カスタードプディング
カスタードプディング(英: custard pudding, baked custard、イギリス英語: caramel custard, cream caramel、米: crème caramel, flan、仏: crème caramel, crème renversée au caramel, flan aux œufs)、カスタードプリンまたは単にプリン、フランは、洋菓子の1つ。
プリン型に牛乳と砂糖を混ぜた卵液を流し込み、加熱してカスタードを凝固させたものである。なお、原義のプディングはイギリスでの多様な蒸し料理の総称である。
概要編集
由来には、イギリス航海者(16世紀)の考案説と腸詰の派生説がある[1]。イベリア半島やラテンアメリカではスペイン語およびポルトガル語でフラン(flan、< 古仏: flaon < 羅: fladonem < 古高独: flado 「扁平なケーキ類」に由来)と呼ばれる。アメリカ合衆国では、英語の名称よりもスペイン語のフランやフランス語のクレーム・カラメル(クレーム・ランヴェルセ・オ・カラメル〈ひっくり返しクリーム菓子カラメルがけ〉の省略形)で知られていることが多い。ベトナムにはフランス統治時代に伝来し、バン・フランまたはケム・カラメン[2](越: Bánh flan, kem caramen、バインはベトナム語で粉などを捏ねて作る食品、ケムはクリームのこと)と呼ばれている。スペインのフランが伝来したフィリピンではレチェ・フラン(leche flan、「乳のケーキ」)と呼ばれる。フランスのフラン・オ・ズーは「卵のフラン」の意。
プリン型に牛乳と砂糖を混ぜた卵液を流し込んで加熱することにより、カスタードを凝固させたものである。溶き卵に水分を加えて加熱して固めるという点で、製法は茶碗蒸しとよく似ている。一方、卵を主原料とせずゼラチンなどのゲル化剤を用いてゼリー状に固めるケミカルプリン(後述)もある。
一般的には甘味としてカラメルソースを用いることが多く、柔らかな舌触りとカラメルのほろ苦さの混ざった甘さが特徴。あらかじめプリン型の底にカラメルソースを入れておき、型を伏せた状態で皿に移して食卓に供するが、カラメルを別添としたものもあり、容器に入れたまま食べることを前提としたものもある。ブランド牛乳を用いたものや、牛乳瓶に似た形の容器で加熱して瓶のままスプーンで食べるものもある。
洋菓子屋やコンビニエンスストアでも人気が高い商品で、贈答品まで幅広く商品バリエーションがある。台湾では、市販のケミカルプリンに1リットルという巨大なサイズのものがある。
カスタードプディングの硬さと弾力の嗜好には、時代によって変化がある[3]。
なお、柔らかく調整することにより、飲料として商品化したものも発売されている。
調理法編集
- プリン型に砂糖を焦がして作ったカラメルソースを、熱いうちに容器に敷く。
- 卵と砂糖をあらかじめ、混ぜておく。
- 牛乳を60℃までゆっくり攪拌(泡が立たない程度に)しながら温め、2.に温まった牛乳をゆっくりと混ぜながら流し込む。仕上げにバニラビーンズまたはバニラエッセンス(バニラオイルでも代用可)を微量添加すると卵の生臭みを消し、甘い芳香をつけることができる。
- 3.を目の細かい篩などでいったん漉した後、1の容器に流し込む。その後、長い柄の付いたライター(チャッカマン)やエタノール入りの霧吹きなどで泡を消すと、焼いた後の見た目も良くなる。大きな型で焼く場合には、炎が大きいキャンプ用のハンディバーナーで手早く作業すると効率が良い。
- 敷板に容器を並べ、湯(目安は45 - 60℃。オーブンなどにもよるので、事前に確認を)を張り、80℃に保つようにしながらオーブンで加熱する(30分くらいを目安に)。
- 焼けたら、敷板から取り出し、荒熱をとる。
- 温かくても食べられるが、多くは冷蔵庫で冷やして完成とする。
食べる直前、皿にひっくり返すときはケースのふちから竹串でカラメル層まで空気を入れるとすっぽりと抜ける。また、ぬるめのお湯に容器を入れ、カラメルを緩ませてから指で周りを軽く押すと、すっぽり抜ける場合もある。写真のように器から直接取り分けても良い。出来たてを熱いまま食べても美味である。
オーブンで焼く代わりとして、茶碗蒸しのように蒸し器で蒸す方法もある。温泉地では地獄釜を用いたカスタードプディングも製造されている。
ケミカルプリン編集
ゼラチンなどのゲル化剤でゼリー状に固めたものを、ケミカルプリンという。ゲル化剤で固めることにより、さらになめらかな舌触りになる。ゼラチンを使うことから、その製法はババロア(生クリームを用いて泡立てる)に近似する。
ケミカルプリンを作る際にはゼラチンを冷やして固めるため、カスタードプディングのように加熱する必要がない。
- ゼラチンをふやかし、ケースにゆるく作ったカラメルソースを入れる。
- 牛乳(必要なら温める)に砂糖とゼラチンを溶かし、溶いた卵を加えてよくかき混ぜる。
- 冷蔵庫で固まるまで冷やし、食べる直前に皿の上にひっくり返す。
家庭ではゼラチンの代わりに寒天で固める場合もある。ゼラチンの一部を寒天に置き換えると歯切れの良さが出るが、凝固剤をすべて寒天で代用するともろくなる。
バリエーション編集
- プリンアラモード
- フルーツやホイップクリームなどと盛り合わせたもの。ホテルニューグランド(横浜市中区)が発祥。
- クレームブリュレ Crème Brûlée
- フランスの菓子。日本では「焼きプリン」(焼きプディング)とも呼ばれている。生クリーム、卵黄、砂糖でカスタードを作り、カラメルソースを入れずにプディングを焼いてから、型に入れたまま表面に砂糖をふりかけ、バーナーなどであぶって砂糖をカラメル化したもの。普通のカスタードプディングよりも柔らかく、脂肪分が多いためにこってりしたコクのある味わいに仕上がる。名称はフランス語で「焼きクリーム」の意。
- クレマカタラーナ Crema Catalana
- スペインカタルーニャ州の菓子。表面にカラメルを作る点がクレーム・ブリュレと似ているが、湯煎をせずに焼く、生クリームと牛乳両方を使う、シナモンやレモンの皮で風味をつける点で異なる。
- ボネ
- イタリアピエモンテ州の菓子。ココアパウダーと砕いたアマレッティを加えたココア風味のプディング。
- プリン大福
- 広島県の虎屋など、複数のメーカーのものがある。大福餅の餅皮で小さなカスタードプディングを包み込んだ菓子。
- ぷりんどら
- 大分県由布市の菊家の名物菓子で、ケミカルプリンをどら焼きの皮で夾んだもの。どら焼きのつもりで常温にしばらく置くと、中身が熔けてしまうので注意が必要。
- プリンミルクティー 布丁茶
- 台湾のタピオカティーのタピオカパールをカスタードプディングに代えたもの。
- かぼちゃプリン
- かぼちゃペーストを生地に混ぜたもの。
- ストロープワッフルプリン
- オランダ発祥のストロープワッフルと同じ味で、アムステルダムで流通している。
- バイン・フラン(ケム・カラメン)
- ベトナムのバンフラン(バインフラン)。卵黄を多めに、また牛乳でなくコンデンスミルクで作ることもある。クラッシュアイスを乗せて供されることが多い。
- ベビンカ
- インド・ゴア州の、ギーとココナッツミルクから作られるカスタードプディング。層状になっているのが特徴。
- キンジン
- ブラジルのカスタードプディング。砂糖の量が多く、おろしたココナッツが入り、牛乳の代わりにココナッツミルクを使うこともある。
トピック編集
脚注編集
注釈編集
出典編集
- ^ お菓子の由来物語 P.147
- ^ 池田浩明. 食べる指差し会話帳3 ベトナム. 情報センター出版局. p. 44. ISBN 4-7958-2393-6
- ^ “Vol.8 プリンのかたさと流行について おいしさ科学館コラム おいしさ科学館”. 太陽化学. 2021年1月26日閲覧。
- ^ “2月25日 プリンの日”. なるほど統計学園. 総務省統計局. 2021年1月26日閲覧。
参考文献編集
- 猫井登『お菓子の由来物語』幻冬舎、2008年9月。ISBN 978-4779003165。