ウラン (U) は天然に存在する元素であるが、安定同位体を持たない。全てのウランは放射性であり放射性崩壊の過程にあるが、現在でも地殻中に大量に存在する。天然に存在する同位体はウラン234ウラン235ウラン238であり、平均の原子量は238.02891(3) u である。他の有用な同位体として、高速増殖炉で大量に生成するウラン232がある。

歴史的にはウランの同位体は以下の名称で知られていた。

  • ウラン II (uranium II), 234U
  • アクチノウラン (actino-uranium), 235U
  • ウラン I (uranium I), 238U

天然に存在するウランは3つの主要な同位体からなる。ウラン238 (99.28% 天然存在比)、ウラン235 (0.71%)、ウラン234 (0.0054%)である。同位体は3つとも放射性であり、娘核種もまた放射性同位体である。もっとも安定なウラン238では半減期 4.51×109 年(地球の年齢に近い)であり、ウラン235は7.13×108 年、ウラン234は2.48×105 年である[1]

ウラン238はアルファ崩壊し、ウラン系列の18回の崩壊を通して最終的に鉛206を生成する[2]。これらの種の崩壊定数および親核種と娘核種の比率を用いて放射年代測定を行うことができる。

ウラン233はトリウム232への中性子照射によって作られる。

ウラン235は原子炉核兵器の両方で重要である。ウラン235は天然に利用可能な量が存在する唯一の核分裂性物質である[2]。ウラン238は中性子を捕獲しさらに崩壊することでプルトニウム239を生成する。プルトニウム239も核分裂性物質であるため、ウラン238も原子炉において重要である。

ウラン234の半減期は痕跡量しか存在しないウラン236の約1/100だが、ウラン系列の崩壊生成物として、わずかながら地球上にも天然放射性同位体として存在する。

一覧 編集

同位体核種 Z(p) N(n)  
同位体質量 (u)
 
半減期 核スピン 天然存在比
(モル分率)
天然存在比の範囲
(モル分率)
励起エネルギー
217U 92 125 217.02437(9) 26(14) ms [16(+21-6) ms] 1/2-#
218U 92 126 218.02354(3) 6(5) ms 0+
219U 92 127 219.02492(6) 55(25) µs [42(+34-13) µs] 9/2+#
220U 92 128 220.02472(22)# 60# ns 0+
221U 92 129 221.02640(11)# 700# ns 9/2+#
222U 92 130 222.02609(11)# 1.4(7) µs [1.0(+10-4) µs] 0+
223U 92 131 223.02774(8) 21(8) µs [18(+10-5) µs] 7/2+#
224U 92 132 224.027605(27) 940(270) µs 0+
225U 92 133 225.02939# 61(4) ms (5/2+)#
226U 92 134 226.029339(14) 269(6) ms 0+
227U 92 135 227.031156(18) 1.1(1) min (3/2+)
228U 92 136 228.031374(16) 9.1(2) min 0+
229U 92 137 229.033506(6) 58(3) min (3/2+)
230U 92 138 230.033940(5) 20.8 d 0+
231U 92 139 231.036294(3) 4.2(1) d (5/2)(+#)
232U 92 140 232.0371562(24) 68.9(4) y 0+
233U 92 141 233.0396352(29) 1.592(2)×105 y 5/2+
234U 92 142 234.0409521(20) 2.455(6)×105 y 0+ [0.000054(5)] 0.000050-0.000059
234mU 1421.32(10) keV 33.5(20) µs 6-
235U 92 143 235.0439299(20) 7.04(1)×108 y 7/2- [0.007204(6)] 0.007198-0.007207
235mU 0.0765(4) keV ~26 min 1/2+
236U 92 144 236.045568(2) 2.342(3)×107 y 0+
236m1U 1052.89(19) keV 100(4) ns (4)-
236m2U 2750(10) keV 120(2) ns (0+)
237U 92 145 237.0487302(20) 6.75(1) d 1/2+
238U 92 146 238.0507882(20) 4.468(3)×109 y 0+ [0.992742(10)] 0.992739-0.992752
238mU 2557.9(5) keV 280(6) ns 0+
239U 92 147 239.0542933(21) 23.45(2) min 5/2+
239m1U 20(20)# keV >250 ns (5/2+)
239m2U 133.7990(10) keV 780(40) ns 1/2+
240U 92 148 240.056592(6) 14.1(1) h 0+
241U 92 149 241.06033(32)# 5# min 7/2+#
242U 92 150 242.06293(22)# 16.8(5) min 0+

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  • 同位体比は市販のサンプルの多くに適用できるが一部には存在比が異なるものもある。
  • 同位体存在比と原子量は変動するので値の正確さには限界がある。与えられている範囲は全ての標準的な地球上の物質に適用できる。
  • 地質学的に例外的なサンプルは同位体存在比が上記の範囲の外にあることが知られている。原子量の不確かさはそのような標本のために上記の値を超える可能性がある。
  • 市販の物質については同位体比が不開示であったり、故意でなく同位体比が変わっている場合があり、標準の原子量や存在比から有意に外れている場合がある。
  • #をつけた値は純粋に実験値から得られたデータではなく、少なくとも一部は系統的傾向からの計算値を含んでいる。根拠の弱い核スピンについてはかっこで括っている。
  • 数字の最後のかっこ書きはその数字の不確かさを表す。不確かさの値は同位体の存在比と標準原子量についてはIUPACの公表する拡張不確かさを、それ以外については標準偏差を記載している。

出典 編集

  1. ^ Seaborg, Encyclopedia of the Chemical Elements (1968), page 777
  2. ^ a b The decay series of uranium-235 (also called actino-uranium) has 15 members that ends in lead-207, protactinium-231 and actinium-227.

関連項目 編集