インスタント茶
インスタント茶(インスタントちゃ)とは、茶の抽出液を乾燥させて粉末状に加工したインスタント食品である。湯を注ぐだけでお茶が完成する。本項目では主に日本茶について解説している。
概要
編集お湯を注ぐだけで入れたての茶が飲めるため、主にオフィス内の自動給茶機や外食チェーン店で使用されている。2020年現在の年間生産量は約1800トンとされ、茶全体の約6%を占めている。
茶葉の廃棄物が出ないため、リーフパック式(お茶葉のパック)に替わって普及している。
歴史
編集1899年 アメリカの日本人科学者のカトウ・サトリ博士が、インスタント茶を研究中にインスタントコーヒーが作られたという記録がある。 [1][2][3][4][5]。真空フリーズドライ手法の確立。
1918年 玉露園の創業者・藤田馬三(うまぞう)が粉末の昆布茶を発売[6]。これは粉末茶の域を出なかった。
製法
編集インスタント茶の製法にはスプレードライとフリーズドライの2種類があるが、大量生産に有利なスプレードライ法が主流になっている。
スプレードライ法
編集高温の乾燥筒の中に、高温の茶液を噴霧して素早く乾燥させる方法で、使われる装置は一般的に「気流乾燥装置」と呼ばれる。製品は微粉状となる。冷たい水にも溶けやすいという利点があり量産性が高いが、製造時の熱によって香味をやや損ないやすい(製造時の熱は熱風中に数秒間ブロー乾燥させたのちすぐに冷却される程度のものである)。但し、香味の損耗については製造工程の改善もあり極端なものではない。(噴霧乾燥を参照。)
フリーズドライ法
編集フリーズドライは「真空凍結乾燥技術」のことで、予め加熱や味付け等の処理をした、もしくは水分を含んだ食品や食品原料を-30℃程度で急速に凍結し、さらに減圧して真空状態で水分を昇華させて乾燥したもの[11]。製造に手間がかかるためやや量産性に劣る。このため、スプレードライ法の製品より価格は高めである[12]。(フリーズドライを参照。)
フリーズドライによるメリット
編集- 常温で長期保存ができる
- 低水分(一般的に5%以下)であるため軽く、輸送性が高い
- ビタミンなどの栄養成分や風味の変化が少ない
- 収縮や亀裂などの形態の変化が少ない
- 多孔質で水や熱湯が侵入しやすいので、復元性・溶解性がよい
インスタント茶と抹茶・粉末茶・粉茶との違い
編集茶は茶葉・部位・香り・味・産地で分類されているが、インスタント茶は明確に製法が明確に違う。
脚注
編集- ^ RANDY ALFRED,Aug. 11, 1903: Instant Coffee, a Mixed Blessing,08.11.09 ,12:00 AM.WIRED(日本語訳WIRED2009.9.10.「インスタント・コーヒー、最初の特許は日本人」
- ^ 西東秋男編『日本食文化人物事典 人物で読む日本食文化史』筑波書房,2005
- ^ 富田仁編『事典近代日本の先駆者』(日外アソシエーツ 1995)
- ^ 「インスタントコーヒーを発明した人に日本人とアメリカ人がいるらしい。名前を知りたい。」(大阪市立中央図書館) - レファレンス協同データベース カトウ・サトリについては彼とその発明品について著述したいずれの文献でも詳細な情報に乏しく、このレファレンス事例でも詳細不明のままである。
- ^ 日本インスタントコーヒー協会サイト「インスタントコーヒーの始まり」
- ^ 薬種問屋時代の経験が生んだ 元祖インスタント飲料 - COMZINE NTTコムウェア 2017年4月10日閲覧)
- ^ デリス・ド・キュイエール川上文代料理教室 監修 『I Love お茶漬け 365』 p.164 ナツメ社 2009年7月13日発行 ISBN 978-4-8163-4732-0
- ^ 丸山園の歴史 株式会社丸山園本店 2017年4月10日閲覧)
- ^ 知的資産経営報告書 日本緑茶株式会社 2017年4月10日閲覧)
- ^ 茶のあゆみ - 茶ガイド(全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会、2011年9月14日閲覧)
- ^ a b よくわかる 食品保存の基本 高橋順一 - J-Net21 中小企業基盤整備機構 2017年4月10日閲覧)
- ^ 豆知識 - 三共食品 2017年4月10日閲覧)
参考文献
編集関連項目
編集- ^ https://www.maff.go.jp/j/heya/h_moniter/pdf/h1702.pdf 「1.緑茶等の消費実態について」, 農林水産省, 2005
- ^ https://www.maff.go.jp/j/heya/h_moniter/pdf/h1702.pdf 「茶系飲料の需要増加と緑茶(荒茶)の生産・流通システムへの影響」, 農林水産省, 2008