カードローン
カードローン(Card Loan)とは、銀行及び協同組織金融機関・消費者金融が行う資金の貸付け(ローン)の一つである。
概要編集
銀行又は協同組織金融機関(以下「金融機関」と総称)が発行するカードを利用するローンである。カードを利用して予め契約した貸出枠の範囲でCD・ATMを通じて資金を借り入れることができる。ATM・CDについては、金融機関が設置するもののほか、金融機関が提携する金融機関が設置するものを利用することができる。
尚、カードを用いずにインターネットバンキングなどを利用してローン口座から普通預金口座への振替で資金を貸し付ける形態のみのローンもあるが、これはネットローンやネットキャッシングなどと呼ばれ、カードローンとは異なる。
種類編集
個人向けのカードローンは、担保を必要としない無担保型と、不動産や有価証券などを担保とする有担保型に大別される。いずれも用途は原則として自由であるが、事業資金として利用することはできない(事業資金として利用することができる個人事業主向けのカードローンを別に設けている金融機関もある)。
カードについて編集
カードローンで利用するカードは、金融機関の普通預金口座のキャッシュカードを利用することができるものと、専用のカードが別途発行されるものに大別される。後者の場合は、金融機関に預金口座を開設していない場合でも利用することができる。また、消費者金融の一部ではスマホを使った「カードレス」で利用できるものもある。
仕組み編集
カードローンは、金融機関が指定する者(以下「保証会社」)が保証(機関保証)するため、連帯保証人は不要であるが、申込の際は金融機関及び保証会社の両社が審査を行うこととなる。また、審査の結果、保証会社の保証が受けられない場合は、カードローンを利用することはできない。
万が一、延滞や貸倒が発生した場合は、保証会社が金融機関へ代位弁済し、保証会社が債務者へ債権回収することとなるので、この場合、保証会社から直接借入れて延滞したものと同等の取立てに遭うこととなる可能性もある。
定職に就いていない者(フリーター、年金受給者、学生・生徒、専業主婦など)は、金融機関に相当の定期預金などの取引がないと信用上発行が難しいとされるが、貸金業者が保証するカードローンでは近年、申込基準が緩和されている。
返済方法は、多くの場合リボルビング払で完済(借入残高が0円)となるまで、毎月の約定返済日に口座自動振替で返済していく形となるが、資金に余裕が有ればATMで直接カードローン口座へ入金したり、リモートバンキングで自名義の普通預金等から振替することも可能である。
有担保型カードローンは1980年代から2000年代前半にかけて都市銀行が取り扱ってきたが、不動産担保評価額の減少(担保割れ)などが頻発するようになったため新規募集はされなくなり一時途絶えたが、2005年頃に三井住友信託銀行の旧中央三井信託銀行店舗で「α-Style」の名称で有担保カードローンの取扱を開始している。(不動産担保融資は一部の銀行や抵当証券系ノンバンクで証書貸付に限って継続されている状況にある。
クレジットカードとの違い編集
カードローンとクレジットカードの違いは次表の通りである。
カードローン | クレジットカード | |
---|---|---|
取り扱い業者 | 銀行、消費者金融 | クレジットカード会社、信販会社など |
利用目的 | 現金融資(キャッシング) | ショッピング、現金融資(キャッシング) |
貸付枠 | 審査次第では大きな枠を設定も可能 | 比較的小さめの設定となることが多い(キャッシング枠の付帯が無ければ貸付機能無し) |
詳細 | ローンカードを使って、そのままショッピングすることはできない(カードローンは現金を借りる機能に限定) | 「キャッシング枠」を付帯することで融資を受けることは可能(※ショッピング枠のみでキャッシング枠の設定が無い場合もあり)クレジットカードはショッピングがメインの機能で、キャッシングはオプション機能の位置づけ |
また、多くのクレジットカードでは100万円までのキャッシング利用する場合、法律の最大利率である年18%に設定されているのに対し、銀行カードローンでは年14%~15%の金利水準が一般的。[1]
メリット・デメリット編集
メリット編集
- 金利が貸金業者より低いものがほとんどである。主な貸金業者の上限金利が年18%であるのに対し、銀行カードローンの上限金利は概ね年14.6%(日歩4銭)前後を採用している場合が多い(一部例外あり)。
- 融資を行うのは銀行などの金融機関であって貸金業ではないので(貸金業であるクレジットカード会社や消費者金融は保証業務を行う)、貸金業法の総量規制の適用を受けないことから、年収の 1/3 を超える借り入れも審査が通れば可能である。
- 勤務先によっては職域でメインバンクの総合口座とカードローンを持たされることがあり、通常のカードローンより低利であることがある。
- 金融機関によっては、カードローン機能が付帯されている総合口座で口座自動振替やJCB/VISAデビットカードの決済時に残高不足となった場合、カードローン利用可能額の範囲で自動的に立て替える「自動融資」機能が設定されている。
- 金融機関によっては、カードローン利用によって金融機関の優遇サービス(ATM時間外手数料や提携コンビニATMの無料化など)の特典加算対象となる。
- 金利の高い消費者金融やクレジットカードキャッシング(カードローン)、ショッピングリボ払いの借り換えにも利用可能である。
デメリット編集
- 金利が変動金利制である場合、定期的に金利を見直す為、金利が上昇するリスクがある。
- リモートバンキング上でカードローン口座の取引明細が確認できない場合、定期的に郵送される明細書のみでしか確認できない。
- メリットの項に記述した「貸金業法の総量規制の適用を受けない」ことが過剰融資に繋がり、カードローン破産という結果を招きやすいというデメリットも同時に孕んでいる。
主なカードローン編集
個人(個人事業主を除く)向けの主なカードローンは、次表の通りである(新規の申込を受け付けているものに限る)。ただし、有担保型のカードローンを除く。
銀行 | カードローンの名称 | 保証会社 | 備考 |
---|---|---|---|
三菱UFJ銀行 | バンクイック | アコム | |
マイカード プラス | アコム | ||
三井住友銀行 | 三井住友銀行カードローン | SMBCコンシューマーファイナンス | |
みずほ銀行 | みずほ銀行カードローン | オリエントコーポレーション | |
りそな銀行 | りそなプレミアムカードローン | オリックス・クレジット | |
りそなクイックカードローン | りそなカード | ||
埼玉りそな銀行 | りそなプレミアムローン | オリックス・クレジット | |
りそなクイックカードローン | りそなカード | ||
新生銀行 | 新生銀行カードローン エル | 新生フィナンシャル | |
三井住友信託銀行 | カードローン | 三菱UFJニコス | |
オリックス銀行 | オリックス銀行カードローン | オリックス・クレジット | |
スルガ銀行 | リザーブドプランPLUSカード | スルガ・キャピタル | |
リザーブドプランカード | スルガ・キャピタル | (※1) | |
オリエントコーポレーション | |||
エポスカード | |||
Tポイント付きリザーブドプランカード | スルガ・キャピタル | ||
横浜銀行 | 横浜銀行カードローン | SMBCコンシューマーファイナンス | |
トマト銀行 | トマト銀行カードローン「Q-Li(キューリ)」 | SMBCコンシューマーファイナンス | |
イオン銀行 | カードローン | イオンクレジットサービス | |
カードローン ユトリプラン | イオンクレジットサービス | ||
セブン銀行 | ローンサービス | アコム | |
じぶん銀行 | じぶんローン | アコム | |
楽天銀行 | 楽天銀行スーパーローン | 楽天カード | |
住信SBIネット銀行 | ネットローン | オリックス・クレジット | (※2) |
PayPay銀行 | カードローン | SMBCコンシューマーファイナンス | (※1)(※3)(※4) |
第三銀行 | 第三銀行カードローン「SUN」 | アコム | |
千葉銀行 | 千葉銀行カードローン「クイックパワー<アドバンス>」 | エム・ユー信用保証 |
- (※1) Visa機能付きの場合は、ショッピングを利用することもできる。
- (※2) 振替で借り入れることができるローンであるが、同行のキャッシュカードを利用してATMを通じて借り入れることもできる。
- (※3) 振替で借り入れることができるローンであるが、自動融資サービスに別途申し込みをすることによって、同行のキャッシュカードを利用してATMを通じて借り入れることもできる。
- (※4) ローン機能をVISAデビットで利用する場合はVISAデビットに対応する自動融資サービスの別途申込が必要である。
利用するときの注意点編集
- 使いすぎ、借りすぎに注意をして無理のない返済計画を立てて利用すること。
- 貸金業者は遅延損害金による収入を目当てに数日の遅延なら見逃す会社が多々あるが、カードローンは1日の遅延でも新規貸出を停止にし債権回収する(契約書面に記載)のが一般的であるため、返済日には充分な時間・金銭的余裕を持つこと。
- 有担保型は、収入など利用者の属性を考慮せず、抵当物件の評価額に応じて貸付枠を設定する金融機関もあるため、無担保型より高額な貸付枠と長期プライムレートに連動する低利な金利で利用できるが、延滞などの貸倒が生じた場合抵当で債権回収されるため、返済計画には注意すること。
- カードが不正利用された場合、キャッシュカードと同様の補償規定の適用可否を確認する必要がある。また、カードや暗証番号の管理も重要である。
社会問題化編集
かつては銀行で融資を断られた人が消費者金融やクレジットカード会社で借入するのが一般的だったが、2006年の改正貸金業規制法の総量規制によって年収の1/3を超える融資ができなくなった[2]。消費者金融やクレジットカード会社で融資を断られた人が、改正貸金業規制法対象外で総量規制を受けない銀行カードローンを利用し、それが原因の多重債務や自己破産が増加し大きな社会問題となっている。現在は貸しすぎ防止のために銀行が自主的に貸し出しの上限を「年収の2分の1」、「年収の3分の1」、「年収まで」などとしているが、貸金業法下のカードローンを合わせると、かなりの金額を借りることができてしまっている人がいるという現状もある。[3]
実際にカードローンを利用した人の27%は最初に借入をした金額よりも借入額が増えているというデータもあるため、たとえ1社のみの利用であっても当初より多い金額の返済に追われている人が少なくないという実態が浮き彫りになった。[4]
カードローンは金融機関にとっては高収益の商品であり、しかもリスクが基本的にゼロ(貸し倒れによる損失は保証会社=多くが消費者金融やクレジットカード会社が負う)であるため、超低金利・マイナス金利が常態化して以来、貸出額は急速に増大している[5]。しかし、カードローンは貸金業法の規制を受けないことから、過剰融資に陥りやすく、カードローンによる自己破産は増加の一途を辿っている[6]。
こうした問題の指摘を受け、2016年10月12日、日本弁護士連合会は「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」を内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣(金融)、衆参両議院議長、全国銀行協会会長宛に提出した[7]。これを契機として、2017年に入ると、各種メディアによるカードローン問題の報道が相次いでいる[8][9][10][11][12][13]。
2017年9月1日、金融庁はメガバンク、地方銀行などに9月から立ち入り検査をする旨を発表した[14]。同日、利用者側からの情報収集を目的に「カードローンホットライン」を 開設した[15]。
脚注編集
- ^ “カードローンとは?初めての方でも安心な基礎知識 | なるほどカードローン” (日本語). カードローン. 2019年7月24日閲覧。
- ^ “貸金業法が改正された後の総量規制とは”. スルガ銀行. 2019年4月22日閲覧。
- ^ “おすすめカードローン比較2019!専門家が審査や金利を抑えるコツについて解説!”. マネ会 カードローン. 2019年10月28日閲覧。
- ^ “2020年度版のカードローン利用者による実態調査 | ゼニエモン”. ゼニエモン. 2020年5月8日閲覧。
- ^ 米澤文 (2015年7月27日). “銀行カードローンが消費者金融を大逆転 「住宅ローンより稼げる」カードローン絶好調の秘密”. 産経新聞 2017年9月1日閲覧。
- ^ “銀行カードローン破産の裏側”. ワールドビジネスサテライト(テレビ東京). (2016年3月18日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書”. 日本弁護士連合会 (2016年9月16日). 2017年9月1日閲覧。
- ^ “カードローン、多重債務の温床に?貸出残高が急増、3メガで1.6兆円”. 産経新聞 (2017年5月16日). 2017年9月1日閲覧。
- ^ “銀行カードローン 残高急増、過剰融資を懸念”. 毎日新聞. (2017年4月17日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ 藤田知也 (2017年5月18日). “銀行カードローン、19年ぶり高水準 5兆6千億円”. 朝日新聞 2017年9月1日閲覧。
- ^ “カードローンの利用は慎重に 無担保で借りられ追加も簡単”. 東京新聞. (2017年6月15日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “<銀行カードローン>止まらぬ融資 増える破産”. 河北新報. (2017年6月4日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “若者もシニアも破産急増!?銀行カードローン”. クローズアップ現代+(NHK). (2017年4月12日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “金融庁、銀行カードローンを立ち入り検査へ 貸し出し上限導入も焦点”. 日経新聞. (2017年9月1日) 2017年9月1日閲覧。
- ^ “カードローンホットラインの開設について” (プレスリリース), 金融庁, (2017年9月1日) 2017年9月1日閲覧。