エドヒガン江戸彼岸、学名:Cerasus itosakura (Sieb.) Masam. & Suzuki f. ascendens (Makino) H.Ohba & H.Ikeda[1](シノニム:Prunus pendula Maxim. var. ascendens Makino; Cerasus spachiana Lav. ex Otto f. ascendens (Makino) H.Ohba[2][3][4])は、バラ科サクラ属サクラ日本に自生する10もしくは11あるサクラ属の基本野生種の一つ[5][6][注釈 1]彼岸ごろに花を咲かせることからヒガンザクラ(彼岸桜)、葉より先に花を咲かせることから「がない」との言葉遊びからウバザクラ(姥桜)の通称もある[7]

エドヒガン
エドヒガン(淡墨桜)、岐阜県本巣市にて、2018年4月3日撮影
エドヒガン(淡墨桜
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
: サクラ属 Cerasus
: エドヒガン
学名
Cerasus itosakura (Sieb.) Masam. & Suzuki
f. ascendens (Makino) H.Ohba & H.Ikeda
シノニム
Prunus pendula Maxim.
var. ascendens Makino
Cerasus spachiana Lav. ex Otto
f. ascendens (Makino) H.Ohba

特徴編集

樹高は30mを超える高木で樹形は傘上。一重咲きの小輪の花を咲かせ花色は淡紅色。葉は楕円形で長辺が5-10cm。花柱基部、小花柄葉柄などに毛が多く、がく筒が丸く膨らむつぼ形である。東京での花期は名前の通り春の彼岸ごろの3月中旬でソメイヨシノより早い。葉が展開するより先に大量の小輪の花が咲くため見栄えが華やかであることが特徴であり、この大量の花が葉が展開するより先に咲く特徴がソメイヨシノやシダレザクラヤエベニシダレに受け継がれている[7][8]

また、成長は遅いが幹が堅く雪害や風害に強く腐りにくいためか、サクラの中では最も長寿であり巨樹に育ちやすいのも大きな特徴であり、長寿種としてはこれにヤマザクラが続く。そのため長寿な巨樹の一本桜が多く、一例として樹齢2000年超の神代桜、樹齢1500年超の淡墨桜、樹齢1000年の樽見の大ザクラ、樹齢300年越の石割桜などが有名である。またエドヒガンの栽培品種のベニシダレである樹齢1000年超の三春滝桜、エドヒガンとヤマザクラの種間雑種のカバザクラである樹齢800年の石戸蒲ザクラも、エドヒガンの長寿の特性を受け継いでいると考えられている[7]。エドヒガンは長寿な分、発芽してから花が咲くまでに時間がかかり、樹高が10m程度に育って初めて花をつけ、場合によっては発芽から開花までに数十年かかる場合もある[9]

分布編集

日本の青森県から鹿児島県までの広い範囲の冷温帯と、韓国最南部の済州島に分布する。日本では広範囲に自生するが、石川県千葉県のように自生集団が確認されていない地域もある。山の急斜面にも生息が可能であり、明るい場所に先駆的に進出し他の樹木の被圧により短期間で消えることを繰り返す他の野生種のサクラとは異なる生き方をしていると考えられている[7]

エドヒガン群編集

エドヒガンに類する品種の桜の総称。(がく)の下部に球状のふくらみがあるのが特徴。枝垂桜のように枝をたらす品種も多く作られている。この群に属しているソメイヨシノはきわめて有名で、花が見事であるため、ソメイヨシノから作られたサクラも多い。

野生種編集

  • エドヒガン(江戸彼岸・立彼岸・東彼岸・婆彼岸)
  • モチヅキザクラ(望月桜)
  • ヤマモチヅキザクラ(山望月桜)

園芸品種編集

  • アマギヨシノ(天城吉野) - ソメイヨシノの交配実験中に生まれた品種。
  • アメリカ(旧名:曙) - Cerasus ×yedoensis ‘Akebono’- 北米に送られたソメイヨシノの実生から生まれた品種で、ソメイヨシノに比べ花が大きい。
  • イズヨシノ(伊豆吉野) - ソメイヨシノの交配実験中に生まれた品種。
  • ウジョウシダレ(雨情枝垂)
  • ウスゲオオシマ(薄毛大島)
  • オオクサイザクラ(オオクサエザクラ)
  • オモイガワ(思川)
  • カッテザクラ(勝手桜)
  • カバザクラ(樺桜)
  • クマガイ(熊谷)
  • クラマザクラ(鞍馬桜)
  • コシノヒガンザクラ(越の彼岸桜) - 富山県の天然記念物
  • コヒガン(小彼岸・彼岸桜・千本彼岸) - Cerasus ×subhirtella
  • コマツオトメ(小松乙女)
  • サイホウジザクラ(西法寺桜)
  • サクヤヒメ(咲耶姫)
  • シキザクラ(四季桜)
  • シダレオオクサイザクラ(シダレオオクサエザクラ)
  • シダレザクラ(枝垂桜・糸桜) - Cerasus itosakura f. itosakura
  • シダレソメイヨシノ(枝垂染井吉野)
  • ジュウガツザクラ(十月桜) - Cerasus ×subhirtella ‘Autumnalis’ 一年の間に三月と十月の2回花を咲かす。
  • ショウジョウ(猩々)
  • ショウワザクラ(昭和桜)
  • シラタキザクラ(白滝桜)
  • シラタマ(白玉)
  • ジンダイアケボノ(神代曙) - Cerasus ×yedoensis ‘Jindai-akebono’
  • スルガザクラ(駿河桜)
  • センダイヨシノ(仙台吉野)
  • ソトオリヒメ(衣通姫)
  • ソメイニオイ(染井匂)
  • ソメイヨシノ(染井吉野) - Cerasus ×yedoensis ‘Somei-yoshino’
  • タカトオコヒガン(高遠小彼岸) - 長野県の天然記念物
  • タマナワザクラ (玉縄桜)
  • タキノザクラ(滝野桜)
  • トモエザクラ(巴桜)
  • ハヤザキオオシマ(早咲大島) - ソメイヨシノの交配実験中に生まれた品種。
  • フナバラヨシノ(船原吉野)
  • ベニシダレ(紅枝垂)
  • ベニツルザクラ(紅鶴桜)
  • ホザキヒガンヤエザクラ(穂咲彼岸八重桜)
  • マイヒメ(舞姫)
  • マツマエウスガサネソメイ(松前薄重染井)
  • ミカドヨシノ(御帝吉野) - ソメイヨシノの交配実験中に生まれた品種。
  • ミシマザクラ(三島桜)
  • ミズタマザクラ(水玉桜)
  • ミスミオオヒラザクラ(三隅大平桜)
  • ミドリヨシノ(緑吉野)
  • モニワザクラ(茂庭桜)
  • モリオカシダレ(盛岡枝垂) - Cerasus ×yedoensis ‘Morioka-pendula’
  • ヤエベニシダレ(八重紅枝垂)
  • ヤエベニヒガン(八重紅彼岸)

脚注編集

注釈編集

  1. ^ ヤマザクラオオヤマザクラカスミザクラオオシマザクラエドヒガンチョウジザクラマメザクラタカネザクラミヤマザクラクマノザクラの10種。疑義のあるカンヒザクラも含めると11種。

出典編集

  1. ^ 大場秀章・池田博. 2016. エドヒガンとコシノヒガンザクラ(バラ科)の新学名提唱 (PDF, 1.5 MiB) . 植物研究雑誌 91 (3): 184–185.
  2. ^ Tomitaro Makino. "Notes on Japanese Plants." XVII. 『植物学雑誌』 1893年 7巻 75号 pp. 102–105, doi:10.15281/jplantres1887.7.102
  3. ^ Akiyama, S. et al. 2014. Siebold and Zuccarini's Type Specimens and Original Materials from Japan, Part 5. Angiosperms. (PDF, 284 KiB) Dicotyledoneae 4. Journ. Japan. Bot. 89 (5): 279–330.
  4. ^ Ohba, H. 1992. Japanese Cherry Trees under the Genus Cerasus (Rosaceae). (PDF, 340 KiB) Journ. Japan. Bot. 67 (5): 276–281.
  5. ^ 勝木俊雄『桜』p13 - p14、岩波新書、2015年、ISBN 978-4004315346
  6. ^ 紀伊半島南部で100年ぶり野生種のサクラ新種「クマノザクラ」 鮮やかなピンク 森林総研 産経ニュース 2018年3月13日
  7. ^ a b c d 勝木俊雄『桜』p178 - p182、岩波新書、2015年、ISBN 978-4004315346
  8. ^ 江戸彼岸 日本花の会 桜図鑑
  9. ^ 勝木俊雄『桜』p152、岩波新書、2015年、ISBN 978-4004315346

外部リンク編集