クトゥルー・オペラ

クトゥルー・オペラ』とは、風見潤による日本SF小説シリーズ。H・P・ラヴクラフトクトゥルフ神話大系を元にしたジュブナイル小説で、1980年から1982年にかけて書き下ろし作品としてソノラマ文庫より全4巻で発売された。2015年には創土社のクトゥルー・ミュトス・ファイルズの1冊として合本版が発売されている。

概要編集

クトゥルフ神話大系を元にした日本の小説は短編小説として『銀の弾丸』(1977年、山田正紀)や『邪教の神』(1956年、高木彬光)が挙げられるが、長編としては本作シリーズが日本初なのではないかと、菊地秀行は創土社版『クトゥルー・オペラ 邪神降臨』(2015年)の解説で指摘している。

本作においてクトゥルーを含む「神々」は、「超常の能力を持っている異星生命体」であり、適切な手段を用いれば対抗や撃退が可能なものと設定されており、作中で主人公たちに倒されて行く点が、一般的なクトゥルー神話大系作品との大きな違いの一つである。

ソノラマ文庫版2巻収録の著者あとがきに拠れば、シリーズタイトルとなる「クトゥルー・オペラ」とは「クトゥルー神話大系にもとづいたスペースオペラ」の意である。

本シリーズスタートの翌年1981年11月より刊行の始まったクトゥルフ神話大系を元にした長編シリーズ『魔界水滸伝』を執筆した栗本薫は、『魔界水滸伝』執筆にあたって本作の影響があったこと、クトゥルフ神話大系物でここまで自由にやって良い(上述のように「神々」を主人公たちが倒して行く点)と目から鱗状態であったことをあとがきやインタビューで述べている[1]

2015年発行の創土社版には「著作権者と連絡が取れないため、著作権料は信託されている」旨が奥付に記載されている。

あらすじ編集

登場人物編集

双子の少年少女編集

1982年7月7日に生まれた、超能力を持った少年少女たち。作中の舞台となる1997年当時は15歳。

ペリー・フォンタナ、テリー・フォンタナ
アメリカ人の少年。念力の使い手。
深松 良(ふかまつ りょう)、深松 健(ふかまつ けん)
日本人の少年。当初は超能力がなかなか発現しなかったものの、危機に直面した際に覚醒し、高熱発生能力者であることが明らかになる。
潘 月華(ファン イエファ)、潘 星華(ファン シンファ)
中国人の少女。バリヤーを発生させる能力を持つ。桂林市在住。黒い髪を三つ編みにした、7組の双子たちの中で一番華奢な体つきの姉妹。
バリヤーは脳を中心に球状に発生し、大きさは自在に変化させられる。空気や水を含め物質は遮断できるが、光・熱・音などの震動はバリヤーを通過する。後に、バリヤーを発生させた後、ラグビールシング姉妹のテレポートを利用してバリヤーだけを残して本人を別の場所に移動させられるようになる。
ターラー・ラグビールシング、ドゥルガー・ラグビールシング
インド人の少女。テレポーテーションを使う。姉のターラーは気が強いが、ドゥルガーは気が優しくおとなしく性格。
アテニー・コスモプールウ、アルテミス・コスモプールウ
ギリシャ人の少女。透視能力者
チュール・スヴェインソン、トール・スヴェインソン
ノルウェー人の少年。生命体の位置を知ることができるレーダー能力の所有者。
眼鏡をかけた、ひ弱な体つきの少年。物理学に関して広範な知識を有し、論文も発表している。
イシマント・ホルス・アズラク・エルハイカム、ハールーン・ホルス・アズラク・エルハイカム
エジプト人の少年。自分のいる場所の、過去に起きた出来事を見ることができる。
故郷のカイロが邪神クトゥグアに仕える火の精に襲撃された際、両親を失う。

双子たちの協力者編集

リチャード・ホリスター
ホリスター・エンタープライズ会長。予知能力者。通称「ラッキー」ホリスター。1997年時点で45歳。予知能力を使って会社を超巨大複合企業に成長させる。豊富な資金力で7組の双子を探し出し、彼らの戦いをサポートする。
リンダ・アーチャー
ホリスターの秘書。テレパシー能力を持たない人の心でも読める精神感応者(テレパス)。
アラン・モナガン
ホリスターのボディガード。
深松 信介
深松兄弟の伯父。北海道大学の教授。
川口 俊夫
北海道大学の大学院生。深松教授の研究を手伝う。

邪神編集

アザトート
万物の王。旧神によって知性と視力を奪われブラックホールに封印されていたが「地球を我が物とする」という感情を全宇宙に飛ばし、それによって各地で封印されていた邪神たちが目覚め始めた。
ナイアルラトホテップ
唯一、封印を免れた邪神。
クトゥルー
ダゴンハイドラ
ハストゥール
風の精。
シュブ・ニグラト
ガタノトゥア
暗黒神。
クトゥグア
火の精。
アブホート
邪神たちの親とされる存在。「定かならざる宇宙の父にして母なるもの」。
ウボ=サトゥラ
「頭手足(こうべてあし)なき魂」。アブホート同様、邪神たちの始祖とされる。
ツァトゥグア
ヨグ=ソトート
シャンタク鳥
ウムル・アト=タウィル
「炎霧」の名を持つ「門の守り神」。カダスを閉ざす門の守護者。
ツァールとロイガー
双子神。磁力を操る能力を持つ。本作では、それぞれが単一の磁荷を持つモノポール生命体であったとされる。アルクトゥールス星系の第3惑星に封印されていた。

地球本来の神々編集

ナイアルラトホテップによってカダスの地に幽閉された神々。双子たちの戦いを支援する。

イホウンデー
大鹿の女神。
ロボン、タマーシュ、ゾ=カラール
ムナール大陸のサルナスで崇められていた3柱の神。
ナル=ホルトハース
砂の国の神。
ヒプノス
眠りの神。
ヴォルバドス
火の神。
コス
夢の国の神。
イオド
ムー大陸で崇拝されていた神。「輝ける狩人」。

書籍情報編集

ソノラマ文庫版
表紙画・挿絵:中村銀子
  1. 邪神惑星一九九七年(1980年7月、ISBN 4-257-76160-1
  2. 地底の黒い神(1980年12月、ISBN 4-257-76170-9
  3. 双子神の逆襲(1981年9月、ISBN 4-257-76184-9
  4. 暗黒球の魔神(1982年4月、ISBN 4-257-76205-5
創土社版
表紙画・挿絵:中村銀子
解説:菊地秀行
  • クトゥルー・オペラ 邪神降臨(2015年3月、ISBN 978-4-7988-3024-7
    ソノラマ文庫版表紙画はモノクロ挿絵として収録。ソノラマ文庫版の各巻著者あとがきも再録されている。

参考書籍編集

  • 風見潤 (1994). “『クトゥルー・オペラ』に邪神を屠る”. 別冊幻想文学 10 ラヴクラフト・シンドローム. ISBN 4-900757-10-1. 

出典編集

  1. ^ 栗本薫 (1994). “『魔界水滸伝』に終末を語る”. 別冊幻想文学 10 ラヴクラフト・シンドローム. ISBN 4-900757-10-1.