アラン・シリトー(Alan Sillitoe、1928年3月4日 - 2010年4月25日)は、イギリスノッティンガム出身の小説家

アラン・シリトー
Alan Sillitoe
誕生 (1928-03-04) 1928年3月4日
イギリスの旗 イギリスノッティンガム
死没 (2010-04-25) 2010年4月25日(82歳没)
イギリスの旗 イギリスロンドン
職業 小説家
国籍 イギリスの旗 イギリス
配偶者 ルース・ファインライト
ウィキポータル 文学
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概要 編集

イギリス・ノッティンガムの出身[1]なめし皮工場の労働者の子供として生まれ、14歳からラレー自転車工場英語版やベニヤ板工場などで働く[1]。19歳でイギリス空軍に入隊し、無線技士としてマラヤに配属されたが、肺結核となり帰国[1]。1年半におよぶ治療生活のなかで大量の読書をして文学に目覚め、病気が治ったのち軍人恩給で南フランスに行き、その後スペイン領マジョルカ島に移る[1]。そこで作家のロバート・グレーヴスと知り合い、励まされつつ執筆した『土曜の夜と日曜の朝』(1958年)で作家としてデビュー、作家クラブ賞を受賞するなど好評を得た[1]。翌年の短編集『長距離走者の孤独』も高く評価され、ホーソーンデン賞を受賞した[1]

シリトーの文壇への登場は、『怒りをこめてふりかえれ』のジョン・オズボーンen:John Osborne)、『ラッキー・ジム』のキングスレー・エイミス、『急いで駆け降りよ』のジョン・ウェインen:John Wain)など、「怒れる若者たち英語版」と呼ばれる一派と時を同じくしていたため、そのメンバーの一人と見なされることが多い。

しかし、この一派の中心となった作家たちは、おおむねオックスフォード大学卒のインテリであった(ただし、オズボーンの学歴は高くなく、出身階級もシリトーと同じ労働者階級である)。この点、工場労働者の息子であり、自らも工場労働者であったシリトーとは異質のものであった。反体制を叫ぶ「怒れる若者たち」の怒りは、体制の改革と共に消えてゆく。しかし、シリトーの主人公たちはなおも怒り続ける。

社会が不当に築いた彼らの周りの規制への反撥、その規制を守ろうとする権力者の偽善に対するアナーキックな憤りから、不道徳行為という方法で権威へのささやかなプロテストを試みる。しかし彼らの行動は、積極的に体制を破壊しようとする方向には向かわない。反体制的反抗ではなく「非体制的」な反逆とでも呼べそうなものである。

代表作、長編『土曜の夜と日曜の朝』と、短篇「長距離走者の孤独」は映画化され、いずれも英国アカデミー賞を受賞している。

2010年4月25日に、ロンドン市内の病院で死去した[2]。82歳没。

作品 編集

小説 編集

  • 土曜の夜と日曜の朝 Saturday Night and Sunday Morning (1958)
  • 長距離走者の孤独 The Loneliness of the Long-Distance Runner (1959)
  • 将軍 The General (1960)
  • ドアの鍵 Key to the Door (1961)
  • 屑屋の娘 The Ragman’s Daughter (1963)
    • 河野一郎・橋口稔訳 集英社 1969、のち文庫
  • ウィリアム・ポスターズの死 The Death of William Posters (1965)
    • 橋口稔訳 集英社 1969、のち文庫
  • 燃える樹 A Tree on Fire (1967)
  • グスマン帰れ Guzman, Go Home (1968)
    • 橋口稔訳 集英社 1970、のち文庫
  • 華麗なる門出 A Start in Life (1970)
    • 河野一郎訳 集英社 1974
  • ニヒロンへの旅 Travels in Nihilon (1971)
  • ノッティンガム物語 Men, Women and Children (1973)
    • 橋口稔・阿波保喬訳 集英社 1975、のち文庫
  • 見えない炎 The Flame of Life (1974)
  • The Widower’s Son (1976)
  • The Storyteller (1979)
  • 悪魔の暦 The Second Chance (1981)
    • 河野一郎訳 集英社 1983
  • Her Victory (1982)
  • The Lost Flying Boat (1983)
  • Down from the Hill (1984)
  • Life Goes On (1985)
  • 渦をのがれて Out of the Whirlpool (1987)
  • The Open Door (1989)
  • Last Loves (1990)
  • Leonard’s War (1991)
  • Snowstop (1993)
  • Alligator Playground (1997)
  • The Broken Chariot (1998)
  • The German Numbers Woman (1999)
  • Birthday (2001)
  • A Man of His Time (2004)
  • New and Collected Stories (2005)

ノンフィクション 編集

  • ロシアの夜とソビエトの朝 Road to Volgograd (1964)
    • 鈴木建三訳 晶文社 1973
  • 素材 Raw Material (1972)
  • 私はどのようにして作家となったか Mountains and Caverns: Selected Essays (1975)
  • The Saxon Shore Way (1983)
  • Alan Sillitoe’s Nottinghamshire (1987)
  • Life Without Armour (1995)
  • Leading the Blind: A Century of Guidebook Travel, 1815 – 1914 (1995)
  • A Flight of Arrows: Essays and Observations (2003)
  • Gadfly in Russia (2007)

編集

  • The Rats and other poems (1960)
  • Falling Out of Love and other poems (1964)
  • Love in the Environs of Voronezh and other poems (1968)
  • Barbarians and other poems (1973)
  • Storm: New Poems (1974)
  • Snow on the North Side of Lucifer: Poems (1979)
  • Sun Before Departure: Poems 1974 – 1982 (1984)
  • Tides and Stone Walls: Poems (1986)
  • Collected Poems (1993)

戯曲 編集

  • All Citizens are Soldiers (with Ruth Fainlight; translated from Lope de Vega’s‘Fuente Ovejuna’(1969)
  • Three Plays: The Slot-Machine, The Interview, Pit Strike (1978)

児童書 編集

  • マーマレード・ジムのぼうけん The City Adventures of Marmalade Jim (1967)
    • 上野瞭訳 栗田八重子絵 あかね書房 1971
  • Big John and the Stars (1977)
  • The Incredible Fencing Fleas (1978)
  • Marmalade Jim at the Farm (1980)
  • Marmalade Jim and the Fox (1984)

映画化作品 編集

出典 編集

  1. ^ a b c d e f 河野一郎「解説」『長距離走者の孤独』新潮文庫、1973年、pp.223-231
  2. ^ A・シリトー氏死去 英国の作家”. 共同通信 (2010年4月25日). 2010年5月18日閲覧。[リンク切れ]