チューダー (Tudor) はイギリス航空機メーカーであるアブロ社がリンカーン爆撃機を原形にして開発・製造したレシプロ旅客機である。

アブロ チューダー

概要 編集

チューダーはランカスターの設計者であるロイ・チャドウィックにより設計された。 本機は1945年6月に初飛行を果たしたが、安定性不足や着陸時の飛び跳ね等の問題が発生し、アブロ社は対応に追われた。初期のころ垂直尾翼は短く丸まった形状をしていたが、方向安定性の不足を補うため、全高を高くし、ラダーを角型とすることで面積が大幅に拡大された。加えてマーリンエンジンは騒音と信頼性で問題を抱えていた[1]。また、乗客が12名と4発機にしては少なく、航空会社への売り込みにも難があった。 1947年8月、胴体を延長して定員を増加した改良型が試験飛行の離陸に失敗し、同乗していたチャドウィックを含む乗員乗客は全員死亡した。原因は補助翼の整備ミスであったが、整備記録は残っていなかった。

この機はダグラス DC-3 をはじめとする同クラスの旅客機と競合した結果、受注をほとんど得ることができなかった。1948年から1950年にかけて発生した3件の墜落事故により、本機の商業的な命運は絶たれた。


チューダーを流用して試作機アシュトンが製造された。

仕様 (Avro 689 Tudor 2) 編集

 
Avro 689 Tudor 2 G-AGRY Air Charter
  • 乗員: 2-4 名
  • 乗客: 40-60 名
  • 全長: 32.18 m
  • 全幅: 36.58 m
  • 全高: 7.39 m
  • 全備重量: 36,287 kg
  • エンジン: ロールス・ロイス マーリン 621 1,770 hp × 4
  • 巡航速度: 459 km/h
  • 航続距離: 3,740 km
  • 運用高度: 8,720 m

チューダーは全部で38機製造された。

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ 燃料添加剤に起因する問題であるが、低負荷での定速運転が続くことで吸気管内の温度が上がらず、燃料内の鉛が蒸発せずに残り、排気弁の損傷を招いていた。

参考文献 編集

  • 鈴木孝 著『20世紀のエンジン史』 三樹書房、2001年