キミオコゼ(英名:Clearfin lionfish、学名:Pterois radiata) はインド洋太平洋に生息する、フサカサゴ科ミノカサゴ属に属する肉食で有毒の海水魚である。ミノカサゴの仲間としては鰭棘に模様がなく、英名の"Clearfin lionfish"もこれに由来する。尾柄部に一対の白い水平な縞が入ることも特徴である。 2015年に分類が見直され、同種とされていた紅海産の個体群は別種 P. cincta(英名:Red sea lionfish)とされた[1]。また、2023年にはネッタイミノカサゴやミズヒキミノカサゴなどとともに別属Pteropterusを復活する見解が出された[2]

キミオコゼ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Scorpaeniformes
亜目 : カサゴ亜目 Scorpaenoidei
: フサカサゴ科 Scorpaenidae
亜科 : ミノカサゴ亜科 Pteroinae
: ミノカサゴ属 Pterois
: キミオコゼ P. radiata
学名
Pterois radiata
G. Cuvier, 1829
シノニム
  • Pteropterus radiata (Cuvier, 1829)
  • Pteropterus radiatus (Cuvier, 1829)
和名
キミオコゼ
英名
Clearfin lionfish

形態 編集

キミオコゼは最大で体長約24cmまで成長するが、普通成魚の体長は20cmほどである。背鰭には12本か13本の長く有毒の棘と、10-12本の軟条がある。臀鰭は3本の棘と6本の軟条をもつ。大きな胸びれは体側面に向けて広がっており、透明で模様は無い。その他の鰭も無色である。体色は赤茶色だが、約6本の色の異なる暗い縞をもち、それらは細い白色のラインで区切られている。尾柄部には二本の水平な白色の縞があり、これによって近縁他種と区別することができる[3][4]。同属種のネッタイミノカサゴPterois antennata)によく似るが、前述の尾柄部の帯や、キミオコゼには胸びれ基底部の膜に丸い斑紋がないこと、眼上皮弁に縞模様がないことなどによって区別できる[5]

分布 編集

キミオコゼは西部インド洋から南太平洋地域に分布する。生息域は、西は南アフリカ、東アフリカからインドネシア、北オーストラリアを経て、東は南太平洋のソシエテ諸島まで、北は南日本沿岸からニューカレドニアにかけて広がる。紅海に生息するものは別種(P. cincta)とされている[1]。沿岸と沖合の岩礁どちらにおいても、水深約25mにおいて発見されている。未成魚はタイドプールで見つかることもある[4]日本においては高知県以南でみられる[6]

生態 編集

キミオコゼは基本的に夜行性である。日中は岩の裂け目や小さな洞穴、張り出した岩の陰などに隠れて過ごし、夜になると活動を始めてカニやエビなどの無脊椎動物を捕食する[3]

人間との関係 編集

水族館等で観賞魚として飼育され、食用にはならない。棘は人間にとって有毒であり、刺された場合はアンモニアが効かないため、毒を絞り出してからぬるま湯につけ、もむのが良い[6]

出典 編集

  1. ^ a b Matsunuma, M. and H. Motomura (2015). "Redescriptions of Pterois radiata and Pterois cincta (Scorpaenidae: Pteroinae) with notes on geographic morphological variations in P. radiata". Ichthyological Research. 63 (1): 145–172. doi:10.1007/s10228-015-0483-6.
  2. ^ Chou T-K, Liu M-Y and Liao T-Y (2023) Systematics of lionfishes (Scorpaenidae: Pteroini) using molecular and morphological data. Front. Mar. Sci. 10:1109655. doi: 10.3389/fmars.2023.1109655
  3. ^ a b Pterois radiata Cuvier, 1829: Radial firefish”. FishBase. 2014年1月1日閲覧。
  4. ^ a b King, Dennis; Fraser, Valda (2002). More Reef Fishes & Nudibranchs: East and South Coast of Southern Africa. Struik. p. 28. ISBN 9781868726868. https://books.google.co.uk/books?hl=en&lr=&id=znVaoQC_4dwC&oi=fnd&pg=PA6&dq=Aeoliscus+punctulatus&ots=oCOeWdpk99&sig=lKWLUWFn7NVBymrv0jsWp8K9Kpw#v=onepage&q=Aeoliscus%20punctulatus&f=false 
  5. ^ 瀬能宏監修『日本の海水魚』 山と渓谷社、2008年、84頁 ISBN 4635070255
  6. ^ a b 日本大百科全書”. コトバンク. 朝日新聞社 Voyage Group. 2015年3月7日閲覧。