カイロス

ギリシア神話に登場する神

カイロス古希: Καιρός, ラテン文字転写:Kairos, ラテン語形:Caerus)は、ギリシア語で「機会(チャンス)」を意味する καιρός を神格化したギリシア神話男神である。元は「刻む」という意味の動詞に由来しているという。キオス悲劇作家イオーンによれば、ゼウスの末子とされている。

古代ギリシアの彫刻家、リュシッポスのカイロスのレリーフの複製、トロギルで出土
カイロス (フランチェスコ・サルヴィアーティ 画)

カイロスの風貌の特徴として、頭髪が挙げられる。後代での彫像は、前髪は長いが後頭部が禿げた美少年として表されており、「チャンスの神は前髪しかない」とは「好機はすぐに捉えなければ後から捉えることはできない」という意味だが、この諺はこの神に由来するものであると思われる。また、両足には翼が付いているとも言われている。オリュンピアにはカイロスの祭壇があった。

ギリシア語では、「時」を表す言葉として καιρός (カイロス)と χρόνοςクロノス)の2つがある。前者は「時刻」を、後者は「時間」を指している。

また、「クロノス時間」として、過去から未来へ一定速度・一定方向で機械的に流れる連続した時間を表現し、「カイロス時間」として一瞬や人間の主観的な時間を表すこともある。内面的な時間である。

参考文献 編集

  • 高津春繁 『ギリシア・ローマ神話辞典』 岩波書店、1960年。ISBN 4000800132