エゾタヌキ

エゾタヌキ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目(食肉目) Carnivora
: イヌ科 Canidae
: タヌキ属 Nyctereutes
: タヌキ N. procyonoides
亜種 : エゾタヌキ N. p. albus
学名
Nyctereutes procyonides albus
和名
エゾタヌキ
英名
Raccoon Dog[1]

エゾタヌキ(蝦夷狸、学名Nyctereutes procyonides albus)は、ネコ目イヌ科タヌキ属に属するタヌキの日本産亜種(→写真)で、 生息地域は北海道の一部で[2]森林林縁[3]沼沢がある地域に生息する[1]奥尻島などの島に生息する本亜種は人為的に移入された個体である[4]

体長は約50 - 60cm。尾長18cm。体重4 - 8kg[1]寿命は約10年[5]体毛の色は茶褐色。目の周りは黒い毛で囲まれており、左右は繋がっておらず離れている[1]は短く、を掘ることに適している。木登りは得意だが降りるのは下手。視力はあまりよくないが、夜行性なので暗所では見える。嗅覚は鋭く、嗅覚で餌を探し出して食べる。聴力と同程度と推考される[6]数は、切歯は上6本下6本、犬歯は上2本下2本、前臼歯は上8本下8本(または上6本下8本)、後臼歯は上4本下6本(または上6本下4本)、合計40 - 44本。乳頭数は、胸部1対、腹部2対、鼠径部1対、合計8個。指趾数(の数)は、前肢が5本、後肢が4本[7]

食性は、一般に狩りはせず、地面に落ちている木の実昆虫動物死体無脊椎動物[1]などいろいろな物を食べる雑食性[6]

昼間巣穴で過ごすが、巣穴は自分では掘らず、樹木の根元やの隙間を巣穴として利用する[5]。巣穴は休息や睡眠、出産、子育てをする場である。本亜種は活動領域に複数の巣穴を持っている[8]

本亜種はため糞をする習性がある[1]。数頭で一緒にをする場所を持っており、そこに糞をためる。これをため糞という[9]。ため糞場は本亜種同士の情報交換の場と考えられている[10]


目次

生態編集

鳴き声編集

低音で「ミャー」「ミャーウオ」と鳴く場合がある[11]

1年の生活編集

繁殖期からかけての時期で、春に3 - 8匹の子どもを出産する。20匹出産した例もあるという。生まれた子ダヌキは、の不足や天敵による捕食により死に至ることがあるため、全てが成獣まで育つわけではない。出産数が多いほど子ダヌキが成獣になれる確率が下がる傾向がある[6]。この時期の主食は冬眠から醒めたカエルである。ミミズの活動も活発になるのでミミズを採食する頻度も多いと推考される[8]は本亜種の採食対象となる動植物が増加し、昆虫カエルヘビザリガニ果実などを採食している。糞の内容物から推考すると、ネズミのような俊敏な動作をする小動物を捕食することは不得意なようである[12]。休息は巣穴の外に出て風通しが良くかつ身を隠せる場所で休息している[8]木の実などを沢山食べて皮下脂肪を体内に蓄え、冬籠りに備える[6]。この時期は昼間も活発に行動し、えさ場付近の休息地を利用する頻度が高くなる[8]。冬籠り直前の体重はそれまでの約1.5倍まで増加する[1]。また換毛して冬毛になり、冬毛はとてもふさふさしている。冬籠りをするが、冬眠するわけではない。巣穴の中でじっとして、秋に蓄えた皮下脂肪を消費しながらを待つ[6]。この時期の糞の内容物から推考すると樹木のなどを極少量食べているようである[8]

擬死の利点編集

(本節は 西野(2009)を参考文献とする)

脊椎動物擬死(thanatosis)は、動物催眠(animal hypnosis)、または、持続性不動状態(tonic immobility)と呼ばれることもあるが、この節では「擬死」という語句を使用して説明する。

擬死の機構

動物は自らの意志で擬死(死にまね。death feigning, playing possum)をするのではなく、擬死は刺激に対する反射行動である。哺乳類では、タヌキニホンアナグマリスモルモットオポッサムなどが擬死をする。 擬死を引き起こす条件や擬死中の姿勢、擬死の持続時間は動物によって様々である。

イワン・パブロフは脊椎動物の擬死の機構を次のように説明している。

「不自然な姿勢におかれた動物がもとの姿勢に戻ろうとしたときに抵抗にあい、その抵抗に打ち勝つことができない場合にはニューロンの過剰興奮を静めるための超限制止がかかってくる」(イワン・パブロフ)

擬死を引き起こす刺激

拘束刺激は擬死を引き起こす刺激の一つである。カエルハトなどは強制的に仰向けの姿勢をしばらく保持すると不動状態になる。また、オポッサムコヨーテに捕獲されると身体を丸めた姿勢になって擬死をする。

擬死の利点

本種が擬死を行うことによる利点として、身体の損傷の防止と捕食者からの逃避が考えられる。擬死は捕食者に捕えられたときなどに起こる。捕食者から逃げられそうにない状況下で無理に暴れると疲労するだけでなく、身体を損傷する危険がある。捕食者は被食者[註 1]が急に動かなくなると力を緩める傾向がある。このような時に捕食者から逃避できる可能性が生まれる。この機会を活かすためには身体の損傷を防ぐ必要がある。

擬死の特徴

擬死中の動物は、ある姿勢を保持したまま不動になる。その姿勢は動物により様々である。ただ、不動状態のときの姿勢は普段の姿勢とは異なる不自然な姿勢である。 動物は外力によって姿勢を変えられると、すぐに元の姿勢を維持しようして動作する。この動作を抵抗反射(resistance reflex)という。しかし、擬死の状態では抵抗反射の機能が急に低下して、不自然な姿勢がそのまま持続する。このような現象をカタレプシー(catalepsy)という。カタレプシーは擬死中の動物すべてにあてはまる特徴である。 擬死の持続時間は、甲虫類以外は数分から数十分で、擬死からの覚醒は突然起こる。擬死中の動物に対して機械的な刺激(棒で突つくなど)を与えると覚醒する(甲虫類は逆に擬死が長期化する)。 擬死中は呼吸数が低下し、また、様々な刺激に対する反応も低下する。 擬死中の動物の筋肉は通常の静止状態の筋肉と比較してその固さに違いがあり、筋肉が硬直している。そのため、同じ姿勢を長時間維持することが可能となる。

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  1. ^ 他の生物に捕食される生物のこと --『広辞苑』より。

本節の参考文献


脚注編集

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  1. ^ a b c d e f g エゾタヌキ」『札幌市円山動物園』より。
  2. ^ フクロウとタヌキ』(p79)より。
  3. ^ 森林の周辺部分 --『広辞苑』より。
  4. ^ フクロウとタヌキ』(p80)より。
  5. ^ a b エゾタヌキ」『旭山の動物たち』より。◆寿命約10年は、旭川市旭山動物園ウェブサイトを出典としているため、飼育されているエゾタヌキの寿命かもしれない。野生のエゾタヌキの寿命かどうかは不明。
  6. ^ a b c d e エゾタヌキのファミリー(動画)」『飼育員の動物紹介 - 動画で見る札幌市円山動物園』(Vol.13)より。
  7. ^ 野生動物調査痕跡学図鑑』(p367)より。
  8. ^ a b c d e エゾタヌキの生活と森林』(p3)より。
  9. ^ 「手がかり5 フン」『タヌキを調べよう』(p16)より。
  10. ^ エゾタヌキの生活と森林』(p2)より。
  11. ^ 野生動物調査痕跡学図鑑』(p370)より。
  12. ^ エゾタヌキの生活と森林』(p4)より。

参考文献編集

ウェブサイト

出版物

関連項目編集

外部リンク編集