アンタッチャブル (テレビドラマ)

アンタッチャブル』(原題:The Untouchables)は、 アメリカ合衆国テレビドラマABCテレビ1959年10月16日から1963年5月21日まで放送された。全116回とパイロット版が2回。モノクロ作品。日本ではNET(現・テレビ朝日)で放映された(ライオン歯磨一社提供[1]
また関東広域圏においては1970年代後半に東京12チャンネルにて深夜帯に放送されており、当時を知る世代においては「アンタッチャブル=テレビドラマ版」が印象深いという人が多い。

アンタッチャブル
The Untouchables
エリオット・ネス役のロバート・スタックとグロリア・タルボット(1962年)
原案 アラン・A・アーマー
デジ・アーナズ
出演者 ロバート・スタック
アベル・フェルナンデス
ニコラス・ジョージアーデ
ポール・ピサーニ
ネヴィル・ブランド
テーマ曲作者 ネルソン・リドル
作曲 ネルソン・リドル
国・地域 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
シーズン数 4
話数 116話 & パイロット版2話
各話の長さ 45-48分
放送
放送チャンネルABC (1959年-1963年)
放送期間1959年10月16日 (1959-10-16) - 1963年5月21日 (1963-5-21)
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概要 編集

1930年代禁酒法時代のアメリカを舞台に、FBI特別捜査班の捜査官・エリオット・ネスシカゴニューヨークをはじめ、アメリカのギャングや犯罪者を摘発する姿を描いた実録タッチの犯罪ドラマ。

原作は1957年に刊行されたネスの自伝。ネスは司法省(発足当時は財務省管轄)酒類取締局の特別捜査官として特別捜査班を発足させ、シカゴでアル・カポネ逮捕に貢献したと主張していた。UPI通信のスポーツライターだったオスカー・フレイリー(Oscar Fraley)は、ネスへのインタビューと提供された資料を基に自伝「The Untouchables」としてまとめた。自伝は成功を収めるが、ネスは出版直前に急死し、その成功を見ることはなかった。

テレビ・シリーズの放送に先駆けてABCテレビの「デシル劇場」の中で、原作に基づき、特別捜査班がシカゴでカポネを逮捕するまでのストーリーが前後編で放映された。一般にパイロット版と呼ばれる。日本では『どてっ腹に穴をあけろ』の邦題で劇場公開され、後に『ザ・アンタッチャブル/どてっ腹に穴をあけろ』の邦題でVHS&LD化もされた。上映時間93分。パイロット版の好評を受け、シリーズ化が決定。その際にネスの立場をFBI特別捜査班のリーダーと改めた。そのため、ドラマの中では、本来、ネスの関係しなかったラッキー・ルチアーノダッチ・シュルツレッグス・ダイアモンドケイト・バーカーなど悪名高い犯罪者とも対決することとなった。ナレーターにコラムニストとして一世を風靡したニコラス・ウィッチェルを起用し、ドキュメンタリードラマのようなタッチで演出された。ストーリーは、FBI特別捜査班がニューヨークやシカゴを舞台にギャングのからんだ事件を解決するエピソードを中心にしつつ、実在の有名なギャングや犯罪者の逮捕や末路、有名事件の顛末を扱った作品も制作された。

新聞や雑誌で騒がれた実在の有名ギャングが次々と登場しエリオット・ネスと対決する実録タッチのストーリーに加え、ギャング対ギャング、あるいはギャング対特別捜査班でトミーガンをぶっ放す過激な銃撃シーンが話題を呼び、全米では40%という高視聴率をマーク、主人公エリオット・ネス役のロバート・スタックは、1960年に第12回プライムタイム・エミー賞を受賞した[2]

アメリカでは犯罪実録ドラマの草分けとして、今もなお評価されている。日本での放送も爆発的なヒットとなり、「アンタッチャブル」という言葉が流行した。日本の刑事ドラマの古典的名作『特別機動捜査隊』は、実録タッチのナレーションなど明らかに「アンタッチャブル」を意識している。時代劇『大江戸捜査網』も初期第1シリーズには『大江戸捜査網アンタッチャブル』と云う題名であり、オープニングでのナレーションでは「隠密同心。それは時の老中松平定信の命により、無役の旗本内藤勘解由が 悪の砦に密かに放った過酷非情の男達だ。変装 囮 様々な手段を使い彼らは身を挺して犯罪者及び其の組織に挑戦する。相手を殺すのは自由だが、我が命を失っても顧みる者は無い。此れは生と死のデッドラインを突っ走るアンタッチャブル。彼等に明日は無い」とされ。製作の日活での解説には『時代劇をアメリカ合衆国のテレビドラマ「アンタッチャブル」のコンセプトで、製作を開始したものである。』とされて、単に「大江戸アンタッチャブル[3]とも云われて居たと云う。

一方、カポネをはじめ悪者のほとんどがイタリア系だった事から、放送当時はイタリア系アメリカ人がABC本社前でのデモや、番組のスポンサーとなっている企業の製品の不買運動を行なった[4]。イタリア系の歌手・俳優のフランク・シナトラも番組を批判している[5]。またカポネの未亡人と息子も制作関係者に対して「名誉棄損」で裁判を起こしているが、結局敗訴となっている。また暴力を助長するドラマとして批判され、終盤ではクライマックスでの銃撃戦を控えるなどの路線変更が行われた。

1987年リメイク映画アンタッチャブル』が、1993年にリメイクテレビドラマ『新・アンタッチャブル』が制作された。

キャスト 編集

レギュラー・準レギュラー 編集

注・レギュラーの声を担当していた声優は、日下と黒沢以外は、ゲストや脇役の声も担当していた。上記以外にも、松宮五郎、富田耕生、近石真介らが準レギュラーとして参加し、毎回違った役を演じていた。なおカポネ役が小林清志と紹介されていることが多いが、小林がカポネの声を担当したのは、日本で最終エピソードとして放映された「暗黒の帝王カポネ」のみで、そもそもカポネはレギュラー放送では、回想シーンを除いてはこのエピソードだけしか登場しない。小林は、レギュラー声優としてゲストの声やセミレギュラーであるシカゴ警察のジェイコプ署長の声を富田耕生と交代で担当していた。若山も当初は別のゲストの声を担当していた。

主なゲスト出演者 編集

後に有名ドラマで主演を張る俳優が多数ゲスト出演している。担当した声優が判明しているものを紹介。

 
左からアベル・フェルナンデス、ニコラス・ジョージアーデ、ポール・ピサーニ、ロバート・スタック(手前の座っている人物)
 
アル・カポネ役のネヴィル・ブランド

スタッフ 編集

日本語版制作スタッフ

放映リスト(日本放映版) 編集

日本放映版とアメリカ放映版は若干放送順が異なる。また第一シーズンで放映された、“The Unhired Assassin Part1&2”は日本では放映を見合わせた。フロリダで起きたルーズベルト大統領暗殺未遂事件を扱ったエピソードだが、演説会場で暗殺を図るという内容が、当時、日本で起きた日本社会党浅沼稲次郎暗殺事件を連想させる内容のためと思われる。

  • ()括弧内は通算放送回
放送回 題名 原題
Pt どてっ腹に穴を開けろ Pilot
第1シーズン(1st Season/1959-1960)
1(1) 血で血を洗え The Empty Chair
2(2) 暗黒の誘拐 The George "Bugs" Moran Story
3(3) 真面目な奴は死ね You Can't Pick the Number
4(4) 死を賭けた情報 The Jake Lingle Killing
5(5) 地獄の聖歌 Ma Barker and Her Boys
6(6) 暗黒街の掟 The Dutch Schultz Story
7(7) 地底の叫び The Tommy Karpeles Story
8(8) 明日なき出獄 One-Armed Bandit
9(9) 宿命の復讐 The St. Louis Story
10(10) 裏切りの三叉路 Head of Fire, Feet of Clay
11(11) 恐怖の秘密結社 The Noise of Death
12(12) 密告者をばらせ The Organization
13(13) 折れた牙 The Big Squeeze
14(14) 証人を消せ Star Witness
15(15) 大都会の墓場 The Frank Nitti Story
16(16) 血ぬられた鍵 The Doreen Maney Story
17(17) 歪んだ罠 Nicky
18(18) 絞首台への契 The Artichoke King
19(19) 恐怖のハイウェイ The Tri-State Gang
20(20) 崩れた顔 The Underground Railway
21(21) 狂犬 Vincent "Mad Dog" Coll
22(22) 野望の果て The Rusty Heller Story
23(23) 汚れた街 Little Egypt
24(24) 白い奴隷 White Slavers
25(25) 悪業の報酬 Portrait of a Thief
26(26) 三千人の容疑者 3000 Suspects
27(27) 終局 A Seat on the Fence
28(28) 血と機関銃と酒と The Waxey Gordon Story
第2シーズン(2nd Season/1960-1961)
1(29) 復讐 Jack "Legs" Diamond
2(30) 地底の掟 The Mark of Cain
3(31) 失われた栄光 The Otto Frick Story
4(32) 野獣の饗宴 Jamaica Ginger Story
5(33) 腐敗 Syndicate Sanctuary
6(34) 血ぬられた恋 Underworld Bank
7(35) 地獄の断層 Ain't We Got Fun?
8(36) 報いなき死闘 The Purple Gang
9(37) 幻の一億ドル Mr. Moon
10(38) 死神に憑れた女 Kiss of Death Girl
11(39) 破滅への策謀 The Larry Fay Story
12(40) 絶滅への誘い The Nick Moses Story
13(41) 地獄への疾走 Mexican Stake Out
14(42) 失われた水平線 The Underground Court
15(43) 魔性の女 The Lily Dallas Story
16(44) 暴かれた秘密 Ring of Terror
17(45) 死を賭けた証言 Testimony of Evil
18(46) 歪んだ野望 The Antidote
19(47) 狂乱のカーニバル Murder under Glass
20(48) 死を商う男 Death for Sale
21(49) 死人の復讐 Stranglehold
22(50) 死への跳躍台 King of Champagne
23(51) 血に飢えた男 The Seventh Vote
24(52) 暗黒のスラム街 Augie "The Banker" Ciamino
25(53) 絶命への復讐 The Masterpiece
26(54) 真昼の虐殺 The Nero Rankin Story
27(55) 裏切りの報酬 The Nick Acropolis Story
28(56) 死への逃避行 Power Play
29(57) 策謀のパイプライン The Matt Bass Scheme
30(58) 炎の女 90 Proof Dame
第3シーズン(3rd Season/1961-1962)
1(59) 奈落の対決 Tunnel of Horrors
2(60) 暗黒の落差 Loophole
3(61) 背信の野獣 The Troubleshooter
4(62) 悪の系譜 The Genna Brothers
5(63) 切れた絆 Hammerlock
6(64) 陰謀の断点 Jigsaw
7(65) 死者との契約 Man Killer
8(66) 静かなる死斗 City without a Name
9(67) 背徳の十字路 The Canada Run
10(68) 電気椅子への代理人 Fall Guy
11(69) 復讐の十字路 Silent Partner
12(70) 死と権謀との接点 The Whitey Steele Story
13(71) 王座への挑戦 The Gang War
14(72) 死を招く愛情 Takeover
15(73) ストライカー兄弟 The Stryker Brothers
16(74) 生と死の綱渡り Element of Danger
17(75) 三代の確執 The Death Tree
18(76) 泥まみれのプリンス The Maggie Storm Story
19(77) 片腕の盗人 スロットマシン Man in the Middle
20(78) 氷の柩 The Chess Game
21(79) 完全なる告白 The Pea
22(80) 破滅への設計図 The Cooker in the Sky
23(81) 最後の目撃者 The Economist
24(82) 栄光に背く者 The Snowball
25(83) エレジー Elegy
26(84) 殺人の個人教授 Come and Kill Me
27(85) 恐怖のインコ Bird in the Hand
28(86) 最後の裏切り The Eddie O'Gara Story
29(87) 目には目を An Eye for an Eye
30(88) 死者に花束を Search for a Dead Man
31(89) 正義は金で買え A Fist of Five
32(90) 策謀の鉄路 Doublecross
33(91) 死を呼ぶ特権 The Floyd Gibbons Story
34(92) 破滅へのギャンブル The Speculator
35(93) 恐怖の神経麻痺 Jake Dance
36(94) グースに送るブルース Blues for a Gone Goose
37(95) 地球儀の秘密 Globe of Death
38(96) 殺意の焦点 Junk Man
第4シーズン(4th Season/1962-1963)
1(97) 血ぬられた聖夜 The Night They Shot Santa Claus
2(98) 裏切りへの仮出獄 The Man in the Cooler
3(99) 奪われた栄光 The Butcher's Boy
4(100) 暗黒への傾斜 Downfall
5(101) 生きていた死体 The Case against Eliot Ness
6(102) 破局への誘い The Ginnie Littlesmith Story
7(103) 泥沼の友情 The Contract
8(104) 憎悪への復讐 Pressure
9(105) 死の密入国 The Monkey Wrench
10(106) 鋼鉄の牙 Arsenal
11(107) 殺し屋の末路 The Torpedo
12(108) 死線 Line of Fire
13(109) 明日なき航路 The Spoiler
14(110) 魔の手 One Last Killing
15(111) 密告者の正体 The Giant Killer
16(112) 血の遺産 The Charlie Argos Story
17(113) 光なき死斗 A Taste for Pineapple
18(114) 狂った旋律 The Jazz Man
19(115) 暗黒の帝王カポネ(1) The Big Train (1)
20(116) 暗黒の帝王カポネ(2) The Big Train (2)

脚注 編集

  1. ^ 「テレビ・コマーシャルの考古学」による。
  2. ^ The Untouchables (1959) - Awards
  3. ^ 本来はルビでは無いが、題名の捜査網の真下にアンタッチャブルの文字が入った為、ルビと間違える人が多発し、第1シリーズの筆頭同心を演じた本人も間違えて居り、第3シリーズのDVD発売での記念インタビュー内では演じた本人の杉良太郎が、テレビ東京の女性アナウンサーの「若い時の思い出、杉さん御自身にとっても、『大江戸捜査網』は、特別な作品でいらっしゃいましたか?」の問いに、「そうですねぇ 『大江戸捜査、』、┅、初めは"大江戸アンタッチャブル"って言ってましたんで、ですね。」、「『大江戸アンタッチャブル』。(アナウンサー)」。「ええ、『大江戸アンタッチャブル』で、アンタッチャブルとは何だ時代劇に相応しく無い名前だ。とよく聴きました。其れで、改めまして、『大江戸捜査網』に変わったんですね」と述べて居る。其れに対して女性アナウンサーは「『大江戸アンタッチャブル』存じ上げませんでした」と応え、自社の作品であるが、ルビでは無いと云う事を知らなかった。
  4. ^ BSコラムNHK 海外ドラマ ■海外ドラマ■ドラマの中の米国史 その3 by 岸川靖
  5. ^ Talese, Gay: "Frank Sinatra Has a Cold", page 27. Esquire, April 1966
  6. ^ 1961年の映画『ギャング紳士録』でもアル・カポネを演じている。

関連項目 編集

外部リンク 編集

NET 火曜20時枠
前番組 番組名 次番組
アンタッチャブル
(1961年5月〜1962年3月)
プロ野球中継
(20:00 - 21:30)
NET系 水曜20時枠
アンタッチャブル
(1962年4月〜6月)
NET系 月曜20時枠
前番組 番組名 次番組
アンタッチャブル
(1963年1月〜1964年6月)