グループNは、自動車レースに使用する競技車両のカテゴリーの1つ。

三菱・ランサーエボリューショングループN仕様(2008年)

概要編集

 
ラリー・ドイチュラントのプロトン・パート(2004年)
 
ERCルノー・メガーヌ R.S.のN4仕様(2012年)

1981年国際自動車連盟(FIA)の下部組織だった国際自動車スポーツ連盟(FISA)によって、それまで1から8の数字によって形成されていたレギュレーション(国際スポーツ法典・付則J項)を、AからF・N・Tという8つのアルファベットへ簡略化したものの1つで、グループ1を置き換える形で誕生した。部門Ⅰ(量産車部門)に所属し、「プロダクションカー(無改造車)」と定義される。一般の市販車にレース用の改造を施すという点でグループAグループBと同じだが、その改造範囲は狭く、FIAで最も市販車に近い規定である。

連続した12か月間に2,500台以上(1993年より.それ以前は5,000台以上)生産された4座席以上の車両で、グループAホモロゲーションを取得した車がホモロゲーションの対象となる。つまりグループNホモロゲーション取得車は、同時にグループAホモロゲーション取得車である。なおプロダクションカー世界ラリー選手権(PWRC)では参戦車種を増やすための特例として、生産台数が1,000台以上ならホモロゲーション取得が認められていた。生産を中止した日から7年後に250台未満の製造であった場合公認は無効となる。

排気量1,400 cc以下は"N1"、1,401 - 1,600 ccは"N2"、1,601 - 2,000 ccは"N3"、2,000 cc以上は"N4"にそれぞれ分類される。ただし過給機付は排気量に1.7倍を乗じた数を適用する。なお初期のスーパー2000規定車両は便宜上N4に分類されていた。

エンジンはインテーク/エキゾーストマニホールドターボチャージャーラジエーターインタークーラーオルタネーターウォーターポンプといった機器類も一切が市販車と同一のものが求められる。加えて排気量・最低車重・使用ホイール径・幅・前後最低地上高・前後最大トレッド、駆動形式、サスペンションの形式やストローク量なども車種毎に申請されたホモロゲーションシートの数値を遵守することが求められるため、ベース車となる市販車そのものの性能の高さが要求される。一方で消火機器ロールケージの装備といった一通りの安全対策に加え、座席の取り外し、サスペンション、ショックアブソーバーブレーキ類(ブレーキパッドブレーキキャリパーディスクローター、ブレーキホース)などの素材の変更、エンジンコントロールユニットチューニングなどができるため、「市販車」というにはほど遠い部分も多い。ベースエンジンの強化とエンジンチューニングにより、2008年時点で馬力自体は吸気リストリクターの装着でベースの市販車を下回る250馬力程度ながら、速さは初期のWRカー以上、トルクは2000年代半ばのWRカー並の600 Nm(約61.2 kgf・m)にも達していたという[1]。また2000年代末期のPWRCではインタークーラーの変更やエンジンオイルクーラー、トランスミッションオイルクーラーの取り外し、フロアガードの素材変更、ブレース(筋交い)類の省略など改造範囲が拡大され、同一車両において各コンストラクターによる開発競争が過熱した[2]

1987年にWRCでプロダクションカップが創設されると、ランチア・デルタ HF インテグラーレ日産・パルサーGTIマツダ・323 4WD ターボトヨタ・セリカ GT-FOURフォード・シエラ コスワース 4WD/エスコート RS コスワースといった、グループAマシンのベースとなった4WDスポーツが多数参戦した。またMRルノー・5 GTターボも2年連続でタイトルを獲得し、1989年コートジボワールではグループN車両唯一のWRC総合優勝をも記録している。

しかし量産を続けるにはメーカーの負担が大きいグループAが衰え、大衆車でも4WDターボ化できるWRカー規定が導入された後の1990年代中期以降のグループNカップおよびPWRCは、1999年から2001年までの三菱28連勝のように、N4ではスバル・インプレッサ三菱・ランサーエボリューションOEM供給のプロトン・パートも含む)の寡占状態となっていたため、他社の参入が難しい状況となっていた。そこでFIAはベースが大衆車でも大規模な改造を施すことでN4に匹敵する戦闘力を得られるスーパー2000規定を作り、2007年から同カテゴリに編入した。このときにグループN1〜N3は廃止され、R1〜R3に代替された。

しかし今度はスーパー2000にN4が太刀打ちするのが難しくなってしまったため、両者は2010年から別カテゴリ(PWRCとSWRC)に分けられることになった。2013年に両カテゴリは統合されてWRC2となるが、グループNにはプロダクションカップが設定された。

2010年ERCでは、前輪駆動でターマック限定ながらグループN4に久々に新車となるルノー・メガーヌが投入された[3]

IRCやERC、APRCなどでは、N4の改造範囲(サスペンションの変更や軽量化・冷却性能の向上)を広げたグループR4を誕生させて、両者の戦闘力の均衡を図った[4]。だが結局R4の戦闘力はスーパー2000に並ぶには至らないまま、スーパー2000はグループR5に代替されるようになり、R4も2015年を持ってFIA主催シリーズの欧州イベントでの使用が不可とされた。

しばらくはWRCおよびWRC2へのグループNの年間エントリーが認められていたが、実際に使用するチームは皆無であったため、2019年以降は地元チームの賞典外でしか参戦できなくなっている。

FIA管轄の地域選手権では2013年以降スーパー2000やグループR5/Rally2の下位クラス(ERC2やAPRC2など)に位置づけられている。各国ASN管轄のラリー選手権(全日本ラリー選手権など)では、グループNに類似する規定で2022年現在も最高クラスの車両として総合優勝を争うことも多いが、こちらでもグループRally勢の台頭が始まっており、メイン規定としてのグループNは厳しい状況にある。

なおスペインには『グループN5』という独自の規定があるが、これは共通コンポーネントを量産車に組み込むという点でグループRally2キットカーと同じ規則であり、FIAのグループNとは全く異なる[5]

ツーリングカーレースではローカルレベルでグループAの下位クラス車両としてしばし用いられていた。90年代末期にはグループNのホモロゲーションを取得した車両に小規模な改造を加える「グループST(スーパープロダクション)」が生まれ、後のスーパー2000規定のベースとなった。

グループNの参戦可能なレース・ラリーカテゴリ編集

以下はJAFの公認によりグループNと同等のレギュレーションの車両を用いるカテゴリ。

グループNの主な車種編集

 
スバル・インプレッサグループN仕様(2010年)

以下はFIAのグループNのホモロゲーションを取得していないものの、日本自動車連盟(JAF)の公認によりグループNとほぼ同等のレギュレーションでスーパー耐久全日本ラリー選手権等に出ている車種である。

 
スーパー耐久ST-4クラスのトヨタ・86(2012年)

脚注編集

[脚注の使い方]

参考文献編集

関連項目編集