エリダヌス座82番星

エリダヌス座82番星は、太陽系から約20光年離れたところに位置するエリダヌス座恒星である。スペクトル型G8の主系列星である。

エリダヌス座82番星
82 Eridani
星座 エリダヌス座
見かけの等級 (mv) 4.27[1]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  03h 19m 55.6505s[1]
赤緯 (Dec, δ) −43° 04′ 11.221″[1]
視線速度 (Rv) +87.3 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: 3,037.21 ミリ秒/[1]
赤緯: 726.52 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 165.00 ± 0.55 ミリ秒
距離 19.77 ± 0.07 光年
(6.06 ± 0.02 パーセク
絶対等級 (MV) 5.35[2]
物理的性質
半径 0.92 R[3]
質量 0.97 M[2]
自転速度 0.52 km/s[4]
スペクトル分類 G6 V[1]
光度 0.62 L[5][6]
表面温度 5,338 K[7]
色指数 (B-V) +0.71[1]
色指数 (U-B) +0.21[1]
金属量[Fe/H] -0.54[7]
年齢 6.1[8] - 13[9] ×109
他のカタログでの名称
エリダヌス座e星, HD 20794, CD-43°1028, GCTP 703, グリーゼ139, LHS 19, LTT 1583, HR 1008, SAO 216263, FK5 119, HIP 15510[1], LCC 0920
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観測編集

エリダヌス座82番G星(しばしばエリダヌス座82番星と略される)は、Uranometria Argentina(アルゼンチン恒星カタログ)においてエリダヌス座の82番目に登録されている恒星である。

この星表は、19世紀天文学者ベンジャミン・グールドによって、有名なジョン・フラムスティードの星表の南半球版として、フラムスティードと同様の番号付与規則を用いて整理されたものである。エリダヌス座82番G星の“G”は、グールドの番号付与規則に従うことを表すものだが、フラムスティード番号など他のカタログとの統合によって名前から姿を消し、現在まで名を留めている数少ないひとつがこの恒星である。

物理的性質編集

光度においては、エリダヌス座82番G星はわずかに太陽より暗く、くじら座τ星ケンタウルス座α星Bより明るい。恒星の自転速度 (v sin i) は 0.52 km/s で、太陽の 2 km/s と比較して遅い[4]

エリダヌス座82番G星は高速度星(大きな固有運動を持つ恒星)であり、恐らくは古く銀河面の外に出る軌道をとる種族IIの恒星である。多くの種族IIの恒星がそうであるように、エリダヌス座82番G星は金属量が低く、太陽よりも年上で推定年齢は60億から130億年と幅がある[8][9]銀河系内を周回する軌道の離心率は0.40で、銀河系中心との距離は4.6キロパーセクから10.8キロパーセクまで変化する。

この恒星は星間物質密度が低い領域に位置しており、視直径にして6秒にもなる大きな恒星圏を持つものと信じられている。 固有運動速度が101km/sと太陽に比して高く、星間物質中をマッハ3以上の速度でバウショックを形成していると思われる [10]

惑星系編集

2011年8月17日、エリダヌス座82番星の周りに3つの惑星の発見が報告された。これらの惑星は、地球の数倍の質量を持つスーパー・アースとみられる。恒星の視線速度が惑星周回の重力的な影響でわずかに揺らぐのを精密に観測する、ドップラー分光法で発見された。惑星の公転軌道の離心率は小さいと推定され、公転周期は90日以下と中心星に近いところを周回する。ボンドアルベドを0.3と仮定して推定した惑星の平衡温度は、388K(115°C)である[11]

2012年には、ハーシェル宇宙望遠鏡による観測で、星周塵の円盤が恒星の周囲に発見された。おとめ座61番星と同じような性質の星周円盤を仮定したとすると、恒星から19AU程度離れた所まで広がっていると考えられる[12]

2020年12月時点では、b、d、eの存在は確認されているが、c、f、gは候補である[13]

エリダヌス座82番星の惑星[14][15][13]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
g (候補) >0.00324+0.0015
−0.00079
MJ
0.095±0.001 11.86+0.01
−0.02
0.2+0.15
−0.19
高温塵 ≤ 0.1 au
b >0.00887+0.00031
−0.0025
 MJ
0.127±0.001 18.32±0.005 0.11±0.1
c (候補) >0.00793+0.0016
−0.0026
MJ
0.225+0.002
−0.003
43.17+0.12
−0.1
0.17+0.1
−0.16
d >0.0111+0.0018
−0.00318
 MJ
0.364±0.004 89.76±0.12 0.29±0.11
e 0.015+0.003
−0.0027
 MJ
0.509±0.006 147.02+1.43
−0.91
0.29+0.14
−0.17
f (候補) 0.03228+0.00595
−0.00463
MJ
0.875+0.011
−0.01
331.41+5.08
−3.01
0.05+0.06
−0.05
星周塵円盤 ~19—~30 au

居住可能性編集

スティーヴン・ドールは著書“Habitable Planets for Man”[16]で、エリダヌス座82番G星に5.7%という最も高い数値をつけている。他に同じ数値を与えられた恒星はケンタウルス座α星B、へびつかい座70番星A、カシオペヤ座η星A、くじゃく座δ星の4つである。 エリダヌス座82番G星(グリーゼ139)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) が地球型惑星やより大きな系外惑星を探知するために計画中の宇宙干渉計ミッション (SIM) における第1弾の目標天体に選ばれている。 [17]

出典編集

  1. ^ a b c d e f g h i j SIMBAD Query Result: e Eri -- High proper-motion Star”. Centre de Données astronomiques de Strasbourg. 2007年7月26日閲覧。
  2. ^ a b Staff (2007年6月8日). “List of the Nearest 100 Stellar Systems”. Research Consortium on Nearby Stars (RECONS), Georgia State University. 2007年7月26日閲覧。
  3. ^ Johnson, H. M.; Wright, C. D. (1983). “Predicted infrared brightness of stars within 25 parsecs of the sun”. Astrophysical Journal Supplement Series 53: 643-711. doi:10.1086/190905. http://adsabs.harvard.edu/abs/1998RPPh...61...77K 2007年7月26日閲覧。.  — See the table on p. 653.
  4. ^ a b Santos, N. C. et al (2004). “Are beryllium abundances anomalous in stars with giant planets?”. Astronomy and Astrophysics 427: 1085-1096. doi:10.1051/0004-6361:20040509. http://adsabs.harvard.edu/abs/2004astro.ph..8108S 2007年7月26日閲覧。. 
  5. ^  
    に基づく。Lは光度、Rは半径、Teff有効温度を表す。
  6. ^ Krimm, Hans (1997年8月19日). “Luminosity, Radius and Temperature”. Hampden-Sydney College. 2012年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年5月16日閲覧。
  7. ^ a b Gratton, R. G. (1989). “Abundance of manganese in metal-poor stars”. Astronomy and Astrophysics 208 (1-2): 171-178. http://adsabs.harvard.edu/abs/1989A&A...208..171G 2007年7月26日閲覧。. 
  8. ^ a b Mamajek, Eric E.; Hillenbrand, Lynne A. (2008-11-02), “Improved Age Estimation for Solar-Type Dwarfs Using Activity-Rotation Diagnostics”, Astrophysical Journal 687 (2): 1264-1293, doi:10.1086/591785, http://adsabs.harvard.edu/abs/2008ApJ...687.1264M 
  9. ^ a b Hearnshaw, J. B. (1973). “The iron abundance of 82 Eridani”. Astronomy and Astrophysics 29: 165-170. http://adsabs.harvard.edu/abs/1973A&A....29..165H 2007年7月26日閲覧。. 
  10. ^ Frisch, P. C. (1993). “G-star astropauses - A test for interstellar pressure”. Astrophysical Journal 407 (1). doi:10.1086/172505. http://adsabs.harvard.edu/abs/1993ApJ...407..198F 2007年7月26日閲覧。. 
  11. ^ Pepe, F.; et al. (2011-10-03), “The HARPS search for Earth-like planets in the habitable zone. I. Very low-mass planets around HD 20794, HD 85512, and HD 192310”, Astronomy and Astrophysics 534: A58, doi:10.1051/0004-6361/201117055, http://adsabs.harvard.edu/abs/2011A%26A...534A..58P 
  12. ^ Wyatt, M.C.; et al. (2012-08-01), Herschel imaging of 61 Vir: implications for the prevalence of debris in low-mass planetary systems”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 424 (2): 1206-1223, doi:10.1111/j.1365-2966.2012.21298.x, http://adsabs.harvard.edu/abs/2012MNRAS.424.1206W 
  13. ^ a b Catalog”. 太陽系外惑星エンサイクロペディア. 2020年12月28日閲覧。
  14. ^ 系外惑星一覧 スーパーアース”. 系外惑星データベース. 2016年12月11日閲覧。
  15. ^ Kennedy, Grant M.; et al. (2015-04-19), “Kuiper belt structure around nearby super-Earth host stars”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Observatory 449 (3): 3121-3136, doi:10.1093/mnras/stv511, http://adsabs.harvard.edu/abs/2015MNRAS.449.3121K 
  16. ^ Dole, Stephen H. (1970). Habitable Planets for Man (2nd ed.). London: American Elsevier Pub. Co. 0444000925. http://www.rand.org/pubs/commercial_books/CB179-1/ 
  17. ^ McCarthy, Chris (2005年). “SIM Planet Search Tier 1 Target Stars”. San Francisco State University. 2007年7月26日閲覧。

外部リンク編集

  • 82 Eridani”. SolStation. 2005年11月3日閲覧。