アスタキサンチン

アスタキサンチン (astaxanthin, astaxanthine) は1938年リヒャルト・クーンらにより発見された色素物質である。β-カロテンリコピンなどと同じくカロテノイドの一種で、キサントフィル類に分類される。IUPAC名は 3,3'-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4'-ジオン。名前はギリシャ語の "yellow flower" に由来するが、実際の色は赤色である。

アスタキサンチン
識別情報
CAS登録番号 472-61-7
PubChem 5281224
日化辞番号 J11.883D
KEGG C08580
特性
化学式 C40H52O4
モル質量 596.84 g/mol
外観 赤色粉末
融点

216 °C, 489 K, 421 °F

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

目次

構造編集

分子式は C40H52O4 で β-カロチンとほぼ同様の構造であるが、両端のシクロヘキセン環部位の水素ヒドロキシ基(3および3'位)とカルボニル基(4および4'位)に置換している。3および3'位のヒドロキシ基の位置により (3R,3'R) 体、(3R,3'S) 体(meso 体)、(3S,3'S) 体の三種が存在し、さらに分子中央の共役二重結合cis-, trans- による異性体も存在する。

また、3および3'位にヒドロキシ基を持たない物質はカンタキサンチン(canthaxanthin, β,β-カロテン-4,4'-ジオン)と呼ばれ、これはフラミンゴが餌から摂取したアスタキサンチンを変換することで生成し、ピンク色の元としている物質である。

存在編集

一部の藻類やオキアミ、エビ、鯛、鮭などに含まれ自然界に広く分布する。甲殻類では殻に存在し、それらを餌とするマダイでは体表に、サケ科魚類では筋肉の赤色部分などに見られる。 生体内では遊離型、モノエステル型、ジエステル型の3形態が可能であるが、多くは脂肪酸エステル型であり、血漿リポタンパク質と結合した形で存在する。甲殻類ではタンパク質(オボルビン、クラスタシアニン)と結合し、カロテノプロテインとして存在している。タンパク質と結合したアスタキサンチンは黒っぽい青灰色を呈するが、加熱によりタンパク質分子が変性してアスタキサンチンが遊離すると、本来の赤色を呈する。甲殻類を茹でると赤くなるのはこの現象に由来する。

生理的役割編集

アスタキサンチンは高い抗酸化作用を持ち、紫外線脂質過酸化反応から生体を防御する因子として働いていると考えられる。また、アスタキサンチンは光障害から目を保護すると言われている。その為、アスタキサンチンを配合したサプリメント健康食品、スキンケア用品(基礎化粧品)なども発売されている。しかしながら、アスタキサンチンを人間が摂取した場合の有効性を示す信頼できるデータはなく、サプリメントとしての安全性についても確実な情報は存在しない[1]

アスタキサンチンにまつわる雑知識編集

沖縄では食性により毒を持つヤシガニを調理する際、煮ると甲らが赤くならなければ毒はないと信じられてきた。アスタキサンチンが必ず赤く染めるので、これは迷信である。また、本来白身魚であるサケの身肉はアスタキサンチンによる赤色をしているが、産卵直前には皮膚(婚姻色♂)とイクラ(♀)に赤色が移り、身肉は本来の白っぽいものになる。

天然アスタキサンチンの工業的生産編集

1994年、富士化学工業グループのアスタリールグループがヘマトコッカス藻を使用した天然アスタキサンチンの工業的生産に成功。

脚注編集

  1. ^ アスタキサンチン』「健康食品」の安全性・有効性情報、独立行政法人 国立健康・栄養研究所、2017年7月2日閲覧。

外部リンク編集