アボカド

クスノキ科ワニナシ属の植物

アボカド英語: Avocado[注 1]学名Persea americana)とは、クスノキ科ワニナシ属の常緑高木およびその果実。和名はワニナシ(鰐梨)。

アボカド
Avocado.jpeg
アボカド
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: クスノキ目 Laurales
: クスノキ科 Lauraceae
: ワニナシ属 Persea
: アボカド P. americana
学名
Persea americana Mill.
和名
ワニナシ(鰐梨)
英名
avocado
alligator pear
収穫直後のアボカド
アボカドの木
アボカド
100 gあたりの栄養価
エネルギー 670 kJ (160 kcal)
8.53 g
糖類 0.66 g
食物繊維 6.7 g
14.66 g
飽和脂肪酸 2.126 g
一価不飽和 9.799 g
多価不飽和 1.816 g
2 g
トリプトファン 0.025 g
トレオニン 0.073 g
イソロイシン 0.084 g
ロイシン 0.143 g
リシン 0.132 g
メチオニン 0.038 g
シスチン 0.027 g
フェニルアラニン 0.097 g
チロシン 0.049 g
バリン 0.107 g
アルギニン 0.088 g
ヒスチジン 0.049 g
アラニン 0.109 g
アスパラギン酸 0.236 g
グルタミン酸 0.287 g
グリシン 0.104 g
プロリン 0.098 g
セリン 0.114 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(1%)
7 µg
(1%)
62 µg
271 µg
チアミン (B1)
(6%)
0.067 mg
リボフラビン (B2)
(11%)
0.13 mg
ナイアシン (B3)
(12%)
1.738 mg
パントテン酸 (B5)
(28%)
1.389 mg
ビタミンB6
(20%)
0.257 mg
葉酸 (B9)
(20%)
81 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(3%)
14.2 mg
ビタミンC
(12%)
10 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(14%)
2.07 mg
ビタミンK
(20%)
21 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
7 mg
カリウム
(10%)
485 mg
カルシウム
(1%)
12 mg
マグネシウム
(8%)
29 mg
リン
(7%)
52 mg
鉄分
(4%)
0.55 mg
亜鉛
(7%)
0.64 mg
マンガン
(7%)
0.142 mg
セレン
(1%)
0.4 µg
他の成分
水分 73.23 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
アボカド油(100g中)の主な脂肪酸の種類[1]
項目 分量(g)
脂肪 100
飽和脂肪酸 11.56
16:0(パルミチン酸 10.9
一価不飽和脂肪酸 70.554
16:1(パルミトレイン酸 2.665
18:1(オレイン酸 67.889
多価不飽和脂肪酸 13.486
18:2(リノール酸 12.53
18:3(α-リノレン酸 0.957

特徴編集

中央アメリカが原産である。低温に弱く、主に熱帯亜熱帯で生育する。野生のものは樹高が30メートルほどになる。果樹園の栽培では接木法をとり、整枝もするのでそこまでは高くはならないが、それでも10メートルほどの高さになる場合もある[2]。樹形は品種によって異なるが、の寿命は短く1年ほどで、新梢伸長期には大量落葉する[3]。濃い緑色の果実をつける。5月頃にが咲き、果実の収穫は翌11月から12月頃以降。日本産の植物でもっとも近縁なものはクスノキ科タブノキ[4]。クスノキ科の植物の葉を食べるアオスジアゲハやその仲間の種の食草である。

アボカドがいつ頃から食物としてヒトに利用されてきたのかは定かではないが、紀元前500年にメキシコで最初に栽培された[5]。また、西暦900年頃のものと見られるアボカドの実をかたどった土器が、ペルーチャン・チャン遺跡から出土している[6]。アボカドの名が初めて英語に登場したのは1696年のことである[5]アメリカ合衆国でアボカドが初めて紹介されたのは1871年のことであり、メキシコの樹木とともにカリフォルニア州サンタ・バーバラにてお披露目となった[5]

栽培については、中南米で果樹として数百年以上に亘って栽培され続けており、遅くとも13世紀から15世紀頃までには栽培が行われたとされている。少なくともヨーロッパからの侵略者がやってきた時点では、既にアメリカ大陸(南北両方)の熱帯地方のあちらこちらで栽培が行われていた[7]

果実の成熟に10か月から15か月要し、また、実にたくさんの栄養分が必要であり、アボカドの枝は隔年で実を付けるようになる。多くの品種があるが、木全体で隔年結実する種と、枝ごとに隔年結実する種がある。枝ごとに隔年結実する種では、木全体としては毎年実をつける[8]

アボカドの種子は果実としては比較的大きいが、これはアメリカ大陸で既に絶滅した巨大動物に合わせて共進化したものだと考えられている[9]

良質な不飽和脂肪酸に富み「森のバター」と称される[10]

名称編集

スペイン、メキシコならびに中米のスペイン語圏では「アグアカテ」(aguacate[注 2]) もしくは「アワカテ」(ahuacate)、南米のスペイン語圏では「パルタ」(palta)、ポルトガル語圏では「アバカテ」(abacate) と呼ばれる。 ナワトル語の「アーワカトル」(āhuacatl) に由来するが、この語形自体が元々は近隣のトトナコ語からの借用である、とする説もある[11]

日本語名のもとになった英語名 (avocado[注 1]) は、スペイン語で「アボカド」を意味する「aguacate」と、「弁護士」を意味する「avocado」(現代の綴りでは abogado[注 3])との混同で生じた形といわれる[12]。なお、現代スペイン語では「abogado」に「アボカド」の意味はないが、フランス語では「アボカド」と「弁護士」はスペルが同じ単語となっている (avocat[注 4]) 。

日本語においては、英語名「avocado」の綴りに従い、「アボド」の表記が正しいが、誤って「アボド」と表記される場合もある[13][14]昭和40年代まで[誰によって?]は、果実の表皮がワニの肌に似ていることに由来する言い回し「alligator pear」を直訳して、「ワニナシ」とも呼んでいた[15]

食用編集

アボカドの果実は、サラダタコスサンドイッチハンバーガー巻き寿司カリフォルニアロール)の具材として用いられることが多い。

メキシコはアボカドの生産量・消費量ともに世界一であり、ペーストにしたアボカドにトマトタマネギ、香味野菜、唐辛子サルサソース[注 5]を加えた「グワッカモレ」(ワカモーレ)は一般的なディップで、トルティーヤのチップスで掬って食べたり、各種の料理のソースにしたり、様々な料理にも加えられる[16][17]

日本では、刺身を食べる時と同じ要領で、ワサビと醤油に浸して食べたり、巻寿司にしたり、マヨネーズに付けて食べることもある。和風ドレッシングのサラダにも合う[18][19][20]

日本で売られているアボカドのほとんどはメキシコ産ハス種であり、一年中出回っているものの美味しい時期は3月から9月である[21]チリ産、ペルー産、ニュージーランド産のアボカドも日本で出回るようになったが、メキシコとは季節が逆の南半球であり、旬の時期は10月から1月になる[20]。ニュージーランドではサラダにすることが多く、バターの代わりにトーストに塗ったり、アイスクリームにしたりもする。サーモンと合わせて食べる場合もある[20]。カリフォルニア産のアボカドも輸入されることがある。

アボカドは不飽和脂肪酸が豊富であり、「アボカドオイル」の材料にもなる。このオイルは食用だけでなく、石鹸の材料にもなり、ブラジルではアボカドで作った石鹸も多い[22]

アボカドの実は樹上では軟らかくはならず、収穫後に追熟させることで軟化して食べ頃となる。日本の店頭で販売されているアボカドは完熟していないものが多いが、常温で放置することで食べやすくなる。熟すと果皮の色がより黒っぽくなるが、熟しても緑色のままの品種もある。表皮を軽く押してわずかに柔らかさを感じるほどに軟化すれば食べ頃の目安となる。なお、17で追熟させると黒くなる前に軟化する。21℃程度が追熟には一番よく、27℃以上か、4.5℃以下の状況では変色する[23]。食べごろに変色した時の色が付いたシールが貼られているものもあり、シールと同じ色になれば食べ頃だと判断できる。

果肉はきれいな薄緑色であるが、空気に触れていると茶色に変色する。レモンのような酸をかけることで、変色を抑えられる。

品種編集

アボカドには3系統1000品種以上があるといわれる。日本のスーパーマーケット八百屋で売られているものは、皮がゴツゴツしており、熟すと黒くなるハス種である[10]。ハス種は皮が厚く、長距離輸送や栽培が容易で多産であり、熟すと黒くなることから、消費者に食べ頃がわかりやすい利点で他の品種を席巻して栽培・販売されるようになった[10]。ハス種はメキシコで多く栽培されているが、系統的にはメキシコではなくグアテマラである。ハス種は生産量では他の品種を圧倒しているが、皮が厚くゴツゴツして熟すと黒くなるその性格は、1000種以上あるアボカドの中ではむしろ少数派である。寒さに弱いアボカドの中でも比較的寒さに弱いハス種は日本での栽培には向かず、ベーコン種やフェルテ種が向き、ほんの少量ではあるが、高知、和歌山、南九州でも生産されている。ベーコン種やフェルテ種は、皮は滑らかで、熟しても黒くはならない。南アフリカではフェルテ種の栽培も多い[24]

実の大きさは品種によってさまざまで、小さいメキシコーラ種では100グラム前後、大きいアナハイム種では500グラムから900グラムになる。西インド諸島での品種は1キログラムを超えるものもある。しかしながら、市場では大きすぎる品種や小さすぎる品種は取引されない。世界で最も生産量が多く、日本の市場では大部分を占めるハス種は200~340g、ハス種に次いで多いフェルテ種は220~400gの大きさである[25]

  • メキシコ系 - 葉にアニスの香りがあり、果皮が薄い。タネが大きく可食部は少ない。アボカドのなかでは耐寒性があり、味は濃厚である。
  • グアテマラ系 - 日本で売られているアボカドのほとんどはハス種であるが、ハス種はグアテマラ系である。グアテマラ系といっても実の大きさは品種ごとに様々だが果皮は厚い。葉にアニスの香りはない。他のアボカド系統と比べると、種は小さめで、可食部は多めである。
  • 西インド諸島系 - 葉にアニスの香りはなく、実の大きさは品種ごとに様々だが、果皮は薄い。寒さに弱いアボカドの中でも西インド諸島系は最も寒さに弱い。日本では唯一沖縄県でのみ栽培が可能である[25]

品種は1000種を超え栽培品種は一部であり、細部はよく分かっていない品種も多い。

  • ハス種 - 前述したようにアメリカを始め世界の多くの国ではアボカドといえばハス種である。日本国内で流通しているアボカドの99パーセントはハス種である。グアテマラ系[26]
  • フェルテ種 - ハス種が主流になる前はフェルテ種が最も多く栽培されていた。アボカドの中では比較的低温に強く、現在でも世界で2番目に生産量が多い。食味は濃厚で美味しいが、熟しても黒くはならず、食べ頃が分かりにくく、収穫後の日持ちもハス種より悪い。南アフリカではアボカド生産量の45%をフェルテ種が占めるほか、イスラエルでは15%、スペインでは14%のシェアを占める。フェルテ種は、メキシコ系とグアテマラ系の交配種である[26]
  • ベーコン種 - フェルテ種同様熟しても緑色のままで食味は濃厚。フェルテ種よりもさらに低温に強い。日本の温暖な地域ならば栽培も可能。世界ではスペインでシェア9%、アメリカ合衆国カリフォルニア州でも少量生産されている。メキシコ系とグアテマラ系の交配種[26]
  • ピンカートン種 - 脂肪分が多く大玉になる。果皮は深緑で耐寒性は弱い。果実の日持ち性は良い。イスラエルでシェア11%、南アフリカでも8.5%を占める。グアテマラ系[26]
  • リード種 - 球形の果実をつける。大型で食味は濃厚。ハス種よりさらに日持ち性は良い。耐寒性は弱く、イスラエルで少量生産されている。グアテマラ系[26]

以上のように南アフリカ、イスラエル、スペインでは、複数の品種が見られる。

栄養価編集

世界的に最も多く栽培され、日本で売られているアボカドのほとんどを占めるハス種は、その果肉脂肪分が約18~25%含まれており[27]、アボカドのエネルギーの77%は脂肪由来である[28]。そのうちの67%は一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)であり、残りは多価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸で構成される[28]

脂肪分が豊富であるゆえに「森のバター」「バターフルーツ」と呼ばれることがあり、全ての果物の中で最大のカロリーを持つ。糖分はほとんど含まず、10種類を超えるビタミンと11種類のミネラルと食物繊維を豊富に含んでおり、この豊富な栄養素はアボカドの脂肪分に凝縮されている。ビタミンEの含有量も高く、アボカド1個半程度で成人男性に必要なビタミンE(10ミリグラム)を摂取できる[10][29]。ビタミンB群とビタミンKも豊富であり、微量ながらタンパク質も含む[28]。反面、動物性食品ではないゆえに、ビタミンDとビタミンB12は含まれない。

カリウムの含有量はバナナよりも上である[30]

ただし、適切な収穫時期に収穫していないアボカドは脂肪が少なく、質が高くないものが含まれる[31]。アボカドの属するクスノキ科の植物には、種子散布に関わる鳥獣を引きつける栄養素として果肉に脂肪を蓄える種が多くある。これは、多くの鳥獣種子散布植物が糖分を用いている点とは対照的である。

アボカドの摂取と影響編集

アボカドを習慣的に摂取することにより、肥満や過体重の人の体重増加は緩和される。アボカドの摂取量が多ければ多いほど肥満になる確率は低下し[32]、アボカドの摂取量が多ければ多いほど、体重は低く、胴回りは細くなり、メタボリック症候群を患うリスクは低下する[33]

食べ物に含まれる脂肪分の摂取量が多ければ多いほど、皮膚の弾力性は高くなる。アボカドに含まれる成分には傷を治癒する効果があり、皮膚の健康を保護する可能性がある[5]

「アボカド/大豆不鹸化物」(Avocado Soybean Unsaponifiables, ASU)は、変形性関節症(Osteoarthritis)における痛みを軽減し、身体機能の改善をもたらす[34]。また、ASUは軟骨を保護し、抗炎症作用(Anti-inflammatory Effect)を持ち[5][35]、鎮痛剤の服用回数の減少につながる[36]。ASUの主成分は、抗酸化作用と鎮痛作用の両方を兼ね備えている[5]。抗炎症作用と軟骨の保護作用を持つASUの主成分は「ステロール」(Sterol)と呼ばれる[35]

アボカドの種子から抽出される成分には、乳房炎病原体(Mastitis Pathogen)を抑制する作用があり、アボカドの脂肪分と種子には抗炎症作用および免疫を調節する作用がある[37]

日々の食事において、炭水化物が多いものをアボカドに置き換えて食べることで、血糖値インスリン(Insulin)の濃度は有意に低下し、肝臓にかかる負担は緩和される[38]。また、アボカドに含まれる成分の一種である「マンノヘプツロース」(Mannoheptulose)には、グルカゴン(Glucagon)の分泌を強力に刺激し、インスリンの分泌を阻害する作用がある[39]

日々の食事にアボカドを追加することで、疾患に罹り辛くなったり、死亡率が低下する可能性がある[40]

生産編集

世界の生産量編集

1980年代後半の時点では、アボカドは世界全体で150万トン程度の生産があり、以降生産量は増え続けている。2005年には322万トン生産された[41]。流通しているアボカドの多くは一個250~300g程度で、100億個の桁のアボカドが生産されていると考えられる。

全世界の生産量の約3割はメキシコ産である[10]

日本の輸入量編集

日本の輸入量は1970年代までは微々たるものであったが、1970年代後半から増え、1980年には479トン、1990年には2163トン、2000年には14070トン、2005年には28150トン、と急増している。2005年の時点で、日本に輸入されている果実の中ではバナナパイナップルに次いで三番目に輸入量が多い[41]カリフォルニア州においては、10月にはアボカドまつりも開催される[42]

日本での栽培編集

和歌山県南部、鹿児島県奄美大島沖縄県高知県愛媛県[43] のように、比較的温暖な地域で栽培されている。出荷量は2016年産で約8トン(農林水産省まとめ)と、輸入量(2018年に約7万4000トン)に比べると少ないが、栄養豊富なことから需要が増えていること、同じく温暖な気候に合う柑橘類耕作放棄地を利用できる点から、長崎県で栽培が広がっている[44]。個人レベルで発芽生育させ、観葉植物として楽しむことは比較的容易であり、寒冷地の露地植えを除いて越冬も可能である。

栽培法の一例として、まず種子をよく洗って果肉を取り除き、上端(果実の柄に近い部分で、やや尖っている)を上にし、3分の1ほどを球根水栽培の要領で水に浸けておく。陽当たりの良い場所に置いて水位を保ち、水が腐らないように水替えしながら育てると、夏場で1週間、冬場で7週間ほどで発根し、さらに発芽する。

発芽した後は、腐葉土ミズゴケといった保水性の高い用土に植え替える。過剰な水分は木を弱らせる。温暖地であれば、水洗いした種子を直接庭や用土に播種してもよいが、冷蔵庫で一旦冷やされたアボカドは発芽しない場合が多いので注意が必要である。発芽率がよくない場合は、流通過程で冷蔵されている可能性もあるので購入店舗を変えてみるのも一つの方法である。

発芽した後の成長は速く、栽培条件が良ければ、1年間で0.5~1m程度の高さになるが、観葉植物として仕立てるには、成長段階で適宜剪定して樹形を整える必要がある。初夏や夏に植えると、充分に成長する前に冬を迎え、枯れてしまう場合も多い。桜の開花時期以降である4月頃に種を植えるのが最適である。高温多湿および比較的湿気の多い土壌を好み、寒さには弱く、露地植えの場合は、雪や霜に直接あたらないよう注意する。低温や低湿度に弱いため、年間を通じて10℃以上ある地域でなければ露地栽培は難しい。短期間でも氷点下ではほぼ枯死するため、屋内でも10℃以下の環境は避けるべきである。ただし、同じハス種でも品種によって耐性に差があり、15℃未満でも成長を続けるものもあれば、落葉して幹だけになってしまうものもある(幹が枯死しなければ、春以降に芽吹く可能性がある)。グアテマラ種の交配種は、かなりの低温に耐えるとされる。

また、露地栽培で、芽や葉が出たばかりの高さ5~10cm程度の状態で、初夏や夏を迎えてしまうと、気温が高くなって活動が活発になったダンゴムシナメクジが夜間に大量に群がって新芽を食い荒らし、枯れてしまう場合がある。

開花・結実させることも可能で、早ければ数年で開花に至る。ただし、雄花と雌花の咲く時期が違うので、1本の木だけでは受粉させられず、確実に結実させるには、かなりの個体数が必要になる。

実の保存編集

アボカドの味を堪能するには追熟の必要があるが、保存中に4.5℃以下に長時間晒すと維管束が変化して正常に追熟しなくなり、食味が悪くなる。5~7℃であれば30日程度は貯蔵が可能であり、室温に戻すと正常に追熟・軟化する。つまりアボカドを保存する際には、5℃以下にはしないことである[45]。また、アボカドの実はエチレンガスがあると早く軟化するので、長期保存したい場合は換気してエチレンガス濃度を下げる必要がある[46]

ハス種は貯蔵性が高く、また貯蔵技術の進歩に加えてやや未熟な実を収穫してできるだけ低温で輸出する農家の努力もあって、1年中出回るようになった[21]

雌雄異熟現象編集

アボカドの花は虫媒花ミツバチのような昆虫花粉を運んで受粉させる)で一つの花に雌蕊(めしべ)と雄蕊(おしべ)があるが、一つの花の中でも雌蕊が成熟するタイミングと雄蕊が成熟するタイミングにズレがあり、簡単には受粉しない。

アボカドにはAタイプとBタイプの2種類があり、Aタイプは開花1日目の午前中に雌蕊が成熟して受粉し、花は一旦閉じて2日目午後に再度開花し、今度は雄蕊が成熟して花粉を放出する。

Bタイプは開花1日目の午後に雌蕊が成熟して受粉し、一旦閉じた後に2日目の午前中に再度開花し、今度は雄蕊が成熟して花粉を放出する。

このように、アボカドは雌蕊の成熟と雄蕊の成熟が午前・午後とズレるので、小規模な果樹園にAタイプばかり、あるいはBタイプばかり植えても実が成ることは無い。タイプの違う品種を混植しないと実が成らない[47][48]。ただし、メキシコのようにきわめて大規模な果樹園がある所では、同一品種でも開花期がズレるものもあり、昆虫が雌花の開花期まで花粉を持ち越すこともあるのでハス種ばかりでも実をつける。

Aタイプにはハス種、アナハイム種、デューク種、マッカーサー種、メキシコーラ種、ピンカートン種があり、Bタイプにはベーコン種、クリフトン種、エドノール種、フェルテ種、ズタノ種、サンタナ種がある[47][48]

毒性編集

アボカドの果実、種子、葉にはペルシンという物質が含まれており、ヒト以外の動物には中毒反応を起こす。天然ゴムに対するアレルギーを持つ人の場合、アボカドに対しても症状を発することがある。インコオウムモルモットウサギヤギ家畜に与えると痙攣や呼吸困難を惹き起こす場合がある。ウマウシイヌネコフェレットに対しても毒性を示すことがある[49]。一方で、アボカド入りの犬猫フードやおやつも販売されており、企業の報告によれば、「健康被害の症例は無い」という。アボカドの毒性に関してはまだ不明確な点も多々ある[50]

未熟な果実や種子、葉にはドーパミンメチルカビコールも含んでおり、アボカドの種子を砕いたものをネズミの駆除剤にすることもあるが、効果はそこまで高くはない。アボカドの毒性はそれほど強いものではないが、アボカドの葉を大量に食べたヤギが死亡した例がある[51]

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ a b 英語発音: [ˌævəˈkɑːdoʊ] アヴァカードウ
  2. ^ スペイン語発音: [aɣwaˈkate]カー
  3. ^ スペイン語発音: [aβoˈɣaðo] アボガー
  4. ^ フランス語発音: [avɔka] アヴォカ
  5. ^ サルサソースを加えない場合もある

出典編集

  1. ^ アメリカ合衆国農務省[出典無効]
  2. ^ 米本(2007)39-40頁
  3. ^ 米本(2007)40,50頁
  4. ^ 米本(2007)41頁
  5. ^ a b c d e f Hass Avocado Composition and Potential Health Effects Mark L. Dreher and Adrienne J. Davenport, Crit Rev Food Sci Nutr. 2013 May; 53(7): 738–750. Published online 2013 May 2. doi: 10.1080/10408398.2011.556759
  6. ^ Barry, PC (2001年4月7日). “Avocado: The Early Roots of Avocado History”. Canku Ota. 2007年12月29日閲覧。
  7. ^ 農文協 編集 『果樹園芸大百科 17 熱帯特産果樹』 p.33 農山漁村文化協会 2000年3月25日発行 ISBN 4-540-99347-X
  8. ^ 米本(2007)62頁
  9. ^ Why the Avocado Should Have Gone the Way of Dodo スミソニアン・マガジン October 24, 2013(スミソニアン協会本部)2020年1月2日閲覧
  10. ^ a b c d e アボカドの輸入 東京税関、2020年4月19日閲覧。
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  12. ^ Oxford English Dictionary (2 ed.), Oxford University Press, (1989), http://dictionary.oed.com/ 
  13. ^ マッハ・キショ松 (2016年5月23日). “直接言わない優しさ 書き間違いを教える「アボガドをアボカドに訂正する委員会」が紳士的だと話題に”. ねとらぼ (アイティメディア). http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1605/23/news128.html 2018年11月30日閲覧。 
  14. ^ “アボガドをアボカドと訂正し続け8万回 謎のツイッター「アボガドをアボカドに訂正する委員会」を直撃”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2018年6月7日). https://www.j-cast.com/2018/06/07330512.html?p=all 2018年11月30日閲覧。 
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  17. ^ 米本(2007)160-161頁
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  19. ^ 宮城尚史、宮城香珠子『アボカド三昧』2013年
  20. ^ a b c 食品工業編集部(2012)「日本への拡大図るニュージーランド産アボカド」『食品工業』2012年1月15日号、75-79頁
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参考文献編集

  • 米本(2007)米本仁巳『アボカド』農文協、2007年発行 ISBN 978-4540061929
  • 農文協 編集『果樹園芸大百科 17 熱帯特産果樹』 p. 33〜p. 45 農山漁村文化協会 2000年3月25日発行 ISBN 4-540-99347-X
  • 『緑の雑学辞典』グラフ社
  • 食品工業編集部(2012)「日本への拡大図るニュージーランド産アボカド」『食品工業』2012年1月15日号、75-79頁
  • 渡辺庸生『魅惑のメキシコ料理』58頁
  • 高嶋典子「アボカドペーストを使った高栄養レシピ」『緩和ケアと栄養』54-57頁
  • 宮城尚史、宮城香珠子『アボカド三昧』2013年
  • 井上弘明、高橋文次郎「アボカドの雌雄異熟現象」『生物の科学 遺伝』裳華房、1991年10月、85-90頁

関連項目編集