グルタミン酸デヒドロゲナーゼ

グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(glutamate dehydrogenase, GDH)は、多くの微生物および真核生物のミトコンドリアに存在する酵素である。尿素の合成に必須な酵素で、グルタミン酸α-ケトグルタル酸の相互変換を行う。動物では酵素反応で発生したアンモニアは尿素回路に流れ着く。バクテリアではグルタミン酸アミドトランスフェラーゼにより[アミノ酸]を経て同化される[1]。植物では環境と圧力に依存してどちらの方向にもはたらく[2]。トランスジェニック植物において発現するミトコンドリアGDHは除草剤、水不足、病原体感染に対する耐性が強化される[3]。それらは栄養的価値が大きい[4]

グルタミン酸デヒドロゲナーゼ1
識別子
略号 GLUD1
他の略号 GLUD
Entrez英語版 2746
HUGO 4335
OMIM 138130
RefSeq NM_005271
UniProt P00367
他のデータ
EC番号
(KEGG)
1.4.1.3
遺伝子座 Chr. 10 q21.1-24.3
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グルタミン酸デヒドロゲナーゼ2
識別子
略号 GLUD2
他の略号 GLUDP1
Entrez英語版 2747
HUGO 4336
OMIM 300144
RefSeq NM_012084
UniProt P49448
他のデータ
遺伝子座 Chr. X q25
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グルタミン酸デヒドロゲナーゼNADP依存型
識別子
略号 gdhA
他の略号 GLUA
Entrez英語版 BAA15550
RefSeq GI:1742869
UniProt AP009048.1
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グルタミン酸デヒドロゲナーゼは異化と代謝経路との間を繋ぐ酵素であり、真核生物の至るところに存在する。

補因子 編集

NAD+もしくはNADP+がこの酵素の補因子である。

窒素循環での役割 編集

動物および微生物によるアンモニアの組み込みはグルタミン酸デヒドロゲナーゼとグルタミン酸シンターゼによって行われる。グルタミン酸は哺乳類と微生物の窒素循環において、窒素供与体、窒素受容体の両方の役割を果たす。

グルタミン酸デヒドロゲナーゼの調節 編集

ヒトでは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼの活性はADP-リボシル化によりコントロールされ、共有結合修飾がサーチュイン遺伝子によって行われる。この調節はカロリー制限と低血糖に反応する緩やかなものである。これらの状況下ではグルタミン酸デヒドロゲナーゼの機能性は、クエン酸回路においてATPを合成するのに使われるα-ケトグルタル酸の量を増やすために高くなる。

微生物では、GDHのアロステリック部位に結合するアンモニウムイオンまたはその大きさに近いルビジウムイオンの濃度により調節され、酵素のKm値を変化させる[5]

ADP-リボシル化によるGDHの調節はインスリンを分泌するβ細胞にとって特に重要である。インスリンの分泌はADPの増加により促進される。サーチュイン遺伝子はインスリン分泌を調節し、血糖値とアミノ酸代謝を管理するのに必要な遺伝子である。

調節 編集

アロステリック阻害物質
アロステリック活性物質

脚注 編集

  1. ^ Lightfoot DA, Baron AJ, Wootton JC (1988). “Expression of the Escherichia coli glutamate dehydrogenase gene in the cyanobacterium Synechococcus PCC6301 causes ammonium tolerance”. Plant Molecular Biology 11 (3): 335-344. doi:10.1007/BF00027390. 
  2. ^ Mungur R, Glass AD, Goodenow DB, Lightfoot DA (June 2005). “Metabolite fingerprinting in transgenic Nicotiana tabacum altered by the Escherichia coli glutamate dehydrogenase gene”. J. Biomed. Biotechnol. 2005 (2): 198–214. doi:10.1155/JBB.2005.198. PMC 1184043. PMID 16046826. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1184043/. 
  3. ^ Lightfoot DA, Bernhardt K, Mungur R, Nolte S, Ameziane R, Colter A, Jones K, Iqbal MJ, Varsa E, Young B (2007). “Improved drought tolerance of transgenic Zea mays plants that express the glutamate dehydrogenase gene (gdhA) of E. coli”. Euphytica 156 (1-2): 103-116. doi:10.1007/s10681-007-9357-y. 
  4. ^ Lightfoot DA (2009). “Genes for use in improving nitrogen use efficiency in crops”. In Wood, Andrew; Matthew A. Jenks. Genes for Plant Abiotic Stress. Wiley-Blackwell. pp. 167-182. ISBN 0-8138-1502-9 
  5. ^ Wootton JC (February 1983). “Re-assessment of ammonium-ion affinities of NADP-specific glutamate dehydrogenases. Activation of the Neurospora crassa enzyme by ammonium and rubidium ions”. Biochem. J. 209 (2): 527–31. PMC 1154121. PMID 6221721. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1154121/. 

関連項目 編集

外部リンク 編集