アルバム相当単位英語: Album-equivalent unit)とは、様々な形態での音楽の消費をアルバム1枚のセールスに換算して示す音楽業界における用語である。 この手法は、主にストリーミング音楽配信による楽曲の消費を、アルバムの売り上げに加えるために使われる。 アルバム相当単位は、アルバムセールスが減少の一途であった従来のレコードチャート集計法に代わる手法として21世紀に入ってから導入された。 アルバム自体のセールスは業界全体(アメリカ合衆国内)で1999年の146億ドルから2009年の63億ドルと、10年間で半分以上に減少していた[1]。 

日本の音楽媒体の生産実績
日本の音楽消費形態は外国に比べて非常に稀である。2018年のCD・DVDの販売比率は日本は約75%であるが、米国はCD・LPなどの物理媒体は約12%で75%がストリーミングであった。アメリカの節の「画像外部リンク」を参照
日本の音楽媒体の生産金額のシェア

アルバム相当単位の導入により、音楽チャートでは「Best-selling albums ranking(アルバム販売ランキング)」から「Most popular albums ranking (アルバム人気ランキング)」等への名称変更が行われている[2]

チャートへの導入 編集

アメリカ 編集

画像外部リンク
米国の音楽産業の販売数と売上金額の推移
(媒体別)1973年以降
(出典:全米レコード協会(RIAA))
  売上金額の推移
  2018年の売上金額構成
  販売数の推移
  2018年の販売数の構成
 
全米レコード協会による換算基準 2014年12月より
1アルバム相当単位(AEU)は、TEA:10曲のダウンロード、SEA:1500回のストリーミング。
2018年7月 SEAの変更
1SEA=1250回有料配信=3750回無料広告付配信

ビルボード 200では2014年12月13日発行のランキングから、それまでのアルバム自体の純粋な販売数を集計する方法から、アルバム相当単位を導入した集計方法に切り替えられた。 この見直しにより、ビルボード 200ではランキングの集計にストリーミングと音楽配信(主にニールセン・サウンドスキャン英語版の集計による)のデータが反映されるようになった。 ここで集計されるデータとしては、SpotifyGoogle Play、Beats Music、MusicGrooveといったサービスが含まれる。 ここでは、Track Equivalent Album (TEA、楽曲トラックのアルバム換算) とStreaming Equivalent Album (SEA、ストリーミング再生のアルバム換算)という手法に基づき、10曲の販売ごと、あるいは、アルバムに収録された曲が1500回ストリーミング再生されるごとに、それをアルバム一枚のセールスに換算して計算される。 なお、ビルボードはこれとは別に、純粋なアルバムセールスだけのランキングも「トップアルバムセールス」として発行を続けている(SoundScanの販売データに基づく)[3]。 この新たな集計方式の初回にナンバー1になったアルバムはテイラー・スイフトの『1989』だった。アルバム相当単位では約33万9000のセールスに値するとされ、内訳はアルバム自体の実売が約28万1000であった[4][5]。 2015年2月8日発行のランキングにおいて『en:Now That's What I Call Music! 53』が、初の「トップアルバムセールス」(実売数)で最多でありながら「Billboard 200」の首位を逃した作品となった[6]

2018年7月には、ビルボードニールセンではストリーミングにおける有料サービスと広告付き無料サービスや動画配信サービスにおける換算指数を変更した。新しいSEAの換算はプレミアム(有料)ストリーミングが1250回、広告入りストリーミングおよびビデオストリーミングが3750回で1SEAと計上される[7]

全米レコード協会においても2016年2月より販売数認定英語版ゴールドディスク)においてストリーミングの加算を始めた[8]

イギリス 編集

 
イギリスのアルバムランキングの集計手法。ストリーミングによる再生をアルバム相当単位として加算する。

イギリスでは、Official Charts Companyによって2015年の3月からストリーミングを集計に含めたランキングがUK Albums Chartとして発表されている[9]。 この変更はストリーミングの急激な成長を受けてなされた。イギリスにおける楽曲のストリーミング数は2013年の7.5億回が2014年には15億回と一年で倍にまで増加している。 この手法の下では、アルバムの収録曲の内で最もストリーミング再生された(最大)12曲を集計するが、最も再生された曲とその次に多く再生された曲の2曲はシングルとしての人気であるとされ重視されない。 集計された数字は1000分の1にされた上で、アルバムの実売、および音楽配信でのセールスに加算される。

この手法で最初に首位を獲得したアルバムはサム・スミスの『In the Lonely Hour』だった。アルバム相当単位で4万1000に値するとされたセールスの内、2,900がストリーミングによるものであった[9]

ドイツ 編集

ドイツでは、2016年2月からストリーミングがアルバムランキングに加算されている。 なお、German Albums Chartの場合は、その週ごとの販売数ではなく、収益に基づいてランキングが制作される。 Henceでは集計されるストリーミング再生について一定の条件を設けており、30秒以上の再生と、アルバムに収録された楽曲の内で6曲以上が再生されることでアルバムのセールスに加算して集計される。なお収録曲の内12曲以上が再生された時に最も多く加算される。 イギリスの手法と似たこのやり方は、アルバム収録曲の内で特定の1,2曲のみが再生されても、その楽曲ごとのセールスには加算されるが、アルバムとしてのセールスには加算されない[10][11]

日本 編集

日本のBillboard JAPANは、2015年6月8日付から音楽配信の売上を加算したアルバムランキングであるBillboard Japan Hot Albumsの発表を開始した。

また同国のオリコンチャートは、2018年12月19日(チャートの日付は同月24日)より「オリコン週間合算アルバムランキング」の発表を開始した。CDアルバムの1枚、アルバムバンドルダウンロード数の1ダウンロード、ストリーミングの1440再生をそれぞれ1ポイントとして集計している[12]

参考文献 編集

  1. ^ Why Album Sales Are Down”. Speeli. 2015年6月22日閲覧。
  2. ^ Caulfield, Keith (2016年5月22日). “Drake's 'Views' Rules at No. 1 for Fifth Week on Billboard 200 Chart”. Billboard. 2016年7月2日閲覧。
  3. ^ “Billboard 200 Makeover: Album Chart to Incorporate Streams & Track Sales”. (2014年11月20日). http://www.billboard.com/articles/columns/chart-beat/6320099/billboard-200-makeover-streams-digital-tracks 2014年11月20日閲覧。 
  4. ^ Taylor Swift's '1989' Returns to No. 1 on Revamped Billboard 200”. billboard.com. 2016年7月1日閲覧。
  5. ^ Why Is Taylor Swift Still #1?”. pitchfork.com. 2016年7月1日閲覧。
  6. ^ Now 53 Outsells Taylor Swift, Becomes First Record to Top Albums Chart but Not Billboard 200; Kid Ink Cracks Top 10”. The Music Times (2015年2月12日). 2016年7月2日閲覧。
  7. ^ Sisario, Ben (2018年7月9日). “The Music Industry’s Math Changes, but the Outcome Doesn’t: Drake Is No. 1”. The New York Times. 2018年9月25日閲覧。
  8. ^ Forget Selling Albums — Artists Can Now Go Platinum Via Streaming” (英語). NPR (2016年2月1日). 2019年2月21日閲覧。
  9. ^ a b Sam Smith's 'In the Lonely Hour' Tops Historic U.K. Albums Chart”. billboard.com. 2016年7月1日閲覧。
  10. ^ Deutsche Album-Charts integrieren Premium-Streaming” (German). Musikmarkt.de (2016年2月1日). 2016年7月1日閲覧。
  11. ^ Deutsche Album-Charts jetzt auch mit Streaming-Zahlen”. Heinz Heise (2016年2月1日). 2016年7月1日閲覧。
  12. ^ オリコン合算ランキングの集計方法について、ORICON NEWS。 - 2020年10月8日閲覧。