ガウス株式会社: Gauss Co. Ltd.[4])は粉末射出成形を専門とする日本の中小企業[3][6]金属粉末射出成形(MIM)とセラミック粉末射出成形(CIM)の両方を手掛け[6][11][12]東京大学やネクスト21との共同研究では外径1mmのテトラポッド型人工骨を実現した[13]。超耐食ステンレスも自社開発し[14]兵庫県立大学との共同研究も実施した[15]。1985年に姫路市で創業し、2003年相生市へ移転[6]。中小企業支援ネットひょうご成長期待企業(平成17年度認定)[16]、姫路技術開発研究会会員企業[17]

ガウス株式会社[3]
GAUSS Co. Ltd.[4]
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
678-0092[5]
兵庫県相生市矢野町上土井273-1[5][注 1]
設立 1985年2月1日[5][7]
法人番号 7140001039777
事業内容 粉末射出成形[6]
代表者 代表取締役 高根勝久[5][7]
資本金 3,510万円[5][6]
従業員数 13名[5]
関係する人物 黒田義和[注 2]
外部リンク https://www.gauss.ne.jp/
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概要 編集

 
図は粉末射出成形の一連の流れ。まず粉末とバインダー(結合剤)を混錬し、造粒。その後に射出成形し、さらに脱脂、焼結(焼成)という工程をとる[18][19]。ガウスはこれら一連の作業を行う設備と技術を持つ[3]

神戸時代 編集

1985年、姫路技術開発研究会に参加する企業が出資し、姫路市神屋町で創業[6][20]。大手企業でディーゼルエンジンの設計に携わっていた高根勝久が退職して社長に就任[6][20]。当初はプラマグ(ボンド磁石[21])を製造していたことから[6][22]、社名を磁束密度の単位であるガウスからとっている[22]

中小企業ながらも研究開発主体の企業で[20]、ガウスは炭素鋼超硬合金ステンレス鋼金属粉末射出成形(MIM)のみならず、アルミナジルコニウムなどのファインセラミックスを扱うセラミック粉末射出成型(CIM)も1980年代から手掛けている[11][12][23]。極東産機向けにファインスリッター用のジルコニア製カッター刃、東芝向けにアルミナ製洗浄用トレイを開発し、旭食研とは共同で豆かんなの刃をジルコニアで製造した[11]

金属では吉川工業とMIMの素材に破砕鉄粉を用いる技術を共同で開発し、1991年には学術論文にもなっている[4]。播磨高周波工業との共同開発では、積層複合材料を金属、合金、セラミックの粉末から成形する技術も開発した[24]。また、金属・セラミックスの各種材料に対して厚み4mm、幅40mm、長さ55-60mmの試験片で収縮率測定を行い、このデータは『合成樹脂』でも紹介された[23]

相生時代 編集

 
写真は消波ブロックとしてのテトラポッド。ガウスはこの形状を粉末射出成形により1mm以下の大きさで実現。安定した寸法・形状で重なり合うことにより、様々な効用を持たせることができる[25][15]

2003年、ガウスは相生市に移転。2005年には専務であった黒田義和[注 2]社長に就任し、高根は会長に就任[6]。同年、中小企業支援ネットひょうごから「成長期待企業」の認定も受ける[16]オーステナイト系ステンレス鋼である「SUS316L」に窒化セラミックスを添加し、腐食が少ない「超耐性ステンレス」を開発。耐酸性腐食試験で従来の24倍の性能を得ている[14]

東京大学と医療ベンチャー株式会社ネクスト21との共同研究では、外径1mmのテトラポッドの形状をした人工骨を粉末射出成形で実現した[25][13]。このテトラポッド形状で組み合わさると強度を高く保つことができ、さらに隙間に細胞や血管が入ってくる効用を持たせられる[25][26][注 3]

ニッケルマンガンフリーのステンレス鋼も開発し[28]兵庫県立大学の深浦健三らとの共同研究で機械的性質を明らかにした[29][30]。また、2012年には同大学の生津資大との共同研究を開始し[15]、自己伝播型発熱作用を持つマイクロテトラポッド(多孔質アルミを粉末射出成形し、ニッケルをめっきしたもの、直径0.9mm)の作成に協力している[15][31]

2015年4月からは、再び高根が社長を務めている[7]

取得特許 編集

技術解説 編集

  • 高根勝久「ファインセラミックス商品開発の紹介」、『合成樹脂』第34巻第2号、1988年2月、51-56頁。CRID 1572261549057415680
  • 高根勝久「MIMとCIMはこんな商品に優れている」、『合成樹脂』第40巻第5号、1994年5月、45-47頁。CRID 1573668923941298176
  • 高根勝久、松下純一「セラミックスのニアネットシェイプ製造技術と複雑形状部品への展開」、『セラミックス』第40巻第6号、2005年、457-461頁。CRID 1573105974986397568

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 移転する前の所在地は姫路市神屋町5-65[4][6]
  2. ^ a b 黒田義和は兵庫県立大学金属粉末射出成形法の研究で課程博士により博士(工学)を取得[8]。ガウス株式会社では専務を経て2008年4月から2015年3月にかけて代表取締役を務めた[7]兵庫県立工業技術センターによる金属樹脂複合体のラピッドプロトタイピング技術、およびそのための複合粉末の開発にも貢献した[9][10]
  3. ^ 特許出願したが、査定なしで取り下げになっている[27]

出典 編集

  1. ^ 株式会社GAUSS”. 2018年9月30日閲覧。
  2. ^ 株式会社ガウス”. 2018年9月29日閲覧。
  3. ^ a b c 中小機構 2017.
  4. ^ a b c d 堀口浩、寺川敏郎、馬場秀晃、高根勝久「破砕鉄粉を用いた射出成形の性質」、『粉体および粉末冶金』第38巻第7号、1991年、849-853頁。
  5. ^ a b c d e f 中小機構 2017, 法人概要
  6. ^ a b c d e f g h i j 平成26年度ビジネスマッチング成功事例」、『Hint』26頁。2018年9月30日閲覧。
  7. ^ a b c d 会社概要”. 株式会社ガウス. 2018年9月30日閲覧。
  8. ^ 黒田義和『粉末射出成形法による焼結材の機械的性質に関する研究』姫路工業大学〈博士学位論文(甲第16号)〉、1992年3月24日。
  9. ^ 特開2010-202928「金属造形物の製造方法及び積層造形用の金属樹脂複合体粉末
  10. ^ 山口篤、光谷佳浩、後藤浩二、富田友樹、福本信次「選択的レーザ焼結間接法で作製したステンレス鋼粉末成形体への銅合金溶浸」、『日本金属学会誌』第74巻第2号、2010年、94-100頁。
  11. ^ a b c 高根 1988.
  12. ^ a b 高根 1994.
  13. ^ a b JST 2011.
  14. ^ a b 日刊工業 2007.
  15. ^ a b c d 自己伝播発熱多層膜/微粒子と応用”. 新技術説明会. 科学技術振興機構. 2018年9月30日閲覧。
  16. ^ a b 成長期待企業”. 中小企業支援ネットひょうご. 2018年9月30日閲覧。
  17. ^ 会員名簿”. 姫路技術開発研究会. 2018年9月30日閲覧。
  18. ^ 野村宏之「金属粉末射出成形プロセスの現状と将来展望」、『鋳造工学』第71巻第12号、1999年、798-803頁。
  19. ^ 岩橋俊之「セラミックス,金属粉末の射出成形」、『精密工学会誌』第68巻第10号、1504-1509頁。
  20. ^ a b c HFGについて”. 姫路技術開発研究会. 2018年9月30日閲覧。
  21. ^ プラマグ”. 磁石・磁気の用語辞典. ネオマグ株式会社. 2018年10月7日閲覧。
  22. ^ a b ニューマテリアル アンド インジェクション ガウス株式会社”(PDF). ガウス株式会社. 2018年10月7日閲覧。
  23. ^ a b 岩橋俊之「粉末射出成形用金型技術 ― 寸法精度を中心に ― (1)」、『合成樹脂』第40巻第5号、1994年5月、53-58頁、NAID 40001215355、岩橋俊之「粉末射出成形用金型技術 ― 寸法精度を中心に ― (2)」、『合成樹脂』第40巻第6号、1994年6月、68-72頁、NAID 40001215371。岩橋俊之「粉末射出成形用金型技術 ― 寸法精度を中心に ― (3)」、『合成樹脂』第40巻第7号、1994年7月、51-58頁、NAID 40001215380
  24. ^ 特開平6-299203「積層複合材料成形体及びその製造方法」、発明者 - 黒田義和、出願人 - 播磨高周波工業株式会社、ガウス株式会社。
  25. ^ a b c 東京大学 (2007年9月7日). “テトラポッド®人工骨~270億分の1のテトラポッドが人工骨を変える~” (プレスリリース). 2018年9月30日閲覧。
  26. ^ 細胞による再生ではなく、足場素材から骨の再生をめざす”. 生命DOKIDOKI研究室 この人に聞く「生命にかかわる仕事っておもしろいですか? 第13回 三次元造形によるオーダーメイドの人工骨再生に挑む。. テルモ生命科学芸術財団. 2018年10月6日閲覧。
  27. ^ WO2007-094134 特願2008-500414「骨補填剤の製造方法,骨補填剤及び3次元細胞培養担体,クロマトグラフィー用分離担体」再表2007/094134 2007/02/13 2007/08/23 - 東京大学産業技術総合研究所、株式会社ネクスト21、ガウス株式式会社。2022年6月10日(UTC)閲覧。
  28. ^ 特許第5616299号 2014.
  29. ^ 青山陽亮、黒田義和、高橋輝男、土田紀之、原田泰典、深浦健三「金属粉末射出成形で作製したオーステナイト系ステンレス鋼の引張特性に及ぼす窒素添加と変形双晶の影響」、『粉体および粉末冶金』第56巻第3号、2009年、98-102頁。
  30. ^ Yosuke Aoyama, Midori Komada, Yoshikazu Kuroda, Teruo Takahashi, Noriyuki Tsuchida, Yasunori Harada, Kenzo Fukaura「Mechanical Properties of Ni-Free High-Nitrogen Austenitic Stainless Steel Made by Metal Injection Molding with Nitrogen Absorption Method」、『粉体および粉末冶金』第56巻第3号、2009年、103-107頁。
  31. ^ 特許第6241944号 2017.

参考文献 編集

外部リンク 編集