アレキサンドライト
アレキサンドライト(alexandrite、アレクサンドライトとも)は、1830年、ロシア帝国ウラル山脈東側のトコワヤ(Токовой、Рефт)のエメラルド鉱山で発見された。金緑石(クリソベリル、BeAl2O4)の変種[注 1]。
発見当初はエメラルドと思われていたが、すぐに昼の太陽光下では青緑、夜の人工照明下では赤へと色変化をおこす他の宝石には見られない性質が発見され[1]、珍しいとして当時のロシア皇帝ニコライ1世に献上された。巷説では、このロシア帝国皇帝に献上された日である4月29日が、皇太子アレクサンドル2世の12歳の誕生日だったため、 この非常に珍しい宝石にアレキサンドライトという名前がつけられたとされている。また当時のロシアの軍服の色が赤と緑でカラーリングされていたため、ロシア国内で大いにもてはやされたという説もある[2]。
6月の誕生石のひとつである。
性質・特徴編集
微量に鉄、クロムなどの不純物を含む。モース硬度は8.5[3]。青緑色系スペクトルの強い太陽光(または蛍光灯の明かり)の下では青緑色を示すが、赤色系スペクトルの強い白熱灯や蝋燭の明かりの下だと色が鮮やかな赤色に変わる[4]。これは微量に含有されているクロムの影響で、光源によって石に吸収されるスペクトルが大きく異なるためである[5]。
1975年には人工合成に成功し[6]商業生産もされてはいるが、合成宝石自体にあまり人気がないのでその量はわずかで、しかも製造コストが高くつくためほとんど市場には出回らない。
産出地編集
産地としては スリランカ、ブラジル、ロシア、インド、タンザニア、そしてマダガスカルなどが挙げられる。
一般にロシアのウラル山脈産の石に優れた変色効果が見られるとされているが、稀産であり滅多に市場に出回らないため、ロシア産というだけで高値がついている場合がある。また一方で同地産は内部にインクルージョンや傷を抱えた石が多いとされている。
ブラジル産には透明度、変色性ともに上質のものがまれにみられる。暗緑色ではなく青みを帯びた緑色に変色するものには、特に高価な価格がついている。
スリランカ産は、大きな石の産出が見られるものの、色変化も含めその品質はいま一つとされている。
類似石編集
変色効果はこの石のみに見られる特徴ではなく、アメシスト、アンデシン、不純物としてバナジウムを含んだサファイアやスピネル、トルマリン、あるいは一部のガーネットにも同様の効果が見られる石がある。
また天然石のみならず、代表的な人造宝石キュービック・ジルコニア(CZ)や、カラーチェンジのサファイア、スピネルについては極めて安価で人工的に合成もできるため、合成アレキサンドライトと触れ込みのある、安物のジュエリーに使われている石はこうした石であることが多い。
関連項目編集
注編集
参照及び参考文献編集
- ^ 松原聰監修『鉱物の不思議がわかる本』成美堂出版、2009年、101頁。ISBN 978-4-415-03570-3。
- ^ “光によって変色する美しい宝石アレキサンドライト”. odolly. 京セラ. 2019年4月7日閲覧。
- ^ 堀秀道『楽しい鉱物図鑑』草思社、1993年、62頁。ISBN 4-7942-0483-3。
- ^ 堀秀道『楽しい鉱物図鑑2』草思社、1997年、56頁。ISBN 978-4-7942-0753-1。
- ^ 松原聰監修『鉱物の不思議がわかる本』成美堂出版、2009年、34頁。ISBN 978-4-415-03570-3。
- ^ 崎川範行 (1985). 合成宝石の魅力. pp. 47 ISBN 4-5865-0682-2
- ^ “脱毛”. 日本形成外科学会. 2019年4月7日閲覧。
外部リンク編集
- Alexandrite: Alexandrite mineral information and data. (mindat.org) (英語)