カワラナデシコ(河原撫子、Dianthus superbus L. var. longicalycinus (Maxim.) F.N.Williams[1])とは、ナデシコ科ナデシコ属多年草秋の七草の1つであるナデシコ(撫子)は本(変)種のことを指す。別名(異名)はナデシコ、ヤマトナデシコ

カワラナデシコ
カワラナデシコ Dianthus superbus var. longicalycinus.JPG
カワラナデシコ の花
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : ナデシコ亜綱 Caryophyllidae
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ナデシコ科 Caryophyllaceae
: ナデシコ属 Dianthus
: エゾカワラナデシコ
D. superbus
変種 : カワラナデシコ
var. longicalycinus
学名
Dianthus superbus L.
var. longicalycinus (Maxim.) Williams
和名
カワラナデシコ

分布・生育地編集

日本では本州以西四国九州に広く分布するほか[2]沖縄諸島久米島渡名喜島)に少数が自生する。日本国外では朝鮮中国台湾に分布する。主に日当たりの良い草原や河原に生育するが、路傍や山地の斜面、海岸の砂浜等でも生育する。

日本では、自生地の開発や園芸用の採集、動物による食害、外来種の影響等で減少している地域もある。また、カワラナデシコは草原等の開けた環境を好む種であり、そのような環境が遷移の進行に伴い、日当たりの悪い陰的な環境に変化すると生育に適さなくなる。これは自然現象ではあるが、昔は、草原や山地、河原等の環境は人の手により草刈や枝打ち等され、里山的な利用が行われてきた。これで、日当たりの良い開けた環境が継続してきたという背景がある。近年の人間の生活習慣の変化で、このような「人為的なかく乱」が行われなくなると、カワラナデシコに代表される人間と密接な関係のある普通種が、その自生地や個体数を減少させてしまう結果となりうる。

特徴編集

多年草で、高さ30 - 50センチメートル (cm) 。は根から叢生し、節が膨らむ[2]。茎の基部は地面に伏せることもある[2]対生[2]、葉身は線形から線状披針形で長さ4 - 7 cm、先端は鋭く尖り、基部は茎を抱きこみ、無毛で、葉柄は無い。茎葉ともに白みを帯びた緑色である[2]

花期は夏から秋にかけての6 - 9月ころ[2]。上方でまばらに枝分かれして、淡紅色のをつける[2]。花は茎の頂端に付き、直径4 - 5 cm、がく片は3 - 4 cm、(ほう)は3 - 4対ある。は細長い筒状で、基部に対生するが密着してつく[2]花弁は5枚で、基部は細くなり萼筒中に入り、また先のほうは広がり、糸状に細裂している[2]雄蕊は10本、雌蕊花柱2本。色は、淡紅色が一般的だが、白色も多い。また、淡紅色と白色が混ざっている個体もある。栽培していると白色のものが淡紅色に変化したりもする。

花が終わると円柱状の果実となり、先端が4裂して黒色の種子が出る[2]

栽培編集

多年生であるが、春蒔きして発芽した後は、冬越しして翌年に花を咲かせる[2]挿し芽は容易で、充実した測芽を切り取って挿す[2]。高温と多湿を嫌い、冷涼な環境と日照、通風がある環境が望ましい[2]

利用編集

秋の七草の1つであることから分かるように観賞価値を認められた。栽培も行われ、特に江戸時代には変わり花の栽培が盛んで、古典園芸植物の一つともなっていたが、現在ではほとんど見られなくなり、わずかに伊勢ナデシコと呼ばれる一群などが維持されている。また、他のダイアンサス(ナデシコ)類の交配材料にも用いられる[3]

薬用としても利用されており、開花期の全草を瞿麦(くばく)、種子を乾燥したものを瞿麦子(くばくし)と称する[4]利尿作用や通経作用、消炎作用がある[2][5]。民間では、種子1日量8グラムを水400 で半量になるまで煎じ、3回に分けて服用する用法が知られている[2]。ただし、妊婦への服用は禁忌とされている[6]

近縁種編集

日本には、ナデシコ属 (Dianthus) に属する種が本変種のほかに生育する(ナデシコ#ナデシコ属を参照)。

本種カワラナデシコ (D. superbus var. longicalycinus) の基変種は、エゾカワラナデシコD. superbus var. superbus[8]、蝦夷河原撫子)であり、北海道及び本州中部地方以北及びユーラシア大陸に分布する。本変種との相違点は、がく片の長さが2 - 3 cmとやや短く、が2対である[9]。また、タカネナデシコD. superbus var. speciosus[10]、高嶺撫子)が、同じく北海道及び本州中部地方以北及びユーラシア大陸高山帯に分布しており、相違点は苞が2対で、草丈が低く10~30cm程度である[9]。このように地域による変異が大きい種である。さらに、沖縄諸島久米島渡名喜島)の集団は、別変種とする説もある。

保護上の位置づけ編集

生育地である下記の地方公共団体が作成したレッドデータブックに掲載されている。

意匠編集

  • 1994年(平成6年)1月24日に発売され、2014年(平成26年)3月31日まで販売された270円普通切手の意匠となった[11]

脚注編集

[ヘルプ]
  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-) YList:カワラナデシコ 2011年8月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 馬場篤 1996, p. 84.
  3. ^ 八代 (2002)、p.171
  4. ^ 『薬用植物学』 (1999)、p.104
  5. ^ 『薬用植物学』 (1999)、p. 104
  6. ^ 馬場篤 1996, p. 85.
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-) YList:イセナデシコ 2011年8月15日閲覧。
  8. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-) YList:エゾカワラナデシコ 2011年8月20日閲覧。
  9. ^ a b 『日本の野生植物』 (1999)、p. 41
  10. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-) YList:タカネナデシコ 2011年8月20日閲覧。
  11. ^ 普通切手、慶弔切手一覧”. 公益財団法人日本郵趣協会. 2014年4月1日閲覧。 (ただし、発売開始の出典とはならない。)

参考文献編集

  • 沖縄県文化環境部自然保護課編 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、2006年。
  • 鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物-鹿児島県レッドデータブック植物編-』 財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年。
  • 埼玉県環境部みどり自然課編 『埼玉県レッドデータブック植物編2005』、2005。
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎 他『日本の野生植物 草本II離弁花類』平凡社、1999年。ISBN 4-582-53502-X
  • 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第7巻 シダ植物~まめ科』 新星図書出版、1989年。
  • 野呂征男・水野瑞夫・木村孟淳『薬用植物学』南江堂、1999年、改訂第5版。ISBN 4-524-40163-6
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、84頁。ISBN 4-416-49618-4
  • 八代嘉昭 「カワラナデシコ(ナデシコ)」『カーネーション(ダイアンサス)』9巻、農山漁村文化協会編、農山漁村文化協会〈花卉園芸第百科〉、2002年、初版、171頁。ISBN 4-540-01209-6

外部リンク編集