オーストラリアの警察による車内の捜索

捜索(そうさく)とは、所在の不明な人または物の発見を目的とした活動をいう。(例えば、「遭難者を捜索する。」など。)

法律用語としては、犯罪捜査滞納処分などの際に、権限を有する公務員によって行われるものを指す。この意味で行われる捜索は、俗に「ガサ入れ(がさいれ)」(語源は捜す(さがす)の「さが」を逆にしたもの)とも呼ばれる。

刑事訴訟法編集

刑事訴訟法上の捜索とは、被告人の身体、物又は住居その他の場所につき、人や物を発見するために行われる強制処分である。

日本国憲法第35条により、逮捕に伴う捜索を除いては、権限を有する司法官憲が発する令状無しにその住居、書類および所持品についてこれをなされない権利を何人も有すると規定されており、その具体的な手続きや方法などについては、刑事訴訟法や、刑事訴訟規則犯罪捜査規範などの法令で規定されている。

捜索には、刑訴法第1篇第9章に規定する裁判所が行うものと、同法第2編第1章に規定する捜査の一環として行われるものがあるが、実際には殆どが、後者の手続きにより行われる。以下では、後者の捜索について記述する。

令状編集

捜索は、原則として検察官検察事務官または司法警察職員の請求により裁判官が発する令状により行われる(刑訴法218条)。この内、警察官である司法警察職員については、原則として、国家公安委員会または都道府県公安委員会が指定した警部以上の階級にある警察官(指定司法警察員)が令状の請求を行うとされている(規範137条)。令状には、被疑者等の氏名、罪名、捜索すべき場所・身体・物等、刑訴法第219条に規定する事項を記載し、裁判官の記名押印がなされなければならない。令状の請求に当たっては、その必要性を疎明する資料を添付しなければならない(規範139条)。

捜索の対象は令状により特定されていなければならず、複数の場所などを1通の令状で捜索することはできないと解されている。ただし、法律上別個の処分である捜索と差押の令状を1通とすることは違法ではないとされており、実務上も「捜索差押許可状」という書式が多用される。

令状主義の例外編集

被疑者の逮捕に際して必要な場合、令状無しで、住居等において被疑者を捜索し、または逮捕の現場について捜索を行うことができる(刑訴法220条1項)。ここでいう「逮捕の現場」とは、判例・通説によれば、逮捕行為に時間的・場所的に接着していることを要するとされている。

逮捕に伴う捜索に令状を要しないことは、既に逮捕という法益侵害が許されている以上、被疑者の権利を侵害する度合いが少ないことと、証拠収集に必要性・緊急性が認められること、また、証拠存在の蓋然性が高いことが理由とされる。

捜索の執行編集

刑訴法222条第1項では、捜索の執行にあたり、同法99条以下の裁判所が行う捜索についての規定を準用している。

令状に基づいて捜索する際は、処分を受ける者または立会人(立会人は規範141条2項による)に対してこれを提示しなければならない(刑訴法222条1項、110条)。また、住居主等のその場の管理者・責任者等に立ち合わせなければならず、これができない場合は隣人または地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。必要な場合は、被疑者を立ち会わせることができる。ただし、犯人を逮捕するための捜索(刑訴法220条1項1号)で緊急を要する場合は、立会人を要しない(刑訴法222条1項は110条を準用しているが、201条を準用していない)。

捜索に当たっては、錠や封を開き、その場の出入りを禁止し、その禁止に従わない者を退去させるなど必要な処分をすることができる(刑訴法222条1項、111条1項)。ただし、必要以上に書類等を乱さないよう注意しなければならず、原状回復に努めなければならない(規範140条2項)。

夜間(日の出前・日没後)の捜索は、令状に特に記載がない場合はすることができない(刑訴法222条4項)。これは、私人の夜間における平穏を保護するためと解されている。ただし、旅館等夜間も公衆が出入りする場所や、賭場など風俗を害する行為に常用されるものと認められる場所については、前述の記載無しに夜間の捜索ができる(同条3項)。また、日没前に着手した捜索は、日没後も継続できる(同条4項)。

捜索の際は秘密を守り、処分を受ける者の名誉を害しないよう注意する(規則93条)とともに、必要以上に関係者に迷惑をかけないよう注意し(規範140条)なければならない。

令状による捜索は、令状の呈示が捜索開始の要件であるが、証拠隠滅の防止等、やむを得ない場合は実施着手後にこれを示すことも「準備行為」として適法とされている。

行政手続における捜索編集

行政手続においても、捜索が行われる場合があるが、特に犯罪捜査と密接な関連を有する行政手続を行う場合については、裁判所の許可状によって、捜索・差押等が認められている場合がある。具体的な根拠条文として以下のものがある。

国税徴収法編集

国税徴収法第142条では、徴収職員が滞納処分のため差し押さえるべき財産の発見又は差し押さえた財産の引揚げ等をすべく滞納者等の物又は住居等について行う強制処分として、捜索の権限を認めている。

国税徴収法第142条に基づく捜索には令状が不要であることから、住居の不可侵を規定している憲法第35条に抵触するのではないかという見解もあるが、次に述べる理由により、行政手続である滞納処分の捜索には、憲法第35条が適用されないと解されている[1][2]

そのため、警察が住居等の捜索を行うには裁判所令状が発付されなければ行えないが、徴税吏員の場合はこれを行わずして捜索並びに差押えを執行できるため、警察よりも強い権限を与えられている[3]という誤った認識があるが、国税徴収法第142条による捜索は、捜索の過程において拒否された場合についても実力で排除することはできず、身体検査等も行えない。やむをえない場合に限り必要最低限の器物の損壊等(の除去など)が認められているが、犯罪捜査を目的とする刑事訴訟法第218条に基づく捜索については、そのような配慮は無く、発した令状による実力での排除が可能となる。このことから、強制の度合としては刑事訴訟法第218条に基づく捜索の方が強い権限を持つ。また、国税徴収法第142条に基づく捜索へ憲法35条が適用されない事については、先述のとおり犯罪捜査を目的とする捜索ではないことに加え、権限は弱いため刑事訴訟法第218条に基づく捜索の直接的・物理的な強制と同視すべき程度でないとの理由から、無令状の捜索である国税徴収法第142条は憲法35条に抵触しないと解されている[4]

⑴憲法第35条の規定で令状が必要とされているのは犯罪捜査を目的とする最終的には逮捕身柄拘束を伴う刑事手続であり、刑事手続が国家による刑罰という場合によっては過酷な制裁を課す可能性があることから極めて強制力のある権限である。そのことから、国民の手続的権利を保障するため憲法が厳格な手続きを求めている条項と解される。一方で国税徴収法第142条の捜索は、税収確保のための徴収手段(行政手続)であり、滞納処分のために滞納者の物、又は居住その他場所を必要最小限の範囲に限定して差押可能財産の有無の確認をするために行っているものであり、決して刑罰を与える目的ではなく、また、事前に納税の告知、督促状、催告書等において滞納となった場合に滞納処分があり得ることを教示しており、滞納者が受忍しうる範囲の行為であると解されていること。
⑵刑事手続は、犯罪の嫌疑を実体化するための手続であり、客観的事実は捜索の時点において不確定の状態にあることから、捜索については人権擁護のため手続を慎重にしておく必要があるが、滞納処分による捜索は、滞納の事実が客観的に明白であって、それを実行する手続に過ぎないから、その要件を刑事手続のように厳格にする必要がないと解されること。
行政は、公共的目的の達成のために行われる国家的作用であり、そのために行政全体の優越性等の特殊性が認められている。三権分立主義の建前からみても、行政作用に対する司法的抑制にはおのずから限度がある。このような通常の行政手続について、特に司法的関与をする必要はないと解されること。
民事執行法上の強制執行の場合にも、「執行官は、執行の為必要なる場合については債務者の居住、倉庫及び筐匣を捜索し又は閉鎖したる戸扉及び筐匣を開かしむる権利を有」するが、この場合の捜索も令状を必要としないこと。

捜索する場所については、滞納者自身の住居・事務所等のほか、滞納者の財産を所持する第三者または滞納者の財産を所持すると認められる親族等の関係者がこれを引き渡さないときに限り、第三者の住居その他の場所を捜索することができる(142条1・2項)。徴収職員は、滞納者等(捜索先が第三者の関係箇所である場合はその第三者)に戸や金庫等を開かせ、または自ら開くために必要な処分をすることができる(同条3項)。また、捜索のために必要な場合、滞納者等やその同居の親族、代理人以外がその場に出入りするのを禁止することができる。

捜索は、旅館等夜間(日没後から日の出前)に公衆が出入りする場所でやむを得ない場合のほかは、夜間に行うことはできない。ただし、日没前に着手した捜索は、日没後も継続することができる(143条)。

捜索に当たっては、滞納者等・その親族・その従業員等で相当のわきまえのある者を立ち会わせなければならない。これらの者が不在であるか、立会いに応じない場合は、成人者2人以上・市町村の職員・警察官のいずれかを立ち会わせなければならない(144条)。ここでいう「相当のわきまえのある者」とは、例えば会社法10条にいう「支配人」や14条にいう「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」(一般にいう管理職相当の役職の者)と解されている。

徴収職員は、捜索の結果差押可能な財産を発見した場合は、徴収法47条以下の規定に従いそれらを差し押えることができる。徴収職員は、捜索の結果財産の差押えを行わなかった場合には捜索調書を、差押えを行った場合は捜索調書に代えて徴収法54条に規定する差押調書をそれぞれ作成し、滞納者等や立会人にその謄本を交付しなければならない。

徴収職員は、捜索に当たり身分証を携帯し、関係者の請求があったときはこれを呈示しなければならない(147条)。ただし、捜索開始前などに自発的に呈示する義務は、必ずしも無いと解されている。

なお、地方税法では都道府県・市町村の徴税吏員が各種地方税の滞納処分について徴収法の例により行うことを認めているので、徴税吏員も地方税の滞納処分のために前述の捜索を行うことができる。この場合、上述の説明について「国税=地方税」、「徴収職員=徴税吏員」などと読み替えることになる。

参考文献編集

  • 田宮裕編『ホーンブック 刑事訴訟法』北樹出版、2000年、103-107頁

関連項目編集

脚注編集