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架線のエアセクション(A)と電車線区分標(B)

エアセクションとは、電気鉄道路線電力を供給する変電所間で異なる電力系統を区分するため、あるいは保守点検上の理由で架線に設けられる設備のことである。

目次

エアセクションの概要編集

エアセクションは、基本的に直流電化区間において変電所から送られる電圧き電区間と別の変電所から送られる同じ電圧のき電区間との境に設置される設備で、両架線の終端部において、両架線の引留め箇所付近に碍子直列に取付け、架線柱1 - 2スパンの間で空気絶縁体として架線を並列に配置しており、並列区間での架線間の標準離隔は普通鉄道で300 mm、新幹線で500 mm としている。これにより、セクションの一種であるデッドセクションとは異なり、二本の架線は公称は同電圧であっても、実際は条件により多少の電位差が生じている。なお、ここを電気車[1] が通過する際は並行する二本の架線がパンタグラフによって短絡してしまうが、通常の速度で通過するのであれば問題はない。車両は通電を維持したまま通過できるが、力行回生ブレーキの使用はできない。そのため、エアセクションと同じ構成で、架線間の相互離隔は普通鉄道で150 mm、新幹線で300 mm とし、両架線をコネクタ(金具)により接続して、同じき電区間とし、力行回生ブレーキの使用ができるようにしたものをエアジョイントと呼んでいる。また、エアセクションと同じく、架線の吊架線に碍子とトロリー線に絶縁体となるFRP板を直列に配置して、き電区間を区分するFRPセクションと、交流電化区間で交流の位相差が無い(同相)場所では、架線に碍子を直列に配置し、トロリー線の部分にスライダーを設けて、き電区間を区分する碍子形同相セクションがある。両者とも、構内などの低速で通過する場所や、上下線渡り線の架線に使用されている。

しかし、その区間にパンタグラフと架線が接触した状態で停車した場合、架線が断線してしまう事故が発生することがある(このような事故はパンオーバーと言われる)。原因として、電位差のある両架線がパンタグラフによって短絡し、接触部の発熱によってトロリ線の強度が低下して自身の張力により破断する、あるいは、離線によって架線とパンタグラフとの間にアークが発生し、このアークは両架線の短絡電流によって通常よりも大きなものになるためトロリ線が溶断するといったことが考えられる。また、母線引き通しと呼ばれる、架線から安定して受電するために編成中のパンタグラフを母線と呼ばれる電線で繋いでいる場合には、パンタグラフが直接エアセクションに掛かっていなくても電車の編成の中にエアセクションが含まれればパンオーバーは発生しうると考えられる。剛体架線など、エアセクション内で停車しても溶断が起きにくい(温度上昇に耐えうる)架線も存在する。

エアセクション内で停車してしまった場合編集

基本的に架線集電の電気機関車電車はエアセクション内に停車してはならない。しかしながら、踏切支障報知装置の動作や防護無線の受信などによる緊急停車の場合、やむを得ずエアセクション内に停車することがある。

エアセクション内で停車してしまった場合、セクション両端の送電を同じ変電所から行うなどして電位差をなくし、一時的にエアセクションが存在しない状態にし、車両が移動できる状態にする。エアセクションから移動させた後は送電の状態を元に戻し、エアセクションを「復活」させる。エアセクションが存在しない状態にしたままでは、列車運行に必要な電力が不足し、通常運行に必要な列車本数を確保できなくなるため、復活させる必要が生じる。

また、編成内にパンタグラフが複数ある電車の場合、一旦すべてのパンタグラフを降下する。目視等の方法によりエアセクションにかかっているパンタグラフを確認し、エアセクションにかかっていないパンタグラフのみ手動で上昇させ、エアセクション外の安全な場所まで移動する。そして、パンタグラフをすべて上昇させた後、運転再開するという方法もある。

エアセクションの存在を示す標識編集

エアセクションが設けられている場所にはその存在を示すために電車線区分標かセクション標識という標識が掲げられる。東日本旅客鉄道(JR東日本)では一部の路線にその路線の最大両数がセクションを超えて停止することが可能である位置を示すセクション外停止位置標という標識を設置して事故防止を図っていたが、2007年6月22日に発生した架線切断事故(後述)を受けて、首都圏171箇所のエアセクション区間内の全ての電柱に注意喚起用の表示板を設置し、また、首都圏を走行する全ての車両に、低速でエアセクションに接近した際、音声乗務員にエアセクション内に停車してはいけない旨を知らせるアラームを導入することを発表した。また西日本旅客鉄道(JR西日本)では、停止位置目標として「セクションクリア」と書かれた標識を設置している。

エアセクションに関連したトラブル編集

谷津駅 - 京成大久保駅で架線が切断する事故が発生し、3時間にわたって運転を見合わせた。
さいたま新都心駅 - 大宮駅間で、上り普通列車が信号現示に従い停車した際、現場付近に設置されていたセクション外停止位置標よりも手前で停車したため編成後部がエアセクション区間にかかり、架線が切断する事故が発生した。その影響で宇都宮線、高崎線に加え、本来直接支障のない並走路線の京浜東北線湘南新宿ラインの各線、また湘南新宿ラインを通る快速むさしの号において、利用者の救済や関連したトラブル(停車中の列車内から非常用コックを操作して、乗客が線路上に降りた)を含めた全ての復旧まで、約5時間にわたり全線でストップした。
19時10分ごろ、横浜駅 - 桜木町駅間で、運転士がエアセクション内で列車を停車させて、その後に運転を開始した際にショートして火花が発生し、それにより架線が溶けて切断したため停電した。これは、運転士が列車のD-ATC(デジタル式の自動列車制御装置)の誘導に従えばセクション外で停車が可能だったのを、桜木町駅が4日夜に行われた花火大会の影響による混雑により、列車の間隔が狭まっていた状況で、先行列車に接近したため、運転士がD-ATCの誘導に従わず、手動により列車をエアセクション内に停車させたことが原因と見られている。これにより、長時間に亘って京浜東北線・根岸線が運行出来なくなった為、乗客約35万人に影響が出る事態となった。翌日の8月5日には京浜東北線と横浜線で一時区間運休したが、午前5時半すぎには全線で運行を再開した[2]
8時6分ごろ、神戸駅 - 元町駅間で、上り新快速電車(網干駅6時30分発、野洲駅9時着)が、エアセクション内に停車し、その後、再び動き出した際に発生した熱で架線が溶断されたため、須磨駅 - 灘駅間で停電が発生した。この為、西明石駅 - 大阪駅間の上り外側線で運転を見合わせた。また、塩屋駅 - 須磨駅間でも、上り新快速電車(上郡駅6時20分発、野洲駅9時14分着)と上り快速電車(網干駅6時33分発、大阪駅8時25分着)が停車し、乗客の降車及び架線復旧の為、9時10分から姫路駅 - 芦屋駅間で運転を見合わせた。その後、12時15分に運転を再開した。この影響で、150本の列車に運休・遅れが発生し、乗客約15万人に影響が出た(7時35分に住吉駅で発生した人身事故を含む)[3][4]
19時48分、京都駅 - 新大阪駅間の上下線にて瞬間停電が発生。その後19時53分に再度停電し上下線とも運転を見合わせた。送電の停止後に係員が点検したところトロリー線が断線し、断線した箇所に停車した東京発新大阪行き「のぞみ391号」と、先行した同「のぞみ241号」車体上部にアーク痕を含む穴やくぼみが見つかった。上り列車を救援列車として運転したのち上下線とも送電を止めて架線を復旧し、翌22日0時54分に運転を再開。この影響により下り12本が部分運休。また停車列車を含む上下線63本に365分から172分の遅れが生じた[5][6]。JR東海は7月13日、停車した「のぞみ241号」はエアセクションに掛かっておりトロリー線が過電流で赤熱軟化し断線したことが原因だと発表した。東海道新幹線ではエアセクションが短くかつ、交流電車であることから流れる電流が少なくエアセクション内の停車を特に制限していなかったが、今後エアセクション区間を明示する標識を設置することとし、やむを得ずエアセクション内に停車した場合はパンタグラフを降下させてから移動することとした。事故当時大雨により密度を詰めて運行しており饋電区間内に列車が多数在線しトロリー線を流れる電流が通常よりも大きくなっていたことが事故の遠因となった[7]
10時55分ごろ、京浜東北線の鶴見駅川崎駅間で架線が切れ、京浜東北線や同線と並行する東海道本線等、最大約7時間にわたって運転を見合わせた。原因は、同日未明に実施した架線工事で誤ってセクション間を短絡し架線が切断、車両のパンタグラフが損壊した事による。[8]
  • その他、列車非常停止警報装置車内非常通報装置などの作動で非常停止した際、エアセクション内にやむを得ず停車してしまう場合がある。この場合、当該路線または列車には影響が無いなど、本来ならば数分以内に運転再開できる状況だったとしても、エアセクションの対応で運転再開まで10分以上の時間を要する場合がある。

列車運転シミュレーションゲームにおけるエアセクション編集

エアセクションが登場する。ここで停車すると運転中止となる。

脚注編集

関連項目編集

外部リンク編集