ディスクジョッキー

クラブDJから転送)

ディスクジョッキーdisc jockey)またはDJディージェイ)とは、既存の音楽を再生機器で音を出す、またはそれを選曲、操作、指示する人物。 ディスクジョッキーのディスクはレコード盤の事を指していたが、カセットテープCD、またはデジタルオーディオファイルと音楽を記録した媒体が増えているため包括的な用語として用いられる。

複数の意味が存在するため、以下で詳しく解説する。

種類編集

ラジオDJ編集

 
かつてワシントン ペンシルベニア州に存在していたラジオ局、WKZVで働くラジオパーソナリティ。

ラジオDJまたはラジオパーソナリティは主に放送局ラジオ番組で情報を発信しながら、合間に流行の曲やリクエスト曲を流す人物・司会者を指す。それぞれの呼称に異差や定義はなく、国や放送局、司会者によって変わる。著名なラジオDJには、ウルフマン・ジャック[1]糸居五郎小林克也ピーター・バラカンらがいる。

リスナーを楽しませるために過激な発言をして注目を集めるDJの事をショックジョック英語版と称する。アメリカ合衆国西部の放送局群で行われていた朝のラジオ番組、アイマス・イン・ザ・モーニングのメインパーソナリティであったドン・アイマスはショックジョックして知られていた。彼は2007年4月4日の放送にてラトガース大学女子バスケットボールへの差別発言をした事により局から解雇された[2][3]

12月28日はディスクジョッキーの日として一般社団法人 日本記念日協会に登録されている[4]ニッポン放送をキー局としていた番組、オールナイトジョッキーのラジオDJとして貢献した糸居五郎の命日でもある[5]

クラブDJ編集

 
基本的な機器構成のひとつ。両サイドにTechnics SL-1200、中央にはDJ用ミキサーが設置されている。

クラブDJナイトクラブディスコなどの会場で、最低2台またはそれ以上の再生機器と、ミキシング・コンソールを使い、片方の再生機器で曲を再生している間に、もう片方で次の曲の再生準備し、BPMや音量の調整を行い、タイミングを見計らいながら音を違和感なくクロスさせるミックス操作で曲の流れをとめることなく次の曲へと繋いでいく。その他サウンドエフェクトを駆使し、創造的な音楽を創り出す技術者のこと。

CDJ・PCDJ・モバイルDJ編集

 
DJ albert

基本的なプレイ技術は#クラブDJと同じだが、音楽の記録されてる媒体、コントローラ部がデジタル化されているものを用い、アナログターンテーブルとは操作方法など異なる点が主である。

CDJとはDJ向けのCDプレーヤーを使ってDJをする者の通称。またAlphaTheta株式会社(旧:Pioneer DJ株式会社)[6]商標であり、DJ向けのデジタル再生機器の称呼[7][8]。パイオニア以外の機種も含めDJ向けCDプレーヤーの総称として用いられることもある。

PCDJまたはPJパーソナルコンピュータ使ってDJをする者の通称。

モバイルDJは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を使ってDJをする者。或いは、結婚披露宴、会社のパーティー、学園祭など、様々なイベントに人材・機材などを持ち込みDJをする個人・団体のこと。後者は「出張DJ」とも称され、ビジネスモデルでもある[9]

デジタルという利点を生かし、アナログでは難しい、或いは不可能な事を容易にすることができる。 たとえばBPM、アナログでは両ソースと同じ単位にしなければならないケースでは時間のかかる作業であるが、これを瞬時に同じ単位にする同期機能や、音程を保ったままのピッチコントロール、何拍かを非常に細かくループさせたりするエフェクト機能などがある。 またアナログのレコード盤では物理的に収納、移動に限度があるが、デジタルでは記憶装置の空き容量が許す限りの曲を所持、移動が可能となる。

ターンテーブリズム編集

ターンテーブリズム英語版またはターンテーブリスト#クラブDJの基本技術に加え、ターンテーブルを楽器のように扱うパフォーマンスが主である。ターンテーブル上のレコード盤を手で止めたり、特定の部分だけリズミカルに反復再生し、独特のノイズを出すスクラッチング英語版(またはスクラッチ、スクラブ)は基礎的な奏法のひとつである[10]
この技術を競い合う大会、DMC World DJ Championships英語版[11]やRed Bull 3Style[12]が存在する[13]

機材編集

 
D&Dスタジオ内のDJプレミアの制作スペース

ミキシング・コンソール編集

ミキシング・コンソールは単にミキサー(以下「ミキサー」と略す)とも呼称される。この節ではクラブDJ向けのミキサーについて解説する。音声入出力は最低2台の再生機器からの入力とオプションにマイクなどからの入力、スピーカーへの出力とモニター用出力に分かれる。モニター出力は次の曲を準備する試聴するために利用するもので、メインであるスピーカー出力に混合せず、また遮ることなく曲の確認ができる特別なラインである。また横方向につまみが移動するクロスフェーダーを搭載し、表面中央下部に配置されてるのが一般的である。このクロスフェーダーのつまみを中央に移動させると両方の再生機器で再生している音が混ざり、片側に移動させると片方の音が大きくなり、もう片方で再生してる音は小さくなる[14][15]

レコードプレーヤー編集

 
アナログターンテーブルを使用してスクラッチを行うピート・ロック

DJ向けのレコードプレーヤーは、ターンテーブルと呼称する事もある。一般的なレコードプレーヤーとの違いはターンテーブル部の機構が、ベルトドライブではなくダイレクトドライブである製品が一般的である。これはターンテーブルを手で止めて、盤を小刻みに送ったり戻したりするスクラッチプレイなどを前提としているため、ターンテーブルに直接モーターの力を伝えやすいダイレクトドライブが採用されている。また製品によってモータートルクが異なってくる。このほかに針圧の違い、ピッチ可変が広域である点が違いとして上げられる[16]ベスタクスがかつて販売していたクラブDJ向けターンテーブルには、現場での設置しやすさを考慮して本体を傾斜状態にできるものや±50%という極端なピッチ可変機構が搭載される機材も存在した。

CDプレーヤー編集

DJ向けCDプレーヤーの主な特徴として、プレーヤー上部にレコードプレーヤーのターンテーブルを模したデジタルコントローラが搭載され、これに触れ、回転させたりすることで音源を操作することができる。ターンテーブル部は基本的にモーターは無く、レコードプレーヤーのように自走することもないが、2004年6月21日にTechnicsが販売した、SL-DZ1200には自走するターンテーブルが搭載されていた[17][18]。機器によるが、ターンテーブルの上面に触れて回すと曲の送り戻しとスクラッチ操作、サイド部分に触れて回すと選曲操作ができる。このほかタイムコードなどを表示するモニター、ピッチを可変させるためのスライダーなどが搭載されている。

記録媒体は基本的にCD-DA規格のCDを用いる。機種によるが多機能化したプレーヤーはWAVMP3AACなどの音声ファイルフォーマットを扱えたり、USBポートを搭載し、USBメモリなどから音声ファイルを扱うことができる。

コントローラー編集

DJ向けのコントローラーはターンテーブルを模したものが両サイドに二つ、ミキサーに実装されているようなスライダー、ボリュームのつまみ、各種汎用的なポタンなどが実装されている物が一般的である。コントローラーには実際のターンテーブルやミキサーとしての機能は無く、信号をコンピュータに送信し、ソフトウェアをコントロールさせることで成り立つ機器である。またほとんどのコントローラー機器はMIDI規格に沿い、USBで接続する。それ以外はHIDプロトコル(主にUSBが通信プロトコルとして利用してる名称)を利用する。

そのほか編集

ヘッドフォン
通常は次の曲を準備するため、曲をモニター(試聴)する際に利用する。
オーディオインターフェース
コンピューター上のソフトウェアで再生されている曲を、メイン出力と曲をモニターするための出力、4チャンネル(ステレオの場合)で分ける場合に必要となる。DJ向けMIDIコントローラーにはオーディオインタフェースを搭載している製品もある。
サンプラー
必須の機材ではないが使用するDJは多い。AKAI professional社のMPCシリーズは著名である。

ソフトウェア編集

PCDJ向けのオーディオプレーヤーは単に音楽を再生するだけではなく、ミキサー、ターンテーブル、エフェクトなどの機能を搭載したソフトウェアである。周辺機器はキーボードやマウスだけでもソフトウェアを操作することが可能であるが、一般的にはMIDIコントローラーと一緒に用いる。

代表的なDJ向けオーディオミキシングソフトウェアは以下の通りである。またコンピュータが各ソフトウェアのシステム要件を満たせる性能であれば筐体(デスクトップ型ノート型など)は限定されることなく、環境や移動の有無に応じて異なる。

djay英語版
ドイツのAlgoriddim社が開発。
Mixxx
無料のオープンソースソフトウェア。
rekordbox[19]
AlphaTheta社が開発。ソフトウェアはサブスクリプション方式による販売。
Serato DJ[20]
Serato社が開発。
Traktor[21]
ドイツのNative Instruments社が開発するソフトウェア。
VirtualDJ[22]
Atomix Productions社が開発。

バイナルエミュレーション編集

 
近接撮影したコントロールバイナルの表面

バイナルエミュレーションソフトウェアVinyl Emulation Software)または、デジタルバイナルシステムDigital Vinyl SystemDVS)は、レコードプレーヤーとタイムコードを記録したバイナル(「レコード盤」の別名)をインターフェイスとし、コンピューター上の音声ファイルを操作することが出来るソフトウェア、またはその総称。

タイムコードが記録されている特殊なレコード盤を「コントロールバイナル」とも称し、従来レコードプレーヤーと用いる。プレーヤーから出力されたアナログ信号は専用のA/Dコンバーターでタイムコードをデコードし、ソフトウェアに再生する時間位置を伝える事で音声ファイルを操作する。これにより、デジタルでもターンテーブルとほぼ同じ感覚で操作可能となる。またレコード盤以外にCDにもタイムコードが記録された製品もあり、DJ向けCDプレーヤーと組み合わせ事も可能。

ジャンルごとのDJスタイル編集

この節でのDJはラジオDJ以外のことを指す。

レゲエ(ディージェイ・セレクター)編集

レゲエにおけるDJの元祖はサー・ロード・コミック、カウント・マチューキ、リトル・スティットらである[23]。元は他のジャンルと同じように選曲しイントロ部でその曲の紹介などを担当していたが、1960年代後半のU・ロイの登場以降はレコーディングに参加しトースティングラップを披露するようになっていった。現在はレゲエにおける「DJ」と言えば、一般的にはサウンド・システムなどでバージョンダブに合わせてトースティングする者を指す。他ジャンルにおけるDJと区別するため、「ディージェイdee jay)」と表記する場合もある。ディスクジョッキーと呼ばれることはない。他のジャンルにおけるDJにあたる者は、レゲエではセレクターselector)と呼ばれる。セレクターには独自のスタイルがあり、曲のフック(盛り上がり)部分で逆回転して止めてしまったり(「Pull up」、「Rewind」、「Come again」と呼ばれる)セレクター自身が発言したりする。

ヒップホップ編集

1973年ニューヨークブロンクス区でサウンドシステム活動を開始したジャマイカ移民であるクール・ハークがヒップホップDJの普及者として知られる。クール・ハークが発見したブレイクビーツスクラッチなどの技法が開発され、ヒップホップDJの独自性が高まっていった。

ロックバンド編集

ロックバンドの中にはメンバーにDJを編成しているバンドが存在している。バンドにおけるDJの役割は音源再生の他、スクラッチやジャグリングなどを用いてパーカッションのような役割も担当する。サンプラーやドラムマシンなどの操作を兼任しているDJも多い。

DJを擁するロックバンドの例はインキュバスリンキン・パークスリップノットDragon AshMAN WITH A MISSIONSEKAI NO OWARISuchmosなどが挙げられる。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ Wolfman Jack Biography” (英語). IMDb. Amazon.com. 2020年1月27日閲覧。
  2. ^ 「アイムス氏は私たちの栄光の瞬間を奪い取った」ラドガーズ大学の女子バスケットボールチームがドン・アイマスの発言を批判」『デモクラシー・ナウ!』、2007年4月11日。
  3. ^ 大人気の毒舌家を没落させた一言」『日経トップリーダー』、2007年4月23日。2018年6月10日閲覧。オリジナルの2010-04-17時点におけるアーカイブ。
  4. ^ www.kinenbi.gr.jpにて「ディスクジョッキー」とキーワード検索した結果に表示される記事。ディスクジョッキーの日” (日本語). 一般社団法人 日本記念日協会. 2018年12月30日閲覧。
  5. ^ 伝説のDJ・糸居五郎の初出し秘蔵音源で綴る、珠玉の洋楽ヒット曲集が発売決定!” (日本語). ニッポン放送 NEWS ONLINE. 株式会社ニッポン放送 (2017年11月8日). 2018年12月30日閲覧。
  6. ^ 社名変更のお知らせ” (日本語). AlphaTheta株式会社 (2019年12月27日). 2020年1月27日閲覧。
  7. ^ 商標照会” (日本語). 特許情報プラットフォーム. 2020年1月27日閲覧。 “登録番号 第5449038号”
  8. ^ 012082079 - CDJ” (英語). WIPO Global Brand Database. 世界知的所有権機関. 2020年1月27日閲覧。 “Serial number of the application : 012082079”
  9. ^ 英警官の副業率、生活苦で増加 ウーバー運転手、美容師、映画プロデューサーも」『The Telegraph』、2019年5月11日。2020年1月27日閲覧。
  10. ^ DJ Qbertとは、どんなDJ?” (日本語). Red Bull (2015年9月15日). 2020年1月27日閲覧。
  11. ^ DMC World DJ Championships” (英語). Disco Mix Club. 2020年1月27日閲覧。
  12. ^ Red Bull 3Style” (英語). Red Bull. 2020年1月27日閲覧。
  13. ^ ターンテーブリズムと世界一のDJを決定する大会「DMC」について。彼らの想いとJapanファイナル” (日本語). Playatuner. Steezy株式会社 (2017年8月23日). 2020年1月27日閲覧。
  14. ^ 初心者DJ道場 ミキサーを知ろう” (日本語). OTAIRECORD. 2018年6月10日閲覧。
  15. ^ DJミキサー:進化の歴史” (日本語). Red Bull Music Academy (2019年6月14日). 2020年1月27日閲覧。
  16. ^ アナログレコード入門 オーディオ用とDJ用の違い”. カートリッジナビ. 株式会社オーディオテクニカ. 2018年6月10日閲覧。
  17. ^ ダイレクトドライブ デジタルターンテーブル SL-DZ1200” (日本語). パナソニック. 2020年1月27日閲覧。
  18. ^ 松下電器、テクニクスブランドのDJ用CDプレーヤー” (日本語). AV Watch. インプレス (2004年4月9日). 2020年1月27日閲覧。
  19. ^ rekordbox” (日本語). AlphaTheta株式会社. 2020年1月27日閲覧。
  20. ^ Serato DJ” (英語). Serato. 2020年1月27日閲覧。
  21. ^ Traktor” (日本語). Native Instruments. 2020年1月27日閲覧。
  22. ^ VirtualDJ” (英語). Atomix Productions. 2020年1月27日閲覧。
  23. ^ Dennis Alcapone『Forever Version』 ライナーノーツ 2007年、Heartbeat

関連項目編集