クラウド・ナイン (戯曲)

クラウド・ナイン』(クラウド9Cloud Nine)は、キャリル・チャーチルCaryl Churchill)作のイギリス演劇作品。2幕。1978年のジョイント・ストック劇団(Joint Stock Theatre Company)とのワークショップを経て、1979年2月14日ロンドンのダーリントン・カレッジ・オブ・アーツで初演された[1]

概説 編集

第1幕と第2幕は対位法的構造を作っている。第1幕の舞台はヴィクトリア朝(1837年 - 1901年)のイギリスアフリカで、第2幕の舞台は1979年のロンドン公園である。しかし、登場人物たちは2つの幕の間でたった25歳しか年を取っていない。また、俳優たちは第1幕で演じた役と別の役を第2幕で演じる。つまり、登場人物は第1幕と第2幕で演じる役者が異なる。 たとえば、植民地行政官の妻ベティは第1幕では男優が演じ、第2幕では女優が演じる。また、第1幕で黒人の使用人を演じるのは白人で、ベティの娘ヴィクトリアを演じるのは人形、第2幕で5歳の少女を演じるのは大人の男優とそれぞれ指定されている。第1幕は従来の喜劇をパロディ化し、ヴィクトリア朝の社会と植民地政策を風刺する。第2幕は、喜劇とヴィクトリア朝のイデオロギー双方の制約が、より寛大な1970年代に緩和された時、何が起こりうるかを描いている。

『クラウド・ナイン』は表現主義不条理の要素を含んでいるが、それ以上に、チャーチルの以降の作品にある現実主義的な規約に従っている。この劇は物議をかもす性描写と卑猥な言葉を使い、植民地の抑圧と性の抑圧の類似点を立証する[2]。そのユーモアは不調和とカーニバレスクの上に立脚し、異なる人々を受け入れ、彼らを支配せず、特定の社会的役割に組み込むことを強制しないというチャーチルの政治的なメッセージを伝えることを助けている。

日本での上演例 編集

翻訳はいずれも松岡和子によるものが使われている。

演出 出演 劇場
1982年
パルコ
藤原新平 菅野忠彦佐藤オリエ鵜澤秀行坂部文昭塩島昭彦大橋芳枝松下砂稚子 PARCO西武劇場
1985年
(パルコ/劇団青い鳥
木野花 上村柚梨子葛西佐紀芹川藍南部夜貴子綾田俊樹伊沢磨紀久世龍之介田根楽子巻上公一三沢慎悟 SPACE PART3
1986年
(パルコ/劇団青い鳥)
木野花 綾田俊樹、久世龍之介、竹下佳男、田根楽子、巻上公一、伊沢磨紀、小林洋子、葛西佐紀、上村柚梨子、芹川藍、南部夜貴子 SPACE PART3
1988年
(パルコ)
木野花 江波杏子戸川純左時枝加藤善博勝村政信金子研三、久世龍之介 SPACE PART3
1995年
(パルコ/メジャーリーグ)
マシュー・ロイド 南果歩上杉祥三村田雄浩銀粉蝶松重豊高畑淳子平田満 PARCO劇場
2011年
日本劇団協議会
伊藤大 浅地直樹宇宙小暮智美安藤瞳山賀教弘勝島乙江南谷朝子 青年座劇場
2017年
モチロン
木野花 髙嶋政宏伊勢志摩三浦貴大正名僕蔵平岩紙宍戸美和公石橋けい入江雅人 東京芸術劇場 シアターイースト

脚注 編集

  1. ^ Caryl Churchill, Plays: One (London: Methuen London, 1985)
  2. ^ Michael Patterson, The Oxford Guide to Plays (Oxford: Oxford University Press, 2007)

日本語訳 編集

外部リンク 編集