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アレクサンドル・ビュコック(ビデオ版:Arexandor Bucock、DVD版:Alexandre Bewcock)は、『銀河英雄伝説』の登場人物。

概要編集

同盟軍の誇る宿将で、ヤンの数少ない理解者の一人。 二等兵からの叩き上げであり、堅牢な戦いを得意とする同盟末期の名将である。その手腕には帝国の諸提督も苦戦している。

幕僚と副官に、モンシャルマン、クレメンテ、ファイフェル、スーン・スール、チュン・ウー・チェンがいる。乗艦はリオ・グランデ。

OVA版での外見のモデルは、米国の名俳優ジーン・ハックマン

略歴編集

同盟軍には二等兵として入隊。物語に登場する最も古い戦歴は宇宙暦745年の第2次ティアマト会戦であり軍曹。戦艦シャー・アッバスの砲術下士官として参戦していた。原作小説ではこの時19歳と記述されており、ヤン・ウェンリーがブルース・アッシュビー謀殺疑惑の調査を担当した788年当時は62歳(准将、マーロヴィア星域方面管区の警備司令官)となっているので、宇宙暦726年生まれであると推定出来る(ただしコミック版のデータには727年12月8日生まれとある)。

宇宙暦795年の第3次ティアマト会戦の時点で中将、第5艦隊司令官となっており、796年10月のアムリッツァ星域会戦の後に大将、宇宙艦隊司令長官に就任した。799年2月のランテマリオ星域会戦(会戦前に元帥に昇進)では陣頭指揮を執ったが、戦力差はいかんともしがたく、敗北を喫する。バーラトの和約後に退役したが、第2次ラグナロック作戦に対抗する為現役復帰。翌年1月のマル・アデッタ星域会戦で再びラインハルトと戦った。ビュコックは圧倒的兵力差にもかかわらず、星域の複雑な地形・現象を利用し、老練・勇猛果敢な戦術で帝国軍に想定外の苦戦を強いた。その戦いぶりは一時ラインハルトの本営に迫るほどで、ミッターマイヤーをして「老人め、やる!」と言わしめるほどだったが、ついに圧倒的な物量差の前に戦闘行動をとることができなくなった。その際に受けたラインハルトからの降伏勧告を、民主主義が専制政治に屈するわけにはいかないと謹んで辞退し、座乗艦のリオ・グランデと運命を共にした。74歳没。ラインハルトはその潔い最期および戦いぶりに敬意を表し、帝国軍全将兵にマル・アデッタ星域を通過する際に起立敬礼をするように命じた。

能力編集

その豪胆かつ緻密な指揮能力は、同じ同盟軍はもちろん、帝国の将帥たちも一目置く。ただし、その「現場暮らし」が長すぎた経歴のせいか「本質的には戦略家ではなく戦術家」という評もあり、またウランフやボロディンとは厚い信頼で結ばれていたものの、トリューニヒト派が多数を占める多くの提督たちや軍上層の幹部たちとは不仲であった。「呼吸する軍事博物館」(ミッターマイヤー評)とも言われ、ラインハルトは敬意を込めて「老人」と呼び、同盟軍の上官であったシドニー・シトレも、自らの新任士官時代に教えを受けたこの老将に敬意を払っていた。「『老練』という言葉をビュコック提督以外に使うな」と評された事さえある。

彼の部下からは司令長官になれば同盟はもう少しマシな戦いができると言われたが、士官学校を卒業しなかった為、この時点ではビュコックが司令長官になるのはまず叶わないだろうとされていた。アムリッツァで多くの人材が失われた為、皮肉にも(作中の記述より)司令長官になったとされ、この人事については内外に好評を得た。ただし他に同盟軍において士官学校を卒業していない提督として、ライオネル・モートンがおり、昇進もビュコックよりは早い[1]。また同盟軍には士官学校の経歴が無い軍人に士官以上の任官の機会を与える機関として、幹部候補生養成所なるものが存在している[2]

前述の通りトリューニヒト派とは不仲であり、軍組織の間では孤立気味であった。

ヒルダによる評価では、戦術面。艦隊指揮の能力ではヤンには及ばないとされる[3]。ボーステックから発売されているPC版ゲームにおいては、ヤンと並び同盟軍最高水準の能力を誇り、ミッターマイヤーやロイエンタールに互するほどである。

人柄編集

叩き上げの硬骨漢らしく、周囲からは「おっかない親父さん」と呼ばれているが、ヤンに対しては好々爺として接する事が多い。誤解されやすいタイプであるか、あるいは相手により態度を変える人物であるようだ(実際、トリューニヒト派の軍人に対しては怒りを隠さない態度を取っている)。彼をよく知る者からは「同盟に過ぎたる者」として尊敬と畏怖を集める存在。ヤンに対して好々爺として接した事から、ヤン艦隊の面々は畏怖よりも親しみを感じているようであり、訃報が届いた際には皆揃って落ち込むほどだった。ポプランは「同盟なんかには勿体ない見事な爺さん」と呼んで敬愛している。広い視野と客観的な思考を備えており、ヤン艦隊のメンバーに勝るとも劣らぬ毒舌ぶりを示す事がある。ただし、ヤンと違ってあくまでも軍人としての視点から物事を捉える傾向がある。しかしあくまで「民主体制下の軍人」である事に誇りを持っており、副官のファイフェルが軍国主義的な発言をした際、それをたしなめる場面も見られ、軍国主義者とは対極的な立場にある。「同盟は独裁国家として長らえるより、民主国家として滅びるべき」という発言は、彼の民主体制下の軍人としての矜恃を示すものである。

マル・アデッタ星域会戦で降伏を勧告された時のラインハルトに対する弁舌は、ビュコックの人となりを全て表していると言われている。清廉な態度で戦死した姿を見届けたラインハルトは、戦場を後にする際に全軍に敬礼を命じ、また、後に同盟元首ジョアン・レベロを殺害して降伏してきたロックウェル等一部の軍人達の腐臭漂う言動に遭遇してその違いに改めて考え込み、白ワインを撒いて弔った。その際にラインハルトはロックウェル達と民主主義に殉じたビュコックを比較し、原作小説ではビュコックを「新雪」、OVA版では「山の清水」と表現している。

先述どおり、ヤン・ウェンリーのよき理解者であり、有力な協力者でもあった。ヤンにとっても彼は、恩師であるシドニー・シトレと並んで最も敬愛する上官で、全幅の信頼を寄せる相手であった。 救国軍事会議のクーデターを予見した際も、彼だけはそのような愚行に加わる事は決してはあり得ない、と信じ、対処への協力を要請した(もっとも元々憲兵的な仕事が苦手であり、結果的には腐敗した組織内で孤立していた彼一人の手には余り、事態を未然に防ぐ事はできなかった)。 彼の最後の奮戦は、期せずしてヤンのイゼルローン要塞再奪取への側面援護ともなったが、同盟を離脱したヤンはビュコックの現役復帰を知らず、全てが終わった後に悲報を聞いて痛惜する結果となった。もしヤンが事前にこの事を知っていたならば、彼は「恐らく生涯で初めて、(ビュコックに加勢して)勝算のない戦いに挑む」事になったであろうと言われている。

家族編集

ハイネセンでは夫人と2人で暮らしている。夫人との仲は、フレデリカがうらやむほど良い。息子が2人あったが、共に戦死したという。第2次ラグナロック作戦で、夫が現役復帰して帝国軍と対決するのを悟り、黙ってしまっておいた軍服を手渡した。夫戦死後の動向は不明。

演じた人物編集

アニメ
舞台
  • 藤原啓児(「銀河英雄伝説 輝く星 闇を裂いて」、2012年上演)
  • 伊藤哲哉(「銀河英雄伝説 第三章 内乱」、2013年上演~「銀河英雄伝説 第四章 後篇 激突」、2014年上演) 

脚注編集

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  1. ^ OVA版の描写ではラルフ・カールセンも含まれる。
  2. ^ ワルター・フォン・シェーンコップの軍歴より。ビュコック自身の軍歴としては、作中に記述は無い。
  3. ^ マル・アデッタ星域会戦/ヤンによるイゼルローン要塞再奪取の直後において、ラインハルトを食い止めるのはヤンしかいないが、イゼルローン要塞の再奪取は策を授けておけば他でもできる、とヒルダが述べている。
  4. ^ @gineidenanime (2018年3月16日). "【TOKYO MX放送開始まであと20日】本日の解禁はアレクサンドル・ビュコックです。演じるのは石原凡さん!明日の解禁はシドニー・シトレです、お楽しみに!" (ツイート) – via Twitter.

関連項目編集