda North America, (2011年3月29日)
- ^ a b “ホンダ、ロシアでアキュラ展開へ 日本の高級車出そろう”. MSN産経ニュース. (2008年9月5日). オリジナルの2008年10月3日時点におけるアーカイブ。
- ^ “後発の韓国市場でホンダ、絶好調”. 日経ビジネスオンライン(毎経エコノミー). (2009年2月10日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。
- ^ “ACURA CELEBRATES 25 YEARS IN CANADA” (プレスリリース), Honda Canada, (2012年2月14日)
- ^ “Honda|会社案内|会社概要|Hondaのグローバル展開|北米”. 2009年12月10日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2009年11月12日閲覧。
- ^ “米国アキュラ 累計販売台数200万台を達成” (プレスリリース), アメリカン・ホンダモーター, (2002年7月25日)
- ^ “ホンダ、「アキュラ」ブランドを中国で展開”. webCG. (2005年7月26日)
- ^ “本格的スポーツモデルNSXの生産を終了” (プレスリリース), 本田技研工業, (2005年7月12日)
- ^ “ホンダ、高級ブランド「アキュラ」を中国で販売”. webCG. (2006年9月27日)
- ^ “米国でアキュラデザインスタジオがオープン” (プレスリリース), アメリカン・ホンダモーター, (2007年5月25日)
- ^ “サンパウロ国際モーターショー2012でブラジル専用仕様車「FIT twist」を発表 ~ブラジルでの四輪研究開発をさらに強化~” (プレスリリース), ホンダオートモーベイス・ド・ブラジル・リミターダ, (2012年10月23日)
- ^ “American Honda Posts Ninth Consecutive Year of Record Sales in 2005” (プレスリリース), Honda North America, (2006年1月4日)
- ^ “アキュラが米国で最も衝突安全性が高いブランドに”. Response (イード). (2009年4月6日)
- ^ “ホンダ、販売網を一本化、プレミアムブランド「アキュラ」を2008年に導入”. webCG. (2005年12月16日)
- ^ “国内四輪 新販売チャネル施策と、アキュラブランド導入を発表” (プレスリリース), 本田技研工業, (2005年12月14日)
- ^ “ホンダ年央会見 アキュラ 日本導入を2年先送り”. Response (イード). (2007年7月18日)
- ^ http://eco.nikkei.co.jp/news/nikkei/article.aspx?id=MMECn1422306082007[リンク切れ]
- ^ “2008年 年末社長会見 骨子” (プレスリリース), 本田技研工業, (2008年12月17日)
- ^ アキュラがアメリカン・ルマン・シリーズのLMP1クラスに2009年シーズンより参戦
- ^ “HPD Scores LMP2 Victory at Le Mans” (プレスリリース), Honda North America, (2010年6月13日)
- ^ “第78回「ル・マン24時間レース」リポート”. Car Watch (インプレス). (2010年6月21日)
外部リンク編集
- 本田技研工業
- Acura USA - 米国公式サイト(英語・スペイン語・中国語)
- Acura Canada - カナダ公式サイト(英語・フランス語・中国語)
- Acura China - 中国公式サイト(中国語)
- Acura Mexico - メキシコ公式サイト(スペイン語)