カトリック正義と平和協議会

カトリック正義と平和協議会(カトリックせいぎとへいわきょうぎかい)は、日本のカトリック教会の組織。略称は正平協

カトリック中央協議会の組織であり、また、日本の16教区の各代表である司教で構成された、「日本カトリック司教協議会」によって設置された委員会として活動している。

また、全国を16地区に分けた各教区では、教区または、それを代表する司教の直属委員会であったり、社会活動組織という位置づけで、同様の組織が活動している。東京大司教区では社会福祉部門の委員会とされ、その正式名称は「カトリック東京教区正義と平和委員会」と呼ぶ。

目次

設立経緯とその後の経過編集

1967年、ローマで教皇パウロ6世教皇庁に「正義と平和委員会」を設立した。これを受けて日本でも、1970年に前身となる「正義と平和司教委員会」が正式に司教委員会として承認された。1975年には第1回全国会議が東京で開催された。全国集会は、その後も年1回開催されている。

全国集会編集

  • 第35回 さいたま大会
    • 開催日 - 2009年10月10日~12日
    • テーマ - ひとりひとりがかけがえのない人間です(谷川俊太郎訳世界人権宣言より)
  • 第34回 大阪大会[1]
  • 第33回 広島大会[2]
    • 開催日 - 2007年9月22日~24日
    • 場所 - 世界平和記念聖堂を中心とした会場
    • テーマ - 平和の使徒となろう
  • 第32回 京都大会
    • 開催日 - 2006年10月7日~9日
    • 場所 - アピカルイン京都・聖母女学院短期大学
    • テーマ - このままでいいの? キリストとともに歩もう
  • 31 横浜 2005/9/23~25 どうでもよくない! 危機をのりこえるため、今、平和の連帯を
  • 30 東京 2004/10/9~11 「もうひとつの世界は可能だ!」 「排除」から「共生」へ
  • 29 さいたま 2003/11/22~24 地上に平和を
  • 28 長崎 2002/9/23~25 正義なくして平和なく、ゆるしなくして正義なし
  • 27 沖縄 2001/11/22~25 ヌチドゥタカラ(命こそ宝)
  • 26 名古屋 2000/11/23~25 和解と連帯
  • 25 小樽 1999/10/22~24 人間らしく生きる
  • 24 松山 1998/10/9~11 平和のために働く人は幸い
  • 23 仙台 1997/10/10~12 いのち 神さま何をおのぞみですか
  • 22 東京 1996/10/10~12 女と男の正義と平和
  • 21 広島 1995/9/22~24 '95ひろしま発 過去を振り返ることは、将来に対する責任をになうことです
  • 20 京都 1994/9/2~4 貴と賤
  • 19 長野 1993/11/21~23 松代「大本営地下壕」のメッセージ
  • 18 宇都宮 1992/10/9~11 今、私たちの生活は? 見直そう、キリストのまなざしで
  • 17 東京 1991/11/3~5 にんげん・地球・いのち
  • 16 沖縄 1990/9/21~24 命どぅ宝
  • 15 名古屋 1989/9/22~24 聴き・知って・歩もう 行動へのかけ橋
  • 14 大阪 1988/10/8~10 人を人として
  • 13 仙台 1987/10/9~11 日本の社会とともに歩む教会
  • 12 札幌 1986/10/10~12 ともに生きる社会を目指して
  • 11 長崎 1985/9/21~23 反核・平和・キリスト者の祈りと行動
  • 10 横浜 1984/9/22~24 一方的な考えや行為を乗りこえる創造的かかわり
  • 9 小野田 1983/10/8~10 人間性の尊重
  • 8 前橋 1982/10/9~11 反核・軍縮の署名に続く平和行動の実践
  • 7 東京 1981/10/9~11 ローマ教皇の平和アピールと私たち
  • 6 広島 1980/10/9~12 平和教育
  • 5 東京 1979/11/2~4 平和と人権
  • 4 京都 1978/10/7~10 福音・人権・差別
  • 3 東京 1977/10/7~10 教会と人権
  • 2 名古屋 1976/10/9~11 人権と宣言
  • 1 東京 1975/11/1~3 正平協の使命と今後の方針

取り組んでいる主な活動編集

カトリック正義と平和協議会公式ホームページによると、1995年4月に発表されたの声明文「新しい出発のために」において、「歴史の検証」および「経済侵略」を重要な取り組み課題としている。

  • 「歴史の検証」 - 日韓関係史勉強会。講演会、勉強会、現地学習。日韓司教団交流の手伝いをする。ソウルの人権委員会および光州の正義と平和委員会との情報交換などの活動。
  • 「経済侵略」 - 主に日本の経済援助によるフィリピンのパンパンガデルタ開発計画 (PDDP = Pampamga Delta Development Project) のために強制撤去にあっている住民との連帯活動に、プロテスタント、市民運動と協力して取り組む。

また、現在次のような活動に取り組んでいるとされている。

  • 国際債務問題
  • jubilee2000国際債務削減キャンペーン
  • 「女性委員会」主催
  • アジア地区「正義と平和」の連帯会議(年一回国際会議参加)
  • 東チモール問題
「東チモールのためのカトリック者の会」「東チモールに自由を!全国協議会」と連携
  • 「ラテンアメリカの民衆と連帯する国際キリスト者の会」(年一回国際会議参加)
  • 「中米の人々と手をつなぐ会」事務局運営
  • メキシコーチアパス先住民問題
  • グアテマラ問題
  • コロンビア人権問題
  • 死刑問題を考える会」

諸団体と協力・連携し行っている主な活動編集

カトリック正義と平和協議会公式ホームページやカトリック新聞によると、現在次のような諸団体と協力・連携して取り組んでいるとされている。

東京教区正義と平和委員会に参加・協力
  • 慰安婦」問題。国際連合から日本政府に対して慰安婦に謝罪と補償を求める勧告が出されるようにロビー活動を行い、その結果、国連人権委員会でクマラスワミ報告書が出された。
  • 死刑問題
  • 冤罪問題
  • 拷問禁止条約問題
  • 進出企業問題

NCC(日本キリスト教協議会)との連携・取組み
  • 外登法問題(外登法問題と取り組む全国キリスト者連絡協議会参加)
  • 靖国、平和祈念館問題(「NCC靖国委員会」参加)
  • 「平和 - 核問題委員会」参加
  • 宗教法人法/政教分離問題
  • 全国キリスト教学校人権教育研究協議会
  • RAIK(在日韓国人問題研究所)協力
  • 外国人労働者問題 外国人住民基本法案

活動内容とその意義についての正平協の主張編集

カトリック福音の精神にのっとり、貧困抑圧差別などで苦しめられている社会的弱者と連帯し、正義と平和のために祈り活動することが主旨であるとされる。

意義づけと主張内容編集

これらの活動内容は日本の16教区の各代表である司教で構成された、日本のカトリック教会を指導する日本カトリック司教団によれば、「尊いいのちを守るために、神のみ心にそって果たさなければならない預言者的な役割」として、「平和への実現に向かって貢献」するものであり、「時のしるしを読み解き、神のメッセージを伝える」ものとして位置付けられている。

また、人間の尊厳は聖書の教えによって神から与えられたものであり普遍的な権利であり、この理念は世界人権宣言(前文)や日本国憲法(前文・11条・97条)にも明記された共通善であることから、人権の尊重と平和の実現に向けて連帯した活動が必要であるとされている。

正平協では、キリスト教の信徒とは「神の国完成」のために働く人であることから、社会の問題を他人事と考えたり無関心でいることはキリスト者の生き方に反しており、正義と平和と喜びのある社会こそ神の国の到来であると考えている。キリスト教徒が最も大事にしている「主の祈り」において、神のみ国が来ますように、みこころが地にも行われますように、と祈られているように、キリスト教は個人的な安心や救いを目的とする宗教ではなく、神の支配による社会全体の救いを求めているのであって、キリスト者にとって正義と平和のための活動は、祈りと共に生活の両輪であると考えている。

正平協の活動に対して、日本カトリック司教団は、これまでに靖国神社参拝や政教分離の件を含め、社会問題や正義と平和への態度について、いくつかの公文書[3]で表明している。その内容は、基本的に正平協の主張に沿ったものとなっている。

靖国神社および政教分離への態度および声明編集

正平協は、カトリック教会が心ならずも靖国神社参拝を儀礼として容認したことは軍国主義下の過去の過ちであり、カトリック教会は目前に迫っている同様の過ちを繰り返してはならない、そして植民地支配と侵略行為についての反省を明記し、天皇中心の国家体制が戦争を起こした過去の誤りを繰り返さないためにも、政教分離原則は守らなければならないとしている。また、日本国の首相による靖国神社参拝を「政教分離に反する」と解釈している。

この件に関して、日本カトリック司教団は公文書[3]で日本国首相による靖国神社参拝に対して抗議声明を発表し、また憲法20条の信教の自由と政教分離については、現在の条文の堅持を求めている。また同様に、1936年祖国に対する信者のつとめの指針において靖国神社の参拝を許容したことについて、戦後に日本国憲法が制定されたこと、国家神道が解体され靖国神社が一宗教法人になったこと、教会も第二バチカン公会議を経たことなどから、当時の指針をそのまま現在に当てはめることはできないとの考えを表明している。

核兵器への態度および声明編集

正平協は、核兵器に対してその保有が自国を守る最大の武器だという考えを、「誤った論理」であると主張し、世界各国の指導者には、世界からあらゆる核兵器を無くすために、今後いかなる国も核開発をしないことと、すでに保有している国々が歩調をあわせて核の完全廃絶に向けて歩みだすよう、求めている。また、2006年10月9日の北朝鮮による核実験の際にも、実験に抗議するとともに、同国に核兵器の完全放棄を求める声明を2006年11月1日付で表明している。

教育基本法改正(改悪)に対する態度および声明編集

正平協は、政府および自由民主党が2006年から2007年にかけて取り組んだ教育基本法改正(改悪)について、

  • 「人格の完成」をめざす教育から「国策に従う人間」をつくる教育への逆戻り
  • 格差の再生産・社会の差別的な構造・社会階層の固定化の助長

であるとの考えから、これを懸念する声明を2006年11月2日付で表明した。

この件について、日本カトリック司教団からも、同日付の公文書において、同様の考えが表明されている。

その他各諸問題への態度および声明編集

  • 国際債務問題 
  • jubilee2000 国際債務削減キャンペーン
  • アジア地区「正義と平和」の連帯会議
  • 東チモール問題
  • 「東チモールのためのカトリック者の会」「東チモールに自由を!全国協議会」との連携
  • 「ラテンアメリカの民衆と連帯する国際キリスト者の会」 / 年一回国際会議参加
  • パナマ/メキシコ会議97.2.
  • エクアドール会議98.9
  • 「中米の人々と手をつなぐ会」事務局運営
  • メキシコーチアパス 先住民問題
  • グアテマラ問題
  • コロンビア人権問題

協力、連携活動

  • 「従軍慰安婦」問題
  • 死刑問題
  • 冤罪問題
  • 拷問禁止条約問題
  • 進出企業問題  等

批判の存在編集

カトリック中央協議会の組織である「日本カトリック司教協議会」によって設置された委員会に対しては、教会内外からは様々な批判も存在する[4]。その主なものは、正平協の活動の中で政治的に意見が分かれる問題への態度や対応に対するものである[5]。正平協は、どちらかと言えば、ヒューマニズムに基づく社会正義、或いは、エキュメニズム共産主義の一環である国際主義資本主義の一環であるグローバリズムとの相違に注意)に基づく平和主義など、いかにもカトリシズム普遍主義)的な態度で、その意見を明確に表明する傾向がある。一方でカトリック教会には様々な政治的意見を持つ信徒(信者)が所属していることから、政治的に意見が分かれることに関しては信徒の全てがこの組織の意向に賛同しているわけではなく、個々人の政治的信条が正平協の主張内容と一致する訳では無い[6]。また、信徒の中には、この協議会の活動内容が左傾化していると考え、そのことを問題視している者もあり、そうした信徒による組織も存在する。

名称編集

委員会ではなく協議会の名称を使用しているのは、できるだけ広く参加を求め、運営の民主性を示すためであるとされる。

脚注編集

  1. ^ シナピス/カトリック大阪大司教区社会活動センター
  2. ^ カトリック広島司教区平和の使徒推進本部
  3. ^ a b 日本司教団関連文書
  4. ^ 日本カトリック司教協議会・社会司教委員会『なぜ教会は社会問題にかかわるのかQ&A』カトリック中央協議会、第2版、2012年11月5日。33-38頁。ISBN 978-4-8775-0166-2
  5. ^ 教理に関する覚え書きカトリック信者の政治参加に関するいくつかの問題について カトリック中央協議会
  6. ^ 日本カトリック司教協議会・社会司教委員会『なぜ教会は社会問題にかかわるのかQ&A』カトリック中央協議会、2012年11月5日。47-49頁。

関連項目編集

外部リンク編集