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カラカルCaracal caracal)は、食肉目ネコ科カラカル属に分類される食肉類。

カラカル
カラカル
カラカル Caracal caracal
保全状況評価[1][2]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svgワシントン条約附属書I[注釈 1]
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
: ネコ科 Felidae
: カラカル属 Caracal
: カラカル C. caracal
学名
Caracal caracal (Schreber, 1776)[2]
シノニム

Felis caracal Schreber, 1776[2]
Lynx caracal (Schreber, 1776)[3]

和名
カラカル[4]
英名
Caracal[2]
Desert Lynx[2]
分布域
分布域
耳介の先端の長い房毛が特徴

目次

分布編集

形態編集

体長60 - 91.5センチメートル[4]。尾長23 - 31センチメートル[4]。肩高38 - 50センチメートル[4]。体重8 - 19キログラム[4]。オスはメスと比べて大きい[5]。体毛は短く、地色は赤褐色もしくは黄灰色で顎、胸、腹にかけて白色である[4]。稀に黒化した個体が生まれることがある[6]。目から鼻にかけて黒い筋模様が入る[7]。腹面に不明瞭な斑点が入ることもある[4]

耳介は大きく背面が黒く、先端には4.5センチメートルの長く黒い房毛がある[4]。この房毛の役割は不明だが、コミュニケーションの役割を果たすと考えられている[8]。名前はトルコ語で「黒い耳」を意味するkarakulakに由来する[9]。四肢は長い[10]。後肢は前肢と比べて長く、筋肉が発達しており、これにより大きくジャンプすることができる[8][11]。尾は短い[4]

分類編集



ヒョウ亜科




Pardofelis
(アジアゴールデンキャット、ボルネオヤマネコ含む)





サーバルCaracal serval




アフリカゴールデンキャットC. aurata



カラカル C. caracal





ネコ亜科の他属





Johnson et al.(2006)より現生種の系統樹より抜粋[12]

以前はオオヤマネコ属ネコ属に分類されることがあった[2]。2006年に発表された分子系統解析では、アフリカゴールデンキャット単系統群を形成し、カラカル属に分類されると考えられている[12]

8亜種に分ける説がある[13]。以下の分類はMSW3(Wozencraft,2005)に、分布はIUCN/SSC Cat Specialist Group(2017)に従う[13][14]

Caracal caracal caracal (Schreber, 1776)
アフリカ大陸南部
Caracal caracal algira (Wagner, 1841)
アフリカ大陸北部(モロッコからリビア東部)
Caracal caracal damarensis (Roberts, 1926)
アフリカ大陸南部(南アフリカ共和国(北ケープ州)からナミビア、ボツワナ、アンゴラ、ジンバブエ)
Caracal caracal limpopoensis (Roberts, 1926)
アフリカ大陸南東部(南アフリカ共和国(旧トランスヴァール州)、モザンビーク、タンザニア南部、マラウイ、ザンビア、コンゴ民主共和国南部、アンゴラ東部)
Caracal caracal lucani (Rochebrune, 1885)
ガボン、アンゴラ北部、コンゴ民主共和国南西部、西部
Caracal caracal nubicus (J. B. Fischer, 1829)
エジプトからタンザニア北部
Caracal caracal poecilotis Thomas and Hinton, 1921
モーリタニア南部、ニジェール北部、セネガル北部からスーダン国境西部
Caracal caracal schmitzi (Matschie, 1912)
中東アラビア半島からトルクメニスタン、インド

3亜種に分ける説もある[14]。以下の分類・分布はIUCN/SSC Cat Specialist Group(2017)に従う[14]

Caracal caracal caracal (Schreber, 1776)
アフリカ大陸南部、東部
Caracal caracal nubicus (J. B. Fischer, 1829)
アフリカ大陸北部、西部
Caracal caracal schmitzi (Matschie, 1912)
中東からインド

生態編集

サバンナや草原、半砂漠、低木林、丘陵地、森林など、主に乾燥した地域に生息するが、砂漠には生息しない[4][6][10]。また、サハラ砂漠中部やアフリカの赤道直下の森林にも生息しない[2]。標高2,500メートルまで(例外的に標高3,300メートルまで)のエチオピア高原でも見られることがある[2]。地上生だが、巧みな木登りができる[4]。夜行性だが、昼間に活動することもある[4]。繁殖期を除いて単独で生活する[5]。縄張りを持ち、尿によるマーキングを行う[7]。オスの行動圏はメスの行動圏と比べて広い[15]。乾燥した地域では行動圏が広くなる傾向がある[2]

食性は動物食で、鳥類や小型レイヨウ齧歯類ノウサギハイラックス爬虫類などを食べる[4][8][10]ヒツジヤギ家禽などの家畜を襲うこともある[4][6]。死肉を漁ることもある[11]。鋭い視覚と聴覚を持ち、3メートルもジャンプして飛んでいる鳥類を捕らえることができる[4][6]。自身の体重の2 - 3倍の獲物を倒すこともできる[8]。獲物を捕らえる時は、5メートル以内の距離まで忍び寄ってから素早く走り、飛びかかって捕らえる[5][7][11]。小型の獲物は首筋に噛み付いて仕留め、大型の獲物は喉に噛み付いて窒息死させて仕留める[5]ライオンヒョウハイエナに捕食されることもある[5]

繁殖期は特に決まってなく、妊娠期間は68 - 81日[4][11]樹洞や他の動物が捨てた巣穴などを利用し、1 - 6頭(通常2 - 3頭)を産む[4][5]。幼獣は生後10日で開眼し、生後1か月で固形物を食べ始め、生後9 - 10か月で独立する[4][11]

人間との関係編集

イランやインドでは、本種を訓練して鳥類の狩猟に用いることがあった[4]

アフリカ中部、西部、北部、北東部およびアジアでは、主に生息地の破壊による影響が懸念されている[2]。家畜を襲うため駆除されることもある[4]。アジアやアフリカ北部では生息数は減少しているが、アフリカ南部では生息数は安定していると考えられている[2]

アフガニスタンやアルジェリア、イスラエル、イラン、インド、ウズベキスタン、エジプト、カザフスタン、シリア、タジキスタン、チュニジア、トルクメニスタン、トルコ、パキスタン、モロッコ、ヨルダン、レバノンでは、本種の狩猟が禁止されている[2]。しかしナミビアや南アフリカでは、家畜を襲うことで「問題のある動物」として扱われ、本種を無制限に殺すことが許可されている[2][8]

日本では、1981年に神戸市立王子動物園が初めて飼育下繁殖に成功した[16]。また、日本では特定動物に指定されているため、飼育にあたっては都道府県知事または政令市の長の許可が必要となる[17]

カタールドーハで開催された2010年世界室内陸上競技選手権大会のマスコットは、本種を擬人化したSahamである[18]

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ アフリカ大陸の個体群はワシントン条約附属書II

出典編集

  1. ^ Appendices I, II and III<https://www.cites.org/>(Accessed March 31, 2019)
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n Avgan, B., Henschel, P. & Ghoddousi, A. 2016. Caracal caracal (errata version published in 2016). The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T3847A102424310. http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T3847A50650230.en. Downloaded on 31 March 2019.
  3. ^ UNEP (2019). Caracal caracal. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (Accessed 31/03/2019)
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 今泉忠明 『野生ネコの百科[最新版]』 データハウス、2004年、88-91頁、ISBN 978-4-88718-772-6
  5. ^ a b c d e f Phillips, L. 2009. "Caracal caracal" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed March 31, 2019 at https://animaldiversity.org/accounts/Caracal_caracal/
  6. ^ a b c d デイヴィッド・バーニー編 日高敏隆監修 『世界動物大図鑑』 ネコ・パブリッシング、2004年、210頁、ISBN 978-4-7770-5014-7
  7. ^ a b c ジュリエット・クラットン=ブロック、ダン・E.ウィルソン 『世界哺乳類図鑑』 新樹社、2005年、284頁、ISBN 4-7875-8533-9
  8. ^ a b c d e フィオナ・サンクイスト、メル・サンクイスト 『世界の美しい野生ネコ』 エクスナレッジ、2016年、87-91、133頁、ISBN 978-4-7678-2153-5
  9. ^ "Caracal." Merriam-Webster.com. 2019. https://www.merriam-webster.com (31 March 2019).
  10. ^ a b c 遠藤秀紀千石正一監修 『改訂新版 世界文化生物大図鑑 動物 哺乳類・爬虫類・両生類』 世界文化社、2004年、166-167頁、ISBN 4-418-04901-0
  11. ^ a b c d e ルーク・ハンター 『野生ネコの教科書』 エクスナレッジ、2018年、77-83頁、ISBN 978-4-7678-2513-7
  12. ^ a b Warren E. Johnson, Eduardo Eizirik, Jill Pecon-Slattery, William J. Murphy, Agostinho Antunes, Emma Teeling, Stephen J. O'Brien, "The Late Miocene Radiation of Modern Felidae: A Genetic Assessment," Science, Volume 311, Number 5757, 2006, pp. 73-77.
  13. ^ a b W. Christopher Wozencraft, "Caracal caracal," Mammal Species of the World. A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (editors). 2005. Johns Hopkins University Press, p. 533.
  14. ^ a b c Kitchener A. C., Breitenmoser-Würsten Ch., Eizirik E., Gentry A., Werdelin L., Wilting A., Yamaguchi N., Abramov A. V., Christiansen P., Driscoll C., Duckworth J. W., Johnson W., Luo S.-J., Meijaard E., O’Donoghue P., Sanderson J., Seymour K., Bruford M., Groves C., Hoffmann M., Nowell K., Timmons Z. & Tobe S. 2017. "A revised taxonomy of the Felidae. The final report of the Cat Classification Task Force of the IUCN/SSC Cat Specialist Group" (PDF) . Cat News, Special Issue 11, pp. 1-80.
  15. ^ "Caracal". IUCN/SSC Cat Specialist Group.(Accessed March 31, 2019)
  16. ^ 今泉吉典監修 『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』 東京動物園協会、1991年、165頁、ISBN 4-88622-061-4
  17. ^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理)環境省・2019年3月31日に利用)
  18. ^ Organisers unveils Doha 2010 official mascot named “Saham”

関連項目編集