エスパイ』は、日本SF作家小松左京SF小説。また、その映画化作品。超能力者を主人公としたスパイ・アクションである。

概要編集

1964年から『週刊漫画サンデー』にて連載された。エスパイとは、「エスパー・スパイ」つまり超能力をもったスパイを意味する、本作品における造語である。主人公は、超能力者によって構成された世界平和の維持を目的とする秘密組織「エスパイ国際機構」に所属している。

ソ連首相暗殺で世界を混乱に陥れようとする陰謀に対し、それを防ぐべく主人公たちエスパイが活躍するが、敵組織もまた超能力者で構成されていた(どういうグループかは不明で「」とのみ表現されている)。かくして、戦いは超能力合戦となる。

小松左京らしい、意図的に通俗小説として書かれたSF作品である。過剰とも思えるお色気シーンは、映画版のオーディオ・コメンタリーによると「同時期に連載されていた山田風太郎のエロチックな忍法帖ものに負けないように」との編集者からの要請に応えたものである。しかし、濃密なペダントリーやテーマ性は他の小松長編に劣るものではない。発表時より若干の近未来を舞台にしながらも国際情勢分析は当時のものを踏襲しており、ソ連首相が善玉で、悪役は西側のタカ派軍人やナチス残党が演じる配置(アラブ系や左派テロリストは登場しない)も、時代の気分を反映している。

映画編集

エスパイ
監督 福田純(監督)
中野昭慶(特技監督)
脚本 小川英
原作 小松左京
製作 田中友幸
田中文雄
出演者 藤岡弘
由美かおる
草刈正雄
加山雄三
若山富三郎
音楽 平尾昌晃
京建輔
主題歌 尾崎紀世彦
「愛こそすべて」
撮影 上田正治(本編)
原一民(本編)
富岡素敬(特殊技術)
編集 池田美千子
製作会社 東宝映像株式会社
配給 東宝[1][注釈 1]
公開   1974年12月28日
上映時間 94分
製作国   日本
言語 日本語
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1974年東宝映像製作のSF特撮映画(併映作は山口百恵の初主演作品『伊豆の踊子』)。「超能力=愛」をテーマとして、東欧の国バルトニアの首相の来日をめぐり、首相暗殺による世界情勢の悪化を企むオルロフら逆エスパイとの戦いを描く。

東宝は1966年には映画化権を獲得しており、同年の作品一覧に脚本・監督未定で掲載され、1967年には監督:福田純、脚本:小川英、出演:三橋達也佐藤允浜美枝若林映子での製作が発表されたが、出演が決定していた若林が東宝との契約を更新せずフリーになったことなどにより、製作中止となった。その後、1974年にはユリ・ゲラーの来日に端を発する超能力ブームが起こり、これに乗じる形で企画が復活して製作に至った[2]

脚本は、同時期に企画されていた『透明人間対火焔人間』に参加していた東映の掛札昌裕が執筆したが、5回もの書き直しによって封切りに間に合わなくなりそうだったため、中西隆三や監督の福田が手直ししたものを小川がまとめる形になった[3]

映画化にあたり、登場人物や設定が変更されている。原作のマリア・トスティに相当するのはマリア原田であり、新米エスパイの三木次郎は原作に登場しないオリジナルキャラクターである。また、ウルロフは原作では宇宙人という設定であるが、1時間半の映画で収めることと、「超能力集団同士の対決」という物語の単純化のために変更された。田中文雄は原作のラストにおける宇宙船へのテレポーテーションのシーンも撮影したがり、ポスターにもアポロ宇宙船が描かれたが、田中友幸が絶対に認めずカットされた[3]。個々の超能力の設定にも、田中友幸による細かい制約があった。

撮影編集

超能力を映像化するということもあり、試行錯誤をしながらの撮影となった。監督の福田も、原作を刊行時に読んでいたが、「(予算が圧倒的に安い)日本映画では映像化は難しいだろう」という感想を持ったという。

クライマックスの国際会議場のシーンは、撮影所で最大の第8・第9ステージにセットを組み、シャンデリアが落下するシーンを特撮班が、落下の瞬間に人々が逃げまとうシーンを本編班がそれぞれ撮影し、フィルムをつないでいる。田村がテレポーテーションで国際会議場に現れるシーンは、さまざまな視覚効果が試みられたがうまくいかず、フィルムのつなぎで表現した。社長の松岡功もこの描写には満足していたが、虎ノ門ホール[4][注釈 2]での試写会では会場が笑いでざわつくなど不評を買い、原作者の小松も「もう少し何とかならなかったんだろうか…」と不満を持っていた[3]

製作期間は約1か月で、ヨーロッパ国際特急イスタンブールのシーンは、大森健次郎らB班によって約1週間の現地ロケが行なわれたほか、ウルロフ邸の外観は大倉山記念館で撮影された[3]

キャスト編集

マリア役の由美かおるの出演は、原作者の小松の希望もあり[2]、スタッフ内でも最初から決まっていた[3][注釈 3]。一方、田村役はなかなか決まらず、いろいろなアイデアが出されたという[3]。また、若山富三郎の起用は田中友幸の提案で、メイキャップや演技を若山自身が考えてきての撮影だったが、芝居のテンポが遅く、周りの芝居をテンポアップしながらの撮影だった[3]

スタッフ編集

ノンクレジット(スタッフ)編集

出演者編集

ノンクレジット(出演者)編集

  • 国際会議場警備要員:加藤茂雄[1]
  • 駐車場のカメラマン:今井和雄[1]
  • 国際会議場の男:光秋次郎[1]
  • バルトニア首相の声:梶哲也
  • 逆エスパイ(ウルロフの部下):中村文弥中屋敷鉄也新堀和男、バート・ヨハンソン[1]、ゲルマル・ライナー[1]池田力也、前田直高、中村裕
  • 国連調停委員:ロジャー・ウッド[1]
  • バルトニア首相秘書:デュケネ
  • 首相護衛官:ギンター・グレイブ
  • 特別機機長:ロバート・ダンハム[1]
  • 特別機副機長:ヘンリー
  • 三木の少年時代:ジュリー・クラブ
  • ジュディ:ケリー・バンシス
  • アーメットの店員:アブドウラ・ミッツ

主題歌編集

「愛こそすべて」(フィリップスレコード
作詞:山口洋子 / 作曲:平尾昌晃 / 編曲:京建輔 / 歌:尾崎紀世彦

サウンドトラック編集

  • 『東宝映画サントラコレクション リミテッド・エディション 東宝特撮チャンピオンまつり』(2010年9月15日、バップ[9]
    • 5枚組 Disk5に収録。

映像ソフト編集

  • 『エスパイ』【レーザーディスク】(1997年12月21日、東宝ビデオ)[10]
  • 『エスパイ』(2004年9月25日、東宝
  • 『エスパイ』【期間限定プライス版】(2013年8月2日、東宝)
  • 『エスパイ』【東宝DVD名作セレクション】(2015年8月19日、東宝)

脚注編集

注釈編集

  1. ^ ノンクレジット
  2. ^ 2004年に解体された[5]。また、1985年に西新橋のビルにて開業した貸し会議室[6][7]とは無関係である。
  3. ^ 由美は当時、小松原作・福田監督で製作・放映が進められていたテレビドラマ『日本沈没』のヒロイン・阿部玲子役でもあった。
  4. ^ 後年のインタビューで京は、平尾は主題歌の作曲が主で、劇伴の多くは自身が担当したと証言している[8]
  5. ^ 当時のポスターでは「特撮監督」と表記。

出典編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2020年6月9日閲覧。
  2. ^ a b 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス、2012年、180-183頁。ISBN 9784864910132 
  3. ^ a b c d e f g 『東宝映画100発100中!映画監督福田純』 ワイズ出版、2001年、151-160頁。ISBN 4898300634 
  4. ^ 特集「霞が関から文化力プロジェクト」 - 文化庁
  5. ^ 虎ノ門ホールの情報 | i-Amabile
  6. ^ 【ホームズ】酔心興栄ビルの建物情報|東京都港区西新橋1丁目9-5
  7. ^ 虎ノ門ホールの詳細|貸し会議室
  8. ^ 「スーパー戦隊制作の裏舞台 京建輔」『スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1983 科学戦隊ダイナマン講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2018年9月10日、33頁。ISBN 978-4-06-509605-5
  9. ^ 東宝映画サントラコレクション リミテッド・エディション 東宝特撮チャンピオンまつり ディスクユニオン
  10. ^ 『宇宙船YEAR BOOK 1998』朝日ソノラマ宇宙船別冊〉、1998年4月10日、62頁。雑誌コード:01844-04。

外部リンク編集