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グリポサウルス Gryposaurus (「鷲鼻のトカゲ」を意味する)[1][2]は、8300万~7400万年前の白亜紀後期サントニアンカンパニアン北アメリカに生息していたハドロサウルス類に分類される恐竜の属の一つ。グリポサウルスの名はカナダアルバータ州ダイナソーパーク累層アメリカモンタナ州ツーメディスン累層下部、ユタ州カイパロウィッツ累層で発見された標本に与えられている。

グリポサウルス
生息年代: 83–74 Ma
Utah Gryposaurus.jpg
ユタ自然史博物館のG. monumentensisの骨格
地質時代
白亜紀後期
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
亜目 : 鳥脚亜目 Ornithopoda
: ハドロサウルス科
Hadrosauridae
亜科 : サウロロフス亜科
Saurolophinae
: クリトサウルス族
Kritosaurini
: グリポサウルス属
Gryposaurus
学名
Gryposaurus
Lambe1914
シノニム
  • Hadrosauravus (疑問名)
    Lambert, 1990
  • Rhinorex?
    Gates & Scheetz, 2014
  • G. notabilis
    Lambe, 1914
  • G. latidens
    Horner, 1992
  • G. monumentensis
    Gates & Sampson, 2007
  • G. alsatei?
    Lehman, Wick, Wagner, 2016

グリポサウルスはクリトサウルスに似ており、長いあいだ同物異名だと考えられていた。多くの頭骨といくつかの骨格が知られている。皮膚の痕跡も見つかっており、背中の正中線に沿ってピラミッド型の鱗で覆われていたことが窺える。最も容易に見分けることのできる特徴は、高く緩やかに隆起した鼻骨である。これはしばしばローマ鼻のようであると表現される[1]。そして、それはおそらく種あるいは性別を見分けるために役立った。 または種内競争で格闘に用いられたかもしれない。二足歩行と四足歩行をする大型植物食恐竜で、全長は約9m。川辺に生息していたと考えられている。

目次

記載と種編集

 
G. notabilis 復原図

グリポサウルスは典型的な大きさと形態をしたハドロサウルス類だった。本属の最高の標本は、クリトサウルス・インクルヴィマヌス Kritosaurus incurvimanus として記載されたほぼ完全な模式標本である。それは現在はグリポサウルス・ノタビリス Gryposaurus notabilis とされている。その全長は約8mである[3]。本標本はグリポサウルスの中で最も良好に皮膚痕を保存したものでもある。箇所によって異なるタイプの鱗をもっていたことがうかがえる。頸部と胴部の側部には均一な多角形の鱗が横並びになっており、低く長いピラミッド型の構造で背中の頂部に沿って正中線の列をなしている[4]

グリポサウルスは頭骨と下顎骨の特徴により3種が命名されている[2]。アルバータ州・ダイナソーパーク累層下部から多数の良好な標本が見つかっているグリポサウルス・ノタビリス Gryposaurus notabilis は、頭部が前後に長く、鼻の隆起はほどほどに発達する。その発達が弱いとされるグリポサウルス・インクルヴィマヌスG. incurvimanusは、現在は本種のシノニムで幼体か亜成体とされている。本種は化石記録がクリトサウルス族で最も豊富であり、80年近くクリトサウルス属に含められていたため、クリトサウルスの代表として取り上げられている場合がよくある。モンタナ州トゥーメディスン累層産のグリポサウルス・ラティデンス Gryposaurus latidens は完全な頭骨は未発見だが、比較的長い頭をしていることがわかっている。以前は鼻の隆起はかなり低いとされていたが、成長段階によっては、あるいは個体によっては高く発達した。最も原始的なグリポサウルスである。本種の発見は、ハドロサウルス類の出現がサントニアンのかなり早い時期にさかのぼる可能性を示している。グリポサウルス・モニュメンテンシス Gryposaurus monumentensisは、ユタ州・カイパロウィッツ累層中部から、完全な頭骨や部分的な体骨格がいくつか知られている。頭骨は前後に短めで、鼻の隆起はかなり高い[5][6]。詳細に保存された頭骨は重要で、ハドロサウルス類の同定には非常に役立つ。

分類編集

 
アマースト大学自然史博物館の骨格

グリポサウルスはサウロロフス亜科のハドロサウルス類である。つまり後頭部の中空のトサカをもたないカモノハシ恐竜のメンバーである[7]。一般にグリポサウルスの名は、アーチ状の鼻をもったカモノハシ恐竜という意味でしばしば用いられる[8]テティスハドロスは記載時にグリポサウルスに含められていたものの一つである。アントニオの愛称で呼ばれていたグリポサウルスはテティスハドロスの標本である[9]。グリポサウルス亜科は、ハドロサウルス科内の下位分類群としてジャック・ホーナーによって提唱された[10]が、現在は使われておらず、マルケスらが用いているクリトサウルス族とほぼ同一のクレードである[11]。クリトサウルスとグリポサウルスの主な違いの一つは生息年代である。クリトサウルスはわずかにグリポサウルスより新しい時代の地層から見つかる。また、クリトサウルスの頭骨は完全には知られておらず、目より前の部分がほとんど失われている。しかしグリポサウルスと非常によく似ているが、鼻骨の隆起はグリポサウルスほど目立たなかったと思われる[12]

以下のクラドグラムはマルケスとワーグナーによる2012年のクリトサウルス族の系統解析に基づく[11]

 クリトサウルス族

ウラガサウルス




クリトサウルス





グリポサウルス・ラティデンス




グリポサウルス・ノタビリス



グリポサウルス・モヌメンテンシス






ビッグベンドの未明名種




セケルノサウルス



ウィリナカケ







出典編集

  1. ^ a b Creisler, Benjamin S. (2007). “Deciphering duckbills”. In Carpenter, Kenneth (ed.). Horns and Beaks: Ceratopsian and Ornithopod Dinosaurs. Bloomington and Indianapolis: Indiana University Press. pp. 185–210. ISBN 0-253-34817-X. 
  2. ^ a b Glut, Donald F. (1997). “Gryposaurus”. Dinosaurs: The Encyclopedia. Jefferson, North Carolina: McFarland & Co. pp. 445–448. ISBN 0-89950-917-7. 
  3. ^ Lull, Richard Swann; Wright, Nelda E. (1942). Hadrosaurian Dinosaurs of North America. Geological Society of America Special Paper 40. Geological Society of America. p. 226. 
  4. ^ Lull, Richard Swann; Wright, Nelda E. (1942). Hadrosaurian Dinosaurs of North America. Geological Society of America Special Paper 40. Geological Society of America. pp. 110–117. 
  5. ^ Lambe, Lawrence M. (1914). “On Gryposaurus notabilis, a new genus and species of trachodont dinosaur from the Belly River Formation of Alberta, with a description of the skull of Chasmosaurus belli”. The Ottawa Naturalist 27 (11): 145–155. 
  6. ^ Parks, William A. (1920). “The osteology of the trachodont dinosaur Kritosaurus incurvimanus”. University of Toronto Studies, Geology Series 11: 1–76. 
  7. ^ Horner, John R.; Weishampel, David B.; Forster, Catherine A (2004). “Hadrosauridae”. In Weishampel, David B.. The Dinosauria (2nd ed.). Berkeley: University of California Press. pp. 438–463. ISBN 0-520-24209-2. 
  8. ^ Weishampel, David B.; Horner, Jack R. (1990). “Hadrosauridae”. In Weishampel, David B.. The Dinosauria (1st ed.). Berkeley: University of California Press. pp. 534–561. ISBN 0-520-06727-4. 
  9. ^ Glut, Donald F. (2002). Dinosaurs: The Encyclopedia. Supplement 2. Jefferson, North Carolina: McFarland & Co. pp. 79–80. ISBN 0-89950-917-7. 
  10. ^ Horner, John R. (1992). “Cranial morphology of Prosaurolophus (Ornithischia: Hadrosauridae) with descriptions of two new hadrosaurid species and an evaluation of hadrosaurid phylogenetic relationships”. Museum of the Rockies Occasional Paper 2: 1–119. 
  11. ^ a b Prieto-Márquez, A.; Wagner, J.R. (2012). Saurolophus morrisi, a new species of hadrosaurid dinosaur from the Late Cretaceous of the Pacific coast of North America”. Acta Palaeontologica Polonica in press. doi:10.4202/app.2011.0049. http://www.app.pan.pl/archive/published/app56/app20110049_acc.pdf. 
  12. ^ Kirkland, James I.; Hernández,-Rivera, René; Gates, Terry; Paul, Gregory S.; Nesbitt, Sterling; Serrano-Brañas, Claudia Inés; Garcia-de la Garza, Juan Pablo (2006). “Large hadrosaurine dinosaurs from the latest Campanian of Coahuila, Mexico”. In Lucas, Spencer G.. Late Cretaceous vertebrates from the Western Interior. New Mexico Museum of Natural History and Science Bulletin, 35. Albuquerque, New Mexico: New Mexico Museum of Natural History and Science. pp. 299–315. 

関連項目編集