クロスオーバーSUV

クロスオーバーSUVとは、自動車カテゴリのひとつである。略称はCUV(Crossover Utility Vehicle)又はXUV。本記事ではCUVを用いる。

目次

概要編集

 
オープントップの日産・ムラーノ クロスガブリオレ

狭義にはSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークルと呼ばれる自動車のうち、トラッククロスカントリー車にも採用されるフレーム構造ではなく、セダンクーペと同様にモノコック(ユニボディ)構造である車を指す。一方で時代の流れと共に範囲が拡大し続け、近年はセダンコンパクトカーと呼ぶには車高・全高が高すぎるような車すらも含まれるようになってきており、古くからの「SUV」のイメージにこだわると理解が難しくなるケースも増えている。

自動車のカテゴリとしてはかなり新しい部類で、趣味性・実用性・ファッション性を並立したジャンルとして90年代に確立されて以降爆発的にヒットし、今日ではSUVタイプの主流となってきている。そのバリエーションは高級車から軽自動車ミニバン(3列シート)、オープンカーまで多岐にわたり、世界中の自動車メーカーから多種多様なクロスオーバーSUVが販売されている。

その人気はSUV内に留まらず乗用車全体でも際立っており、2017年にはCUVのトヨタ・RAV4が、16年連続でアメリカの乗用車売上首位だったセダントヨタ・カムリを引きずり降ろして首位に立った[1]。国内メーカーではマツダ三菱自動車SUBARUは既にCUVを基軸としたラインナップを展開しており、海外でもポルシェランボルギーニアストンマーティンなどのスポーツカーメーカーもCUV市場に参入し始めている[2][3]。ポルシェの2015年の決算では、同年22万台の売り上げのうちマカンが8万台でポルシェ車1位、カイエンが7万台で2位。従来のポルシェのイメージであるクーペの売上を圧倒してCUVが7割を占めるという事態が起きている[4]

特徴編集

クロスオーバーSUVと呼ばれる車種は、

  1. 最初からモノコック構造のSUVとして設計されているもの
  2. 元々はステーションワゴンコンパクトカーとして設計された車両をSUV風に仕立てた物

の2種類がある。2.は厳密にはSUVと呼ぶかは微妙なところで、車種によっては「○○クロスオーバー」とのみ称されるか、「(ベース車両)のSUVグレード」のような紹介をされることもある[5]。また日本自動車販売協会連合会の統計上でも、例えばトヨタ・アクアクロスオーバーはアクアスバル・XVインプレッサの台数に含んで集計されている。ただし当記事では2.も便宜上CUVとして扱う。

クロスカントリー系SUVとの比較編集

ラダーフレーム構造を持つ本格的なクロスカントリー系SUVと比べた場合、長所は

  • ベース車からプラットフォーム・コンポーネントを流用できるため、設計・製造のコストが削減できる
  • 低重心化・軽量化できるので、舗装路での操縦安定性やハンドリング、乗り心地、NVH燃費性能などで優れている
  • 居住空間、積載スペースを広く取ることができる

短所は

  • オフロードの凸凹を走る際の衝撃に対する耐久性では劣るため、未舗装路や荒野地帯での長期に渡る使用は難しい

といった点が挙げられる。

本格的なフルタイム式四輪駆動一辺倒のクロスカントリー系SUVに対して、CUVは外見こそクロカンに近くても二輪駆動や簡易なオンデマンド式四輪駆動の設定が多く存在するため、オフローダーや車好きから「なんちゃってクロカン」などと揶揄されることもある。しかし近年は電子制御技術が大幅な進歩を遂げていることもあり、耐久性はともかく走破性ならクロスカントリー車に負けない性能を持つCUVも少なくない[注釈 1]

乗用車との比較編集

一般的な乗用車(セダン・コンパクトカー)と比較したCUVの長所・短所は基本的には他のSUVとほぼ共通である。

具体的には、長所は

  • 空間を広く取れるため、居住性と積載性に優れる
  • 豪華さ・ステータス性を演出できる
  • 目線が高くなるため視認性が良い
  • 車高が高めなので、未舗装路や雪の多い地域で有利

短所は

  • 車重が重いため燃費・ドライビングの軽快さで劣る
  • タイヤの摩耗が激しく、サイズも大きめのため維持費が高くなる
  • 全高が高いためロールしやすい
  • 車両価格が高い
  • 大きめなので取り回しが悪くなる
  • 立体駐車場を利用する際は全高制限を確認する必要がある

といった点が挙げられる。また似た形状のミニバンと比べると運動性能・ファッション性は勝るが、使い勝手・スペース効率で劣る。そのため良く言えばいいとこ取り、悪く言えば中途半端とも言える。

一方で現代のCUVはポルシェ・カイエンランボルギーニ・ウルス、マセラティ・レヴァンテのようにスポーティなオンロード性能を与えられたものや、三菱・アウトランダーPHEVトヨタ・C-HRのようにエコ技術の進歩で20km/L以上の実燃費を叩き出すものなど、SUVとしての長所はそのままに短所を少なくした車種も増えており、これが現在の人気の高さに繋がっている。

なおベース車に極めて近いCUVの場合は上記のメリット・デメリットは当てはまらないこともある。

CUVの起源編集

 
タルボ-マトラ ランチョ(フランス)

乗用車をオフロード風に仕立てた車は古くから存在するが、基準や視点によってどの車を「クロスオーバーSUVの先駆け」と呼ぶかは諸説あり、定まっていない。

古くは農業従事者向け車両をベースとした1957年ソ連で生産された四輪駆動セダン・ステーションワゴンのモスクビッチ・410があるが、これは自動車業界のムーブメントには繋がらなかった。一方同じくソ連で、モノコックボディを採用した1977年のラーダ・ニーヴァは海外でもそこそこの評価を受け、ランドローバーにも影響を与えたとされる。

西欧ではニーヴァと同年に、欧州クライスラータルボ-マトラマトラ・シムカ・ランチョを発表している。ランチョはFF乗用車のシムカ・1100をベースとしたフルゴネットライトバン)である、「シムカ 1100 VZ2」にオフローダー風の「化粧」を施したモデルで、加えて二輪駆動モデルのみであるため、現代に繋がるクロスオーバーSUVらしさを持っている一台と言える。

異なる車種を掛け合わせる「クロスオーバー・ビークル (Crossover Vehicle) 」という考え方自体は米国で形作られた。1959年に登場した姉妹車のGM・エルカミーノとフォード・ランチェロとGMC・キャバレロが、フルサイズセダンのボディをラダーフレームの上に乗せたクロスオーバーとして登場し、これが「ハイブリッド・ビークル」と呼ばれ、「クロスオーバー」という概念の先駆けとなっている。1960年代になるとライトトラックの耐久性とステーションワゴンの実用性を兼ねたシボレー・ブレイザーが登場した[6]。また同時期の北米ではSUVという言葉も、ピックアップトラックの荷台に空間を作ることで誕生している。このように「クロスオーバー」と「SUV」の概念の発祥地となっている北米だが、北米最初のモノコック構造のSUVは1980年発売のAMC・イーグルである。そして1984年発売ジープ・XJチェロキーが、SUVをオフロード愛好家以外にも身近にした[7]

高級車としての街乗りSUVという意味では、ラダーフレーム構造ではあるものの、1970年発売のランドローバー・レンジローバーが早くから参入していた。ただし4WDの需要の低い欧州ではムーブメントを起こすには至らなかった。近年ポルシェ、BMWなどの高級スポーツカーメーカーもクロスオーバーのSUVを作る様になったきっかけは、北米で発売されたレクサス・RX(日本名トヨタ・ハリアー[8]がきっかけであるとされる。

日本では1971年にステーションワゴンの車高を上げ四輪駆動化させたスバル・レオーネ エステートバン4WD、1988年にカジュアルさと街乗り性能を重視して開発された「ライトクロカン」のスズキ・エスクード[9]、1994年にクロカンボディでありながら横置きエンジン・FF車のモノコック構造を採用した1994年のトヨタ・RAV4[10][11]などがCUVの先駆けとされている。

日本におけるCUV編集

走破性が付与された乗用車の登場編集

 
スバル・レオーネ エステートバン4WD

1970年代に入り、右肩上がりの高度成長期を終え、日本人が暮らしに豊かさを求めるようになってくると、その一環としてスキーやオートキャンプといったアウトドアレジャーが普及し始めた。こうなると日本で一般的だった3BOXスタイルのセダンでは、平均的な4人家族に旅行用の荷物を搭載するのには無理が出てきた。しかしRVSUVという概念が確立するまでの間は、耐久性とパッケージング性能に優れた商用車がその代替的存在であった。

そんな中日本で最初にジープに劣らない悪路走破性を備えた四輪駆動の乗用車として開発されたのが、1972年富士重工業東北電力の依頼で製作されたレオーネ エステートバン 4WDであった。当時の日本にはレジャー用途の自動車というカテゴライズ自体が存在しなかった。当時四駆といえば日産・サファリトヨタ・ランドクルーザーのようなヘビーデューティー4WDが官公庁や企業向けに納入されるものというのが常識で、四輪駆動の燃費の悪さをものともしないわずかな趣味人のうち、レンジローバーメルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲンには手が届かないといった層がその代替的に購入しているに過ぎなかった。しかし、レオーネの登場で一般人が四輪駆動自家用車を入手するハードルは一気に引き下げられた。レオーネ・エステートバンは名目上商用車であったものの、徐々に一般個人ユーザーを獲得していった。

1981年にはレオーネは2代目途中で乗用車モデルのステーションワゴンであるツーリングワゴンが追加される。これにより「オンロード・オフロードを問わず使用できる多目的乗用車」が誕生した。やがてレオーネに触発された各メーカーも乗用4WDの開発に乗り出した。またトヨタターセル/コルサをベースにし、全グレードに四輪駆動を設定したスプリンターカリブでレオーネの市場に参入。背の高さと荷室の広さで一定のファン層を築いた。

一方日本では3列シートの乗用車は旧くから存在したが、同クラスの商用車と共に、主にロングホイールベースによる最小旋回半径の大きさから市街地での取り回しの悪さが嫌われ、一般的ではなかった。このクラスではトヨタ・ハイエースをはじまりとするキャブオーバースタイルのワンボックスカーが主流であった。このジャンルも当初商用車として登場し、乗用車としては平均的な5人乗りセダンでは満たせない大家族用という位置づけだった。しかしそのパッケージング性能の高さからレジャー用自動車としても早いうちから注目され、やがては大容積を快適性に転換し、トヨタ・クラウンにも劣らない豪華装備を備えたモデルの登場にも繋がった。あるいは乗用車よりも更に安価に購入維持できる軽ワンボックスカーも注目され、ダイハツ・ハイゼット アトレーを嚆矢として、乗用車的な軽ワンボックスバンが各社から発売され、加えて高速道路の走行に備えターボチャージャーを装備するモデルが追加された。そしてこれらの多くに、積雪路・非舗装路の走行を目的として四輪駆動が設定された。

その経過で1979年に生まれたのが、「ワンボックスのオフロードカー」三菱・デリカスターワゴンであった。「4WDの代名詞」をスバルと争っていた三菱もまた早い時期からRV車販売に注力しており、その回答が「パジェロ並みの悪路走破性とワンボックスの収容力を生かした快適性を兼ね備えた」デリカであった。これに富士重工が1983年スバル・ドミンゴマツダボンゴ(3代目)に当時の最先端の4WD技術を搭載して対抗したが、デリカのみが2018年現在までクロカン系ワンボックスとして残っている。

ただし以上の車種は、現代の目線ならばクロスオーバーSUVに含まれる可能性があるが、当時はあくまで本格的な走破性を追加したワンボックスカー・ステーションワゴンという感じのもので、SUVとは異なる物として見られていた。そのため三菱・パジェロに始まるクロカンSUVブームの波に乗りきることはできなかった。

なお当時は日本のマーケティングでは「SUV」は一般人が耳にすることはなく、主に三菱の宣伝戦略によりRVが1980年代のオフロード車のことを指すマーケティング用語として広く使用されていた。その後1980年代後半にワンボックス、90年代になりステーションワゴンがRVの概念に追加された。1992年には初めて統計上「RV」という言葉が用いられ[12]、さらに1996年になってやっと日本自動車販売協会連合会が、RV統計を取り始めた。しかし1990年代になっても依然「RV」や「オフロード車」といったカテゴリー表記が主流であり、2000年を越える頃まで「SUV」という表記は米国系SUVなどに対して『米国ではSUVというジャンルになる』という紹介や、一部の愛好家向けメディアで使用されるに過ぎなかった。

走破性からオンロード性能の時代へ編集

 
ホンダ・CR-V

前項の通りRVブームの中各社が四輪駆動車で激しく火花を散らしていたが、道路の舗装化が進んでいたこともあり、実際には豪雪地域以外ではオフロードの走行性能を重視するユーザーは多くは無かった。むしろボディの大きさに比べ室内空間は狭い、車高が高いため高速での乗り心地は快適ではない、四輪駆動であるために燃費は悪いなどデメリットが多かった。しかし1980年代後半から起こったバブル経済の好況にも支えられ、多くの消費者がそうしたデメリットを甘受してファッションライフスタイルとしてクロカン系SUVを購入していた。

そんな中、クロカン車としての走行性能を維持しつつも扱いやすさや、居住性、乗り心地などを乗用車レベルに向上させたスズキ・エスクードが、1988年に登場して人気を集めた。エスクードは従来同様のラダーフレーム構造であるため、クロスオーバーSUVというよりはライトクロカンに分類されるが、これに影響されて1991年発売の2代目三菱・パジェロも同様に市場の要請に応え、丸みを帯びて都会に調和する様なデザインと舗装路性能を付与されて登場した[13]

1994年には日本初のモノコック構造のクロカン系SUVとしてトヨタ・RAV4が誕生した。従来の巨大なクロカンとは異なり、シティユースに向いたコンパクトでカジュアルなボディを持ち、1995年には二輪駆動のグレードも用意されて予想を上回るヒットをした。尤も同年はホンダから発売されたオデッセイがRAV4を凌ぐ人気を示していたことや、ライトクロカン自体は上記の1988年のスズキ・エスクードが行きわたっていたこと、ジムニーなど、より小型のオフロードカーもあったことなどの要因で、一般の消費者にはRAV4の歴史的な意味でのインパクトは伝わりづらかった。しかし業界関係者には衝撃を与え、このRAV4を皮切りに、1995年末からホンダもCR-Vでヒットを飛ばして徐々に現在の意味である(=モノコック構造の)CUVが日本でも浸透し始めた。

SUVの総クロスオーバー化編集

1995年に富士重工レガシィツーリングワゴンをSUV風にアレンジした「レガシィグランドワゴン」(後の「レガシィランカスター」、「アウトバック」)を日米同時投入。1997年にはスバル・フォレスターステーションワゴンSUVの融合という形でより「クロスオーバー」らしさを高めた。

1997年、トヨタカムリをベースとして、スタイリングや動力性能に優れた高級クロスオーバーSUV、ハリアーを日本市場に投入した。それまでSUVは高額ではあったものの高級車としては認知されていなかったが、これを機に高級車として市場に受け入れられるようになり、他社もこぞって高級SUVを開発する様になった。こうした街乗り系SUVの流れはクロカン系にも影響を与え、「3BOXセダンと同様の装備はあって当然」という風潮を作り出してトヨタ・ランドクルーザーなどでもラグジュアリー(高級・豪華)化が進んだ。

1999年に三菱は三代目パジェロを従来のラダーフレーム構造から、ラダーフレームとモノコックを溶接する「ラダーフレーム・ビルトイン・モノコックボディ」に変更。2005年のスズキ・エスクード、2006年発売のダイハツ・ビーゴ/トヨタ・ラッシュでも同じ構造が採用されるなど、クロカン系SUVでもクロスオーバー化が進んだ。

また2002年にはトヨタ・istのようにSUV風の外見だがコンパクトカーに分類されるものや、2006年にはスズキ・SX4がスポーツコンパクトとの融合でWRカーにも採用されるCUVも登場し、CUVの概念・範囲は拡大され続けた。2017年の4代目スバル・XVに至っては、ベース車両のインプレッサよりもSUVのXVを主眼に置いた開発をしており、むしろインプレッサが「XVのセダングレード」のような扱いで、「SUV」のみならず「クロスオーバー」という概念自体も従来からすっかり変わってしまっている[14]

2003年に原油高になってからのCUVはやや失速傾向にあったが、海外での需要の伸びは留まるところを知らず、国内メーカーはこぞってCUVを作り続けた。2010年代には日産・ジュークマツダ・CX-3ホンダ・ヴェゼルのような、より小さいCUV(コンパクトクロスオーバーSUV)が人気を集め、経済回復とともに以前以上の勢いを取り戻した[15]。2014年には軽自動車の分野でもコンパクトクロスオーバーSUVと呼べるスズキ・ハスラーダイハツ・キャスト アクティバなどが登場した。1990年代のCUVブームは、以前よりは流行ってきている、という程度のものであったが、トヨタ・C-HRがSUV史上初月販1位[16]を獲得していることからも分かる様に、現在はセダンコンパクトカーミニバンなどの他の乗用車と比べてもCUVは多く売れるジャンルとなっている。

また2010年代以降は特にアイドリングストップハイブリッドダウンサイジングターボクリーンディーゼルなどの技術の発達で燃費では他カテゴリに引けを取らなくなっており、加えてファッション性・趣味性・実用性も兼ね備えたジャンルとして今後も期待されている。

海外におけるCUV編集

 
AMC・イーグル ワゴン(米国)

1970年代のオイル・ショックにより、本格的だが燃費の悪いクロカン(クロスカントリー車)を主力としていたジープAMC(アメリカン・モーターズ・コーポレーション)の経営は厳しくなった。そこでセダンステーションワゴンのモノコックを利用し、オンロード性能とコストにも優れた四輪駆動のクロカンを開発した。それが1980年のAMC・イーグルと、1984年のジープ・XJチェロキーであった。特にチェロキーは、それまでオフロード車に縁のなかった乗用車ユーザーにも大ヒットした。一方でピックアップトラックの人気の高い北米では、それをベースとした本来の意味でのSUVが強い人気を集めていたため、こうしたモノコック構造のクロカン(=今で言うCUV)はSUVの中ではごく少数派に留まった。またメーカー側のロビー活動により、イーグルとチェロキーもピックアップトラック同様に税法上有利なライトトラックに分類されたため、現代ほど明確な区別もされなかった。

しかし1995年にスバル・レガシィアウトバック日産・パスファインダー(2代目)、1996年トヨタ・RAV4、1997年ホンダ・CR-V、1998年スバル・フォレスターなど、日本車メーカーが主に国内市場の流行に合わせて開発したモノコック構造のクロカンを、北米にも続々と投入した[17]。こうしたムーブメントに米国自動車ジャーナリズム界も「クロスオーバーSUV」という呼称を用いることが増え、やがていちジャンルとして確立された。RAV4とCR-Vはその後もヒットを飛ばし続け、2017年には世界で最も売れたSUVの1位と2位を占めている[18]

一方欧州では4WDの需要の低さや、高速道路・都市部での使いづらさのせいで元々クロカンの人気は極めて限定的なものであった。また90年代から00年代初頭までは環境問題への意識の高まりから、SUVは北米ほどは売れなかった。尤も目的に合わせて複数台所有が一般的な北米とは異なり、一台だけで様々な場面をこなす文化の欧州では多方面で優れるCUVの潜在需要は高いとも見られていた。

1999年、ハリアーを日本市場で高級車として成功させたトヨタは、同車種をレクサス・RXとして米国に投入した。RXは大きな反響を呼び、北米でもCUVは大衆車のみならず高級車カテゴリにもなりうることを示した。レクサスの米国での成功は、ポルシェアウディBMWなど欧州高級車メーカー勢にも影響を与え、カイエンX5の登場を促した。またこうした欧州メーカーの動きが、それまでSUV人気のなかった欧州市場も刺激した[19]

このようにCUVが普及するにつれ、米国ではRAV4、CR-VはコンパクトCUVとして、RXやX5はミッドサイズ・ラグジュアリー・クロスオーバーSUVとしてそれぞれの車格に応じたマーケットを確保した。

一方でCUV人気の成長と同時にSUVの安全性に対する批判が起こるようになり、さらに2003年末から起こったガソリン価格の高騰がSUVブームを失速させた。しかしオンロード重視のCUVに関しては無風と言っていい状態で、それどころか従来のラダーフレーム構造のSUVの市場を食って成長する有様であった[20][21]。2006年にはCUVがSUVの北米販売台数の過半数に到達。専門家の中には、燃費だけを求めた一時的な流行であるとする論調もあったが[22]、結局その数字が元に戻ることは無かった。

 
日産・キャッシュカイ

同時期の欧州におけるCUVは他の地域に比べると人気の伸び幅は小さかったが着実に売上台数を伸ばした。そして00年代後半にフォルクスワーゲン・ティグアンスズキ・SX4/フィアット・セディチ日産・キャッシュカイプジョー・3008など大衆車のレベルで多数のCUVが投入され、ついに一大カテゴリに躍進した。特にキャッシュカイはアメリカ人の好みに合わせたRAV4やCR-Vとは異なり、ルノーとの提携も活かして欧州人好みにしたことで、日本車の中では欧州市場で最も成功した一台となった[23]。2010年に日産はさらにコンパクトで廉価なジュークを投入、これを欧州でも北米でもヒットさせて現代のコンパクトCUV人気を決定的にした。

また中国でも著しい経済成長と一人っ子政策の終焉で、ステータスと実用性が両立できるCUVが00年代後半から圧倒的な人気を集めた。アウディマツダホンダ日産トヨタMGモーターなど多数のメーカーが中国専売のCUVを投入し、上海モーターショーはCUVで埋め尽くされるなど欧米に負けない勢いを示している[24]。2017年の中国の新車販売台数2800万台のうち、じつに1000万台以上はSUVであった[25]

2010年代以降はエンジンやハイブリッドの技術の進歩、経済の回復、アメリカの油田発見などでマイナス要因が減ったため、さらにCUVの快進撃は加速。欧州では2016年にほとんどの国で売上の増加を示した上、コンパクトカー市場を上回ってSUVがベストセラーカテゴリとなった[26]

なお2010年代以降の米国では小型・二輪駆動のCUVは乗用車に含まれるカテゴリー名であり、税・保険区分上トラックに分類されるクロカン系SUVとは異なり、区別されている。

代表的な車種一覧編集

脚注編集

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  1. ^ トヨタ「RAV4」が1位、17年の米自動車販売
  2. ^ ランボルギーニの新型SUV『ウルス』、12月デビューが決定
  3. ^ アストンマーティン初のSUV、日本導入へ…2019年後半以降
  4. ^ ポルシェの通期決算、営業利益は25%増…過去最高 2015年
  5. ^ 新型フィットをクロスオーバー・スタイルにする純正アクセサリー cliccar 2017/07/02
  6. ^ A Look Back: A History of Crossovers
  7. ^ http://amesha-world.com/testride/detail.php?id=2146 乗用車フィーリングと4WDの動力性能に利便性 AMC イーグル ワゴン (AMC EAGLE WAGON) すなわちワゴンボディを載せたジープ
  8. ^ ハリアー 開発責任者に聞く 2017.06.08 13:30 GAZOO.com
  9. ^ 国産クロスオーバーSUV隆盛前夜 スズキ・エスクードの功績
  10. ^ 元祖「都会派SUV」初代トヨタ RAV4のMT車は今や激レア
  11. ^ 新モデルの投入が続き、今もっとも注目のジャンル 国産車がリードしてきた「SUV」の歴史と最新トレンド
  12. ^ 自工振ニュース No.48(1997年2月10日)[1]
  13. ^ SUV都市侵攻(1991年)
  14. ^ 小沢コージのビューティフルカー Car&Mobility もうインプレッサなんかいらない!? スバルXV 2017年04月19日
  15. ^ 小型SUVヒットの系譜、日産ジュークの次は?
  16. ^ トヨタ、C-HRが「たった4カ月」で首位に躍り出た理由
  17. ^ Why Crossovers Conquered the American Highway The crossover is a mutt that combines elements of cars, SUVs, and minivans. And this new type of vehicle just may become the most popular vehicle in America. 2014年6月10日
  18. ^ world best selling SUV.Nissan X-trail is not the leader 2018年2月16日  Focus2move
  19. ^ A Short History of the SUV
  20. ^ Ⅳ-3. 米国ピックアップトラック産業にみる保護主義政策の功罪 みずほ銀行産業調査部
  21. ^ なぜGMは破綻したのか? ─ リーダーシップ論の視点から ─ 菖蒲 誠
  22. ^ CUVがSUV総売上の過半数に Response 2006年5月8日
  23. ^ 日産デュアリスが欧州でトップ・クラスのシェアって知ってた? 大人気の理由、なぜ? AUTOCAR JAPAN
  24. ^ 中国市場動向…SUVが大人気、現地の人に理由を聞いてみた2017年5月10日(水) 07時00分 Response
  25. ^ 2017年中国市場:3%増の2,887.9万台、SUVは1,000万台超 吉利(Geely)と広汽(GAC)が販売台数増、電動車は約1.5倍の77.7万台 自動車産業ポータル MARKLINKS 2018/02/07
  26. ^ SUVは初めてヨーロッパでベストセラーセグメントを引き継ぐ

注釈編集

  1. ^ 現在の四輪駆動システムは、滑ってから後輪が駆動するパッシブ式オン・デマンドから、滑りを予測して動くトルクスプリット式へ移行しつつある。またプジョー・3008の「グリップコントロール」のように、二輪駆動でも電子制御でそこそこの走破性を持たせて付加価値を維持しているメーカーもある

関連項目編集