イェール大学

アメリカの私立大学
エール大学から転送)

イェール大学(イェールだいがく、英語: Yale University、略称YU)は、コネチカット州ニューヘイブンに本部を置くアメリカ合衆国私立大学である。

イェール大学
ラテン語: Universitas Yalensis
旧称 Collegiate School (1701年 - 1718年)
Yale College (1718年 - 1887年)
モットー Lux et veritas (Latin)
和訳例:光と真実
モットー (英語) Light and truth
種別 私立大学
設立年 1701年10月9日 (1701-10-09)
学術的提携関係 アメリカ大学協会
国際研究型大学連合
NAICU[1]
資金 $254.09 億ドル (2016年)[2]
学長 Peter Salovey[3]
教員数
4,410人[4]
学生総数 12,312人[4]
学部生 5,453人
大学院生 6,859人
所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
コネチカット州 ニューヘイブン
キャンパス 都市型・学園都市 1,015エーカー (411 ha)
ノーベル賞受賞者数 62
スクールカラー Yale Blue[5]  
ニックネーム Bulldogs
マスコット Handsome Dan
スポーツ関係の
提携関係・加盟団体
NCAA Division I, FCS – アイビー・リーグ – ECAC Hockey – NEISA
公式サイト www.yale.edu
テンプレートを表示
Harkness Tower
スターリング記念図書館
Yale Old Campus
Connecticut Hall
イェール・ロー・スクール(YLS)
イェール大学経営大学院(Yale SOM)
クルーン・ホール(林学・環境学大学院)
イェール美術学校(Yale School of Art)
イエール大学医学大学院(YSM)およびイエール大学公衆衛生大学院(YSPH)
Yale Peabody Museum

1701年創設[6]アメリカ東部の名門大学群アイビー・リーグに所属する8大学のうちの1校である。

米国屈指の大学の一つとして数えられ、5人の大統領、19人の米国最高裁判所判事、62人のノーベル賞受賞者、5人のフィールズ賞受賞者、500人以上の米国議会議員[6]、247人のローズ奨学生、119人のマーシャル奨学生を輩出している[7]。特に、1843年設立のイェール・ロー・スクールYLS)は、ハーバード大学、オックスフォード大学ケンブリッジ大学と共に世界最高峰のロースクール法科大学院)として名高い。また、1810年設立のイエール大学医学大学院YSM)、1915年設立のイエール大学公衆衛生大学院YSPH)、1976年設立のイェール大学経営大学院Yale SOM)は全米TOP10にランクしている。1869年設立のイェール美術学校Yale School of Art)は、総合大学としては、UCLA芸術&建築学部(UCLA Arts)などと並び全米トップクラスである。

創設当初の名称はThe Collegiate Schoolであったが、東インド会社総督だった篤志家エライヒュー・イェール英語版に因み、1718年に現在の名称へと変更された。その後、20世紀初頭にシェフィールド理科学校を併合した。

イエール大学[8]エール大学」と訳されることもある。

歴史 編集

イェール大学は植民地時代の創立で、アメリカ合衆国で植民地議会に認可を受けた大学としては、ハーバード大学ウィリアム・アンド・メアリー大学に次いで3番目に長い歴史を持つ[6][9]

1701年にコネチカット植民地議会(General Court)によってコネチカットの Collegiate School として設立が承認された[6]。創立当初の短い期間は、ボストンニューヨークの間に位置するコネティカット州キリングワース英語版とオールド・セイブルック にあったが、1718年に約40kmほどニューヨーク寄りのニューヘイブンに移り今日に至る[6]。同市はニューヨークから北東へ110kmほどに位置している。同市が面している海は、実際にはロングアイランドとの海峡であり、大西洋には直接面していない。大学は町の中心部にあり、この町の住民にとって最大の職場となっている。

1969年になって初めて女子(当時は社会的地位の意味でマイノリティ)が学部に受け入れられるようになった。

2013年に、シンガポール国立大学(NUS)と提携して、Yale-NUS Collegeをシンガポールに開校した。

1993年からアイビー・リーグ史上最も長く学長を務めていたリチャード・レビン(1947年4月7日生)は、2013年6月30日に引退し、新学長には、心理学者ピーター・サロベー(1958年生まれ)が就任した。

組織 編集

特徴 編集

伝統や格式を重んじるとされているアイビー・リーグの中でも伝統的な部類に入ることで知られている[10][11][12]

大学の蔵書数は、1100万冊を超え、大学図書館としては世界第2位(1位はハーバード大学)。蔵書の約半数は、ゴシック様式の巨大なスターリング記念図書館(地上7階建てで各階が2層に分かれている)に収められている。壁面が大理石で覆われたバイネキー稀少本・原稿図書館には、グーテンベルク聖書はじめ数々の貴重な資料が所蔵されている[13]

キャンパスはイギリスのオックスフォード大学ケンブリッジ大学を模した石造のゴシック建築の建築が多く、世界でもっとも美しいキャンパスの一つとされている[14][15]。教会のような形をした地上7階建てのペイン・ウィットニー・ジムと呼ばれるスポーツ施設や鐘楼のハークネスタワーを始め、キャンパスにはシンボル的な建物や庭が多い[15]。充分な数の教会を所有していたイェール大学側はスポーツ施設の建設を希望したため、大伽藍のような外観のジムが建設されることとなった。
イェール大学の基金は、254億ドル(2017年)[16]であり、大学基金としてハーバード大学に次いで、第2位の規模とされている。

幕末に来航したマシュー・ペリー黒船に当大学関係者が随行して以来、東アジア研究が盛んであり、とりわけ朝河貫一が築いた日本研究は、現在も続いている。

2000年から理系学部の強化に10億ドル以上の投資をしており[17]、2008年に新たに創設されたYale West Campusを通じての生物学の研究施設の拡張[18]、2019年に完成予定の自然科学の総合研究施設の建設[19]はじめ多数の研究施設を増設・近代化している。

1960年代からマクミラン国際地域研究センターが附属し、日本とも学術的な交流を深めている[20]。卒業生から5000万ドルの寄付を受けて、センターには2010年から新コースを設置しており、国際問題の実務専門家を講師に招いている。

アイビー・リーグのアメリカン・フットボール最終戦は、伝統的にハーバード対イェールであり、The Gameと呼ばれている。教育・研究・卒業生の活躍においてもハーバードの最大のライバルとして有名であるが、両校の交流も盛んである。ハーバードが「学問研究の中枢」として語られるのに対し、イェールはこれまで5人の大統領を輩出しているのを引き合いに、「国家権力の中枢」として語られることもある[21]。また、格式の高い大学として有名であり[22]グレイト・ギャッツビーなど文学作品では上流階級やエリートの象徴として描かれている。さらに、2004年大統領選の主要候補6名の内、4名がイェール出身であるなど、近年の政治家の輩出においては全米で脚光を浴びることが多い。ビル・クリントン元大統領、ジョージ・W・ブッシュ元大統領ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領、ヒラリー・クリントン前国務長官もイェール・ロー・スクール出身である。その迷信がかった象徴として、アルフォンソ・タフトらにより結成された秘密結社スカル・アンド・ボーンズ」が頻繁に引き合いに出される。イェールには格式の高いものからそうでないものまで多くの秘密結社が存在する。キャンパスに点在する窓のない建物の多くはそうした秘密結社のものである。

イェール大学のマスコットは、「ハンサム・ダン」という名のブルドッグである。アメリカン・フットボールなどの大学のスポーツ・チームは、イェール・ブルドッグスをチーム名としている。

モットーは"Lux et Veritas"(ラテン語「光と真実」) である。アメリカで最初に設立されたハーバード大学では単にVeritas(「真実」)であったが、ハーバードの世俗化を批判して創設されたイェールではこれにLux(「光」)を付け加えた[23]

評価 編集

US NEWS RANKINGS(学部課程のランキング)ではイェール大学は、毎年ハーバード大学プリンストン大学と共に3位以内に入っている。これら3校はBig 3英語版と呼ばれる。

2006年度には、イェールの学部課程の合格率は一桁台で全米で最も低かった。イェール大学は米国内だけでなく、世界でも最高の名声を得ている大学の一つである。

イギリスのタイムズ紙が発行しているThe Times Higher Education Supplementの「世界の大学ランキング」では8位[24]、「評判ランキング」では8位である(2016年度)[25]。科目別ランキングでは、社会科学分野で世界3位、生物学で世界7位である[26]。また、Science Citation Indexランキングではイェール大学の工学研究の引用数や研究水準が全米1位にランキングされている[27]。自然科学分野でも多くの専攻で全米ランキング及び世界ランキングの最上位を占めるのは言うまでもないが、人文科学、社会科学分野での評価がとりわけ高く、経済学、歴史、法学では全米1位である[28][29]

大学院レベルでは、特にロー・スクール(法科大学院)が全米最難関として知られ、『USニューズ&ワールド・レポート』では、1990年のランキング開始以来、2023年まで毎年1位にランクされている[30]。QS科目別ランキングで世界4位、Times Higher Education Rankingでは世界3位[31]に位置付けられている[32]

学生数は学部、大学院合わせて約11,500人。一方、ハーバード大学の学生数は約21,000人である[33]

イェール大学基金 編集

2020年6月時点のイェール大学基金の総額は、312億ドル(約3.4兆円)である[34]。この大学基金の発展にはデイビッド・スウェンセンの活躍が大きい。デイビッド・スウェンセンはイェール大学の卒業生であり、ノーベル経済学者のジェームズ・トービン教授の教え子であった。彼はイェール大学で経済学博士号を取得した後、ウォール街の金融機関に就職した。その後、大学時代の恩師のトービンから大学基金の資産運用の仕事を依頼され、1985年、デイビッド・スウェンセンは母校のイエール大学の資産運用の担当者に就任した。

その後、スウェンセンは基金の運用成績で毎年、好成績を残し、その運用実績は年平均で12.4%であった。その結果、イェール大学基金は当初の13億ドルから、2020年6月時点で312億ドルへと、約24倍に増加した。

2020年6月のイェール大学基金の投資運用先は、米国株…2.25%、海外株…11.75%、債券・現金…7.5%、ヘッジファンド…23.5%、レバレッジドバイアウト…17.5%、不動産…9.5%、ベンチャーキャピタル…23.5%、天然資源…4.5%である[35]

関連人物 編集

出身者 編集

政治家・政府関係者 編集

社会科学 編集

自然科学 編集

人文学 編集

文学・ジャーナリズム 編集

芸術・音楽・芸能 編集

実業 編集

スポーツ 編集

日本出身者(生年順) 編集

その他にもノーベル賞受賞者、上院議員、連邦最高裁判所判事、実業家、大学教授等を含め著名人多数。

その他関係者(イェール大学から学位を取得している者を除く) 編集

関連項目 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 学業不振のため中退
  2. ^ 在学中に官命で欧州へ渡り、その後岩倉使節団に現地参加したため大学を離れた。

出典 編集

  1. ^ NAICU – Member Directory Archived 9 November 2015 at the Wayback Machine.
  2. ^ As of June 30, 2016. U.S. and Canadian Institutions Listed by Fiscal Year (FY) 2016 Endowment Market Value and Change in Endowment Market Value from FY 2015 to FY 2016”. National Association of College and University Business Officers and Commonfund Institute (2017年). 2018年2月3日閲覧。
  3. ^ Shelton, Jim (2013年7月1日). “Peter Salovey takes the helm as Yale's 23rd president”. New Haven Register. http://nhregister.com/articles/2013/07/01/news/new_haven/doc51d22565bfa00732291606.txt 2013年7月22日閲覧。 
  4. ^ a b Yale Facts”. Yale University. 2015年11月1日閲覧。
  5. ^ Yale University – Identity Guidelines”. 2017年4月19日閲覧。
  6. ^ a b c d e Patrick J. Mahoney Yale University from Colonial Times to the Present | ConnecticutHistory.org
  7. ^ http://web.library.yale.edu/mssa/YHO/nobel_winners.pdf
  8. ^ 世界の有力大学の国際化の動向(新連載・1)イエール大学の国際戦略 グローバル大学への道 船守, 美穂 カレッジマネジメント, 26(2), 2008.3, pp. 48-51
  9. ^ 植民地時代に創立したアメリカ合衆国の大学の一覧
  10. ^ http://college.usatoday.com/2012/09/11/know-your-ivies/
  11. ^ https://fivethirtyeight.com/features/the-most-conservative-and-most-liberal-elite-law-schools/
  12. ^ http://yaleherald.com/homepage-lead-image/cover-stories/the-right-way-a-tradition-of-conservatism-revisited/
  13. ^ http://www.newhaven-j.com/yale.html
  14. ^ http://news.yale.edu/2010/09/24/yale-named-among-world-s-most-beautiful-campuses
  15. ^ a b http://www.deseretnews.com/top/3086/2/1-Yale-University-The-35-most-beautiful-college-campuses-in-America.html
  16. ^ http://investments.yale.edu
  17. ^ http://www.yalescientific.org/2012/04/the-story-of-science-at-yale-part-ii-sizing-up-science-at-yale/
  18. ^ http://westcampus.yale.edu/scientific-research-institutes
  19. ^ http://news.yale.edu/2016/09/22/yale-science-building-arrives-transformative-moment-biology-and-beyond
  20. ^ 日本学術振興会 若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム
  21. ^ 映画「グッド・シェパード」等を参照
  22. ^ ISBN 0-8014-3479-3.
  23. ^ ***イェール大学ビデオ***
  24. ^ “World University Rankings” (英語). Times Higher Education (THE). (2018年9月26日). https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2019/world-ranking#survey-answer 2018年10月2日閲覧。 
  25. ^ https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2016/reputation-ranking
  26. ^ https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/yale-university#ranking-dataset/595540
  27. ^ http://seas.yale.edu/faculty-research
  28. ^ https://www.usnews.com/best-graduate-schools/top-humanities-schools/yale-university-130794
  29. ^ https://www.usnews.com/best-graduate-schools/top-law-schools/yale-university-03027
  30. ^ Sloan, Karen; Sloan, Karen (2022年11月17日). “Yale and Harvard law schools to shun influential U.S. News rankings” (英語). Reuters. https://www.reuters.com/legal/legalindustry/top-ranked-yale-law-school-shun-flawed-us-news-rankings-2022-11-16/ 2023年11月24日閲覧。 
  31. ^ https://www.timeshighereducation.com/student/what-to-study/law
  32. ^ https://www.topuniversities.com/universities/yale-university
  33. ^ https://www.usnews.com/best-colleges/yale-university-1426
  34. ^ イェール大学大学基金(3.4兆円) デイビッド・スウェンセンの功績について”. https://globalstream-news.com/ (2021年5月30日). 2023年1月7日閲覧。
  35. ^ イェール大学大学基金(3.4兆円) デイビッド・スウェンセンの功績について”. https://globalstream-news.com/ (2021年5月30日). 2023年1月7日閲覧。
  36. ^ ROBERT J. H. KIPHUTH (USA)”. www.ishof.org. the International Swimming Hall of Fame. 2013年10月21日閲覧。 “Internet Archiveによる2015年5月22日時点のアーカイブページ。”

外部リンク 編集

座標: 北緯41度18分40秒 西経72度55分36秒 / 北緯41.31111度 西経72.92667度 / 41.31111; -72.92667