イボ・カロビッチ

クロアチアのテニス選手

イボ・カロビッチIvo Karlović, クロアチア語発音: [ǐːʋo kâːrloʋit͡ɕ][1]; 1979年2月28日 - )は、クロアチアザグレブ出身の元男子プロテニス選手。イボ・カルロビッチとも表記される。自己最高ランキングはシングルス14位、ダブルス44位。これまでにATPツアーでシングルス8勝、ダブルス2勝を挙げている。

イボ・カロビッチ
Ivo Karlović
2018年ウィンブルドン選手権でのイボ・カロビッチ
基本情報
国籍 クロアチアの旗 クロアチア
出身地 同・ザグレブ
生年月日 (1979-02-28) 1979年2月28日(45歳)
身長 211cm
体重 104kg
利き手
バックハンド 片手打ち
ツアー経歴
デビュー年 2000年
引退年 2024年
ツアー通算 10勝
シングルス 8勝
ダブルス 2勝
生涯獲得賞金 10,160,232 アメリカ合衆国ドル
4大大会最高成績・シングルス
全豪 4回戦(2010)
全仏 3回戦(2014・16)
全英 ベスト8(2009)
全米 4回戦(2016)
4大大会最高成績・ダブルス
全豪 ベスト4(2010)
全仏 2回戦(2004・11)
全英 3回戦(2005)
全米 2回戦(2004・07・11)
4大大会最高成績・混合ダブルス
全仏 1回戦(2015)
国別対抗戦最高成績
デビス杯 優勝(2005)
キャリア自己最高ランキング
シングルス 14位(2008年8月18日)
ダブルス 44位(2006年4月10日)
2024年2月21日現在

2017年ATPワールドツアー歴代2位の年長優勝記録保持者であった(37歳5か月)[2]

男子プロテニス界で最も大柄な身長211cm、体重104kgの体格から繰り出す強烈なサーブを持ち味とし、通算サービスエース数歴代1位記録を保持する。

選手経歴 編集

ジュニア時代  編集

カロビッチは父親が気象予報士、母親は農業従事者という家庭に生まれ、6歳からテニスを始めた。

2000年 プロ転向  編集

2000年にプロ入り。転向後はしばらく下積み生活が続いた。

2003年 グランドスラム3回戦進出  編集

4大大会初出場となった2003年ウィンブルドンで一躍世界の注目を集めた。当時世界ランキング203位の予選勝者だったカロビッチは第1シードの前年度優勝者レイトン・ヒューイットを1-6, 7-6(5), 6-3, 6-4のスコアで倒した。ウィンブルドン選手権の歴史において、男子シングルス前年度優勝者が1回戦敗退を喫したのは1967年マニュエル・サンタナ以来36年ぶり2人目の出来事だった。カロビッチはこの大会でマックス・ミルヌイとの3回戦まで進出した。この後全米オープンでも予選を勝ち上がり、チャン・シャルケンとの3回戦まで勝ち進む。年初に217位だった彼の世界ランキングは、年末には72位と大幅に上昇した。

2004年 アテネ五輪初出場  編集

2004年ウィンブルドンで2年連続の活躍を見せ、ロジャー・フェデラーとの4回戦まで勝ち上がった。それからアテネ五輪にもクロアチア代表選手として初出場し、シングルス3回戦でカルロス・モヤに敗れた。

2005年 デビス杯初優勝  編集

デビスカップにはクロアチア代表として優勝に貢献した。

2006年 ツアー初優勝  編集

2006年全豪オープン男子ダブルスでヤン・ヘルニチと組んでベスト8に入り、2月末の全米国際インドアテニス選手権クリス・ハガードと組んで男子ツアーダブルス初優勝を果たしている。

2007年 ツアー初優勝  編集

ウィンブルドン1回戦でヒューイットを破ってから4年後の2007年には4月の全米男子クレーコート選手権でシングルス初優勝。6月のノッティンガム・オープンで優勝。10月のストックホルム・オープンで優勝。ツアー3勝を挙げた。

2008年 世界14位  編集

2008年にはノッティンガム・オープンで2連覇を達成する。2008年8月18日付で、彼はシングルス自己最高ランキング「14位」を記録した。

2009年 ウィンブルドンベスト8 編集

2003年の衝撃的なデビューの後、彼はウィンブルドンで2005年-2008年まで4年連続の1回戦敗退にとどまっていたが、2009年ウィンブルドンにて、久々に芝コートの大舞台で活躍を見せ、初の準々決勝に進出した。準々決勝では、5年前の4回戦と同じフェデラーと対戦し、3-6, 5-7, 6-7(3)のストレートで敗れた。デビスカップ2009準決勝チェコ戦のラデク・ステパネク戦で78本のサービスエースを決め、1試合のサービスエース数歴代最多を更新した(この記録は2010年ウィンブルドン選手権ジョン・イズナーニコラ・マユの史上最長試合でイズナーが113本で更新。マユも103本決め、カロビッチの記録は歴代3位となった)。

2011年 編集

2011年3月5日、デビスカップ2011・ワールドグループ1回戦クロアチアドイツのダブルスで歴代最速サーブとなる251km/hを記録した[3]。この記録は2012年5月に263km/hを出したサム・グロス英語版に更新されている。

2012年 編集

2012年2月のデビスカップ20121回戦ではビーンズドーム日本と対戦した。カロビッチは錦織圭を6-4, 6-4, 6-3、添田豪を7-6, 6-1, 6-4で破り、ダブルスも制して3勝を挙げ日本に勝利した[4]

2013年 ツアー5勝目  編集

2013年春にはウィルス性髄膜炎でツアーの離脱を余儀なくされランキングは100位以下に低下してしまったが、7月のコロンビア・オープンで決勝に進出しアレハンドロ・ファジャを6–3, 7–6(4)で破り5年ぶりのツアー5勝目を挙げた。

2014年 編集

2014年シーズンはサービスエース数1185本、ファーストサービスポイント率84%でツアー1位を記録。サービスゲーム勝率93%、ブレークポイントセーブ率72%は2位にランクインした。

2015年 ツアー6勝目  編集

2015年1月カタール・エクソンモービル・オープン1回戦にて通算サービスエース数9000本を達成。ゴラン・イワニセビッチアンディ・ロディックに次ぐ史上3人目の記録[5]。また準々決勝で世界ランク1位のノバク・ジョコビッチを6-7(2), 7-6(6), 6-4で勝利した。2月のデルレイビーチ・オープンドナルド・ヤングを6-3, 6-3で勝利し優勝。35歳11ヵ月での優勝は大会最年長で1989年のジミー・コナーズ(37歳1ヶ月)以来のATPツアー年長記録。[6]6月のゲリー・ウェバー・オープン準々決勝対トマーシュ・ベルディハ戦にてサービスエースを45本決め、3セットマッチの男子シングルス最多サービスエース数の新記録を更新した。[7]10月のチャイナ・オープン2回戦対パブロ・クエバス戦ではサービスエースを26本決め、キャリア通算でのサービスエースを10247本とし、ゴラン・イワニセビッチの持つ記録を更新して歴代でのキャリア通算サービスエース数で1位となった[8]。デビスカップでは決勝に進出したが、決勝ではファン・マルティン・デルポトロ擁するアルゼンチンに2勝3敗で敗れ準優勝だった[9]

2016年 ツアー8勝目  編集

2016年7月のテニス殿堂選手権では、決勝でジル・ミュラーを6-7(2), 7-6(7), 7-6(12)の接戦を制し、優勝。この優勝は37歳4か月の優勝で、ATPワールドツアーマーティ・リーセンに次ぐ歴代2位の年長優勝記録となった[2]。翌週のシティ・オープンでは500シリーズの決勝に初めて進出するが、ガエル・モンフィスに7-5, 6-7(6), 4-6で敗れた。

2017年 全豪75本サービスエース  編集

2017年全豪オープンの1回戦ではオラシオ・セバジョスと対戦し、6-7(6), 3-6, 7-5, 6-2, 22-20で勝利した。試合時間5時間14分は全豪オープンの歴史で2番目に長く、サービスエース75本は大会記録だった[10]ロスマーレン・グラスコート選手権では第1シードのマリン・チリッチにフルセットで勝利し決勝進出。しかし決勝はジレ・ミュラーに敗れた。

2018年 編集

2018年全豪オープンは3回戦でアンドレアス・セッピにフルセットの末敗れた。その後はデルレイビーチ・オープンBNPパリバ・オープンマイアミ・オープンでは1回戦負けに終わるなど良い成績は残らなかった。しかし10月のカルガリー・チャレンジャー英語版では優勝を飾り、チャレンジャーツアーの最年長優勝の記録を作った[11]。年間最終順位は101位だった。

2019年 編集

2019年年初のマハラシュトラ・オープンの1回戦で18歳のフェリックス・オジェ=アリアシムに勝利した。両者の年齢差は21歳6カ月で、これは1976年以降で最も大きい年齢差だった。その後、最年長のツアー決勝進出者になったが[12]、決勝ではケビン・アンダーソンに6-7(4), 7-6(2)、6(5)-7(5)で敗れた[13]全豪オープンでは2回戦で錦織圭に3-6, 6-7(6), 7-5, 7-5, 6-7(7)で敗れた。全仏オープン1回戦の勝利は、1978年のケン・ローズウォールに次ぐ年長でグランドスラムの白星になった[14]。しかし、ATPツアーレベルでは結果を残せなかった。11月のヒューストン・チャレンジャーで決勝進出したが、優勝記録更新はならなかった。年末順位は95位。

2020年  編集

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響でツアーが一時中断される環境の中で結果を出せず、ツアーレベルの勝利は全豪オープンの1回のみ、全仏オープンでは予選敗退に終わった。年末順位は147位。

2021年  編集

2021年デルレイビーチ・オープン1回戦に勝利し、ジミー・コナーズ(当時42歳)に次ぐツアー歴代2番目の最年長白星を記録した[15]

サーブ記録 編集

現役男子プロの中でも群を抜くビッグサーバーとして知られるカロビッチだが、他にもサーブにまつわる様々な記録を残している。

ATPツアー決勝進出結果 編集

シングルス: 19回 (8勝11敗) 編集

大会グレード
グランドスラム (0-0)
ATPファイナルズ (0-0)
ATPツアー・マスターズ1000 (0-0)
ATPツアー500 (0-1)
ATPツアー250 (8–10)
サーフェス別タイトル
ハード (4–6)
クレー (1–1)
芝 (3–4)
カーペット (0–0)
結果 No. 決勝日 大会 サーフェス 対戦相手 スコア
準優勝 1. 2005年6月23日   ロンドン   アンディ・ロディック 6-7(7-9), 6-7(4-7)
準優勝 2. 2007年2月18日   サンノゼ ハード   アンディ・マリー 7-6(7-3), 4-6, 6-7(2-7)
優勝 1. 2007年4月9日   ヒューストン クレー   マリアノ・サバレタ 6-4, 6-1
優勝 2. 2007年6月23日   ノッティンガム   アルノー・クレマン 5-7, 6-4, 7-5
優勝 3. 2007年10月14日   ストックホルム ハード (室内)   トーマス・ヨハンソン 6-3, 3-6, 6-1
優勝 4. 2008年6月24日   ノッティンガム   フェルナンド・ベルダスコ 7-5, 6-7(4-7), 7-6(8-6)
準優勝 3. 2010年2月28日   デルレイビーチ ハード   エルネスツ・ガルビス 2-6, 3-6
優勝 5. 2013年7月21日   ボゴタ ハード   アレハンドロ・ファジャ 6-3, 7-6(7-4)
準優勝 4. 2014年2月16日   メンフィス ハード (室内)   錦織圭 4-6, 6-7(0-7)
準優勝 5. 2014年5月24日   デュッセルドルフ クレー   フィリップ・コールシュライバー 2-6, 6-7(4-7)
準優勝 6. 2014年7月13日   ニューポート   レイトン・ヒューイット 3-6, 7-6(7-4), 6-7(3-7)
準優勝 7. 2014年7月20日   ボゴタ ハード   バーナード・トミック 6-7(5-7), 6-3, 6-7(4-7)
優勝 6. 2015年2月16日   デルレイビーチ ハード   ドナルド・ヤング 6-3, 6-3
準優勝 8. 2015年7月19日   ニューポート   ラジーブ・ラム 6-7(5-7), 7-5, 6-7(2-7)
優勝 7. 2016年7月17日   ニューポート   ジレ・ミュラー 6-7(2-7), 7-6(7-5), 7-6(14-12)
準優勝 9. 2016年7月24日   ワシントン ハード   ガエル・モンフィス 7-5, 6-7(6-8), 4-6
優勝 8. 2016年8月13日   ロス・カボス ハード   フェリシアーノ・ロペス 7-6(7-5), 6-2
準優勝 10. 2017年6月18日   スヘルトーヘンボス   ジレ・ミュラー 6-7(5-7), 6-7(4-7)
準優勝 11. 2019年1月5日   プネー ハード   ケビン・アンダーソン 6-7(4-7), 7-6(7-2), 6-7(5-7)

ダブルス: 3回 (2勝1敗) 編集

結果 No. 決勝日 大会 サーフェス パートナー 対戦相手 スコア
優勝 1. 2006年2月27日   メンフィス ハード
(室内)
  クリス・ハガード   ジェームズ・ブレーク
  マーディ・フィッシュ
0-6, 7-5, [10-5]
準優勝 1. 2007年7月30日   インディアナポリス ハード   ティムラズ・ガバシュビリ   トラビス・パロット
  フアン・マルティン・デル・ポトロ
6-3, 2-6, [6-10]
優勝 2. 2015年6月14日   スヘルトーヘンボス   ルカシュ・クボット   ニコラ・マユ
  ピエール=ユーグ・エルベール
6-2, 7-6(13-11)

成績 編集

シングルス 編集

グランドスラム大会 編集

略語の説明
 W   F  SF QF #R RR Q# LQ  A  Z# PO  G   S   B  NMS  P  NH

W=優勝, F=準優勝, SF=ベスト4, QF=ベスト8, #R=#回戦敗退, RR=ラウンドロビン敗退, Q#=予選#回戦敗退, LQ=予選敗退, A=大会不参加, Z#=デビスカップ/BJKカップ地域ゾーン, PO=デビスカップ/BJKカッププレーオフ, G=オリンピック金メダル, S=オリンピック銀メダル, B=オリンピック銅メダル, NMS=マスターズシリーズから降格, P=開催延期, NH=開催なし.

2000–2012年
大会 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
全豪オープン A Q3 Q2 A 2R 1R 1R 1R 3R 2R 4R 1R 3R
全仏オープン A A Q1 Q2 1R 1R 2R 2R 1R 1R A 1R 1R
ウィンブルドン選手権 Q3 Q2 Q1 3R 4R 1R 1R 1R 1R QF A 2R 2R
全米オープン Q1 Q2 Q1 3R 1R 2R 1R 1R 3R 1R A 3R 1R
2013–2024年
大会 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 通算成績
全豪オープン 1R 1R 2R 1R 3R 3R 2R 2R A A A A 16–17
全仏オープン A 3R 1R 3R 2R 1R 2R Q2 A A A 8–14
ウィンブルドン選手権 A 1R 4R 2R 1R 2R 2R NH Q1 A A 17–15
全米オープン 2R 2R 2R 4R 1R Q2 1R 1R 1R A A 13–17

大会最高成績 編集

大会 成績
ATPファイナルズ A 出場なし
インディアンウェルズ QF 2011
マイアミ 3R 2010, 2017
モンテカルロ 2R 2008, 2009
マドリード QF 2005, 2008
ローマ 3R 2004, 2008
カナダ 3R 2011, 2015, 2016
シンシナティ SF 2008
上海 3R 2014
パリ 3R 2007, 2009, 2016
ハンブルグ 3R 2008
オリンピック 3R 2004
デビスカップ W 2005

脚注 編集

  1. ^ Ìvan” (セルビア・クロアチア語). Hrvatski jezični portal. 2018年3月17日閲覧。 “Ívo”
  2. ^ a b “Third Time Lucky As Karlovic Lands Newport Title”. ATP. (2016年7月18日). http://www.atpworldtour.com/en/news/karlovic-muller-newport-2016-final  この1か月後のアビエルト・メキシコ・ロス・カボスで優勝している
  3. ^ “テニス=カロビッチが史上最速サーブ、時速251キロ”. Reuters. (2011年3月7日). http://jp.reuters.com/article/sportsNews/idJPJAPAN-19850020110307 
  4. ^ Davis Cup - Tie details - 2012 - Japan v Croatia
  5. ^ カルロビッチが史上3人目となる9000サービスエースを達成
  6. ^ http://www.atpworldtour.com/News/Tennis/2015/02/7/Delray-Sunday-Final-Karlovic-Young.aspx
  7. ^ http://news.tennis365.net/news/today/201506/105036.html?s=relate
  8. ^ “ジョコビッチが中国OPで26連勝、カルロビッチは最多エース更新!”. AFPBB News. (2015年10月10日). https://www.afpbb.com/articles/-/3062620 
  9. ^ アルゼンチン「五度目の正直」でデ杯初優勝! デルポトロが大仕事”. www.afpbb.com. 2019年1月17日閲覧。
  10. ^ “Australian Open records tumbles as Ivo Karlovic prevails in epic 22-20 fifth set against Horacio Zeballos”. NEWS.com.au. (2017年1月17日). http://www.news.com.au/sport/tennis/australian-open-records-tumbles-as-ivo-karlovic-prevails-in-epic-2220-fifth-set-against-horacio-zeballos/news-story/1d3efece9060b35e1755b86f3e3df1b3 
  11. ^ Karlovic Becomes Oldest Challenger Champion | ATP Tour | Tennis”. ATP Tour. 2019年1月17日閲覧。
  12. ^ 39歳カルロビッチが過去42年で最年長のツアー決勝進出者に [タタ・オープン・マハーラーシュトラ]”. tennismagazine.jp. 2019年5月31日閲覧。
  13. ^ アンダーソンがカルロビッチとの「巨人対決」制し優勝、マハラシュトラOP”. www.afpbb.com. 2019年1月17日閲覧。
  14. ^ 家族優先で夜中にジム通い、40歳カルロビッチが全仏最年長対決制す”. www.afpbb.com. 2021年3月4日閲覧。
  15. ^ 41歳カルロビッチが2回戦へ、1995年のコナーズ以降ではツアー最年長のマッチ勝利 [デルレイビーチ・オープン]”. tennismagazine.jp. 2021年3月4日閲覧。

外部リンク 編集