ウルボス (シドニー・ライトレール)

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この項目では、オーストラリアシドニーに存在するライトレールであるシドニー・ライトレール英語版に在籍する、もしくは在籍した車両のうち、スペインの鉄道車両メーカーのCAFが製造した超低床電車ウルボス(Urbos)について解説する。シドニーに導入されたウルボスには、延伸に伴い新造された「ウルボス3」と、その製造が完了するまでの繋ぎとして一時期使用していたリース車両の「ウルボス2」が存在しており、2020年現在運用に就くのは前者である[5][6]

ウルボス3 (インナーウエスト・ライトレール)
2119(2016年撮影)
基本情報
製造所 CAF
製造年 2013年 - 2015年
製造数 16両(2112、2114 - 2128)
運用開始 2014年
投入先 シドニー・ライトレール英語版インナーウエスト・ライトレール
主要諸元
編成 5車体連接車、両運転台
(Mc - S - T - S - Mc)
軸配置 Bo′+2′+Bo′
軌間 1,435 mm
電気方式 直流750 V
架空電車線方式
最高速度 80 km/h
起動加速度 1.2 m/s2
減速度(常用) 1.3 m/s2
減速度(非常) 3.0 m/s2
車両定員 着席74人
立席132人
最大271人(乗客密度6人/m2時)
車両重量 36.0 t
全長 32,923または32,966 mm
全幅 2,650 mm
全高 3,372 mm
床面高さ 350 mm
(低床率100 %)
車輪径 590 mm
主電動機 かご形三相誘導電動機
TSA製TMR 36-18-4[1]
主電動機出力 70 kW
歯車比 5.44[2]
出力 560 kW
備考 主要数値は[3][4][5][6][7][8]を参照。
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ウルボス2 編集

2014年3月27日、シドニーのライトレール路線であるインナーウエスト・ライトレールは、廃止された貨物線を再活用したダリッチヒル(Dulwich Hill)への延伸を実施した。これに合わせた列車本数の増加に対応するために導入されたのが、スペインCAFが製造したウルボス2である。合計4両(2108 - 2111)が使用されたが[注釈 1]、これらは全てスペイン各地の路面電車(ライトレール)から貸し出されたものであり、うち3両(2108 - 2110)は2012年に廃止されたベレス=マラガ・トラム、1両(2111)はセビリア・メトロの車両であった[9][10][5][11][12][13][14]

双方とも同一設計で作られた車両で、編成は既存の車両(バリオバーン)と同様に両運転台式の5車体連接車であったが、乗降扉は利用客が押しボタンで開く半自動式で、車内の座席もロングシートが設置されていた。これらの差異に加え、座席自体の固さや立席客向けの手すりの不足、走行時の揺れなど利用客からは多数の苦情が運営組織に寄せられる事態となった。これらの車両は後述する新造車両のウルボス3が導入するまでの繋ぎとして運用される予定のリース品であったが、最終的に計画よりも8ヶ月早く2014年7月までに運用を離脱し、全車とも同年11月にスペインに返却された。その後、かつてベレス=マラガ・トラムで使用されていた3両については、2016年の時点で同型車両が運行するセビリア・メトロへの譲渡が検討されている[6][9][10][5]

ウルボス3 編集

インナーウエスト・ライトレール 編集

ダリッチヒルへの延伸に伴う本数増加や既存のバリオバーンの置き換え用として、インナーウエスト・ライトレール向けに製造されたのが、前述したウルボス2と同じくCAFが手掛けた超低床電車ウルボス3(Urbos 3)である。全長32.9 mの両運転台式5車体連接車で、乗降扉は前後車体に片開き、中間のフローティング車体に両開き扉が1箇所づつ設置されている。車内の座席配置は2 + 2列のクロスシートを基本とするが、折り畳み座席など一部箇所にはロングシートがあり、多くの立席定員が確保されている。また、監視カメラや火災検知システムなどの安全性、車内案内表示装置や冷暖房双方に対応した空調など快適性も重視されている。車両番号はウルボス2の続番である「2112」から付けられたが、「2113」については西洋文化における忌み数である「13」を含む事から欠番となっている[3][5][6]

2013年から製造が始まり、翌2014年の延伸時には4両(2112, 2114 - 2116)が導入された。残りの8両(2117 - 2124)も2015年5月までに製造が完了し、同年以降インナーウエスト・ライトレールの車両は全てウルボス3(12両)に統一されている。その後、2021年に4両の追加発注が実施され、2023年に納入されている[5][7][6][15]

パラマタ・ライトレール 編集

シドニー中心部(シドニー中心業務地区)の西側に位置するシティ・オブ・パラマッタの中心都市・パラマタでは、今後の都市の発達や人口増加を見据えたライトレールパラマタ・ライトレール英語版)の建設プロジェクトが進められており、2024年5月に第1段階となる全長12 kmの路線が開通する予定となっている。この新たなライトレールの建設や運用についてはトランスデヴ英語版を始めとする多数の民間企業が参加するコンソーシアム「グレートリバーシティ・ライトレール(Great River City Light Rail)」が担当しているが、車両についてもこのコンソーシアムに参加したCAFが製造したウルボス3(13両)の導入が予定されている。これらの車両は7車体連接車で全長45 m、定員300人を予定しており、一部区間に存在する架線レス区間を走行するためリチウムイオンを利用したスーパーキャパシタ充電池を用いた充電システムの「GREENTECH」が搭載される事になっている[7][16][17][18]

関連項目 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 車両番号は開業時に導入されたバリオバーン(2101 - 2017)の続番となった。

出典 編集

  1. ^ CAF Urbos streetcar platform”. 2023年2月14日閲覧。
  2. ^ Gearboxes”. CAF. pp. 26, 27. 2023年8月11日閲覧。
  3. ^ a b SYDNEY TRAM”. CAF. 2020年10月9日閲覧。
  4. ^ Between the Lines IWE Special Edition”. Transdev (2014年4月11日). 2021年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月9日閲覧。
  5. ^ a b c d e f “Sydney’s light rail extension opens”. Trolley wire (South Pacific Electric Railway) 55 (2): 22. (2014-5). ISSN 0155-1264. https://www.sydneytramwaymuseum.com.au/tramway/wp-content/uploads/bsk-pdf-manager/337_-_Trolley_Wire_-_May_2014_219.pdf 2020年10月9日閲覧。. 
  6. ^ a b c d e f Neil Pulling 2018, p. 143.
  7. ^ a b c Tomasz Śniedziewski (2024年3月1日). “Tramwaje w Sydney. Wykorzystana szansa na atrakcyjniejsze miasto”. TransportPubliczny. 2024年3月3日閲覧。
  8. ^ Harry Hondius (2002-7/8). “Rozwój tramwajów i kolejek miejskich (2)”. TTS Technika Transportu Szynowego (Instytut Naukowo-Wydawniczy „SPATIUM” sp. z o.o): 38. http://yadda.icm.edu.pl/yadda/element/bwmeta1.element.baztech-article-BGPK-0379-2650/c/Hondius.pdf 2020年10月9日閲覧。. 
  9. ^ a b Inner West Extension (IWE) FAQs”. Transdev (2014年3月26日). 2020年10月9日閲覧。
  10. ^ a b AGUSTÍN PELÁEZ (2016年7月1日). “From Sydney to Seville - the unfinished journey of the Vélez-Málaga tram”. Diario SUR Digital.S.L.. 2020年10月9日閲覧。
  11. ^ Neil Pulling 2018, p. 144.
  12. ^ Inner West light rail extension now complete”. Transport for NSW (2014年3月27日). 2020年10月9日閲覧。
  13. ^ Fernando Puente (2013年5月13日). “Sydney to lease Velez-Malaga LRVs”. International Railway Journal. 2020年10月9日閲覧。
  14. ^ Sydney opens Inner West light rail extension”. Railway Gazette International (2014年5月27日). 2020年10月9日閲覧。
  15. ^ Keri Allan (2021年6月30日). “The CAF Group has secured tram supply extension contracts in Belgium and Australia, worth a combined value of nearly 100m euros (119.05m USD), in addition to a new signalling installation contract in Turkey.”. Railway-News. 2024年3月3日閲覧。
  16. ^ Neil Pulling 2018, p. 148.
  17. ^ CAF CONSORTIUM SECURES PARRAMATTA LIGHT RAIL CONTRACT IN NEW SOUTH WALES (AUSTRALIA)”. CAF (2018年12月20日). 2020年10月9日閲覧。
  18. ^ GREENTECH TRAM”. CAF. 2020年10月9日閲覧。
  19. ^ 服部重敬「欧州のLRV 最新事情」『路面電車EX』第14巻、イカロス出版、2019年6月20日、87-88頁、ISBN 9784802206778 
  20. ^ LRTA (2018-4). “Sun, Sand and Light Rail”. Tramways & Urban Transit No.964 81: 138-139. http://www.bowe.cc/techlib/pdf/Tramways__amp__Urban_Transit_vol81_no964_1528736233.pdf 2020年10月9日閲覧。. 

参考資料 編集