イーデン準男爵(Eden baronets)は、イギリス準男爵[注釈 1]ロバート・イーデンが1672年に叙されたイングランド準男爵位のダラム州における西オークランドのイーデン準男爵と、その曽孫のロバート・イーデン英語版が1776年に叙されたグレートブリテン準男爵位の北アメリカにおけるメリーランドのイーデン準男爵の2つがあり、現在はどちらの準男爵位も同じ人物によって継承されている。また、この家の分流にあたる貴族にエイヴォン伯爵オークランド男爵ヘンリー男爵がある(エイヴォン伯爵家のみ廃絶している)。

歴史 編集

 
メリーランドの初代準男爵サー・ロバート・イーデン英語版

イーデン家はロバート・ド・イーデン(Robert de Eden, -1413)に遡れるが、恐らく12世紀からダラム地方で暮らしていた。1569年北部諸侯の乱英語版に参加し、さらに1640年代イングランド内戦では王党派に参加していたにもかかわらず、土地を維持した[1]

王政復古後の当主ロバート・イーデン(-1720)は、1672年11月13日にイングランド準男爵位の(ダラム州における西オークランドの)準男爵(Baronet of West Auckland in the County of Durham)に叙され、1679年にはカウンティ・ダラム選挙区英語版庶民院議員も務めた[2]

その孫の3代準男爵サー・ロバート・イーデン(-1755)の死後、準男爵位は長男ジョン・イーデン英語版(1740–1812)が継承したが、次男ロバート・イーデン英語版(1741–1784)も1769年から1779年にかけて北アメリカ・メリーランド総督英語版を務め、兄とは別に1776年10月19日にグレートブリテン準男爵位の(北アメリカにおけるメリーランドの)準男爵(Baronet, of Maryland in North America)に叙された[3]。また三男ウィリアム・イーデン英語版オークランド男爵[4]、八男モートン・イーデンヘンリー男爵に叙されている[5]

西オークランドの4代準男爵の子であるロバート (1774–1844)は、1811年に勅許により母方の姓ジョンソンを加えて、ジョンソン=イーデン(Johnson-Eden)に改姓している。1812年に5代準男爵を継承したが、生涯未婚で子供がなかったため[6]、従兄弟の子にあたるメリーランドの第4代準男爵ウィリアム・イーデン(1803–1873)が、西オークランドの6代準男爵も継承することになった[7]

その息子である7代準男爵ウィリアム・イーデン(1849–1915)の三男アンソニー・イーデン(1897–1977)は1955年から1957年にかけて英国首相を務め、本家とは別に1961年に連合王国貴族エイヴォン伯爵に叙されている(ただし2代で廃絶)。

9代準男爵ジョン・イーデン英語版(1925-2020)は、ボーンマス・ウェスト選挙区英語版の庶民院議員を務め、1983年10月3日に一代貴族の連合王国貴族爵位ダラム州におけるラッシーフォードのウィルトンのイーデン男爵(Baron Eden of Winton, of Rushyford in the County of Durham)に叙され、貴族院議員となった[8]

2020年現在の当主は10代準男爵ロバート・イーデン(1964-)

歴代当主 編集

西オークランドのイーデン準男爵 (1672年) 編集

メリーランドのイーデン準男爵 (1776年) 編集

系図 編集

イーデン準男爵家
 
 
 
 
 
 
1672年準男爵(西オークランド)
 
 
 
 
 
 
初代準男爵(西オークランド)
ロバート・イーデン
(–1720)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2代準男爵(西オークランド)
サー・ジョン・イーデン英語版
(–1728)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3代準男爵(西オークランド)
ロバート・イーデン
(–1755)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
1776年準男爵(メリーランド)
 
1789年オークランド男爵
 
1799年ヘンリー男爵
4代準男爵(西オークランド)
ジョン・イーデン英語版
(1740–1812)
 
初代準男爵(メリーランド)
ロバート・イーデン英語版
(1741–1784)
 
初代オークランド男爵
ウィリアム・イーデン英語版
(1745-1814)
 
初代ヘンリー男爵
モートン・イーデン
(1752-1830)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オークランド男爵家へ
 
ヘンリー男爵家へ
 
 
 
 
 
 
 
 
5代準男爵(西オークランド)
ロバート・ジョンソン=イーデン
(1774–1844)
 
2代準男爵(メリーランド)
フレデリック・イーデン英語版
(-1809)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3代準男爵(メリーランド)
フレデリック・イーデン
(-1814)
 
6代準男爵(西オークランド)
4代準男爵(メリーランド)
ウィリアム・イーデン
(1803-1873)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
7代準男爵(西オークランド)
5代準男爵(メリーランド)
ウィリアム・イーデン
(1849–1915)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
1961年エイヴォン伯爵
 
 
 
 
8代準男爵(西オークランド)
6代準男爵(メリーランド)
ティモシー・イーデン
(1893-1963)
 
初代エイヴォン伯爵
アンソニー・イーデン
(1897–1977)
(英国首相)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
エイヴォン伯爵家へ
 
 
 
 
9代準男爵(西オークランド)
7代準男爵(メリーランド)
ジョン・イーデン英語版
(1925-2020)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
10代準男爵(西オークランド)
8代準男爵(メリーランド)
ロバート・イーデン
(1964-)
 

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 準男爵位は爵位と異なり、準男爵という肩書だけ与えられる(「○○準男爵」といった形では与えられない)。他の準男爵位と区別する必要がある場合にのみ姓名を付けたり、由来する地名を付けたりして区別する。

出典 編集

  1. ^ Rhodes James 1986, p3
  2. ^ Lundy, Darryl. “Sir Robert Eden, 1st Bt.” (英語). thepeerage.com. 2019年9月9日閲覧。
  3. ^ Lundy, Darryl. “Sir Robert Eden, 1st Bt.” (英語). thepeerage.com. 2019年9月9日閲覧。
  4. ^ Heraldic Media Limited. “Auckland, Baron (GB, 1793)” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage. 2019年9月9日閲覧。
  5. ^ Heraldic Media Limited. “Henley, Baron (I, 1799)” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage. 2019年9月9日閲覧。
  6. ^ Lundy, Darryl. “Sir Robert Johnson-Eden, 5th Bt.” (英語). thepeerage.com. 2019年9月9日閲覧。
  7. ^ Lundy, Darryl. “Sir William Eden, 4th/6th Bt.” (英語). thepeerage.com. 2019年9月9日閲覧。
  8. ^ Lundy, Darryl. “John Benedict Eden, Baron Eden of Winton” (英語). thepeerage.com. 2019年9月9日閲覧。

参考文献 編集

  • James, Robert Rhodes. Anthony Eden: A Biography (1986) ISBN 978-0070322851

関連項目 編集

西オークランドの7代準男爵の三男アンソニー(英国首相)が1961年に叙された連合王国貴族。1985年廃絶。
西オークランドの3代準男爵の三男ウィリアム英語版が1789年に叙されたアイルランド貴族と1793年に叙されたグレートブリテン貴族。現存。
西オークランドの3代準男爵の八男モートンが1799年に叙されたアイルランド貴族。現存。