ギルバート(gilbert)は、電磁単位系、およびガウス単位系において一貫性のある起磁力磁位単位である[1][2]。この単位は1930年国際電気標準会議で採択された。この名称は16世紀のイギリスの物理学者・ウィリアム・ギルバートに由来する。

ギルバート
gilbert
記号 Gb, Gi
度量衡 メートル法
CGS電磁単位系ガウス単位系
起磁力磁位
SI およそ 10/(4π) A
組立 Oe cm = dyn1/2
語源 ウィリアム・ギルバート
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定義 編集

磁場の強度 H の下で曲線 C に沿った起磁力は

 

で与えられるので[1][2]、起磁力の次元は [磁場の強度]×[長さ] である。 したがって、磁場の強度の単位エルステッド(Oe)と、長さのCGS単位センチメートル(cm)から、ギルバートは一貫性のある単位として

Gb = Oe cm

で定義される[1]。力のCGS単位ダイン(dyn)により、エルステッドが Oe =dyn1/2/cm で表されるので、ギルバートは Gb = dyn1/2 となる。

均一な磁場 H の下で、磁場の向きに沿って距離 δ 離れた2点間の起磁力は

 

となる。磁場に H = 1Oe を、距離に δ = 1cm を代入すれば

 

となり、したがって

均一な 1Oe の磁場の下で磁場の向きに 1cm 離れた2点間の起磁力が 1Gb である。

単位の換算 編集

国際単位系(SI)においては、1Oe がおよそ (1.000×103/4π)A/m ≈ 79.577 A/m に相当するので、1Gb はおよそ (1.000×101/4π)A ≈ 0.79577 A に相当する

その他の電磁気量の単位との関係 編集

電磁単位系においては、起磁力は電流と同じ次元を持つ。従って、ギルバートと電流の単位ビオはともに dyn1/2 であり、同一の単位に異なる名称を用いているに過ぎない。同一の単位に二つの単位に異なる名称を用いているのは、単位を用いる物理量が異なるためである。起磁力と電流は同じ次元を持つが同一の量ではないため、これらを直接に比較することはできない。電流を起磁力へと関係付けるには、コイル巻数などの幾何学的な無次元量の因子をかける必要がある。この事情は国際単位系においても同様であり、旧くは起磁力の単位としてアンペア回数(アンペアターン、AT)が用いられていた。

MKSA/SI 物理量 emu esu/gauss MKSA/SI 物理量 emu/gauss esu
アンペア (A) 電流 I 10−1 Bi 10−1c ボルト (V) - - - -
ボルト (V) 起電力電位 V 108 108/c アンペア (A) 起磁力磁位 Fm 10−1×4π Gb 10−1×4πc
オーム (Ω) 電気抵抗 R 109 109/c2 ジーメンス (S) - - - -
クーロン (C) 電荷 Q 10−1 10−1c Fr ウェーバ (Wb) 磁荷 Qm 108/4π 108/4πc
電束 ψ 10−1×4π 10−1×4πc 磁束 Φ 108 Mx 108/c
ファラド (F) 静電容量 C 10−9 10−9c2 ヘンリー (H) インダクタンス L 109 109/c2
V/m 電場 E 106 106/c A/m 磁場 H 10−3×4π Oe 10−3×4πc
- - - - 磁化 M 10−3 10−3/c
C/m2 電束密度 D 10−5×4π 10−5×4πc テスラ (T) 磁束密度 B 104 G 104/c
電気分極 P 10−5 10−5×c 磁気分極 Pm 104/4π 104/4πc
F/m 誘電率 ε 10−11×4π 10−11×4πc2 H/m 透磁率 μ 107/4π 107/4πc2
表の見方

脚注 編集

  1. ^ a b c IUPAP
  2. ^ a b Silsbee (1962)

参考文献 編集

関連項目 編集