アシェンデンAshenden: Or the British Agent)は、イギリスの作家ウィリアム・サマセット・モームが、1928年に発表した連作短編小説

概要 編集

モームの代表作の一つで、スパイ小説の古典とされる。主人公アシェンデンによる、作家(ジャーナリスト)兼情報部員としての体験手記の形で物語が進む。若き日をふりかえった教養小説の大作『人間の絆』と同じく、作者の分身としての性格が大きく出された作品でもある。

作中の描写はモームの実体験に基づく。実際にモームは1910年代第一次世界大戦半ばに、従軍軍医(医学校出身)から英国諜報機関へ転属勤務となり、ロシア革命時、ソビエト連邦成立直前のロシアペトログラードにて、情報工作活動(諜報活動)を行った。

第二次世界大戦前後から20世紀後半の冷戦で、情報部員としての実際の活動を創作に反映した英国人作家たち(例:イアン・フレミンググレアム・グリーンジョン・ル・カレフレデリック・フォーサイス)の先駆的な作品といえる。

日本語訳は『月と六ペンス』と並び多くの版元で刊行・重版している。

日本語訳 編集

映画化 編集

本作中の2つの短編"The Traitor(裏切り者)"と"The Hairless Mexican(禿げのメキシコ人)"は1936年、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『間諜最後の日』の原作となった。